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早期がんの発見技術が、ガン検診・ガン診断・ガン保険にもたらす変化

年々、医学は進歩しています。

すごい検査技術の実用化が期待されています。

具体的には、マイクロRNA(miRNA)測定技術を用いた血液からの13がん種のスクリーニング検査や、線虫による尿からの10がん種のスクリーニング検査などがあります。

これらのような早期がんの発見技術は、ガン検診及びガン診断や、ガン保険に変化をもたらすかもしれません。

ガン検診やガン診断への影響

いま、がん検診の受診率は、高いもの(肺がん)でも5割くらいです。

健康意識の高まりからか、年々、少しずつ上昇しています。

早期がんの発見技術は、健康診断や人間ドック(自由診療)の分野で導入されますが、これは、がん検診の受診率の上昇につながると思われます.

人間心理として、

簡単に、しかも早期がんでも発見できるなら、検査を受けておこう

と考える人は多いはずだからです。

がんの診断数が増える?

過去、日本において、前立腺がんの検診(PSA健診)が普及してきました。

一方で、統計上、前立腺がんの罹患率も上昇しました。

前立腺がんと診断された人が増えたということですね。

PSA健診が普及したことは、日本で前立腺がんの罹患率が上昇した原因のひとつと考えられています。

上記の検査技術は、この現象を、おそらく、ほかのがんでも引き起こします。

それがどの程度になるのかは、まったく予想はつきません。

ちなみに ー 過剰診断の増加?

これは「がん検診のデメリット」としてよく語られている話なのですが、

がん検診で発見されるがんの中には、その後、進行がんにならないものや、そのままの状況に留まったりして、命に影響しないがんもあります。

しかし、見つけた時点では、普通のがんと区別できないので、基本的には治療することになってしまいます。

このように、治療がいらなかったはずのがんが発見され、治療されることは「過剰診断・過剰治療」などと呼ばれています。

上記の、miRNAや線虫を用いた新しい検査方法の実用化は、がん検診の受診率の上昇をもたらすと予想されますが、それは,過剰診断・過剰治療の増加を招く可能性もあります。

 

がん保険への影響

さて、上の話は、検査技術の発展などにより、今後、がんの罹患率は増えるだろうということですが、がん保険には、どんな影響を与え得るでしょうか?

想像ではありますが、書いてみます。

⒈診断給付金の支払いの増加により保険料や保障内容が見直される

現在のがん保険は,がんと確定診断(病理検査による)されると,診断された時点で,100万円とか200万円という診断給付金(用途は自由)がとりあえず支給されます.

がんの罹患率が増えるとすれば,保険加入者のうち,保険会社が診断給付金を支払う人の割合は,これまでよりも増加します.

これは,保険料と保障内容の見直しにつながるでしょう.

保険料を上げるか,診断給付金の減額を含む保障内容の見直しをするか,あるいはその両方になるでしょう.

この見直しにより,今後のがん保険は,現在のがん保険よりも金銭的なコストパフォーマンスが下がるかもしれないと疑われます.

ただ,見直しにあたっては,早期がんの段階での発見の増加によって治療などにかかる合計費用は今よりも下がるだろうという予測もできるため,軽々に「今後のがん保険は,現在のがん保険よりもコストパフォーマンスが劇的に悪くなる」とは言えないだろうとは思います.

⒉がん保険への加入希望者にスクリーニング検査が義務づけられるかも?

現在,生命保険や医療保険に加入するときに,健康診断書を提出する喫煙の有無を唾液で調べるなどの事前チェックが普通に行われています.

他方,がんはリスク要因が明確ではないという理由から,現在のがん保険では,加入にあたって,そういう手続きは基本的には要求されていません(間違ってたらすみません).

しかし,簡単に多種類のがんがスクリーニングできる検査が実用化されたら,その検査に合格した人だけががん保険に加入できるようになる可能性があります.

なぜかというと,これはモラルの問題になりますが,新しいスクリーニング技術で「精査が必要」という結果が出た人が,短期間の間に,(場合によっては多くの)がん保険に積極的に加入し,90日間の免責期間の後に,がんの診断を受け,結果的に給付金で大きく得する現象が起きるのを防ぐ必要があると思われるからです(いわゆる「逆選択」の抑制).

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医療

世界各地で新型コロナのPCR検査が簡単に行えるようになる話

今回は、とある業者さんを通じて知った話です。

今月以降、世界各地で新型コロナのPCR検査が(いまよりは)簡単に行えるようになるかも、という話のご紹介です。

新型コロナは、報道などで、みなさんもご存知のとおりPCR検査をするわけですが、実施できる施設や人が限られていることが問題となっています。

ところが、最近、米国に本社を置くベックマンコールターが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診断用の遺伝子検査試薬を開発したことが話題となっています。

この試薬は、全自動遺伝子解析装置「GeneXpert® システム」という機器で使用します。
GeneXpert® システムは、世界中に(180ヵ国以上)、約23,000台が導入されています。

プレスリリースより引用

▶2020年3月2日 ベックマン・コールター 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診断用 遺伝子検査試薬開発のお知らせ
≪一部抜粋≫ 自動遺伝子解析装置「GeneXpert®システム」の製造元であるCepheid社は、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の迅速診断用遺伝子検査試薬の開発を、2月10日に正式に発表いたしました。

▶3月17日 ベックマン・コールター 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診断用遺伝子検査試薬開発(第2報)
≪一部抜粋≫ 同検査試薬は、Cepheid社(Sunnyvale, CA 米国)で順調に開発が進んでおり、3月中にもアメリカ食品医薬品局(FDA)のEmergency Use Authorization(EUA:緊急使用許可権限)に申請の上、4月中に、米国で発売を予定しています。日本国内においても、同時期の発売を目指し準備を進めております。同検査試薬は、RT-PCRの原理を用いて、SARS-CoV-2の特異的遺伝子を検出します。検体は、鼻咽頭ぬぐい液を使用し、前処理1分、測定時間30分程で測定します。

▶3月23日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)遺伝子検査試薬開発のお知らせ(第3報)
≪一部抜粋≫ Cepheid社(Sunnyvale, CA 米国)にて順調に開発が進んでおりました同検査試薬は、3月20日(米国時間)にアメリカ食品医薬品局(FDA)のEmergency Use Authorization(EUA:緊急使用許可権限)による許可を取得しました。これを受け今後米国での発売を予定しています。 (中略) 日本国内においても、早期の発売を目指し準備を進めております。 同検査試薬は、RT-PCRの原理を用いて、SARS-CoV-2の特異的遺伝子を検出します。検体は、鼻咽頭ぬぐい液を使用し、前処理1分、測定時間45分程度で結果を提示します。

参考に、英語ですが、Cepheid社のサイトです。
https://www.cepheid.com/coronavirus

このGeneXpert®システムは、操作が非常に簡単で、1 検体ごとに、必要な時にすぐに検査でき、非常に使い勝手がいいです。

※なお、このGeneXpert®システムは、結核診断用の検査試薬も販売しており、操作の簡便性や、精度もよいことから、それについては、2010 年に WHOより推奨を受けていますので、機器には信頼がおけます。

この試薬が発売になれば、世界各地で検査数の向上に寄与するでしょう。

もしも課題があるとすれば、このCOVID-19の試薬の生産量と流通でしょうか。

「供給はアメリカ優先で」、なんてことにならないことを願います。。。

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医療

化粧水は、ほんとうに肌に浸透するの?

化粧水の成分について,ネット上で,「肌に浸透」という表現をよく見かけますね.

この表現について気になったので,調べてみました.

結論:浸透しない

調べてみると,一般的には,化粧水の成分が「肌に浸透する」というのは、適切な表現ではないようでした.

肌の構造はつぎのようになっていますが,化粧水に含まれる成分は,角質層でブロックされ,それより下には届かないそうです.

業界では,自主規制している

 

この「肌に浸透」という表現は,上記のようにネットでは頻繁に目撃しますが,かなり問題のある表現みたいです.

業界団体(日本化粧品工業連合会)は,【化粧品等の適正広告ガイドライン】にて、使用しないように自主規制しています.

項目のE3にこう記載されています(一部省略)

化粧品において、細胞分裂が殆ど行われていない表皮の角質層へ化粧品成分が浸透する表現を行う場合は、浸透する部位が「角質層」の範囲内であることを明記すること。また、浸透して損傷部分が回復(治療的)する等の化粧品の効能効果の範囲を逸脱する表現は行わない。なお、医薬部外品の作用部位の表現を行なう場合は、事実に基づき、承認を受けた範囲を逸脱しないこと。

〔表現できる例〕

「角質層へ浸透」、「角質層のすみずみへ」

〔表現できない例〕

「肌へ浸透」、「肌の奥深くへ」、「角質層の奥へ」(「角質層」の範囲内であることが明記されていない)

「ダメージを受けた角質層へ浸透して肌本来の肌に回復」(回復的)

「肌の内側(角質層)から・・・」(医薬品的)

 

面白いですね.

ただし,角質層の下にまで成分を届かせようという商品は、やっぱり存在するようです.

たとえば,DHCスーパーコラーゲンなんてものがあるようです.

信じるかどうかは,買う人次第でしょう.

以上,何かの役に立てば幸いです.

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医療

日本の臓器移植の現状をかんたんに

日本では,臓器移植は,いわゆる臓器移植法(臓器の移植に関する法律:平成9年法律第104号) に基いて行われています.

臓器移植法は,平成22年7月17日に改正法(平成21年法律第83号)が施行されました.

以後,本人の意思が不明な場合でも家族の承諾があれば臓器提供できるようになりました.

改正法の施行後,これまでに合計で502名の脳死者からの臓器提供が行われています(うち,家族の承諾による提供は394名).

最近の平成30年度では,70 名の脳死者からの臓器提供が行われました.

この臓器提供ですが,上記のように,本人の意思が不明な場合でも家族の承諾があれば臓器提供できるようになったということで…

『もしもの時に家族が判断に迷わないために,あらかじめ家族と臓器提供についての意思を話し合っておくことが大切』 と言われています.

家族間で,真剣な話し合いがしにくいテーマかもしれませんが,話し合っておくにこしたことはありません.

もしも機会があれば,みなさんもご家庭で話し合ってみてはいかがでしょうか.

意思表示

ご存知の方もいるかもしれませんが,意思表示に際しては,「臓器提供意思表示カード」を持っておくことが薦められています.

 

また, 医療保険証や運転免許証,マイナンバーカー ドに,臓器提供に関する意思を表示しておくことも薦められていますね. 

ところで,日本における臓器移植は,件数がとても少ないです. 諸外国と比べると,より一層,少なさが分かるでしょう.

世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本(人口100万人あたり:2016年)
世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本(人口100万人あたり:2016年)

 

理由はさまざまあるようですが,臓器移植制度の周知・認知不足ということも,理由のひとつとして挙げられるのかもしれません.

厚労省は,平成16年度より毎年,中学三年生向けのパンフレットを作成し,全国の中学校へ配布しています.

この取り組みだけでは,なかなか若い人が臓器移植を真剣に考えることは難しいかもしれませんが, これからもっと,臓器移植制度の認知と理解が広がってくれるといいなぁと思うところです.

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医療

最も輸血されているのは、がん患者(みんなの献血×乃木坂46)

昨年、宇崎ちゃん論争が巻き起こった「献血」。

ポスターに関して、私は容認派ですが、みなさんはどう思いましたか?

さて、この献血事業。

最近は献血者が減っているようです💦

そこで、日赤は、さまざまテコ入れをやっているようです。

いまは乃木坂46とコラボしています。

 

ここで、せっかくなので、背景というか、献血事業の状況を、ちょっと示してみようと思います。

献血された血液は、病気や薬の影響などで、十分に血液をつくることができなくなった患者さんや、事故や手術などで大量出血した患者さんなどに、輸血されます。

参考までにですが、疾患別にみると、最も輸血を受けているのは、がん患者です。

理由としては、がん(悪性新生物)が身体にさまざまな変化を引き起こし、貧血を招くからです。

疾病別輸血状況
平成30年輸血状況調査結果より、疾患別輸血状況

精神的なストレスによる食欲の低下、がんの骨髄への転移、慢性炎症、ホルモンの異常などによる赤血球の産生能の低下、また、抗がん剤の副作用で貧血になることもあります。

血液製剤には有効期限があるため、医療を維持していくためには、定期的に献血をしてくれる人の存在が不可欠です。

しかし、年々、献血する人が減ってきています。

人口構成の変化や、若い世代の献血への興味関心が薄れていることなどが原因としてあげられるようです。

なお、2019年の4月からは、体格がいい人に献血「増量」のお願いが始まっているそうです。

・・・未経験の方は,時として,気分不良や顔面蒼白などの反応が起きてしまうことはありますが,基本的には献血は安全に行えます。

※ただし、献血者となるためには基準があり、献血できない場合もあります。

ちなみに、最近の献血ルームは、待合室がカフェのようなつくりになっていて、献血の待ち時間や、献血後の休憩時間のために、マンガや雑誌が置いていたり、アイスがもらえたり、飲料の飲み放題(フリードリンク)があったりして、ゆっくり・ゆったりと過ごせます。

また、献血中は、ベットにTVモニターが付いていて、テレビを楽しむことも出来ます。

さらに、献血のお礼の「お土産」をもらえる場合もあります。

もしも気が向いたら、ぜひ近くの献血ルームへ足を運んでみてください✨

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医療 医療従事者向け

子宮頸がんワクチンの副反応問題-これまでの経過と感想

子宮頸がんワクチンについて、調べてみました.

子宮頸がんワクチンは,HPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮頸がんを引き起こすという,2008 年にノーベル医学・生理学賞を受賞した画期的発見をもとにした,人類史上初のがん予防ワクチンです.

子宮頸がんワクチンが,HPVの感染を予防する仕組みは,ワクチン接種により誘導されたHPV抗体が,子宮頸部の粘膜に滲出することで,HPVと結合し,HPV 感染を阻害すると考えられています.

この子宮頸がんワクチンは,WHOも接種を強く推奨し,世界約140か国で使用され,約80か国で定期接種となっています.

日本でも2013年4月に定期接種となりました.

しかし,日本では,子宮頸がんワクチン接種の開始後,副反応と思われる多様な症状がみられました.

そして,メディアには,「歩けない,痙攣する,生理不順,体が痛い,まぶしい,勉 強ができなくなった」といった症状が,子宮頸がんワクチンのせいであると訴える人たちが現れ,テレビで繰り返し放送されました.

激しくけいれんする女の子の映像は衝撃的で,日本社会は,あっという問に,「子宮頸がんワクチンは危険」という認識が広がりました.

これを受けてか,わずか開始から2カ月後の6月には,厚労省は,積極的な接種の呼びかけを中止しました.

それから何年も経過していますが,積極的な接種の呼びかけは再開されていません.

なお,対象となる女子(中学1年から高校1年,自治体により異なる可能性がある)は,現在も,公費助成を受けて,ワクチンの接種は可能です.

※現状のざっくり把握はこちらをどうぞ.

NHK:子宮頸がんワクチンのいま

ちなみに,集団訴訟にも発展しています.

こんな子宮頸がんワクチンですが,気になったので,安全性に関することを調べてみました.

子宮頸がんワクチンの安全性

まず,「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究(祖父江友孝班)」によると,子宮頸がんワクチンを接種していない場合でも,子宮頸がんワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈するものが一定数存在するとの結果が報告されていました.

さらに,世界保健機関(WHO)のワクチン安全性諮問委員会は,「日本の若い女性は,本来予防が可能であるHPV関連がんの危険にさらされたままになっている.レベルの低い科学的根拠に基づく政策決定は,安全でかつ有効なワクチンを接種する機会を奪い,若い女性に真の被害をもたらし得る.」との声明を発表しています(平成27年12月).

また,日本産科婦人科学会は,科学的見地に立って,子宮頸がんの予防戦略において HPV ワクチンと検診の両者は共に必須であるという考えのもと,これまでに,HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を繰り返し発表しています.

▶日本産科婦人科学会

HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明

これまでの経過は,こちらの図がわかりやすいでしょう.

子宮頸がんワクチンの副反応問題-これまでの経過と感想
東京新聞より引用

感想

以前は過熱していたマスコミの報道も,落ち着きましたし,以前は,「子宮頸がんワクチン=悪者」という感じに偏っていた報道のスタンスも,以前とは少しずつ変わってきているように思います.

積極的な接種の呼びかけを再開すべきかどうかは,難しい問題だなぁと感じますが,子宮頸がんワクチンの副反応の病態解明についての研究も進んでいるようです(ワクチン接種による続発性の自己免疫性脳症という説があるようです).

副反応に苦しむ人達が少数いることは事実ですから,そういった人たちへの有効な治療法の開発が望まれます.

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医療

ワクチンを打つのはなぜ大事か

世の中には、少数派ですが、

・自分にワクチンを打ちたくない

・子どもにワクチンを打ちたくない

こんな意見を持っている人たちが、それなりの数いらっしゃいます。

なぜ、彼ら/彼女らは、「ワクチンを打ちたくない」と思うのでしょうか。

よく言われているのは、彼ら/彼女らが、ネットの不正確な情報を鵜呑み(うのみ)にしているという理由です。

たとえば、「ワクチンは製薬会社の陰謀だ」「ワクチンは危険だ」などでしょうか。

この点については、最近、メディアで話題になることが多いように感じます。

ある意味、科学を否定する行為であるわけですが、背景には、ワクチンは、薬と違って、効果が実感しにくいことがあると思います。

ワクチンを打った人に、どのような効果が現れているのか、打った当人でさえ、実感することが難しいからではないかと思うのです。

ネットの情報を自ら否定できず、洗脳に近い状態に陥ってしまうのでしょう。

ワクチン接種による効果

ここで、ワクチン接種による効果には、どのようなものがあるのか、一応、確認しておきましょう。

効果の一つ目は,ご存知の通り、ワクチンを接種した人の感染症の発症を予防する(あるいは発症後の重症化を防ぐ)直接的な効果があることです。

そして、もう一つの効果は、ワクチンを多くの人が接種することにより感染症の流行が起こりにくくなることです。

何らかの理由によりワクチン接種を受けていない人や、ワクチンを打っても抗体がつかない人も感染から守られるという間接的な効果があります。

この効果は、多くのワクチンにあり、「集団免疫効果」と呼ばれます。

ちなみに、先日、見つけたのですが、BBC News Japanが、ワクチンはどのように機能しているのか、そして「集団免疫」の段階がなぜ重要なのかを動画で説明してくれています。

 

YouTubeより『ワクチンについて話そう 集団免疫はなぜ大事?』

集団免疫効果によって、保育所内や幼稚園内、家族内での伝播が予防できます。

こういう理由で、集団内でのワクチン接種率を高める必要があるわけです。

ワクチンのリスク

もちろん、ワクチンを打つリスクは、ゼロではありません。

注射するときの痛み、注射した場所が腫れる、熱が出るなどがあります。

まれに重い副反応が出ることもあります。これは予測はできず、極めて低い確率ですが発生するものです。

そんなときのため、日本では、予防接種健康被害救済制度が設けられています。

・・・個人的には、ワクチンを打たない自由は保障されるべきとは思いますが、誤った知識をもとに、ワクチン拒否してしまう人がいるのは悲しいことです。

なるべく多くの人が、冷静に判断して、ワクチンが接種できる社会になってほしいと思います。

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医療

OECDが日本の健康診断は見直す必要があるという指摘

報道の紹介です.

OECD(経済協力開発機構)という国際機関があります.

OECDは,ヨーロッパ,北米等の国々によって国際経済全般について協議することを目的とした機関です.

少し前ですが,このOECDが,日本に対して,健康診断の見直しを求めたという報道がありました.

OECDによる提言の中身はこんな感じです.

 

山陽新聞より

 

的確な指摘だと思いました.

特に,正社員以外の健康診断が軽視されている点は,大きな課題だと同意します.

詳しくはこちらの記事を御覧ください.

日経:日本の健康診断は見直しを OECD、病気予防への注力提言(2019年2月7日)

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医療

線虫が癌を見つけてくれる技術

有名ですが,最近話題の癌(ガン)の検査方法の紹介です.

▼2人に1人はガンになる

ガンは日本人の死因の第1位です.

男女の区別をせずにざっくりと言えば,生涯で,日本人の2人に1人が生涯にガンになります.
ちなみに,ガンは1981年以降,死因の第1位となっています.

▼ガン検診の受診率は低い このように,ガンになることや,ガンで死ぬことが一般的になってきましたが,日本人は,ガン検診の受診率が低いです. その原因として, 現在のガン検診は,費用と時間がかかるからと言われています. たしかに,体中を調べると,それなりのお値段になっちゃいますし,日数もかかります. そのため, 安くて簡単なガンの検査方法の開発が望まれていました.

▼線虫によるガン検査の登場

そこへ近年になって発明されたのが,

線虫によるガン検査です!

 

N-NOSEという名前の検査です.
線虫の優れた嗅覚を用いて尿中のガンの匂いを検出し, 多種のがんを同時にスクリーニングします.
線虫が反応することが分かっているがん種は,2019年8月現在で,15種類だそうです(胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆嚢、胆管、腎、膀胱、卵巣、口腔・咽頭).
こちらが開発企業webサイト
https://hbio.jp/n-nose/
この技術で,ガン検診の受診率のアップが見込まれます.
そして,膵臓ガンに代表される,発見が遅れがちなガンが早期に見つかるようになる可能性があります.
また,ステージの早い段階で見つけられれば,生存率も上がります.
この技術は,癌医療とその周辺に物凄いインパクトを与えることになるかもしれません.
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病院のヒヤリハットの解説

あまり一般の人には馴染みがない,病院の「ヒヤリ・ハット」について紹介します.

みなさんが日頃のニュースなどで知る,医療に関する悪いニュースは,死亡事故とか手術ミスとか,そういう重大なやつでしょうか.

いわゆる「アクシデント(事故)」ですね.

しかし,病院では,アクシデント(事故)にいたらないようなミスが,日々,起こっています.

それが「ヒヤリ・ハット」です.

ヒヤリとした,ハットした,というところからきている言葉です.

定義(厚労省)

ヒヤリ・ハットの定義は,

  1. 誤った医療行為などが患者にされる前に発見されたもの
  2. 誤った医療行為などが患者にされたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの

これらをまとめたものとされています.

よくあるヒヤリ・ハットは?

ヒヤリハットについては,公益財団法人日本医療機能評価機構というところが収集していて,毎年,年報を発行しています.

たとえば,2017年のヒヤリ・ハット事例の分類は,最も多いのが,薬剤です(41.4%).

多くの医療機関では,薬剤に関して,かなり注意を払っているはずなのですが…

実際には,こういったヒヤリ・ハットが多く発生してしまっているのが現状です.

ヒヤリハットになるのは,

  • 医師の間違いを,薬剤師や看護師が発見する
  • 薬剤師の間違いを,看護師が発見する

などのパターンが多いです.

ほとんどの原因は,注意不足や確認不足などのヒューマンエラーです.

病院は,ある程度はシステム化されてきてはいるのですが,やはり,作業の大部分を担うのは人です.

人のやることですから,100%はありえません.

操作ミス,うっかりミス,思い込みによるミス,確認不足によるミス,連絡ミス,さまざまなミスは起こりえます.

みなさん自身あるいはご家族が,もしも患者になったときは,受ける医療行為については,多少の注意を払うことをおすすめします.

少なくとも,何か違和感を感じたときは,すぐに医療スタッフに確認するようにしてください.

それが,みなさん自身やご家族を救うことにつながるかもしれませんから。。。