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尿比重と尿浸透圧との違いとは?

意義

尿比重および尿浸透圧はともに尿濃縮能力を数値化することにより、腎機能を評価できます。

尿比重および尿浸透圧については、両方とも尿中に排泄されている溶質の量を反映しています。

ただし、尿浸透圧のほうが、より適切に腎機能を反映すると言われます。

その理由は、尿浸透圧は、主に、溶質の分子数に左右されるのに対し、尿比重は溶質の分子数や、溶質の性状によって影響されるためです。

たとえば、蛋白や造影剤のような高分子物質は、尿比重に著しい影響を及ぼしますが、尿浸透圧にはあまり影響しません。

測定法

尿比重は、尿比重計(浮秤計)または尿屈折計により測定します。

尿浸透圧は、浸透圧計により測定します。

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腎機能検査の基礎知識

腎機能検査の基礎知識を解説します。

概要

腎臓は、腎臓は排泄臓器として働き、身体の恒常性(ホメオスタシス)を保つ機能を有する臓器です。

具体的な腎臓の機能は、①不要な最終代謝産物、老廃物、薬物などの排泄、②電解質バランス、浸透圧、酸塩基平衡の調節、③エリスロポエチン、ビタミンDなどの物質の産生、④レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系の活性化と制御、⑤糖や薬物の代謝などです。

これらの機能が適切に発揮されているかどうかを判断するために、複数の検査を実施します。

代表的な検査項目に、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(Cre)、糸球体濾過量(GFR)があります。

血中尿素窒素

尿素窒素とは

尿素窒素は、尿素中の窒素量です。

BUNとSUN

血中の尿素窒素は、BUN(Blood Urea Nitrogen)と呼ばれます。

BUNを測定するとき、実際は血清中の尿素窒素を測定していることから、SUN(Serum Urea Nitrogen)とも呼ばれます。

尿素は、経口摂取した蛋白や組織蛋白の最終代謝産物であり、肝細胞におけるオルニチン-アルギニン-尿素サイクルの経路で、アンモニアから生成されます。

尿素とGFR

尿素は分子量が小さいため、糸球体から自由に濾過されます。

そのため、後述する糸球体濾過量(GFR)の指標となります。

ただし、尿素の産生量は、蛋白異化率や、利尿状態(尿細管再吸収)に影響されます。

したがって、異化亢進があったり、利尿状態/抗利尿状態があったりするときは、BUNは、GFRの良い指標にはなりません。

基準範囲と解釈

基準範囲は、8~20mg/dL です。

BUNは、GFRが約50%に低下するまでは、わずかに上昇します。

その後は、腎機能の悪化とともに徐々に上昇し、GFRが25~30%以下になると急速に上昇します。

20~60mg/dL程度までの上昇では、つぎのような原因が考えられます。

SUN の過剰産生

原因の例として、高蛋白食,アミノ酸輸液,消化管出血,体組織の崩壊(絶食・外科的侵襲・火傷・高熱),悪性腫瘍,重症感染症

SUN の排泄障害

原因の例として、尿路閉塞,腎機能障害,循環血液量の減少(脱水・出血など)

さらに、60mg/dL を超えると腎不全、100mg/dL を超えると尿毒症などが考えられます。

他方、0~8mg/dLと低値のときは、妊娠,低蛋白食,劇症肝炎,肝硬変末期,低窒素血症,強制利尿(マンニトール利尿・尿崩症など),先端肥大症,成長ホルモンや蛋白同化ホルモンの影響,などが考えられます。

なお、BUN は食事、蛋白異化、脱水による影響を大きく受けるため、血清Cr が同時に測定できる場合には、血清Cr が腎機能の指標として用いられます。

血清クレアチニン

クレアチニンとは

クレアチニンは、筋肉運動のエネルギー源となるクレアチンの最終代謝産物です。

クレアチニンとGFR

クレアチニンは腎臓の糸球体で濾過されて排出されます。

GFRが低下すると、クレアチニン排泄量が低下し、血清クレアチニン値が上昇します。

また、尿素窒素とは異なり、外的因子(食餌蛋白摂取など)の影響をほとんど受けません。

さらに、尿細管ではほとんど再吸収されずに尿中に排泄されるため、利尿状態に影響されにくいです。

したがって、クレアチニンは、個人のGFRの変動をみるときの有用な指標となります。

基準範囲と解釈

クレアチニンは筋肉運動の代謝産物であるため、血清クレアチニン値は、筋肉量に比例した量となります。

筋肉量に性差があるため、基準範囲は、男性で「0.6 ~ 1.0 mg/dL」,女性で「0.4 ~ 0.8 mg/dL」です。

筋肉の少ない小児や肥満者では、体重に比べて低値をとる傾向があります。

筋肉量の多い人や脱水では、高値となる場合があります。

血清クレアチニンは、GFRが約50%以下になると上昇しはじめます。

測定法の影響

クレアチニンは現在、国内では酵素法による測定が一般的です。

しかし、従来のJaffe法では腎機能正常域の血清クレアチニンが、酵素法に比べて 0.2 mg/dL 程度高く測定されることが知られています。

尿クレアチニン測定では、Jaffe法と酵素法の違いは影響しないので、血清濃度が約30%高く測定されるとCcr は約30%低く測定され、GFR値に近似する結果となります。

検査値の比較では測定法に注意する必要があります。

年齢の影響

高齢者では、加齢による影響はほとんどありません。加齢とともにGFRと筋肉量の双方が低下するため、血清クレアチニン値は、ほぼ一定となるからです。

筋肉量の減少

年齢に関係なく、低栄養や神経・筋疾患、身体活動度の低下などにより筋肉量が病的に減少しているときは、クレアチニン産生量が低下しているため、腎機能障害が顕著なときにのみ、血清クレアチニン値が高値となります。

薬剤の影響

通常、少量のクレアチニンが尿細管から分泌されています。

しかし、尿細管からのクレアチニン分泌を抑制する薬剤の影響があると、腎機能障害の有無にかかわらず、血清クレアチニン値は上昇します。

たとえば、ST合剤,シメチジン,シスプラチン,フルシトシン,セフェム系抗菌薬,アミノグリコシド系抗菌薬などです。

糸球体濾過量(GFR)

糸球体濾過量とは

1分間あたりにどれだけの血液(血漿)が濾過されているかを示したものが糸球体濾過量(glomerular fi ltration rate: GFR)です。

GFRの評価に用いる物質は、糸球体のみから濾過され、尿細管で再吸収や分泌されない物質です。

国際的には、イヌリンを用いるイヌリンクリアランス(Cin)がGFR測定のゴールデンスタンダードとされています。

イヌリンクリアランス(Cin)

生体内に投与されたイヌリンは、血液と細胞間に分布し、糸球体で濾過され、尿細管では分泌・再吸収を受けずに尿中に排泄されます。

したがって、イヌリンはGFR を測定する上で理想的な薬物動態を有しています。

ただし、イヌリンクリアランス(Cin)の測定は、手技が煩雑であることなどから日常検査としては普及していません。

GFRの推測

クレアチニンクリアランス(Ccr)

血液中のクレアチニンは、筋肉中のクレアチンの脱水により生成されて、血中に放出されたのち、糸球体でほぼすべてが濾過され、尿細管では再吸収されません。

したがって、現在の日常診療では、上記のイヌリンクリアランスの代用として、生体内の内因性物質であるクレアチニンを用いた内因性クレアチニンクリアランス(Ccr) が最も用いられています。

計算式は、つぎの通りです。

Ccr=(Ucr ✕ V/Pcr) ✕ (1.73/A)

Ccr:クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2)

Ucr:尿中Cr 濃度(mg/dL)

Pcr:血清Cr 濃度(mg/dL)

V:単位時間(1 分間)あたりの尿量(mL/min)

A:身長・体重から求めた体表面積(m2)

なお、方法としては、短時間法と、24時間法とがあります。

注意点

クレアチニンは、尿細管でわずかに(10 ~ 40%)分泌されています。

よって、クレアチニンクリアランス(Ccr)は、実際のGFRよりも高めに計算される点に注意が必要です(1.3 倍程度)。

クレアチニンクリアランスCcrからGFRへの変換式

Ccr は GFR より高値となり、GFR への変換に は×0.715 を用いる方法が提唱されています。

GFR(mL/分)=Cc(rmL/分)×0.715

血清クレアチニン値のみから算出するクレアチニンクリアランス

以前から、血清 Cr 値をもとに、年齢や性別などの因子を含めて腎機能を推測する試みがありました。

古典的なものに、Ccr を推算する CG式(Cockcroft-Gault式)があります。

ただ、このCG式には正確性に問題があったり、開発されたときの測定法がヤッフェ法によるものであるため、上述したように酵素法とでは、CG式にあてはめたときに算出されるCcrが、酵素法の測定値を用いたときよりも高めの値になります。

推算糸球体濾過量(eGFR)

そのほかに、GFRを推測する指標として、推算糸球体濾過量(estimated GFR:eGFR)があります。

eGFRを求めるには種々の計算式がありますが、その中のひとつに、日本人のための計算式があります。

血清クレアチニン値(Cr)と年齢・性別から求めるもので、eGFRcreatと呼ばれます。

eGFRcreatは、つぎの計算式で求めます。

男性の計算式

eGFRcreat( mL/min/1.73m2)= 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287

女性の計算式

eGFRcreat( mL/min/1.73m2)= 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287 × 0.739

ただし、小児の場合は、これと異なる計算式で求めるのが適切とされています(日本小児腎臓病学会)。

注意点

上述のように血清Cr は腎機能が50%を下回らないと上昇しないため、eGFRで初期の腎機能障害を発見することはできません。

また、eGFRは、同じ年齢・性別のなかでの平均的な体格を前提にして計算されています。よって、筋肉の減少した高齢者や女性では、血清Cr値は低値を示すことから、実際のGFRよりも、eGFRは高めに算出されます。

推算値の解釈

eGFR値を解釈するとき、参考となる基準として、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の重症度分類(ステージ分類)があります。

そこでは、eGFR値が、「90以上」では正常または高値、「60 ~ 89」では正または軽度低下、「45 ~ 59」では軽度~ 中等度低下、「30 ~ 44」では中等度~ 高度低下、「15 ~ 29」では高度低下、「15未満」では末期腎不全 (ESKD)とされています。

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急性腎障害AKIと慢性腎臓病CKD

急性腎障害AKI

急激に腎機能が低下します(48時間以内)。

血清クレアチニン値が、0.3mg/dl以上上昇したり、1.5倍以上に上昇したりします。

または、尿量が0.5ml/kg/時 以下が6時間以上続きます。

慢性腎臓病CKD

各種検査で腎障害が明らかであること、特に、0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在と、GFRが60ml/min/1.73m2未満であることが重要です。

AKIとCKDの違い

進行速度

急性腎障害AKIは、時間・日単位で早く悪化します。

慢性腎臓病CKDは、年単位でゆっくり悪化します。

原因

急性腎障害AKIは、脱水、ショック、薬物、手術、急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎などが原因です。

一番多い原因は、敗血症といわれます。

慢性腎臓病CKDは、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などが原因です。

治療方針

急性腎障害AKIは、腎機能の回復を目的に治療します。

慢性腎臓病CKDは、腎機能の悪化を防ぐ目的で治療します。

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重炭酸イオン・炭酸ガス分圧について

代謝について

二酸化炭素(CO2)は、水と反応後、電離して重炭酸イオン(炭酸水素イオン)になります。

重炭酸イオン+クロールイオンは、体液中の総陰イオンの約85%を占めます。

重炭酸イオンの大部分は、塩基と結合して「重炭酸塩」として存在します。

重炭酸塩は、炭酸・重炭酸緩衝系を形成し、血液のPHの維持に重要な役割を担っています。

血中のHCO3イオン濃度は、肺や腎臓で調節されています。

検体について

重炭酸イオンと炭酸ガス分圧は、血液ガスの項目として、一般に、動脈血で測定されます。

動脈血は、採血後に、直ちに空気と遮断しながら測定します。

基準範囲

重炭酸イオン(HCO3)の基準範囲は、23~28mEq/L(23~28 mmol/L)です。

血液炭酸ガス分圧の基準範囲は、35~45mmHgです。

なお、血液酸素分圧の基準範囲は、75~115mmHg、血液水素イオン濃度の基準範囲は、pH7.35~7.45です。

臨床的意義

血液中の重炭酸イオン濃度は、腎臓からの水素イオンの排出、肺からの二酸化炭素の放出、および、尿細管からの重炭酸イオンの再吸収によって調節されています。

重炭酸イオン(HCO3-)が高値を示す場合には、嘔吐(H+の喪失)、低K血症、呼吸性アシドーシスなどがあり、低値を示す場合には、糖尿病ケトアシドーシスや、腎不全などの排泄障害などがあります。

また、動脈血酸素分圧(pO2)と、動脈血炭酸ガス分圧(pCO2)は心肺機能と腎機能、さらには、全身的機能の診断に用いる指標となります。

炭酸ガス分圧が上昇する場合には、呼吸性アシドーシスによる場合、原発性アルドステロン症、嘔吐、低K血症などがあり、低値を示す場合には、過換気症候群、肺炎、肺線維症の呼吸性アルカローシス、腎不全、糖尿病などがあります。

測定法

pO2とpCO2は、電極法による血液ガス分析装置により測定されることが多いようです。

重炭酸イオンは、pO2、pCO2、PH、および、ヘモグロビン濃度から算出されます。

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クレアチン、クレアチニンについて

クレアチン、クレアチニンについて解説します。

クレアチン

クレアチンは、アルギニン、グリシンおよびメチオニンの三つのアミノ酸から合成され、肝臓で合成されます。

クレアチンは、血中から筋肉に取り込まれ、筋細胞内に取り込まれたクレアチンは、クレアチンキナーゼ(CKまたはCPK)により触媒され、クレアチンリン酸と平衡を保っています。

つまり、クレアチンは、ATPの供給に関係しています。

クレアチンの98%は筋肉に存在しています。

血中のクレアチンは、腎糸球体基底膜を通過し、尿細管に再吸収されます。その場合の腎閾値は0.6mg/dl程度です。

基準値は、男性で0.2~0.6mg/dl (15~46μmol/l)、女性で0.4~0.9mg/dl (31~69μmol/l)です。

クレアチンの異常

筋肉疾患、甲状腺機能亢進症などで増加し、肝障害などで減少します。

なお、クレアチン尿を呈する疾患として、進行性筋ジストロフィー症、多発性筋炎、皮膚筋炎などがあります。

クレアチニン

クレアチニンは、クレアチンリン酸またはクレアチンが非酵素的に脱水閉環されたものです。

腎糸球体で濾過されたあと、クレアチンとは異なり、尿細管では全く再吸収されませんので、尿中にそのまま排泄されます。

クレアチニンの異常

溶血、腎障害などで増加し、また、肝障害、筋疾患(筋肉萎縮を伴うもの)、尿崩症などでは減少します。

クレアチニン・クリアランス(creatinine clearance)

クレアチニンは糸球体基底膜を自由に通過し,血清クレアチニンが明らかな高値を示さない限り,尿細管からの再吸収も分泌もないと考えてよいので,糸球体濾過量を知ることができます。

血漿と尿のクレアチニンを定量することによって、内因性のクレアチニン・クリアランスを求めることができます。

正常成人では97~140ml/min(平均125ml/min)です。