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医療従事者向け

関節液の結晶の鑑別・尿酸ナトリウム、ピロリン酸カルシウム

関節液の結晶は、主に、尿酸ナトリウム(MSU)とピロリン酸カルシウム(CPP)がある。

MSUは、monosodiurn urateの略語、CPPは、calcium py-
rophosphateの略語である。

両者は、顕微鏡検査(鏡検)で鑑別が可能。

関節液の細胞数が2,000個/μLを超えると、結晶性の関節炎、関節リウマチ、化膿性関節炎を鑑別する必要がある、と言われる。

関節液の鏡検は、結晶性関節炎と化膿性関節炎との区別に重要である。

化膿性関節炎は、発症から24-48時間以内に適切な抗菌薬投与がされないと、永続的な関節の機能不全を引き起こす可能性や、致命的になる可能性があるため、鑑別できる環境があるのであれは、鑑別を急ぐことが必須となる。

結晶の形状から結晶の種類を判別する

典型的な形状の結晶が観察されたときのみ陽性報告する。

結晶が小さいなど、判断が難しい場合は、陽性とはせず再検査を実施すべきである。

尿酸ナトリウム(MSU)

先端の鋭い針状結晶なら尿酸ナトリウム(MSU)と判断する。

ピロリン酸カルシウム(CPP)

平行六面体あるいは桿状で大小不同の多彩な結晶ならCPP と判断する。

偏光顕微鏡

尿酸塩結晶は強い負の複屈折性を示す一方で、CPP結晶は弱い正の複屈折性を示すため、区別することができる。

尿酸塩結晶は結晶長軸に対して鋭敏色板のZ軸を平行にすると結晶が黄色になり、垂直にすると結晶が青色に見える。ピロリン酸カルシウム結晶は平行で青色、垂直で黄色に見える。

ちなみに、偏光顕微鏡装置では、たとえば、痛風検査用アナライザU-GAN(オリンパス社)は、結晶の同定に有用と言われている。

参考に、痛風は高尿酸血症がベースとなり、血清尿酸の体液中の溶解限界(6.4mg/dl)を超えると関節液中に尿酸塩結晶が析出し、関節内の組織に沈着していく。

ピロリン酸カルシウムの沈着する原理は、よく分かっていない。

 

なお、国家試験との関係では、第66回臨床検査技師国家試験問題の午前 問2に、ピロリン酸カルシウムが認められる疾患について尋ねる問題が出題されている。

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散録

魔女の宅急便の幻のトイレシーン

アニメにおける、トイレシーンについて考えることがありました。

 

というのも、作中でトイレシーンが描写されるアニメは、少数派だから、印象に残るんですよね。

 

例えば、記憶に残っているのは、Angel Beats!とか、To LOVEる、監獄学園などです。

 

さて、個人的には、このトイレシーンについては、なんらかの視点から意見を述べたり考察したりしたいところなのですが、

ここでは、そういうものは歓迎されない気がします。

 

なので、この件に関して言及は避けようと思いますが、アニメにおけるトイレシーンについて、ひとつ、調べていて面白いと思った情報があります。

 

それは、ジブリ映画『魔女の宅急便』で、宮崎駿監督は、キキがトイレで物思いに耽るシーンを、ポスターに採用しようとしていた、という話です。

 

当時、宮崎駿監督は、身近なヒロイン像を描こうとしたみたいですね。

 

みなさんはアニメにおいて、女の子のトイレシーンが存在することは、賛成派ですか? 否定派ですか?

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医療従事者向け

低栄養-カロリー不足時のアミノ酸の投与とBUN、UUN

絶食時に、ブドウ糖を含む点滴をすることがありますね。

しかし、ブドウ糖などの熱量が相対的に不十分な状態では、大量のアミノ酸を投与したとしても,そのアミノ酸は蛋白質としては合成されません。

アミノ酸は、アミノ基をはずした炭素鎖骨格となってエネルギー源として利用されてしまいます。

いわゆる糖新生です。

糖新生の際にはずれたアミノ基は、肝臓にて尿素に合成されます。

血液検査所見としては、血中尿素窒素(BUN)の上昇を認めます。

また、尿中への尿素の排泄(尿中尿素窒素:UUN)の増加を認めます。

腎機能障害時のBUN上昇と違うのはUUNの上昇を伴うことです。

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法律

解説;オリンパス事件(平成13年(受)第1256号、最高裁昭和15年4月22日第2小法廷判決)

事件名
 オリンパス事件

論点
使用者から対価をすでに受け取った発明者が、その受け取った対価と相当の対価との差額を、使用者に請求できるか?

事実関係

・使用者Xのもとで、「ピックアプ装置」を発明した発明者Yがいた。
・Yは、特許を受ける権利を勤務規則によりYから承継した。
・Yは、出願補償として3000円、登録補償として8000円、Xが他者にライセンスできた報償として20万ををもらった。
・Yは、額が足りないとして、使用者Xを訴えた。

本判決の結論(一部略)

「特許法35条によれば,使用者等は,職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる意思を従業者等が有しているか否かにかかわりなく,使用者等があらかじめ定める勤務規則その他の定め(以下「勤務規則等」という。)において,特許を受ける権利等が使用者等に承継される旨の条項を設けておくことができるのであり,また,その承継について対価を支払う旨及び対価の額,支払時期等を定めることも妨げられることがないということができる。

しかし,いまだ職務発明がされておらず,承継されるべき特許を受ける権利等の内容や価値が具体化する前に,「あらかじめ対価の額を確定的に定めること」ができないことは明らかである。

よって,35条の趣旨及び規定内容に照らしても,「これ」が許容されていると解することはできない。

換言すると,勤務規則等に定められた対価は,これが同条3項,4項所定の相当の対価の一部に当たると解し得ることは格別,それが直ちに「相当の対価」の全部に当たるとみることはできないのであり,その対価の額が同条4項の趣旨・内容に合致して初めて同条3項,4項所定の相当の対価に当たると解することができる。

したがって,【要旨1】勤務規則等により職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等は,当該勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価に関する条項がある場合においても,これによる対価の額が同条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解するのが相当である。

本件においては,・・・である。そうすると,特許法35条3項,4項所定の相当の対価の額が上告人規定による報償金の額を上回るときは,上告人はこの点を主張して,不足額を請求することができるというべきである。

原審の上記第1の3(1)の判断は,以上の趣旨をいうものとして,是認することができる。論旨は,独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず,採用することができない。 」

(消滅時効について)
「1 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては,従業者等は,当該勤務規則等により,特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法35条3項)。

対価の額については,同条4項の規定があるので,勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるのであるが,しかし、対価の支払時期については明文の規定はない。

したがって,勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。

そうすると,【要旨2】勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。 本件においては,・・・規定に従って報償の行われるべき時が本件における相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となるから,被上告人が本件訴訟を提起した同7年3月3日までに,被上告人の権利につき消滅時効期間が経過していないことは明らかである。

所論の点に関する原審の上記第1の3(2)の判断は,結論において正当であり,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 」

解説~この判決の意味~

相当の対価の算定は、事前であっても、事後であっても、正確に行うことは困難です。
本判決は、発明者がいったん対価を受け取ったとしても、のちのち、相当の対価との差額を請求できることを明らかにしました。

この法律判断は、発明者にとっては都合がよいのですが、会社にとってはどうでしょうか。
いい発明が出てきても、将来に発明者に訴訟を起こされて、大金をむしり取られる不安を抱えたまま、経営を続けなければいけない、、、、訴えられるかわからない発明者のために、ある程度の資本を内部に蓄えておかなければいけなくなります。経営上、予測性がない不安要素となってしまいました。
この判決に、当当時、多くの会社の経営者が不満をもったことは記憶に新しいことです。

補足

対価の算定について、そこまで厳格な計算を要求することは、面倒です。
なので、相当の対価は、幅のある概念でとらえておき、著しく不当でなければ、違法ではないとする考え方をとったほうが、便利でしょう。

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法律

解説;職務該当性(昭和43年12月13日、最高裁昭和43年12月13日第2小法廷判決

事件名

石炭窒素の製造炉事件

争点

使用者等が、従業者等に対してある発明を完成すべき旨の具体的な指示や命令をしていなかった場合、「その発明をするに至った行為」は、従業者等の「職務」にあたるか?

背景

旧法の事件です。

事実関係

・Aは、技術部門担当の最高責任者。
・Aは、使用者から具体的な指示がないまま、使用者Yの人材、設備、資金を利用して考案をした。
・Aは出願して登録を受けた。
・Aが死んだ後、権利を相続したXは、考案を実施する使用者Yに、損害賠償請求をした。

・亡くなったAさんがした考案について、使用者は(現行法でいう35条1項の)通常実施権を有することを主張した。

・一審と二審は、いずれも、使用者Yが通常実施権を有するとして、Xの請求を認めなかった。

本判決の結論

・棄却

・判旨(一部省略)

「原判決(その引用する第一審判決を含む。)の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人の先代であるAは、同人が石灰窒素の製造炉に関する本件考案を完成するに至つた昭和26年3月当時、

石灰窒素等の製造販売を業とする被上告会社(Y)の技術部門担当の最高責任者としての地位にあつたものであり、かつ、その地位にもとづき、被上告会社における石灰窒素の生産の向上を図るため、その前提条件である石灰窒素の製造炉の改良考案を試み、その効率を高めるように努力すべき具体的任務を有していたものであるから、

Aが本件考案を完成するに至つた行為は、Aの被上告会社(Y)の役員としての任務に属するものであつたというべきであり、

したがつて、被上告会社(Y)は、本件実用新案につき、旧実用新案法(大正10年法97号)26条、旧特許法(大正10年法96号)14条2項にもとづく実施権を有する、とした原審の解釈判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、独自の見解を主張するものにすぎず、採用する
ことができない。」

解説~本判決の意味~ (百選66~67頁より)

本判決は、使用者Y(会社Y)の方針や、Aの会社Yにおける地位に基づいて判断しています。
なので、本判決は、具体的な指示や命令がある場合に「職務」にあたるかという法律的な問題には答えは出していません、実質的にはこれを否定したものといえるでしょう。

本判決の後も、裁判例は「職務」に該当する場合を、具体的な指示や命令がある場合に限定していないようです。

 

補足

百選で執筆教授は、「職務」に該当するか否かにおいて、使用者の資源を利用したかどうかは無関係に判断されるべきである、という見解を述べています。
なぜなら、使用者は、発明完成に、資源が利用されなかったから職務発明が成立しないとすると、発明のための投資意欲を失いかねないからだそうです。

ほかにも、勤務時間外の場合はどうか、自己の費用でされた場合はどうか、試験研究を職務としない者についてはどうか、など、「職務」該当性の判断は、事案ごとに考慮要素が大きくちがうので、どうしても一様な解釈ではうまくいかないでしょう。

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法律

解説;出願後の減縮補正と、出願前の実施契約による不作為義務の対象(平成4年(オ)第364号、最高裁平5年10月19日)

事件名
契約上の不作為義務にもとづく差し止め請求事件

この判決に関する論点

出願前に第三者と実施契約を結んでいた場合で、出願後に請求項を減縮する補正があった場合、その補正に応じて、不作為義務の対象(やってはいけない行為の対象)の範囲が、減少するかどうか?

事実関係

・甲(被上告人)の代表者は、「装置A」と実質的に同一の「装置B」に関する発明Xについて、特許権を取得して実施しようと考えた。一方で、特許出願の準備を進めて、出願をした。

・発明Xの明細書の特許請求の範囲には、インゴットの取付け位置を限定する記載はなかった。

・上告人の丙と、被上告人の甲は、昭和47年1月~4月までの間に、つぎのような契約を口頭で締結した。
それは、
1.「装置A」の製造を、甲が丙に発注する
2.丙は発注を受けてこれを製造して、「装置A」を甲に納入する
という内容であった。

・甲の代表者は、発明Xの特許出願を準備していたため、丙は「装置A」を甲以外には納入販売しないという(不作為)義務を負う旨の合意をした。

・ 丙の代表者は、発明Xの特許出願に拒絶理由が通知されたので、、昭和52年11月21日、発明Xの明細書の特許請求の範囲につき、インゴットの取付け位置を限定する旨の補正をした。

・昭和54年10月18日に、補正された内容で出願公告され、同55年5月20日、設定登録された。

・本訴は、上告人の丙が製造して他に販売した装置(被告装置)は、契約の対象である「装置A」に含まれるとして、甲が丙に対し、「装置A」の製造販売等の差止めと損害賠償を請求した。

・一審は、甲の請求を認容した。

・丙は、高裁に訴えた。

・東京高裁は、丙の請求を棄却した
(理由:契約の対象は発明Xを実施した装置である「装置A」であるが、被告装置は「装置A」に含まれる。発明Xは、出願の過程で明細書の特許請求の範囲が補正された結果、特許請求の範囲が減縮された発明として設定登録され、これにより発明Xの内容が変動しても、補正前に締結された契約の対象となる装置が変動することはない)
※ 東京高裁は、被告装置が補正後の発明の技術的範囲に含まれるか否かを検討することなく、丙の請求を棄却しました。

・丙は上告した

本判決の結論

・破棄差し戻し
・判旨
「原審の右判断は是認することができない。原審の前記認定によれば、上告人はその製造した本願発明の実施に当たる装置を被上告人以外には納入販売しないとの義務を負っていたが、本願発明は、出願の過程で明細書の特許請求の範囲が補正された結果、特許請求の範囲が減縮された本件発明として設定登録されたというのである。

そして、本願発明は掘削装置の構成に関するものであり、右装置が製造されて工事等に使用されたならば、これを現認した者は容易に発明の内容を知ることができるところ、右発明について特許出願をして独占権が与えられない限り、被上告人は他者の右発明の実施を阻止することができないことは明らかである。

そうであるならば、特許出願準備中の本願発明を実施した装置を上告人に製造させる旨の本件契約は、本願発明につき特許出願がされて将来特許権として独占権が与えられることを前提として、このような発明としての本願発明の実施に当たる装置を対象として締結されたものと解すべきである。

けだし、本件契約が、本願発明につき特許出願がされ将来特許権として独占権が与えられるか否かにかかわりなく締結されたとするならば、本件契約に基づいて北辰式掘削装置が製造販売され本願発明を他者が知るところとなり、他者がその実施をすることが可能となるに至る技術的事項につき、契約当事者である上告人のみが実施を禁ぜられることになり、不合理であるといわざるを得ないからである。

したがって、特段の事情の認められない本件においては、本願発明につき、出願の過程で明細書の特許請求の範囲が補正された結果、特許請求の範囲が減縮された場合には、これに伴って本件契約によって被上告人以外に納入販売しないという義務の対象となる装置もその範囲のものになると解するのが相当である。

これを要するに、本願発明がその出願の過程で変動しても本件契約の対象となる装置が変動することはないとした原審の説示には、契約に関する法令の解釈適用を誤る違法があるといわなくてはならない。

そうすると、原判決には右の違法があり、これが原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。

そこで、後記の部分を除き、更に審理判断させるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。

なお、昭和57年9月30日に本件特許を無効とする旨の審決があり、右審決の取消しを求める訴訟において請求棄却の判決がされ、右判決が平成2年4月19日に確定したことは当裁判所に顕著であるから、被上告人の、北辰式掘削装置の製造販売等の差止めを求める部分は、被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否かにかかわらず棄却すべきであり、これと同旨の第一審判決は正当であって、被上告人の控訴は棄却すべきである。」

解説

この判決の読み方には注意が必要です。
なんとなく読んでしまうと、出願前のライセンスの範囲は、発明が減縮補正されたら、その狭くなった発明の範囲になる、というのがこの判決の言わんとしていること、、、、、と誤解してしまいます。

この判決は、あくまでも、甲と丙との間に交わされた契約の内容を解釈をしたのです。

どのように解釈したのかというと、判決文中のこの部分に記載があります。

「特許出願準備中の本願発明を実施した装置を上告人に製造させる旨の本件契約は、本願発明につき特許出願がされて将来特許権として独占権が与えられることを前提として、このような発明としての本願発明の実施に当たる装置を対象として締結されたものと解すべきである」

あくまでも甲と丙の関係から、このような契約の内容を解釈したのです。

したがって、≪出願前のライセンスがあったときに減縮補正があれば、この事件のように、ほかの事件も処理される≫と考えてはいけないのです。

ゆえに、つぎのような問題が残ります。

残された問題

「出願後の補正などで特許請求の範囲が減縮されても不作為義務の範囲がせまくならない」 という契約がなされていた場合、どのようになるのかは、この判決からはわかりません。

つまり、そのような事案は本件とは似ていないので、射程は及ばない、ということです。

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法律

解説;生ゴミ処理装置事件(平成9年(オ)第1918号、最高裁平成13年6月12日第3小法廷判決)

いわゆる生ゴミ処理装置事件を解説します。

事件名
 生ゴミ処理装置事件

争点
 特許を受ける権利を有していた「真の権利者X」が、特許登録の後に、「冒認者Y」を相手取って、登録名義を冒認者から自己へ移転することを請求することができるか?

事実関係
・XとZが、共同発明をして、出願。
・「冒認者Y」が、偽造した譲渡証書により、Xの特許を受ける権利の持ち分を譲り受けた旨の、出願人名義変更届けを特許庁長官に提出。
・ Xは、特許を受ける権利(共有持分)を有することの確認訴訟を提起
・YとZを特許権者とする設定登録
・Xは、上記の確認の訴えを、Zの特許権の持ち分につき移転登録手続きを求める訴えに、変更した。

・一審は、Xの請求を認容した。
・Yが控訴した。
・二審は、Yの請求を認容した。

二審の理由は、つぎのとおり。
①特許権は、行政処分である設定登録により発生するので、無効にされるまでは有効なものとして取り扱うべき②特許を無効にするためには無効審判によるべきで、無効理由の存否については行政機関の判断に委ねるべき
③よって真の権利者から冒認出願による特許権者に対する特許権返還請求について司法判断することは、特許訴訟手続きの趣旨に反する
したがって、「特許の返還を求める請求権」はない

・Xは上告した。

本判決の結論

・認容
・判旨

「上記2の事実関係によれば,本件発明につき特許を受けるべき真の権利者は上告人及び上告補助参加人であり,被上告人は特許を受ける権利を有しない無権利者であって,

① 上告人は,被上告人の行為によって,財産的利益である特許を受ける権利の持分を失ったのに対し,被上告人は,法律上の原因なしに,本件特許権の持分を得ているということができる。

② また,上記2の事実関係の下においては,本件特許権は,上告人がした本件特許出願について特許法所定の手続を経て設定の登録がされたものであって,上告人の有していた特許を受ける権利と連続性を有し,それが変形したものであると評価することができる。

③ 他方,上告人は,本件特許権につき特許無効の審判を請求することはできるものの,特許無効の審決を経て本件発明につき改めて特許出願をしたとしても,本件特許出願につき既に出願公開がされていることを理由に特許出願が拒絶され,本件発明について上告人が特許権者となることはできない結果になるのであって,それが不当であることは明らかである

④ (しかも,本件特許権につき特許無効の審決がされることによって,真の権利者であることにつき争いのない上告補助参加人までもが権利を失うことになるとすると,本件において特許無効の審判手続を経るべきものとするのは,一層適当でないと考えられる。)。

⑤ また,上告人は,特許を受ける権利を侵害されたことを理由として不法行為による損害賠償を請求する余地があるとはいえ,これによって本件発明につき特許権の設定の登録を受けていれば得られたであろう利益を十分に回復できるとはいい難い。

⑥その上,上告人は,被上告人に対し本件訴訟を提起して,本件発明につき特許を受ける権利の持分を有することの確認を求めていたのであるから,この訴訟の係属中に特許権の設定の登録がされたことをもって,この確認請求を不適法とし,さらに,本件特許権の移転登録手続請求への訴えの変更も認めないとすることは,上告人の保護に欠けるのみならず,訴訟経済にも反するというべきである。

これら(上記③~⑥)の不都合を是正するためには,特許無効の審判手続を経るべきものとして本件特許出願から生じた本件特許権自体を消滅させるのではなく,被上告人の有する本件特許権の共有者としての地位を上告人に承継させて,上告人を本件特許権の共有者であるとして取り扱えば足りるのであって,そのための方法としては,被上告人から上告人へ本件特許権の持分の移転登録を認めるのが,最も簡明かつ直接的であるということができる。

もっとも,特許法は,特許権が特許庁における設定の登録によって発生するものとし,また,特許出願人が発明者又は特許を受ける権利の承継者でないことが特許出願について拒絶をすべき理由及び特許を無効とすべき理由になると規定した上で,これを特許庁の審査官又は審判官が第1次的に判断するものとしている。
しかし,本件においては,本件発明が新規性,進歩性等の要件を備えていることは当事者間で争われておらず,専ら権利の帰属が争点となっているところ,特許権の帰属自体は必ずしも技術に関する専門的知識経験を有していなくても判断し得る事項であるから,本件のような事案において行政庁の第1次的判断権の尊重を理由に前記と異なる判断をすることは,かえって適当とはいえない。

また,本件特許権の成立及び維持に関しては,特許料を負担するなど,被上告人の寄与による部分もあると思われるが,これに関しては上告人が被上告人に対して被上告人のした負担に相当する金銭を償還すべきものとすれば足りるのであって,この点が上告人の被上告人に対する本件請求の妨げになるものではない。

解説

この事件には、まず、行政法一般の構造に関する論点があります。

特許登録は行政処分ですので、それが違法であっても、取消判決などが確定するなどしない限り、裁判所も含めて、何人たりとも、行政処分に効力がないものとして取り扱うことはできません。
また、その効力を否定するためには、行政庁に対する不服申し立て手続きで最終的に決められなければいけません。
したがって、行政法の構造によれば、自己が発明者ないし正当な権利者であるとして特許権の移転登録を求めることはできないのです。

つぎに、特許法固有の論点があります。

まず、特許権者になるには出願をする必要がありますので、発明者が当然に特許権者になれるという前提が特許法において成立するかどうかが問題となります。

また、特許権が付与された発明が、発明者のした発明とは、微妙にちがうものであった場合、無制限に真の権利者の移転請求を認めると、複雑な権利関係を残す可能性があります。

そのような論点がありながら、本判決は、利益考量によって、移転登録請求を認めるべきとの価値判断をしました。
一般には、最高裁は、不当利得返還請求という法律構成により結論を出したと言われています。


補足

ブラジャー事件(東京地裁H14.7.17)との違いがよく取り上げられます。

生ごみ事件と、ブラジャー事件とでは、つぎのように違いがありました。

生ゴミ事件
・発明者は、もともと出願人の一人
・発明者がだれかについて争いなし

ブラジャー事件
・発明者は、出願していない
・発明者が誰なのかが争われていた

 

ブラジャー事件では、裁判所は、移転請求を認めると、自ら出願をしていない者に特許権を付与することを認めることとなってしまうため、特許法の制度の枠を超えてしまい、特許法の登録制度に照らし許されないと述べて、移転請求を認めませんでした。

補足2
平成24年法改正により、74条(特許権の移転の特例)が規定されました。
新設された74条により、生ゴミ処理装置事件の場合については、123条1項第2号(第38条)違反の場合として特許権の移転請求できることになりました。
さらに、ブラジャー事件の場合についても、 123条1項第6号違反の場合として、特許権の移転請求できることになりました。

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法律

酸化ベリリウム事件(昭和51年(行ツ)第9号、最高裁昭和51年4月30日第2小法廷判決)

いわゆる酸化ベリリウム事件を解説します。

事件名

酸化ベリリウム事件(最高裁昭和51年4月30日第2小法廷判決)

論点

出願後に頒布された刊行物によって、出願時の技術水準を認定することは、実案3条2項に反するか?

事実関係

・特許庁の審判官は、拒絶審決をしました。

(審決は、第一引用例と第二引用例から、本願発明が容易に推考可能である、と述べました。)
・出願人が、出訴しました。
・東京高裁は、出願人の訴えを棄却しました。
(東京高裁は、出願時の技術水準を判断する資料として、特許庁内における不服審判手続きに現れていなかった、出願後に頒布された刊行物を新たな資料として採用し、その新たな証拠によって、出願時の技術水準を認定し、実案3条2項の容易推考性を判断しました。)
・出願人は、上告しました。

本判決について

・最高裁は、出願人の上告を棄却しました。

・以下、判旨です。

「実用新案登録出願にかかる考案の進歩性の有無を判断するにあたり、出願当時の技術水準を出願後に頒布された刊行物によって認定し、これにより進歩性の有無を判断しても、そのこと自体は、実用新案法3条2項の規定に違反するものではない。」

解説

本件は、(メリヤス事件の射程の中で)出願時点の考案の進歩性を判断するときに、出願当時の技術水準を、出願後に頒布された刊行物によって認定できる、としたものです。

つまり、本事件で最高裁は、出願時に発行されていた「刊行物」に、出願時に存在していた「情報」が記載されていなかったとしても、その「情報」が出願後に発行された刊行物に記載されていた場合には、その刊行物に記載された情報を、出願時の進歩性の判断材料にしてもよい、と言ったのです。

なお、「出願後に頒布された刊行物」の例としては、出願後に公開された先願の特許公報が挙げられます。

補足(進歩性の判断と技術水準について)

発明の進歩性を判断に、技術水準が考慮されるとは、どういうことをいうのか、解説します。

審査の流れ

通常、出願された発明は、審査請求された後、審査官によって、新規性や進歩性などの要件が審査されることになります。

このとき、審査官は、出願時より前に発行された文献の中から、出願された発明(請求項に記載された発明)の構成要件を満たす発明が記載された文献を探します。

このとき、

・出願された発明の構成要件を満たす発明が記載された文献を見つけた場合、審査官は、「新規性なし」の拒絶理由を出願人に通知します。

・出願された発明の構成要件を満たす発明が記載された文献を見つけることができなかったときは、審査官は、なるべく、出願された発明に近い発明が記載された文献を探し、その発明と、出願された発明との差異をチェックします。

つぎに、審査官は、その発明と、出願された発明との差異に、進歩性がないことの論理付けができるかどうか検討します。

そして、進歩性がないことの論理付けができる場合、出願人に「進歩性なし」の拒絶理由を通知します。

進歩性の判断と、技術水準の考慮

進歩性がないことの論理付けは、実務上、出願された発明に近い発明が記載された文献と、出願された発明との「差異」を生み出すことが、当業者にとって、出願時に容易であったかどうかにより判断されます(容易であると判断されれば「進歩性なし」となります)。

技術水準は、「差異」を生み出すことの容易性の判断に考慮されます。

たとえば、2012年現在、タッチパネル式のカーナビ装置はないが、タッチパネル自体は入力装置として広く知られている技術(周知技術)だと仮定します。

ここで、タッチパネル式のカーナビ装置が出願されたとします。

そして、審査官は、タッチパネル式ではないカーナビ装置が記載された「文献A」を発見したとします。

このとき、審査官は、「当業者は、文献Aに、周知技術を組み合わせて、出願にかかる発明を完成させることは簡単だ」という見解を記載した拒絶理由を通知してきます。

補足2

関連した問題点として、特許判例百選(42~43)に次の見解が挙げられています。

1-1
審決取り消し訴訟で、容易推考事実としての公知刊行物「甲」、および出願当時の技術水準を証する証拠「丙」としての、新たな公知刊行物「乙」を証拠として追加する場合であって、

‐ 実質的に主要事実(甲や丙と置き換えるようなとき)である場合
→最大判(メリヤス)や、167条の逸脱行為であり許されない

‐ 甲や丙の補強証拠である場合
→許される

1-2

審決取り消し訴訟で、容易推考事実としての公知刊行物「甲」、および出願当時の技術水準を証する証拠「丙」としての、新たな非公知刊行物「乙」を証拠として追加する場合であって、

‐ 出願当時の技術水準を補強するものである場合
→許される(本判決の事案)

‐ 出願当時の技術水準を認定する唯一の証拠である場合
→この場合は、最大判(メリヤス)や、167条の逸脱行為であり許されないと思う

2-1

技術水準を主張立証するための補助証拠である場合
→問題はない

2-2

出願時の技術水準を引き上げるための証拠となる場合
→技術水準という主要事実を直接立証する証拠の一部となるので、この場合は最大判との関係で問題がある。

※ このあたりは、訴訟の立証方法に関する細かい部分であり、面白いところなのですが、弁理士試験ではまず出ないでしょう。

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解説;刊行物への発表(昭和61年(行ツ)第160号、最高裁昭和61年7月17日第1小法廷判決)

最高裁昭和61年7月17日第1小法廷判決を解説します。

争点

発行された特許公報に記載された発明は、特許法30条1項(平成24年法改正後は30条2項に対応)の新規性の喪失の例外の適用を受けられるか?

事実関係

・「第三級環式アミンの製法」を、日本、西ドイツ、オランダに出願していた出願人がいた
・それらの出願は出願公開された
・その後、日本は、法改正により昭和51年1月1日以降の出により物質特許が取得できるようになった
・出願人は、その昭和51年1月1日に、新規性喪失の例外(刊行物への発表をしたとして)の適用を受けるつもりで、「第三級環式アミン」の特許出願をした。
・特許庁は、拒絶審決(理由: 30条1項にいう「発表」ではない)
・東京高裁は、棄却(理由:30条1項の「刊行物」に、公開特許公報が含まれない)
・出願人は、30条1項の「刊行物」にも、29条と同様に公開特許公報が含まれると解釈するべきとして、上告。

本判決の結論

・棄却
・判旨

「特許を受ける権利を有する者が、特定の発明について特許出願した結果、その発明が公開特許公報に掲載されることは、特許法三〇条一項にいう「刊行物に発表」することには該当しないものと解するのが相当である。

けだし、同法二九条一項のいわゆる新規性喪失に関する規定の例外規定である同法三〇条一項にいう「刊行物に発表」するとは、特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に刊行物に発表した場合を指称するものというべきところ、

公開特許公報は、特許を受ける権利を有する者が特許出願をしたことにより、特許庁長官が手続の一環として同法六五条の二の規定に基づき出願にかかる発明を掲載して刊行するものであるから、
これによって特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に当該発明を刊行物に発表したものということができないからである。

そして、この理は、外国における公開特許公報であっても異なるところはない。

したがって、原判決は結論において是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。」

解説

上記のように、東京高裁は、30条1項の「刊行物」に、特許公報が含まれないとの理由で、30条1項の適用なしと判断しました。

しかし、最高裁は、特許公報が30条1項の「刊行物」にあたらないとは解釈せずに、「刊行物に発表」の解釈を述べ、30条1項の適用なしと結論づけました。

最高裁が、東京高裁の理論を採用しなかったのは、特許公報が「刊行物」にあたらないというのは、文言上、無理があると考えたからと言われています。

補足

従来の審査実務は、特許公報に掲載された発明に、新奇性喪失の例外の適用を認めていたようです。 しかし、昭和50年から、そのような適用を無くす運用に変更されました。

審査実務の変更後、変更した審査実務を是認する審決が出されるようになり、その審決に対し、審決取消訴訟を提起した案件が何件かあったようです。

本判決は、新しい審査実務の定着を図ったものであるといわれています。

補足2

平成24年の法改正により、上記の判決で問題となった30条1項が削除され、30条2項が創設されました。

改正後の30条2項では、発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより29条1項各号のいずれかに該当するに至った発明について、新規性の喪失の例外が受けられないこととなっています。

つまり、上記の最高裁の結論が、明文化されました。

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解説;黄桃の育種増殖方法事件(平成10(行ツ)19 号、最高裁昭和52年10月13日第1小法廷判決)

事件名
 黄桃の育種増殖方法事件

争点
交配や選抜による植物新品種の伝統的な育種方法において、発明完成のための「反復可能性」は、どの程度あればよいのか?

事実関係

・特許されていた黄桃の育種増殖方法について、無効審判が請求されました。(請求の理由:詳細は不明)
・特許庁は、無効審判の請求不成立審決をしました。(理由:不明)
・特許権者が出訴しました。
・東京高裁は、審決取消訴訟を棄却しました。(理由:不明)
・特許権者が上告しました。


本判決について

・最高裁は、特許権者の上告を棄却しました。

・以下、判旨です。

「技術内容は、その技術分野における通常の知識経験を持つ者であれば何人でもこれを反復実施してその目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体化され、客観化されたものでなければならないから、

その技術内容がこの程度に構成されていないものは、発明としては未完成のものであって、特許法2条1項にいう「発明」とはいえない(最高裁昭和39年(行ツ)第92号同44年1月28日第三小法廷判決・民集23巻1号54頁参照)。
(規範)
したがって、同条にいう「自然法則を利用した」発明であるためには、当業者がそれを反復実施することにより同一結果を得られること、すなわち、反復可能性のあることが必要である。そして、この反復可能性は、「植物の新品種を育種し増殖する方法」に係る発明の育種過程に関しては、その特性にかんがみ、科学的にその植物を再現することが当業者において可能であれば足り、その確率が高いことを要しないものと解するのが相当である。
(論証)
けだし、右発明においては、(いったん)新品種が育種されれば、その後は従来用いられている増殖方法により再生産することができるのであって、確率が低くても新品種の育種が可能であれば、当該発明の目的とする技術効果を挙げることができるからである。
(あてはめ)
これを本件についてみると、前記のとおり、本件発明の育種過程は、これを反復実施して科学的に本件黄桃と同じ形質を有する桃を再現することが可能であるから、たといその確率が高いものとはいえないとしても、本件発明には反復可能性があるというべきである。
なお、発明の反復可能性は、特許出願当時にあれば足りるから、その後親品種である晩黄桃が所在不明になったことは、右判断を左右するものではない。
(結論)
これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

 

解説

本件は、植物の育種増殖方法が、完成された「発明」かどうかが争われ、
「反復可能性」の解釈について言及された事件です。

本件の育種増殖方法は、二つのプロセスからなります。
まず、「育種方法」。二つの品種を交配し、新品種を生み出すプロセスのことです。
つぎに、「増殖方法」です。新品種を新品種から増やすプロセスのことです。

 

★育種方法

品種1 + 品種2 → 新品種

☆増殖方法

新品種 → 新品種、新品種、新品種

 

本件では、この植物の育種増殖方法が、完成された「発明」かどうかが争われていました。
裁判で「反復可能性」が問題になったのは、「★育種方法」の確率が低かったためです。

最高裁は、本判決において、いったん新品種を発明の実施により得られることができるのであれば、その後、「☆増殖方法」により本願発明の効果(新品種の生産)が得られるのだから、「★育種方法」の確率は低くても構わないと述べています。

この判決文を読んで注意しなければいけないのは、判旨で、「そして、この反復可能性は、「植物の新品種を育種し増殖する方法」に係る発明の育種過程に関しては、その特性にかんがみ、科学的にその植物を再現することが当業者において可能であれば足り、その確率が高いことを要しないものと解するのが相当である。」と言っていることです(赤字の部分に注意)。

つまり、植物の育種増殖方法の「★育種方法」の確率は低くていい、といっているにすぎないのです。

「植物の育種増殖方法」以外の技術については、言及していないのです。

ですので、この事件を他の技術分野にまで一般化するのは禁物です。

たとえば、機械の分野の発明でも確率が低くてもいい、と考えるのは安易です。

感想等

もし、この事件で、「育種増殖方法(=★育種方法+☆増殖方法)」としてではなく、「★育種方法」として出願されていた場合、どのように判断されていたのでしょうか?

また、一般的に、植物の「育種増殖方法」の発明のうち「☆増殖方法」の確率が低い場合、どのように反復可能性が判断されるべきでしょうか?