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医療

健康食品の信頼できる情報源はHFNet

健康食品で被害続出!?

「健康食品」はいろいろとありますが、「保健機能食品」以外のいわゆる健康食品には定義がなく… その実態は玉石混交です。

最近で話題になったのは、若い女性の間で 「豊胸効果がある」 などとうたった「プエラリア・ミリフィカ」という成分を含む健康食品です。

この成分を含む健康食品による健康被害が、多く報告されました。

嘔吐、腹痛、下痢などの消化器障害や発疹、じんましんなどの皮膚障害のほかに、月経不順や不正出血といった、女性特有の危害事例が多く報告されたそうです。

このプエラリア・ミリフィカによる危害情報は、 全国の消費生活センターなどに2012年度から2017年4月までの 5年間あまりで209件寄せられていたそうです。

すごい件数ですね。

▷日本医師会ウェブサイト参照

https://www.med.or.jp/people/knkshoku/pueraria/index.html

自己責任…?

このような、いわゆる健康食品は、人体でのしっかりとした検証がされていないものです。

そのようなものを摂取するのですから、それによって健康被害にあっても、「自己責任だ」という見方もできなくはありません。

でも、ヘルス・リテラシーは、人によって差があるのが現実です。

ヘルス・リテラシーの不足から、目の前のものが「安全なもの」という誤解をしてしまうことはあるでしょうし、それに、社会的には、健康被害への治療によって医療財政が少なからず圧迫されるというのも見過ごすことはできないでしょう。

 

HFNet

健康食品に関する、そのような健康被害の問題を解決するため、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所では、「健康食品」の安全性・有効性情報(Health Foods Network;HFNet)サイトを運用しています。

https://hfnet.nibiohn.go.jp/

このサイトでは、健康食品に関する最新の情報が提供されています。

サイト内検索もありますから、気になる情報があれば調べられます。

ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。

検索してみると、いろいろと情報が出てきます。

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医療

食中毒統計の正確性〜信じてはいけない理由〜

数ヶ月前に,厚生労働省の毎月勤労統計についての不正問題がありましたね.

国の統計を信じていいのか分からない…

そんな印象を抱いた人は多かったんじゃないかと思います.

さて,今日の話です.

不正とは違うのですが,私の仕事に関連する話で,信じてはいけない統計をひとつ紹介します.

それが食中毒統計です.

(非常にマイナーな統計で申し訳ないです)

食中毒統計

厚労省は,食中毒の統計を出しています.

この統計の元データは,食中毒と診断した医師が,保健所に届け出ることで収集されます.

根拠法は食品衛生法です.

食品衛生法第58条第1項

食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者若しくはその疑いのある者(以下「食中毒患者等」という。)を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない。

食中毒というのは,細菌,ウイルス,自然毒,化学物質,寄生虫などが原因となります.
このうち,多いのは細菌とウイルスによるものです.

病名としては「感染性胃腸炎」となるものです.

この感染性胃腸炎,実際に起きている件数のほとんどが,届出されていません(と思っています).

その理由として,感染性胃腸炎の食中毒というのは,とても判断が難しいからです.

たとえば,食中毒の原因となる細菌で多いものに,カンピロバクターがあります.

このカンピロバクターは,経口で体内に入って感染してから発症するまでの期間(潜伏期)が数日あるんですね.

そうすると,仮に飲食店でカンピロバクターに感染したとしても,病院に来たのが数日後だと,その飲食店で本当に感染したのか否か,判断がつかないわけです.

それは,仮に患者が「絶対にあの飲食店で感染した!」と主張しても,それは考慮できないということでもあります.

では,実務上はどうなっているのかというと,

同じものを食べた別人が,同じ症状になっている

こういう客観的な証拠があるときに,「食中毒」と判断するわけです.

実際の食中毒統計(たとえば令和元年)を見たときに,カンピロバクターの事例で患者数「1」というものが全然ないのは,こういう理由なのです.

他方で,寄生虫アニサキスの場合,患者数「1」というのが多々あります.

これは,アニサキスの潜伏期が短いことが理由です.

食べた後にすぐに発症するから,原因が特定できる

たから患者数が一人でも,届け出ることができるというわけですね.

◆ 急性胃アニサキス症  
食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じます。
◆ 急性腸アニサキス症
食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。
参考
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

さらに言えば,複数人が食中毒の症状であっても,きちんと届け出されていないケースも多々あります.

…ゆえに「食中毒統計を信じてはい」となるわけです.

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医療

食べないダイエットのリスク

若い女性の食事量(エネルギー摂取量)は年々,減り続けています.

原因は,現代生活の忙しさが背景にあるのかもしれません.

たとえば,「国民健康・栄養調査」(2013年)によれば,20代女性の約4人に1人が朝食抜きの生活を送っているそうです.

 

また,「やせ」志向によるカロリー制限も原因として考えられます.

少し過去のデータになりますが,H20年の国民健康・栄養調査によると,20歳代女性の44%が,自分の体型を「太っている」または「少し太っている」と認識しているそうです.

(PDF:厚生労働省:平成20年国民・健康栄養調査報告第4部生活習慣調査

このような「やせ」志向が生まれた原因として,ひとつには,メディアの影響が考えられています.

メディアに登場する女優やモデルは,細身であることを賞賛され,また,「やせた体型」=「社会的成功」という結び付きが感じられます.

その影響か,女性は「今よりも細く」という願いを持ちやすくなります.

ツイッターやインスタグラムなどのソーシャルメディアによって,その願いは増幅されやすいでしょう.

単に食べる量を減らすのは,不健康な「やせ」につながりやすく,貧血や骨密度の低下など,健康上の問題を招くおそれがあります.

特に骨密度の低下は,骨粗鬆症を引き起こすリスクを高めます.

いまの若い女性が高齢になったら,たぶんですが…

転んだだけで大腿骨(だいたいこつ)を骨折するような人は,今よりも増えるでしょう.

 

若いときから,よく食べてよく運動する生活を心がけることが健康寿命の延伸に役立ちます.

みなさんの周りに,もしも「食べない女性」がいたら,それとなく諭してあげてください.

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医療 医療従事者向け

医療広告ガイドラインについて

以前は,医療機関のWEBサイトは,単なる広報と位置付けられていて,広告規制の対象外でした.

しかし,年々,美容医療サービスを提供するクリニックなどのWEBサイトの,虚偽広告誇大広告などのトラブルが増加してきました.

それを受けて,医療機関の広告について規制する医療法が2017年に改正されました(2018年6月1日施行).

また,これに伴い,医療法施行規則(省令)も改正されました.

医療広告ガイドラインも新たに策定され,2018年6月に公表されました.

詳しくはこちらで.▶ 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン) 

こちらも参考になります.▶医療広告ガイドラインに関するQ&A

 

ガイドラインの内容を,ごく一部ですが,かんたんに紹介します.

(1)虚偽広告

たとえば,「絶対安全な手術です」のような医学的にあり得ない表現は禁止です.

(2)比較優良広告

他の病院やクリニックなどと比較して「優れている」と宣伝する広告は禁止です.

たとえ,それが事実であっても『日本一です』 などの表現は禁止です.

(3)誇大広告

提供する医療サービスが,実際よりも良いものであると印象付けるような広告は禁止です.

「最良」,「最上」,「最先端」,「最適」などの表現も誇大広告に該当します.

(4)患者の体験談

医療機関が,自身のWEBサイトに,患者の体験談を紹介することは禁止です.

なお,医療機関が患者に掲載を依頼して,患者がブログやSNS,口コミサイトに体験談を掲載することも禁止です.

(5)治療前治療後の写真

いわゆるビフォーアフターの写真(治療前または治療後のみの写真も含む)等を掲載することは,全面的に禁止されるのではなく,治療の効果を「誤認させるおそれがある」ものに限定して禁止です.

 

消費者としては,適切に広告している医療機関を見極めたいものですね.

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Column 医療

医療系専門学校の「合格保証」や「就職保証」の闇(真実)

病院では、毎年、医療系の専門学校生が、臨地実習を行っています。

看護師をはじめ、診療放射線技師、臨床検査技師など、職種はいろいろです。

今日は、そのような医療系の専門学校の、小話(裏話)を紹介します。

駄文ですが、かるくお読みください。

 

「合格保証」や「就職保証」の闇

 

医療系の専門学校では、「合格保証」とか、「就職保証」とか、よくCMなどで宣伝していますね。

これは、子どもにとっても、学校に子どもを送り出す親にとっても、「教育や、就職指導をちゃんとやってくれそう」というポジティブな印象を受けます。

でも、実際は、そこ(専門学校)で、何が行われているかというと、、、

 

まず、

国家試験の模試の成績が悪い生徒には、就職試験を受けさせない

とういうことが行われています。

就職試験を受験できないようにするため、「卒業見込み書」や「成績証明書」を発行しないというのが、よく聞くパターンです。

また、一定以上の成績をおさめて就職試験を受けた生徒であっても、就職が決まらなかった生徒は、留年できるという仕組みがあります。

ゆえに、卒業生の就職率は上がります。

さらに、

卒業試験を実施し、その試験で成績が悪い生徒を、卒業させない(=国家試験の受験資格を与えない)

ということも、よく行われています。

たびたび、「合格率100%」など、高い合格率を宣伝している専門学校を見かけますが、そういう学校は、卒業試験が厳しくなっているようです。

これらは、入学前の学校説明会で説明されることは、ありません。

生徒は、入学してから真実を知ることになります。

以上、ご参考まで。

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医療

放射線治療の種類

備忘録です.

現在,放射線治療には2種類の治療法があります.

光子線治療粒子線治療です.

光子線治療

光子線治療は,X線やγ線を用いた一般的な放射線治療法です.

照射方法によって,強度変調放射線治療(IMRT),定位照射(SRT),ガンマナイフ,サイバーナイフ,トモセラピーなどさまざまな呼称が用いられています.

粒子線治療

粒子線治療は,原子核を加速器で光速近くまで加速して照射します.

炭素イオンを用いた重粒子線治療と,水素イオンを用いた陽子線治療が普及しています.

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医療

胃の中をキレイに! ピロリ菌を除菌しよう.

いまこの記事をお読みになっている皆さんは、“ヘリコバクター・ピロリ菌”という菌をご存知でしょうか?

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃に感染する菌です。

ヘリコバクター・ピロリ菌が、胃に感染すると、慢性的な胃炎状態となります。

※その多くは「萎縮性胃炎」や「腸上皮化生」と呼ばれる、よくない状態へと移行します

実は、これは、胃がんに発展しえます。

なので、このヘリコバクター・ピロリ菌は、胃がんの原因菌と言われています。

胃がんの原因がピロリ菌感染であることについては、ほぼコンセンサスが得られている状況です。

※参考までに、日本における胃がん患者を調査したところ、99%が ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していたことが判明しています

疫学

多くの場合、ヘリコバクター・ピロリ菌は、小学校に入る前の幼少期に感染し、その後、一生、持続感染します。

このピロリ菌は、除菌をすることで、胃がんの発生が抑制されることが示されています。

なるべく若い年齢でおこなうことが、最大の胃がん発生予防となります。

※なお、30~40年前まで20歳代のピロリ菌感染率は50%以上でしたが、近年ピロリ菌の感染率が大きく低下し、現在では5%ほどだそうです。若い人で除菌が必要な人は、少ないようです。

H.pylori感染の診断と治療のガイドライン 2016改訂版」では、「除菌によって胃癌リスクは低下する.感染早期の除菌ほど胃癌予防効果は 大きい」と提言しています。

検査と除菌

胃炎の方など(条件あり)は、健康保険で検査を受けることが出来ます。

健康な方は、自費で、人間ドックなどで検査を受けることも可能です。

除菌するなら、上記のように、できるだけ若いときに除菌したほうが良いです。

なお、ピロリ菌の除菌は、胃がんの発生リスクを下げられますが、胃がんを完全に予防できるものではありません。

なので、ピロリ菌の除菌後も、定期的に胃がん検診を受けたほうがよいのは、これまでと変わらない、とのことです。

早期胃がん患者における除菌効果

ちなみに、すでに胃がんになってしまった患者さんについて、こんな研究報告があります。
それが、早期胃がん患者に対して、APAN GAST study groupにて行われた多施設共同研究です。

Fukase K,Kato M,Kikuchi S et al:Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomised controlled trial. Lancet 372:392-397,2008 

この研究では、早期胃がんの内視鏡治療後の患者544人を除菌群272人と非除菌群272人に無作為に割り付け、3年間の胃がん発症を両群で前向きに比較検討をしたところ、最終的に除菌群272人(最終解析255人)から二次胃がんが9人、非除菌群272人(最終解析250人)から24人の二次胃がん発症が認められたという結果が得られたそうです。

つまり、除菌による二次胃がん発症は、約1/3に抑制されたということです。

とても興味深いですね✨

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医療

病院の種類

備忘録です。

特定機能病院

特定機能病院は「高度先端医療を必要とする患者に対応する病院」として厚生労働省の承認を受けている病院。

全国の大学病院の本院であることがほとんど。

中核病院

中核病院には、厳密な定義はなし。

ある程度の規模で、地域医療の拠点病院は、中核病院と言える感じ。

大学病院であっても「中核病院」と名乗る病院もあるそう。

一般病院

一般病院は、病床数20以上の病院。

精神病院と結核療養所を除き、ほとんどの病院が、この「一般病院」に含まれる。

ちなみに病床数19以下の医療機関は「診療所」。

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医療

妊婦加算の代わりにできた診療情報提供料(Ⅲ) 150点

コロナの騒動の中で改定された診療報酬。

その中でも、ちょっとだけ注目なのが、診療情報提供料(Ⅲ) 150点です。

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605491.pdfより

[算定要件]のところに、こうあります。

(1) 他の保険医療機関から紹介された患者について、他の保険医療機関からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した 場合に、提供する保険医療機関ごとに患者1人につき3月に1回に限り算定する。

(2) 妊娠している患者について、診療に基づき、頻回の情報提供の必要性を認め、患者の同意を得て、当該患者を紹介した他の保険医療機関に 情報提供を行った場合は、月1回に限り算定する。

(2)に注目です。

これは、過去に問題となった「妊婦加算」に置き換わるものなんですね。

妊婦加算とは

「妊婦加算」は、平成30年の診療報酬改定の改定で追加された制度です。

「妊婦への慎重な対応」や「胎児への配慮」に対するインセンティブを医療機関に与える目的で導入されました。

 

内容ですが、初診料に75点(750円)の加算、再診料38点(380円)の加算とされていました。

当時は、妊婦さんの自己負担額が増えたということです。

妊婦加算の凍結
はじめは「うまくいくかも」と思われていたようですが、、、

この妊婦加算、ある時から凍結(一時停止)されました。

理由は、妊婦に加算分を負担させたことから「事実上の妊婦税だ」「少子化対策と逆行する」という非難の声がネット上で大きくなったからです。

とくに、産婦人科以外の科(たとえば眼科)にかかっても「妊娠というだけで,お金をとられる」という事例が目立ち、制度への疑問の声が多く上がったのです。

ただし、これについては、実は、厚労省が、疑義紹介資料において、「妊娠に直接関連しない傷病(感冒等)について診察を行った場合にも算定できる」という事務連絡をしていた等の事情があるので、医療機関が悪いわけではないのです…。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000202132.pdfより

その後、妊婦加算のあり方について、改めて中央社会保険医療協議会で議論されることになりました。

そして、昨年の12月、この妊婦加算は廃止が決まり、同時に、代替案として、妊婦に限らず、患者の同意を得た上で、医療機関同士が治療内容や検査結果について情報共有した場合に加算する仕組みを新設することが決まったのです。

というわけで、上記の診療情報提供料(Ⅲ) 150点は、今年の4月から実施されることになたわけです。

(参考https://www.sankei.com/life/news/191220/lif1912200018-n1.html )

制度設計の難しさが分かる事例でしたね。

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医療

どんなエビデンスなら信じられるか?

世の中には「それ本当かな?」という謳い文句の製品やサービスが多いですね.

エビデンス(根拠)はどうなっているの?
と思ってしまうことは多々あります.

たとえば美容関係なら,

「〜という試験結果があります!」というものでも,中身を見ると,数人の主観的な効果の実感をアンケートしたものに過ぎなかったりとか.

…信じられるエビデンスとは,いったい何でしょうか?

一般的に言われているのは,RCTによる試験結果は信頼性が高いということでしょう.
ランダム化比較試験(RCT)
XとYとの因果関係を判断するために最適な方法が,ランダム化比較試験(RCT)です.

RCTは,「無作為化比較試験」ともよばれます.

例えば,医薬品の場合,こんな感じになります.

【手順】
(1)RCTでは,ある集団を2つのグループに分けます(介入群と対照群).
このとき,グループを構成する人のさまざまな特徴(背景因子)が似るように,被験者をどちらのグループに割り付けるかをランダムに決定します.

(2)介入実験のときは,一方のグループには,試験医薬品Xを使い,もう一方のグループには,外形がそっくりなだけの偽の医薬品Xo(プラセボ)を使います.
このとき,被験者も研究者も, XかXoのどちらが使われたかが分からないようにします(二重盲検).

(3)2つのグループで結果を比較します.

【結果の解釈】
両方のグループに起きた出来事(効果:Y,Yo)に統計学的に有意な差が認められれば,その違いは,製品Xによる効果と判断できます.

製品やサービスを見かけたときは,「〜という試験結果がありました」という文章を信じるのではなく,そのエビデンスと主張される試験結果が導き出された方法に注目すると良いと思われます.