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医療

肝芽腫の病態,診断,治療,予後

小児期のすべての悪性腫瘍のうち、肝原発性腫瘍は小児腫瘍の1%前後です。

頻度は高くありませんが、悪性の腫瘍が2~3割程度あり、その代表的な疾患として3歳以下に好発する『肝芽腫』があります。

文献によると、肝芽腫の45%は1歳前に発症するようです。

病態

お腹が張る(腹部膨隆)あるいは腹部のしこり(上腹部腫瘤)を主症状として来院する事例が多いようです。

食思不振、体重減少、発育不良が認められ、まれに発熱や黄疸を伴うことがあります。

血液検査では、80~90%の症例で、AFPの著しい上昇が認められます。

肝芽腫は、通常は、片葉に単発性の腫瘍として認められます。

右葉に存在する例は、左葉に存在する例の二倍と言われています。

特定の疾患をもつ小児では発生リスクが高くなる傾向があります。

たとえば、Beckwith-Wiedemann症候群、片側肥大、家族性大腸ポリポーシス、18トリソミーなどです。

また、低体重児に高率に発生するとの報告もあります(発生リスクが成熟児の約40倍)。

さらに、両親が職業で、金属・石油製品・塗料・色素などに曝露されると、子どもの肝芽腫発生のリスクが高くなるとの疫学データもあります。

組織学的には高分化型(胎児型:fetal type)、低分化型(胎芽型:embryonal type)、未熟型などに分類されます。

なお、転移は肺に多いと言われています。

診断

腫瘍の様子を把握する目的で超音波診断、X線、CT、MRIなどが実施されます。

さらに、肺、腹部リンパ節、骨などへの転移を検査するためのCTや骨シンチが行われます。

治療

治療には化学療法や放射線治療がありますが、これらのみでは、根治は難しいと言われており、多くは外科的切除が用いられます。

つまり、原発巣を一期的または二期的に切除し、同時に全身化学療法を用います。

腫瘍を完全切除することができない肝芽腫や、診断時に遠隔転移している場合には全身化学療法が優先され、腫瘍を縮小させた後に切除を行うのが一般的です。

なお、腫瘍が肝臓のみにある場合は、肝移植による全肝切除で救命することも一般的になってきています。

ただし、全肝切除の場合、腫瘍の占拠部位によっては、肝部下大静脈合併切除再建を余儀なくされることがあります。

このとき、再建にはドナー内頸静脈や人工血管が用いられます。

なお、人工血管と直接の肝静脈吻合は小児では好ましくないとされていますが、やむなく人工血管を用いる場合、自家下大静脈全周性分節の移行による肝静脈吻合部の作成をする方法が存在し、肝摘出時には、遠心ポンプを用いた下大静脈一内頚静脈バイパスが使用されることがあります。

予後

日本小児肝がんスタディグループ(JPLT)の研究によると、一期的切除が可能な症例では95%以上の生存率であり、化学療法が優先された進行例では病期により39%から74%の治療成績と報告されています。

生体肝移植前の遠隔転移や脈管浸潤などのハイリスク症例では、移植後の再発リスクは高く、術後も継続的な治療が必要になるケースが多いようです。

なお、組織型が胎児型の亜型である純高分化型(pure fetal type)の予後は良好であるとされます。

そのほか

・肝移植の適応や時期、移植後の化学療法の必要性や安全性についての明確な基準はありません。

・肝芽腫の症例は日本においては年間登録例が少なく、臨床研究に十分な症例が集まっていないのが現状のようです。

・現在は、国際的な小児肝癌の研究組織である「Children’s Hepatic Tumor International Collaboration(CHIC)」 が組織され、国際的な肝芽腫のデータベースの構築や、そのデータを元にした国際的なリスク分類の作製が行われています。

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医療

ACTHが増加,減少するとき

ACTHについて解説します。

ACTHとは

ACTHとは、副腎皮質刺激ホルモンです。

物質的には、分子量4556のポリペプチドです。

ACTHは、副腎皮質を刺激して、コルチゾールおよびコルチステロンの分泌を増加させます。

フィードバック機構

フィードバック機構は、つぎのようになっています。

視床下部(CRH)⇄下垂体(ACTH)⇄副腎(副腎性アンドロゲン、アルドステロン、コルチゾール)

ACTHの分泌異常

増加する場合

アジソン病

副腎の萎縮や、結核性破壊によりコルチゾール減少が生じ、結果、フィードバック機構によりACTHが増加します。

先天性副腎酵素欠乏症

コルチゾール産生に必要な酵素が欠乏すると、コルチゾールの産生が低下し、結果、フィードバック機構によりACTHが増加します。

クッシング病

ACTHの分泌亢進によって、両側副腎の過形成をきたします。

異所性ACTH症候群

肺がん、胸腺がん、すい臓がん、ランゲルハンス島がんなど、下垂体以外の組織にある癌が、ACTHに似た物質を産生します。

低下する場合

下垂体機能低下症

原因はさまざまですが、下垂体の機能が低下することに伴い、ACTHが低下します。

ACTH単独欠乏症

ACTHが急に欠乏する状態です。

クッシング症候群

副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが産生され、結果、フィードバック機構によりACTHが低下します。

ステロイド投与

ステロイドの長期投与により、ACTHの分泌が抑制されます。

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医療

赤沈が亢進,遅延するとき

赤沈検査について解説します。

赤血球沈降速度とは

血液に抗凝固剤を加えて放置すると、赤血球が試験管の底に沈みます。

そして、血漿の一部が上方に分離されます。

この現象は、「赤血球沈降現象」または「赤沈」(erythrocytesedimentation)と呼ばれます。

そして、一定の条件下で赤沈の様子をみる検査が「赤血球沈降速度」です。

これは「赤沈値」とも呼ばれます。

日本では、Westergren法という方法で行われています。

正常なとき

正常な血液では、赤血球同士が陰イオンを帯びているため、反発しあいます。

よって、赤血球は凝集塊を作りにくいため、沈降速度が遅くなります。

すなわち、赤沈値は小さくなります。

ちなみに成人男性の基準値は一時間で10mm以下、成人女性は一時間で20mm以下です。

赤沈が亢進する場合

赤沈が亢進する場合(沈む速度が速くなるとき)には、たとえば、つぎの場合があります。

赤血球数の減少

・循環血漿通の増加(妊娠など)
・貧血

フィプリノゲンや、α-グロブリンの増加

・妊娠
・炎症性疾患

免疫グロブリンの増加

・多クローン性増加
・単一クローン性増加(BenceJones蛋白を除く)

赤沈が遅延する場合

赤沈が遅延する場合(沈む速度が遅くなるとき)には、たとえば、つぎの場合があります。

多血症

多血症の場合、へマトクリット値が1.5%増加するごとに、1mmずつ赤沈値は減少します

フィブリノゲンの減少

・先天性無フィブリノゲン血症
・線溶冗進
・DIC

免疫グロブリンの欠損

・無γ-グロブリン血症

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医療

ベーチェット病の病態,診断,治療

ベーチェット病(腸管Behcet:Intestinal Behcet Disease)の病態、診断、治療について解説します。

病態

下痢、腹痛、血便、発熱、倦怠感などがあります。

さらに、口腔内アフタ、眼症状、皮膚症状、外陰部潰瘍、回盲部の潰瘍、消化管全体にわたるアフタや潰瘍などを伴います。

腸管Behcetに特異的な組織所見はないと言われており、他疾患との見分けが重要です。

診断

血液検査

腸管Behcetでは,HLA-B51が陽性となる頻度が高いです。

血清IgD、IgAの増加や、好中球機能の亢進なども見られます。

X線・内視鏡検査

回盲部に深い円形潰瘍を認めます。また、消化管全体にアフタや潰瘍が多発することもあります。一般には、萎縮瘢痕帯は認めません。

なお、眼科的検査が診断に有効な場合もあります。

鑑別すべき疾患は、Crohn病、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎などです。

治療

急性期は、腸管安静、高カロリー輸液あるいは経腸栄養を行います。

病状の進行に合わせ、プレドニゾロン、サラゾスルファピリジン、メサラジンなどの投与を適切に行います。

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医療

腸結核の病態,検査,診断,治療

腸結核(Intestinal Tuberculosis)の病態、検査、診断、治療について解説します。

病態

下痢、腹痛、血便、発熱、体重減少、腹部膨満、倦怠感、悪心・嘔吐、食欲不振などの症状を呈します。

肺病変の存在により呼吸器症状をきたすこともあります。

なお、回盲部に潰瘍が多発します。特に、輪状潰瘍が特徴的で、治癒期には、萎縮瘢痕帯と呼ばれる変形をきたします。

診断

腸結核では、生検標本の塗抹、培養、PCR法で結核菌を証明することで診断します。

また、組織学的には、乾酪性肉芽腫を認めることで診断が確定します。

検査

1 X線・内視鏡検査

回盲部に輪状潰瘍、帯状潰瘍、地図状潰瘍などを認めます。治癒期には、偽ポリポーシスや偽憩室を伴った萎縮瘢痕帯を形成し、回盲弁は開大します。

2 塗抹検査

病変部の生検組織を用いて、Ziehl-Neelsen法や蛍光法による抗酸菌塗抹染色をします。

3 培養検査・PCR法

病変部の生検組織を用いて培養します。なお、便からの培養は陽性率が低いので勧められません。判定まで数週間かかります。また、PCR法により結核菌遺伝子を検出します。

4 組織検査

病変部の組織に、乾酪性肉芽腫が証明されれば診断は確定します。

治療

腸結核と診断されれば、結核療養所にて治療します。

抗結核療法である、3剤併用療法(イソニアジド,リファンピシン,ストレプトマイシンあるいはエタンブトール)を行います。

腸結核では1週間で症状が改善し、3~4週間でほぼ消失します。

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医療

フレイル,プレフレイルの違いとは?

フレイルの概念

ヒトは歳をとるにつれて、いろいろな臓器の機能が衰え、ちょっとした感染症や事故、手術などにより介護が必要な状態になりやすくなります。

このような状態は、これまでは「虚弱」と呼ばれていましたが、現在は、それに代えて「フレイル」という言葉が使われています。

「フレイル」はアメリカを中心に老年医学で近年注目されている概念の「frailty」または「frail」を日本に導入するときに生み出された言葉です。

フレイルは、高齢期で介護が必要となる前の段階(健常と要介護の中間の状態)を表します。

要介護状態と違うのは、フレイルは、栄養や運動などによって、再び健常な状態に戻れることが特徴です。

日本においては、「加齢とともに心身の活力(筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態」などと定義されつつあります。

フレイルの指標

フレイルの指標については、世界的に統一されておらず、さまざまな評価方法が提唱されています。

たとえば、最もよく使われているFriedらによる指標では、⑴体重減少、⑵疲労感、⑶歩行速度低下、⑷筋力低下、⑸活動性低下で定義され、3項目以上に当てはまる場合を「フレイル」、2項目当てはまる場合は「プレフレイル」と呼びます。

このフレイル指標はCHS指標(Cardiovas- cular Health Study)と呼ばれます。

ほかに、CHSの指標よりも簡便な指標として、3項目のSOF指標(Study of Osteoporotic Fractures)や、5項目の質問のみからなるFRAIL scale(fatigue,resistance,ambulation,illnesses, and loss of weight)という指標も提唱されています。

広義のフレイルと指標

広義のフレイルは、上記の⑴から⑸の身体的な5つの特徴だけではなく、認知機能低下などの精神的フレイルや、社会ネットワークの減少などの社会的フレイルを含みます。

知機能障害、ADL、栄養、多剤併用、社会サポートの項目を含んでいる広義のフレイルの指標として、Edmonton Fral Scale, Frailty Indexes-based on a Comprehensive Geriatric Assessment(FI-CGA)、Multidimensional Prognostic Index (MPI)などが知られてます。

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生物

微生物の分類と命名法

生物は、エネルギーの獲得方法の違いによって、モネラ界、植物界、動物界、菌類界、原生生物界の5つに分けられます。

微生物の分類

細菌は、モネラ界(kingdom Monera)に、寄生虫は原生生物界(kingdom Protista)に、真菌は菌類界(kingdom Fungi)に分類されます。

階級は、大きい分類(上位)から小さい分類(下位)に向かって、次のようになります。

・界(kingdom)

・門(division)

・群(part)

・科(family)

・族(tribe)

・属(genus)

・種(species)

・個体(individual)

命名法

細菌の命名法は、国際命名規約(International Code of Nomenclature of Bacteria)により規定されています。

基本的に、菌名は属・種名の二命名法によりラテン語で記載されます。

属名は、最初の1文字に省略されることもあります。

ラテン語による学名はイタリックで記載し、属名の頭は大文字で記載するのがルールとなっています。

ウイルス

なお、ウイルスについては、分類は「科」、「属」、「種」の階層的体系を形成しており、命名に関しては、ラテン語の二命名法ではなく、英語の俗名を使用します。

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生物

血液の成分と機能

血液の成分と機能について紹介します。

血液の成分

血液には、有形成分と無形成分とがあります。

有形成分

有形成分は血球です。

すなわち、赤血球、白血球、血小板です。

白血球は、顆粒球、単球、リンパ球に分けられます。

顆粒球は、さらに、好中球(多形核白血球)、好酸球、好塩基球に分けられます。

なお、リンパ球は、単求とあわせて単核球と呼ばれることがあります。

無形成分

無形成分は、血漿です。

血漿は、血漿タンパク、糖、電解質などで構成されます。

詳しくは、血漿には、水分(91~92%)、血漿蛋白(約80/dl)、糖質、脂質、電解質、非蛋白窒素、ホルモンなどが含まれます。

血漿蛋白には、アルブミン、α-グロブリン、β-グロブリン、γ-グロブリン、フィブリノケン、ハプトグロビン、凝固・線溶抑制因子、補体、トランスフェリン、ヘモペキシンなどがあります。

血液の機能

血液の機能は、運搬、調節、防御、止血に分けられます。

運搬

運搬を担うのは、赤血球、血漿タンパク、水分です。

血漿タンパクと運搬物質の組み合わせには、たとえば次のようなものがあります。

・トランスフェリン→鉄

・ハプトグロビン→ヘモグロビン

・ヘモペキシン→ヘム

・卜ランスコバラミン→ビタミンB12

・リポタンパク→脂質

・トランスコルチン→コルチゾール

調節

血液は、pH、浸透圧、熱などの恒常性を維持します。

防御

各種の白血球、免疫グロブリン、補体、サイトカインなどによって、防御されます。

止血

血小板、各種の凝固・線溶因子により、止血機能が発揮されます。

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遠隔医療

遠隔医療とは

遠隔医療えんかくいりょうは、インターネットを用いた医療行為です。

遠隔医療には、さまざまなタイプがあります。

ひとつは、医師がネットを通じて患者を診療する「遠隔診療えんかくしんりょう」です。

また、専門医による、他の医師の支援やコンサルティングもあります。

そのほか、遠隔医療相談えんかくいりょうそうだん、遠隔診断、遠隔モニタリング、遠隔見守りなども含まれます。

これらのうち、いま注目されているのは「遠隔診療」です。

遠隔診療への期待

遠隔診療は、インターネットさえあれば、どこからでも医師に低コストでアクセスできるという利点があります。

しかし、これまで、遠隔診療は、へき地や離島の患者など、ごく一部の人に限定して運用されてきました。

それは、インターネットで得られる情報には限りがあるため、医師はできるだけ、患者と直に接して診療すべきと考えられてきたからです。

ただ、近年は、インターネット技術の発達により、リアルタイムで多くの情報が分かるようになりました。

さらに、料金の支払いも簡単になるなど、遠隔診療を実現できる仕組みが整ってきています。

多くの人が遠隔診療を利用できるようになれば、たとえば忙しくて病院へ行けない人や、心理的に病院を避けてしまう人、「通院の手間」を理由に診療を中断してしまう人でも、かんたんに診察を受けられるようになります。

また、引っ越しや出産などの理由で、来院して継続的に受診することが難しくなった患者でも、遠隔診療で受診の機会が得られます。

これらは、生活習慣病の早期発見や、継続受診による重症化の防止につながるため、医療コストの抑制の手段として期待されています。

普及促進の動き

遠隔診療に対して支払われる診療報酬は、対面に比べると低いのが現状ですが、増額により普及を目指す取り組みが始まっています。

つぎのページでは、遠隔診療の受け方と流れについて紹介します。

次ページ:遠隔診療の受け方をみる

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エスパスネット(esp@cenet)を日本語で利用する方法

エスパスネット(espacenet)は、EPOの提供するサービスで、特許文献の検索ができます。

このサイトは日本語で利用することが可能です。

日本語版はこちらから
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英語版はこちらから
http://worldwide.espacenet.com/?locale=en_EP