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低栄養-カロリー不足時のアミノ酸の投与とBUN、UUN

絶食時に、ブドウ糖を含む点滴をすることがありますね。

しかし、ブドウ糖などの熱量が相対的に不十分な状態では、大量のアミノ酸を投与したとしても,そのアミノ酸は蛋白質としては合成されません。

アミノ酸は、アミノ基をはずした炭素鎖骨格となってエネルギー源として利用されてしまいます。

いわゆる糖新生です。

糖新生の際にはずれたアミノ基は、肝臓にて尿素に合成されます。

血液検査所見としては、血中尿素窒素(BUN)の上昇を認めます。

また、尿中への尿素の排泄(尿中尿素窒素:UUN)の増加を認めます。

腎機能障害時のBUN上昇と違うのはUUNの上昇を伴うことです。

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黄色ブドウ球菌の菌血症と心内膜炎の合併率

2009年から2011年の間にフランスの8つの大学病院において、黄色ブドウ球菌の菌血症(SAB)が発生した成人患者(n = 2008)が、前向き研究の対象となりました。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0127385

https://journals.plos.org/plosone/article/file?id=10.1371/journal.pone.0127385&type=printable

感染性心内膜炎(IE)の合併率は11%と、最も頻度が高かったことが説明されています。

 

 

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抗MRSA薬の副作用

バンコマイシンの使用時の代表的な副作用に、レッドマン症候群がある。

レッドマン症候群のた予防のためには、通常、1gにつき1時間以上かけて点滴を行うのが推奨される。

そのほか、腎障害を避けるために、血中濃度測定(therapeutic drug monitoring, TDM)を行うことが推奨される。

目標とする最低血中濃度(トラフ値)は10~20μg/mLである。

ただし、採血のタイミングによって、血中濃度は変化するので、適切な判定ができるよう、採血のタイミングを計画することが重要である。

リネゾリド(ザイボックス)の場合は、副作用に、赤血球、白血球、血小板の低下が報告されている。特に血小板が減少しやすいと言われる。

投与期間が2週間を過ぎた症例に発生すると報告されているので、定期的な測定が必要であると言われる。

さらにダプトマイシン(キュビシン)の場合は、副作用の一つに、横紋筋融解症がある。

このため、ダプトマイシン(キュビシン)の投与時は、定期的なCK測定が必要である。

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抗菌薬のバイオフィルムへの透過性

vancomycin や linezolid は、バイオフィルムへの透過性が悪い一方,daptomycin や minocycline,trimethoprim は良好な透過性がある。

「カテーテル関連血流感染症」内科 Vol. 122 No. 1(2018)p75-80より

元データは、Raad I et al:Comparative activities of daptomycin, linezolid, and tigecycline against catheter‒related methicillin‒resistant Staphylococcus bacteremic isolates embedded in biofilm. Antimicrob Agents Chemother 51:1656‒1660, 2007

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日本初のCDIに関する多施設共同前向き疫学研究(2019年公開)

2019年、国立感染症研究所の加藤はる先生と多摩総合医療センターの本田仁先生らを中心に、東京医療センターを含めた全12施設(20病棟)が参加して行われた研究がpublishされました。

UMIN試験IDは、UMIN000015336です。

目的は、つぎのようになっています。

1. 日本の医療機関におけるCDIの発生率を明らかにする
2. CDIの臨床背景、治療および経過を解析する
3. 糞便中毒素遺伝子検出検査 (NAAT)による結果、C. difficile分離培養結果および分離菌株の毒素産生性の検討、および日本の医療機関の臨床検査室における標準的な細菌学的検査法による結果を比較する
4. 日本におけるC. difficile感染症の分子疫学およびC. difficile分離株の薬剤耐性について解析する

参照先:UMIN https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows&recptno=R000017822&type=summary&language=J

参加施設は、八戸市立市民病院、亀田総合病院、東京ベイ浦安市川医療センター、東京医療センター、豊川市民病院、東海中央病院、奈良県立医科大学附属病院、刀根山病院、呉医療センター・中国がんセンター、下関市立大学市民病院、産業医科大学病院、沖縄県立南部医療センターとのことです。
責任研究者は、国立感染症研究所(細菌第二部)です。
発表によると、ブリストルスケール6から7の便を、24時間で3回以上認めた患者さんの便を検査したそうです。
つまり、C.difficileのトキシン、培養検査、遺伝子検査が施行されました。
その結果として分かったことは、つぎのように紹介されています。
  • 全体のCDI発生率は、10,000のべ入院日数あたり7.4と高く、検査頻度とCDI発生率に明らかな相関が認められた(R2=0.91)。
  • 日本で、適切に検査が行われないために多くのCDI患者が見過ごされていると推定された。
  • CDI発症のリスク因子は欧米で指摘されてきた因子と同様であったが、CDIは下痢患者における死亡率とは関係なかった。
  • 毒素産生性C. difficile培養検査と比較すると、遺伝子検査およびGDHアルゴリズムの感度が、今までの多くの報告と比較して低く、酵素抗体法による毒素検出の陽性的中率が低いことも明らかとなった。
これまで、日本におけるCDI発症率は過小評価されていた可能性があるとのことです。
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ウレアーゼを産生する腸内細菌による尿路感染症による高アンモニア血症

高アンモニア血症になる要因は色々とありますが、高アンモニア血症に遭遇したときに想起すべきことが、ウレアーゼ産生腸内細菌による感染症です。

たとえば、肝疾患がないのに、発熱と意識障害の患者が高アンモニア血症であるとき、Proteus mirabilis による尿路感染症であった事例が報告されています。

高アンモニア血症を呈する患者が敗血症になっているときは、より、ウレアーゼを産生する腸内細菌による尿路感染症を疑う必要があります。

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経腸栄養剤がClostridioides(Clostridium)difficileの増殖を促す

クロストリジウム・デフィフィシル(現在はクロストリディオイデス・ディフィシル)による感染症は、CDIと呼ばれ、抗菌薬投与後に発症することで知られています。

ここで、このClostridioides(Clostridium)difficile(以下、C.difficile)について、興味深い話があります。

それは、経腸栄養剤が、C.difficileの増殖を促すという話です。

まずは、こんな文献があります。

タイトル等は、「Elemental diet modulates the growth of Clostridium difficile in the gut flora」M Iizuka 1, H Itou, S Konno, J Chihara, M Tobita, H Oyamada, I Toyoshima, K Sasaki, A Sato, Y Horie, S Watanabe(PMID: 15298621)。

成分栄養剤(elemental diet)が腸内細菌叢におけるC.difficile増殖に関連していたと報告しています。

同じグループと思われる論文に、こんなものも。

タイトルなどは、「Clostridium difficile,disinfectant, and elementaldiet」Hiroaki Itou Masahiro Iizuka Junichi Chihara Masako Tobita Sumio Watanabe

成分栄養療法を受けている患者(抗生物質を服用していない)の糞便に、CD毒素は41・2%(17例中7例)で検出されたと述べられています。

そして、CD毒素は、成分栄養療法を中止した直後に消失したとも述べられています。

 

さらに、こちらの文献です。

「Tube feeding, the microbiota, and Clostridium difficile infection」
World J Gastroenterol. Jan 14, 2010; 16(2): 139-142 Published online Jan 14, 2010
Stephen JD O’Keefe

成分栄養剤は、小腸内で完全に吸収され、また、大腸の細菌に、食物繊維やフラクトオリゴ糖、レジスタントスターチ難消化性デンプン)などの栄養源が届かない結果、酪酸産生菌やビフィズス菌などの「善玉菌」が抑制され、クロストリジウム・デフィフィシル(現在はクロストリディオイデス・ディフィシル)が大腸で増殖しやすくなることを指摘してます。

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BMIパラドックスとは?

BMIと死亡リスクとの関係を調べた研究の結果としては、「BMIは高すぎても、低すぎても、死亡率が上がる」というのが知られています。

しかし、年代ごとに見てみると、違ったように見えることも知られています。

それは、BMIの低い高齢者(やせ型)は、死亡率が高いのに対して、BMIの高い高齢者(肥満型)は、死亡率が低くなるということです。

これは、BMIパラドックスと呼ばれています。

これは、日本人を対象にした観察研究で示されています。

Trajectories of Body Mass Index and Their Associations With Mortality Among Older Japanese: Do They Differ From Those of Western Populations?

Hiroshi Murayama, Jersey Liang, Joan M Bennett, Benjamin A Shaw, Anda Botoseneanu, Erika Kobayashi, Taro Fukaya, Shoji Shinkai

なお、この文献で触れられていることですが、過体重の人の方が死亡率が低いという知見は、アメリカの研究と共通していたそうです(Zajacovaet al., 2014;Zheng et al., 2013).

英文ですが、興味がある人はのぞいてみてください。

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網赤血球数と貧血の評価

網赤血球数は骨髄における赤芽球造血を反映します。

貧血のときに網赤血球数が増加してい るときは、骨髄の赤芽球造血は保たれていて、出血や溶血などの代償性造血亢進が疑わ れます。

他方、貧血があるにもかかわらず網赤血球の増加がないときは、骨髄での産生低下が考えられます。

出血を疑う場合は、便潜血検査など出血源の精査します。

溶血を疑う場合は、LDH や間接ビリルビン、ハプトグロビン測定、クームス検査などを行います。

産生低下が疑われるときは、腎性貧 血を除き、多くの症例で骨髄検査が必要です。

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電子カルテの共有は可能か

医療現場同士で、カルテを共有しようという試みがあります。

しかし、課題もありそうです。

それは、ネットワーク上に記録された情報を、どこまで信じられるか? という話があるからです。

病院のレベルは本当に様々です。

緊急時にその情報を使うには、他の病院での受診時に記録された情報が、『漏れなく記録されてて、すべて完全に正しい』という前提に立たねばなりません。

しかし、そんな理想通りにはいきません。

もし、その情報を信じて医療行為をして医療事故(患者への不利益)が発生した場合、どうするのか

その責任が問われないというようにならないと難しいのでは。

なんて思ってしまいました。

ハードルはかなり高そうな気がします。

何かうまい方法がどこかにありそうな気はしますが。