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栄養スクリーニング方法の種類

栄養スクリーニングツールの種類を紹介します。

  • SGA(subjective global assessment)

主観的に栄養状態を判定するもの

  • GLIM criteria(global leadership indicator of malnutrition criteria)

2019 年に ASPEN(米国静脈経腸栄養学会)および ESPEN を中心に提言された低栄養の診断プロセス

  • CONUT(Controlling Nutritional Status)

入院中の成人に対しての栄養評価法として作成された

  • MUST(malnutrition universal screening tool)

一般成人の栄養評価法

  • NRS 2002(NRS:nutrition risk screening)

成人の入院患者における栄養評価法として ESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)で開発

  • MNA(minimum nutritional assessment)

ヨーロッパで開発された高齢者用の栄養評価ツール

  • GNRI(geriatric nutritional risk index)

術後患者の栄養評価として開発された nutritional risk index(NRI)を基に入院中の高齢者をターゲットに開発されたスクリーニング法

  • S-NUST(Scored Nutritional Screening Tool )

日本製の栄養スクリーニングツール

▶︎栄養スクリーニングツールのメリット

病院で低栄養が問題になる場面には、さまざまあると思います。

病院食が全量摂取できてない人を例にとれば、

食欲はあるが食べられない

食欲が出ず食べられない

誤嚥する人

消化管に異常があり、経口摂取できない

などです。

患者を個々に評価するのは大変です。

栄養スクリーニングツールにより、単一の方法で、行えれば、効率がよくなります。

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アルブミンの半減期が3週間という根拠

今回は、アルブミンの半減期のお話。

アルブミンの半減期は、2週間から3週間くらいなんて言われています。

なぜ曖昧なのでしょうか。

文献を見てみても、15日とか、17日とか、19日とか、バラバラです。

気になってちょっと調べてみました。

アルブミンの半減期を調べた論文

英語の論文を調べてみると、こんなタイトルの文献がヒットしました。

STUDIES OF I131-ALBUMIN CATABOLISM AND DISTRIBUTION IN NORMAL YOUNG MALE ADULTS

これは、放射性ヨウ化血清アルブミンを注射して、アルブミンの挙動を調べた論文のようです。

被験者の血漿放射能消失曲線から決定された見かけの生物学的半減期の範囲は、12.7〜18.2日で、平均14.8日だったようです。

※間違っていたらすみません。

この論文を参照している論文もあります。

Human serum albumin homeostasis: a new look at the roles of synthesis, catabolism, renal and gastrointestinal excretion, and the clinical value of serum albumin measurements

ここでは、アルブミンの半減期は、17日とされています。

 

なお、こんな文献もありますね。

Albumin synthesis rates in post-surgical infants and septic adolescents; influence of amino acids, energy, and insulin

 

海外では、肝臓でのアルブミン合成速度に関心がもたれ、実験が行われているようです。

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栄養指標アルブミンを脂質(総コレステロール、中性脂肪)と併せて評価する

栄養アセスメントでは、アルブミンやトランスサイレチン(プレアルブミン)などの蛋白が指標として利用されます。

しかし、アルブミンなどの蛋白は、炎症や、肝細胞障害、アルブミン製剤の投与などで、値が大きく変動し、解釈が困難となる場合があります。

そこで、脂質代謝の指標を活用します。

つまり、総コレステロールや中性脂肪を、栄養状態の評価に役立てます。

総コレステロール

コレステロールは食事から吸収されるものが全体の30%ほどです。

残りは、主に肝細胞で合成されます。

総コレステロールは,すべてのリボ蛋白
〔カイロミクロン(CM),超低比重リボ蛋白 (VLDL),中間比重リボ蛋白(IDL),低比重リボ 蛋白(LDL),高比重リボ蛋白(HDL)〕のコレステロール成分の総和を示します。

コレステロールの含有量は、LDLやHDLで多くなっています。

コレステロールは血中半減期が8日です。

もしも、低アルブミン血症でも、総コレステロールが基準範囲内にあれば,肝臓の合成能は保たれていて、最近まで患者の栄養状態がよく、消化管機能も大きな問題がないと評価できます。

なお、「測定値が低い=低栄養」ではなく、肝機能障害や胆管閉塞などに影響される点に注意です。

中性脂肪(TG)

中性脂肪の血中濃度は空腹時(12時間以上絶食)に測定します。

これは、肝臓で合成されたTGを測定していることになります。

TGが高値なら、脂質異常症の診断ができます。

持続する低栄養では、TGは低い値を示します。

なお,ネフローゼ症候群、糖尿病、肝機能障害などでTGは変動するため、注意です。

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基礎代謝量の推定式(国立健康・栄養研究所の式)

国立健康・栄養研究所の式(Ganpule et al., 2007)

((0.1238+(0.0481×体重kg)+(0.0234×身長cm)-(0.0138×年齢)-性別*1))×1000/4.186
注)
*1;男性=0.5473×1、女性=0.5473×2

この推定式は、20〜70歳代の日本人男女(男性71名、女性66名)を対象に、国立健康・栄養研究所で測定した基礎代謝量のデータから得られたものだそうです。

得られた値はあくまで推定値で、真の値は、この推定値を中心に分布し、100kcal/日以上異なることもありえるそうです。

その推定式は 20〜74歳の集団で作成され、18〜79歳の集団で妥当性が確認されているそうです。

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網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)と鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血(IDA)の鉄欠乏診断には、血清鉄(Fe)や血清フェリチン濃度(FER)が用いられていますが、近年、短期間の鉄動態のマーカ ーとして網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)が注目されています。

実は、この網赤血球ヘモグロビン等量が登場する前、網赤血球ヘモグロビン含量(meanreticulocyte cell hemogiobin : CHr)というものがありました。

CHrは、1990年代に自動血球分析装置の網赤血球解析情報として、Bayer社から、最初に提供されました。

CHrは、トランスフェリン飽和度(TSAT)や血清フェリチン濃度と比較して感度や特異度に優れていたそうです。

つまり、CHrが低値の場合には約1週前に鉄欠乏があったこと を意味し、鉄欠乏検出パラメーターとして非常に感度が 高いとのことです。

2004年には、Sysmex社から、CHrと同等な測定項目として網赤血球ヘモグロピン等量(reticulocyte hemoglobin equivalent : RET-He)が提供されるようになりました。

今では、多くの施設で、RET-Heは測定可能となっています。

なお、鉄欠乏性貧血(IDA)について紹介しておきます。

病態

鉄の供給が需要に追いつかないときに生ずる小球性低色素性貧血です。

検査データ

末梢血小球性低色素性貧血(MCV80以下,MCHC30以下)を示すことが多いです。

また、貧血に加え、血小板数が増加することが多いです。

赤血球像

大小不同、薄赤血球、楕円赤血球がみられます。

骨髄像

赤芽球過形成を示すことが多いです。

生化学検査

血清鉄60μg/dl以下、TIBC、UIBCの増加、血清フェリチンの低値を示します。

診断・経過観察上のポイント

出血部位の同定など,鉄欠乏の原因の究明が重要です。

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eGFRcreatとeGFRcys(血清クレアチニン、血清シスタチンC)

eGFRには、血清クレアチニンによるeGFRcreatと、血清シスタチンCによるeGFRcysとがあります。

※ちなみに腎機能の指標は、クレアチニンクリアランスCCrもありますが、CCrを測定するには 24 時間蓄尿が必要であり、日常診療での測定は難しいです。Cockcroft-Gault の 式 􏰂􏰃で 推 定 Ccr を計算することもできますが。

 

血清クレアチニンによるeGFRcreatは、筋肉量の減少している症例では 高めに推算されます。

たとえば、四肢欠損や筋肉疾患により、あいは長期臥床により、筋肉量が減少している場合です。

 

これに対して、eGFRcysは筋肉量の影響が少ないです。

このため、筋肉量の多い症例(アスリート、運動習慣のある高齢者など)や、筋肉量の少ない症例(四肢切断、長期臥床例、るいそうなど)では、eGFRcysの有用性が高いです。

注意点としては、血清シスタチン C 値は、甲状腺機能亢進症では上昇したり、ステロイド使用で上昇したりする場合があるので、注意が必要です。

eGFRcreatと eGFRcysが同時に得られる場合は、一般的には両者の平均をeGFR とすると推算の正確度は向上するそうです。

eGFRcreat と eGFRcys の解離が大きい場合は、基礎疾患、薬剤、筋肉量の問題など原因を考慮すべきと言われています。

 

なお、eGFRは、標準的な体型(身長170 cm,体重63 kg)の体表面積(body surface area:BSA)1.73 m2に補正したGFR(mL/ 分/1.73 m2)です。

よって、eGFRは、個人の BSA で 補正して評価することが望ましいです。

eGFRのBSA(体表面積)による補正式
eGFRのBSA(体表面積)による補正式

 

補足ですが、血清クレアチニン値は、GFR が 40 mL/min を下回った際に上昇するといわれています。

軽度の腎血流障害を反映しないことがあり、注意が必要です。

たとえば、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)時のGFR 評価は難しいことで知られ、これは、GFRの急激な変化に血清クレアチニン値の変化が追いつかず、クレアチ ニンではその時点の GFR を評価できないためだそうです。

GFR が急激に低下しても、血清クレアチニンはゆっくりと上昇するということです。

また GFR が改善に転じても、血清クレアチニンは上昇し続け、しばらくしてから低下傾向に転じる傾向があります。

 

それから、透析でクレアチニンは除去されるので、透析後のデータ変化には注意すべきでしょう。

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血清クレアチニン値とAKI(急性腎障害)

血清クレアチニン値「sCr」と、急性腎障害(AKI)の関係についてです。

急性の腎障害においては、48 時間以内に、sCr の 0.3 mg/dL 以上増加、または、 7 日以内に sCr の基礎値から 1.5 倍以上の上昇(または尿量が 0.5 mL/kg/時 以下が 6 時間以上持続)により、AKI と判断されます。

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ST 合剤で血清クレアチ ニン値が上昇

バクタなどの ST 合剤は、尿細管でのクレアチ ニン分泌を阻害する。

そのため、血清クレアチニン値を上昇させる。

したがって、ST合剤を投与中の血清クレアチニン値の判断には注意が必要となります。

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クラップ・フォー・ケアラーズは不要だった

先日まで、病院は新型コロナウイルス対応で忙しかったですが、最近は落ち着いてきましたね。

ということで、新型コロナに関するアレコレを振り返ることが増えてきたわけですが、

微妙だったなぁ、という思い出す案件が多々あります。

 

今日はその中の一つ。

 

 

一時期、テレビで映されるなどしていましたが、

医療従事者・関係者へ向けて、感謝と敬意を込めて拍手を送るという、

クラップ・フォー・ケアラーズ。

 

医療従事者に感謝すること自体は個々人の自由ですから、それは別に良いとして、、、

 

どうなのこれ…と思ったきっかけは、

そのときにテレビに映されていた人たちが、偶然、そうだったのかも分かりませんが、

表情に、活気がなく、無表情の人も多かったんですね

 

 

 

…うる覚えですが、たぶん、どこかの県の市役所の人が、拍手してた映像だったと思います。

 

 

これについての、わたし個人の感想は、

「形だけの拍手だよなぁ…何の意味があるんだろうなぁ…これ…」

というものでした。

どうしても、冷めた感じでしか見れなかったんですよねぇ。。。

 

というのも、当時は何かと大変でしたし、

特に、防護服の不足とか深刻だったので、

(病院は、拍手より物資が欲しいんだけどなあ…)

という心境になっていたわけです。

 

とはいえ、その(うる覚えの)市役所の人たちも、自発的にではなく、上司の指示のもとにやらされていることは予想がつくわけで、

したがって、

どうせ拍手するんなら、心を込めて拍手すべきだ

などと、とても心の中ですら要求できるわけもなく。

 

 

 

そもそも論をいうと、医療従事者でなくても、当時、コロナに関連して頑張っていた人は沢山いたわけで、、、なんて思ったりもしたわけで。

 

医療従事者だけを特別扱いしていた風潮にも疑問がわいたりしたわけで。

 

まぁ、とにかく、ここで言えることは、

形だけの拍手に見えてしまうものであれば、放映する意義はなく、不要だったんじゃないかなぁということです。

 

以上、駄文でした。

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子宮頸がんワクチンの副反応問題-これまでの経過と感想

子宮頸がんワクチンについて、調べてみました.

子宮頸がんワクチンは,HPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮頸がんを引き起こすという,2008 年にノーベル医学・生理学賞を受賞した画期的発見をもとにした,人類史上初のがん予防ワクチンです.

子宮頸がんワクチンが,HPVの感染を予防する仕組みは,ワクチン接種により誘導されたHPV抗体が,子宮頸部の粘膜に滲出することで,HPVと結合し,HPV 感染を阻害すると考えられています.

この子宮頸がんワクチンは,WHOも接種を強く推奨し,世界約140か国で使用され,約80か国で定期接種となっています.

日本でも2013年4月に定期接種となりました.

しかし,日本では,子宮頸がんワクチン接種の開始後,副反応と思われる多様な症状がみられました.

そして,メディアには,「歩けない,痙攣する,生理不順,体が痛い,まぶしい,勉 強ができなくなった」といった症状が,子宮頸がんワクチンのせいであると訴える人たちが現れ,テレビで繰り返し放送されました.

激しくけいれんする女の子の映像は衝撃的で,日本社会は,あっという問に,「子宮頸がんワクチンは危険」という認識が広がりました.

これを受けてか,わずか開始から2カ月後の6月には,厚労省は,積極的な接種の呼びかけを中止しました.

それから何年も経過していますが,積極的な接種の呼びかけは再開されていません.

なお,対象となる女子(中学1年から高校1年,自治体により異なる可能性がある)は,現在も,公費助成を受けて,ワクチンの接種は可能です.

※現状のざっくり把握はこちらをどうぞ.

NHK:子宮頸がんワクチンのいま

ちなみに,集団訴訟にも発展しています.

こんな子宮頸がんワクチンですが,気になったので,安全性に関することを調べてみました.

子宮頸がんワクチンの安全性

まず,「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究(祖父江友孝班)」によると,子宮頸がんワクチンを接種していない場合でも,子宮頸がんワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈するものが一定数存在するとの結果が報告されていました.

さらに,世界保健機関(WHO)のワクチン安全性諮問委員会は,「日本の若い女性は,本来予防が可能であるHPV関連がんの危険にさらされたままになっている.レベルの低い科学的根拠に基づく政策決定は,安全でかつ有効なワクチンを接種する機会を奪い,若い女性に真の被害をもたらし得る.」との声明を発表しています(平成27年12月).

また,日本産科婦人科学会は,科学的見地に立って,子宮頸がんの予防戦略において HPV ワクチンと検診の両者は共に必須であるという考えのもと,これまでに,HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を繰り返し発表しています.

▶日本産科婦人科学会

HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明

これまでの経過は,こちらの図がわかりやすいでしょう.

子宮頸がんワクチンの副反応問題-これまでの経過と感想
東京新聞より引用

感想

以前は過熱していたマスコミの報道も,落ち着きましたし,以前は,「子宮頸がんワクチン=悪者」という感じに偏っていた報道のスタンスも,以前とは少しずつ変わってきているように思います.

積極的な接種の呼びかけを再開すべきかどうかは,難しい問題だなぁと感じますが,子宮頸がんワクチンの副反応の病態解明についての研究も進んでいるようです(ワクチン接種による続発性の自己免疫性脳症という説があるようです).

副反応に苦しむ人達が少数いることは事実ですから,そういった人たちへの有効な治療法の開発が望まれます.