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ビブリオ・バルニフイカスの感染経路、症状

概要

Vibrio vulnificusは、腸炎ビブリオと類似した細菌で、発育に食塩を要求する病原性ビブリオの一種です。主に魚介類を介してヒトへ感染し、特に肝疾患や基礎疾患を持つヒトに敗血症をおこし死亡に至ることから、人食いバクテリアとも呼ばれています。

詳しく

ビブリオ・バルニフイカス(Vibrio vulnificus)は、腸炎ビブリオと類似した性状を持つグラム陰性の桿菌です。

この菌が引き起こす皮膚症状や創傷が名前の由来です。

ビブリオ属の多くは海水中に生息するため好塩性の性質を持ちます。

しかし、この菌は、腸炎ビブリオより若干低い1%くらいの塩濃度でも生息可能です。

したがって、河口や汽水域、海岸付近に分布することが多いです。

海水温度が20°C付近になると,、海水中の甲殻類や魚介類表面、動物性プランクトンなどに付着して活発に増殖するようになります。

夏場の魚介類の水揚げのときに感染する可能性が高まるので十分注意しなければなりません。

感染経路

ビブリオ・バルニフィカスの感染源には、経口感染と経皮感染があります。

経口感染は近海産の魚,貝類,カニ,エビなどの生食や加熱不十分な食事が原因となって発生します。

経口感染によるものが患者数の約75%を占めています。

本菌を予防するのに特別な対策は必要なく、腸炎ビブリオ中毒と同じような対応策をとれば中毒を防止することができます。

ビブリオ・バルニフィカス感染症が発生しやすい時期には、魚介類の生食を避け、十分な加熱調理を行うことが最も重要です。

ただし、水温が15°C以下では菌はほとんど検出されなくなるため、冬場の発生はありません。

他の細菌性食中毒と同様に6~10月に多発しています。

感染力は菌量は、肝臓疾患や免疫力が低下している等の基礎疾患がある人の場合は100個以下でも感染するといわれています。

潜伏期は7~24時間、平均18時間です。

症状

通常、ビブリオ・バルニフィカスに汚染された食品を食べても健康体であれば、軽い下痢や腹痛で済み、重症になることはほとんどありません。

しかし、基礎疾患があるような人は、より強い症状が現れます。胃腸炎症状に加えて、激しい疼痛があり、皮膚に紫斑,紅斑,水雲,血庖,潰瘍など、さまざまな症状を発症します。

また、悪寒や発熱とともに血圧の低下など、いわゆる敗血症様症状を起こしたりもするので、十分注意が必要となります。

肝硬変、肝臓がんなどの肝疾患者や免疫機能が低下している人などのハイリスク者は重篤となります。

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感染症の定義

定義

感染(infection)とは、微生物が、付着した場所で定着し、分裂・増殖することです。

微生物が、ヒトの排除能力(免疫など)を超えて侵襲するとき、「感染」が成立します。

生体にさまざまな障害が現れた場合、発病(発症)となり、この状態を「感染症」といいます。

参考

潜伏期

感染してから発病(発症)に至るまでの時期を、潜伏期(incubation period)」といいます。

ただし、感染した場合でも、すべて発病(発症)するわけではありません。感染しているが発病していない状態を特に「不顕性感染」といいます。

日和見感染

正常のヒトに感染しないが、排除能力の低下に伴い侵襲能力の弱い微生物が感染することは「日和見感染」と呼ばれ、また、日和見感染を受けやすい宿主は、「易感染宿主」と呼ばれます。

病原体

ヒトに侵襲能力をもつ微生物は、病原体(病原菌)と呼ばれます。

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血小板が減少する疾患

末梢血中には、約15~35万/μLの血小板が循環しています。

循環血液中の血小板数は、産生、破壊、分布のバランスにより一定数に保たれています。

しかし、バランスが崩れることにより血小板減少をきたします。

一般的には、血小板数が10万/μL未満に減少した場合、血小板減少とされています。

血小板数が5万/μL未満に減少すると、皮下出血、歯肉出血、鼻出血、性器出血など皮膚粘膜の出血症状が現れます。

血小板数が1万/μL 未満に減少すると、消化管出血や頭蓋内出血の危険性が高くなります。

下に、出血小板が減少する疾患の例を挙げます。

先天性血小板減少症

常染色体劣性遺伝形式

・先天性無巨核球性血小板減少症

・模骨欠損に伴う血小板減少症

・Bernard-Soulier症候群

常染色体優性遺伝形式

・May-Hegglin異常(MYH9異常症)

・Bernard-Soulier症候群のキャリアー

・GPIIb-llla異常症(GPIIb-lllaの活性化変異)

・Gray platelet症候群(血小板α穎粒欠損)

伴性劣性遺伝

・Wiskott-Aldrich症候群

後天性血小板減少症

血小板産生低下

・骨髄異形成症候群

・再生不良性貧血

・放射線,抗がん剤などの薬剤による骨髄抑制

・骨髄浸潤(癌,白血病など)

・巨赤芽球性貧血(ビタミンB12または葉酸欠乏症)

・発作性夜間血色素尿症(PNH)

血小板破壊・消費の亢進

・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)

・二次性免疫性血小板減少症(SLE,リンパ増殖性疾患など)

・薬剤性免疫性血小板減少症(キニジン,ヘパリンなど)

・播種性血管内凝固症候群(DIC)

・血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

・溶血性尿毒症症候群(HUS)

血小板分布異常または希釈

・脾機能冗進症(肝硬変,Banti症候群など)

・大量輸血

その他

・EDTA依存性偽性血小板減少症

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ウロセプシスとは?(urosepsis)

ウロセプシスとは、尿路感染症を原因とする敗血症の意味です。

尿路感染自体は、さまざまな原因で発症します。

細菌が自然に侵入するほか、尿路についての手術や、膀胱鏡、尿道カテーテルの留置・抜去、あるいは、尿管ステントの留置などの際に感染する場合があります。

このとき、たとえば、尿が出にくい感染患者は、腎盂内圧が上がることで、尿中細菌が血中に移行し、その結果として、ウロセプシスとなります。
ウロセプシスは、エンドトキシンショック、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)などにつながる場合があるため、注意が必要です。

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穿刺液の検査(漿液・髄液)

穿刺液とは

体内には、いくつかの体腔が存在し、体腔は、外界から遮断されています。

体腔は、内臓を覆っており、少量の体液が存在しています(潤滑油の役割)。

このため、臓器同士の摩擦が防がれたり、外界の震動による臓器の損傷が防がれたりします。

体腔のうち、主なものは「漿膜」、「脈絡膜」および「滑膜」に分けられ、少量の体液が存在します。

それぞれ順に、「漿液」、「脳脊髄液」および「滑液(関節液)」と呼ばれます。

各体液の成分は、漏出する血漿が主成分です。それゆえ、癌や炎症があると、そこからの成分が混入することがあります。

漿液の検査

漿膜と漿液

漿膜は、1層の扁平な中皮細胞で覆われており、疎性結合織の薄い層からなっています。

漿液は、血漿成分が濾過されたものであり、組織由来の物質はほとんど混入していません。

漿液は、漏出液と、滲出液に分類されます。

主な漿膜腔は、「胸膜腔」、「腹膜腔」および「心膜腔」です。

それぞれ少量の「胸水」、「腹水」および「心膜液(心嚢液)」が入っています。

漿液の検査

正常では、体腔にはごく少量の漿液が貯留しています。

しかし、病的な状態では、多量の漿液が貯留する場合があります。

このような場合、漿液の検査をするために、穿刺針を体腔に刺入し、無菌的に吸引して検査します。

漿液の検査では、主につぎのような検査をします。

①一般検査

・漿液の量,外観,異物の有無
・比重、pH
・蛋白量
・リバルタ反応
・漿液沈漬の鏡検

②微生物検査

③細胞診

髄液の検査

髄液について

脳脊髄液(通称「髄液」)は、主に、脳室にある脈絡膜層で作られます。

Luschka孔と、Magendie孔を通ってクモ膜下腔に出て、上方と下方に流れて脳表面、脊髄表面、神経根を潤して循環しています。

髄液の吸収は主としてクモ膜絨毛から静脈洞へと行われます。

髄液の総量は,正常成人で90~150ml程度です。

髄液の産生量は、正常人では1時間に15ml程度と考えられており、病的には、400mlにも及ぶとされています。

髄液の採取

通常は、第3、4腰椎間腔に針を刺して行う腰椎穿刺によって髄液を採取します。ときには後頭下穿刺や、脳室穿刺によります。

髄液の検査

髄液の検査には、たとえば以下のものがあります。

①一般検査
・髄液の色調・混濁の確認、浮遊物の有無の確認
・細胞数の算定、細胞の種類の確認
・グロブリン反応
・膠質反応

②生化学的定量検査
・蛋白、糖、酵素など
・電解質、Pco2、HCO3-、pH
・髄液蛋白分画、免疫グロブリン定量

③微生物検査

④血清検査(主に梅毒血清反応)

⑤細胞診

髄液の異常

外観

髄液は、通常、無色透明です。

しかし、細胞成分が混入すると、髄液は混濁し、また、血液が混入すると、血性となります。

細胞成分

髄液は、通常、細胞数は、0~5個/ml のリンパ球を含むのみです。

しかし、細胞数が10を超えると、神経系の炎症などを意味します。

好中球の増加であれば細菌性感染を、リンパ球の増加であれば、ウイルス、寄生虫、トレポネーマなどを疑います。

また、腫瘍細胞が見られる場合、神経系の腫瘍を疑います。

病原微生物

髄液から検出される菌には、細菌(髄膜炎菌、結核菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌)、スピロヘータ(梅毒トレポネーマ、レプトスピラ)、真菌(クリプトコッカス)、原虫(トキソプラズマ)、種々のウイルスがあります。

タンパク

正常では、タンパク濃度は14~45mg/dl 程度です。

増加する場合には、①血清タンパクの増加に影響される場合、②血液‐髄液関門が破壊された場合、③クモ膜下が閉塞し、髄液がうっ滞する場合、④免疫グロブリンの局所産生の増加する場合などです。

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胸腺腫の病態、治療、予後

胸腺腫の病態、治療、予後について解説します。

病態

胸腺腫は縦隔腫瘍の中でも最も高頻度であり, 胸腺上皮細胞由来の代表的腫瘍です。

胸腺腫は、30歳以上の成人に好発し、発生頻度には男女差を認めません。

胸腺腫は、半数以上が無症状で、検診などで偶発的に発見されることが多いとされています。

通常、胸腺腫は結合組織の被膜で覆われており、胸腺内にとどまることが多いとされていますが、進行すると周囲の肺、心臓、上大静脈、胸膜への浸潤や播種を来すことがあります。

周囲の臓器への腫瘍の圧排や浸潤によって、胸痛、咳、呼吸困難、横隔神経麻痺、上大静脈症候群などを認めます。

また、胸腺腫は、さまざまな自己免疫性疾患を合併することも知られており、代表的なものとして、重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、赤芽球癖、シェーグレン症候群などが報告されています。

胸腺腫の血行性転移の頻度は低いとされています。

転移の中では肺転移が多いようです。

なお、病理学的には、胸腺腫は胸腺上皮由来の、正常の胸腺上皮によく似た細胞異型の目立たない細胞からなる腫瘍であり、正常の胸腺組織にみられるような未熟Tリンパ球を種々の程度に随伴します。

治療

治療は早期例には外科的切除が行われます。

現在は、胸腺腫に対する胸腔鏡手術が広く行われるようになっています。

腫瘍の大きさ、部位、進行度、病期から手術適応を判断し、胸腺切除範囲を含めた胸腺腫に対する適切な術式が検討されます。

胸腺腫に対する胸腔鏡手術は良好な治療成績と言われています。

進行例には、外科的切除に化学療法および放射線治療を含めた集学的治療が行われます。

ただし、浸潤型の胸腺腫の場合は、治療の基本方針は腫瘍の完全切除ですが、比較的稀な疾患のため、一期的切除が困難な進行症例に対する治療方針に関してコンセンサスは確立されていません。

予後

胸腺腫の予後はWHO組織分類と正岡病期分類が指標となっています。

報告によると、WHO組織分類のA型は、正岡分類のⅠ期 80%、Ⅱ期 17%、Ⅲ期 3%であり、5年および10年生存率は100%です。

AB型は、正岡分類のⅠ期 71.1%、Ⅱ期 21.6%、Ⅲ期 5.6%であり、5年および10年生存率は80~100%です。

B1型は、正岡分類のⅠ期 53~58%、Ⅱ期 24~27%であり、10年生存率は90%以上です。

B2型は、正岡分類のⅠ期 10~48%、Ⅱ期 13~53%、Ⅲ期 19~49%、Ⅳ期 8.9%であり、10年生存率は50%以上です。

B3型は、正岡分類のⅠ期 4.2%、Ⅱ期 15~38%、Ⅲ期 38~66%、Ⅳ期 6~26%であり、10年生存率は50~70%です。