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敗血症と敗血症性ショック

敗血症や敗血症性ショックについて解説します。

敗血症の定義

敗血症の定義は、「感染症に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされた生命を脅かすような臓器障害」です。

敗血症の診断基準

敗血症の診断基準は、次の通りです。

ICU患者

感染症が疑われ、SOFA scoreが2点以上増加するもの

非ICU患者

quick SOFA scoreで2点以上のもの

quick SOFA scoreは、呼吸数 22回/min上(1点)、精神状態の変化(1点)、収縮期血圧100mmHg以下(1点)を指標とします。

敗血症性ショックの定義

敗血症性ショックの定義は「適切な輸液負荷にもかかわらず、平均動脈血圧65mmHg以上を維持するために循環作動薬が必要で、血清乳酸値が 2mmol/L(18mg/dL)より高いもの」です。

敗血症の進行

敗血症は、原発巣を制御しないと、重傷敗血症、敗血症性ショック、多臓器機能不全症候群(MODS)へと連続的に変化します。

菌血症との違い

菌血症は、血液中に生きた菌がいることを意味します。

菌血症が敗血症と同義に用いられることがありますが、厳密には、意味が異なります。

すなわち、敗血症は感染症に起因しますが、血中に菌が検出されない場合も含まれ、この点が菌血症とは異なります。

培養検査

適切な治療のためには、血液培養と、原発巣の培養を行います。

血液培養は、2セット採取が望まれます。

血液からの分離菌と、原発巣からの分離菌が一致すれば、起炎菌と考えてよいでしょう。

なお、原疾患として頻度が高いのは肺炎、腹腔内感染症、泌尿・生殖器、皮膚・ 軟部組織感染症です。

治療

基礎疾患、原発巣、腎機能、肝機能、先行抗菌薬の有無と種類などを考慮して、抗菌薬を最大許容量で投与します。

参考

なお、2016年以前は、敗血症は感染症に起因するSIRSと定義されていました。

SIRSとは、全身性炎症反応症候群のことで、下記の診断項目(全身性炎症反応の指標)を2項目以上満たす場合を言います

〔成人〕
【1】体温>38℃または<36℃
【2】脈拍数>90/分
【3】呼吸数>20回/分またはPaCO2<32Torr
【4】白血球数>12,000/mm3または<4,000/mm3,あるいは未熟型白血球>10%

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薬剤感受性試験のディスク法について

CLSI(臨床検査標準化協会:Clinical and Laboratory Standards Institute)に準拠して行われます。

原理

菌を接種した感受性試験用の培地に感受性ディスク􏰄􏰁を置くと、培地水分がディスクに吸収され抗生剤が拡散します。

ディスク􏰄􏰁を中心に抗生剤の濃度勾配が形成されます。菌の発育は、抗生剤の発育阻止濃度以下の領域に限定されるため、発育阻止円が形成されます。阻止円直径は抗生剤の発育阻止濃度に反比例します。

培地

用いる培地としては Mueller-Hinton がもっとも適切です。

ただし、培地にはロット差がみられるので精度管理用􏰁が必要てす。

時間、温度

菌液調整後からディスクを置くまては、15分以内に終えます。培養温度は35~37°Cの範囲とし、一夜培養します。阻止円直径の読みとりは、定規など􏰄で測定し、S、I、Rの3段階の判定を行います。

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細菌の抗菌薬への耐性メカニズム

抗菌薬の耐性メカニズムには、つぎのような種類があります。

菌によっては、複数の耐性機構をもつことがあります。

抗菌薬の分解

抗菌薬が、菌の産生する酵素(ベータラクタマーゼ)で分解され、不活化されてしまいます。

たとえば、ペニシリナーゼによるべニシリンの分解が挙げられます。

なお、近年は、ベータラクタマーゼ産生による耐性菌が問題化しています。

特に問題化しているものには、つぎのものがあります。

・基質拡張型ベータラクタマーゼ(ESBL)
・メタロベータラクタマーゼ(MBL)
・AmpC型ベータラクタマーゼ

抗菌薬の修飾

抗菌薬が、菌の産生する修飾酵素で低分子を付加されると、酵素への親和性を失ってしまいます。

たとえば、アセチル化によるカナマイシンの不活化が挙げられます。

作用点の質的変異

標的酵素が変化すると、薬剤への親和性を失ってしまいます。

たとえば、つぎのようなものがあります。

・PBPの変異によるペニシリン系やセフェム系などへの耐性
・DNAジャイレース(トポイソメラーゼI)の変異によるキノロン耐性
・RNAポリメラーゼのβサブユニットの変異によるリファンピシン耐性

標的酵素の量的変異

標的酵素が多量産生されると、標的酵素の全てを薬剤で失活させられなくなってしまいます。

たとえば、腸球菌PBPの過剰産生によるべニシリン耐性が挙げられます。

抗菌薬の流入阻害

薬剤の透過孔(ポーリン孔)または輸送系が変異すると、薬剤が菌体内に入らなくなります。

例えば、緑膿菌のポーリン孔欠損株は、イミペネム耐性となります。

抗菌薬の排出

排出ポンプの存在により、いったん菌体内に入った薬剤が、排出されてしまいます。

たとえば、多剤耐性緑膿菌(MDRP)はこの機構を有していると言われます。

なお、薬剤耐性菌の種類を別に紹介しています。

薬剤耐性菌の種類

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ERSMとTRSM

滅菌物の安全保証期間については、2つの考え方があります。

TRSM(time related sterility maintenance:時間依存型無菌性維持)と、ERSM(event related sterility maintenance:事象依存型無菌性維持)です。

TRSM

TRSMとは、「滅菌の保証は、時間が経過すれば損なわれる」という考え方です。

この考え方を採用すると、包装材料や包装形態に応じて安全保証期間を設定することになります。

ERSM

他方、ERSM とは、「滅菌物を汚染する可能性があるすべての要因や出来事があれば、時間に関係なく無菌性は破錠する」という考え方です。

この考え方を採用すると、基本的には、滅菌物の安全保証期間を設定しません。

ただし、ERSM の考え方は、長期の保管を前提としているわけではありません。

滅菌物が使用されるまでのプロセスを細分化して安全管理を行うことが大切です。

すなわち、滅菌物を汚染する可能性があるイベントが発生しないように、包装方法、滅菌方法、保管条件、搬送方法などを管理していくことになります。

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疾患、症状、徴候の違いとは?

徴候、疾患、症状は、それぞれ下記のように定義されます。

徴候

外から見て分かる客観的な変化を意味します。

たとえば、出血、膨化、嘔吐、下痢、発熱、発疹などです。

症状

外からは分からない体の主観的な機能の変化を意味します。

たとえば、頭痛や吐き気などです。

疾患

疾患とは、上記の「徴候」および「症状」をはっきりと示す病気のことを意味します。

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包埋とは(embedding)

組織中の細胞を見やすくするために、組織を薄く切る必要があります。

しかし、やわらかいものは薄く切ることができません。

そこで、薄く切るために、組織片に適切な素材を浸透させ、材料を固めます。

一般的な素材として「パラフィン」が使用されます。

上記の操作を「包埋」といい、パラフィンのことを「包埋剤」といいます。

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好気培養と嫌気培養の違いとは?

細菌の培養は、発育に酸素を必要とする好気性菌と、酸素があると発育できない嫌気性菌とでは、異なる方法が採られます。

すなわち、好気培養と、嫌気培養です。

好気培養

好気培養では、シャーレ内の培地、あるいは、緩く蓋を被せた試験管内の培地に、細菌を接種して35〜37度程度の孵卵器に入れます。

なお、培地が液体培地である場合は、浸透させながら培養します。

嫌気培養

一方、嫌気培養では、菌を接種した培地を、ガスパックなどの酸素吸収•炭酸ガス発生剤とともに、密閉容器(嫌気ジャー)に入れて培養します。

嫌気性グローブボックス/嫌気チェンバー/嫌気チャンバーを備えた施設であれば、その中で培養します。

なお、培地として、システインやチオグリコール酸などの、還元剤が添加された培地(培地の酸化還元電位が低下している)が用いられることがあります。

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デ・エスカレーションとは?(de-escalation)

一般に、感染症の治療では、培養の同定・感受性検査の結果が出るまでの間、想定する感染部位・起因微生物をカバーする抗菌薬で治療します(エンピリック治療:empiric therapy)。

そして、培養の同定・ 感受性検査の結果が出たときには、その結果を踏まえて、臨床的にも効果が認められ、かつ、患者にとって最適な抗菌薬で治療していくのが良いとされています(いわゆる原因治療あるいは標的治療:definitive therapy) 。

このように、治療の過程で、広域なスペクトルの抗菌薬から、狭域なスペクトルの抗菌薬に変えることを、デ・エスカレーション(de-escalation)といいます。

デエスカレーションの問題点

しかし、デスカレーションには、運用の点で問題を含んでいます。

なぜなら、「現に効いている薬を別のものに変更する必要性はない」と考えて、デエスカレーションをしない医師もいるためです。

しかし、広域スペクトルの抗菌薬は、むやみに使うと薬剤耐性菌の出現を許すことになります。

また、その耐性菌は、環境や医療従事者を介し、ほかの患者に伝播する恐れもあります。

抗菌薬の種類は有限ですから、将来の患者に使える抗菌薬を、できる限り残しておくことが必要になるのです。

したがって、たとえ、目の前の患者が、広域スペクトルの抗菌薬によって改善したとしても、デエスカレーションし、より狭域な抗菌薬に変更する必要があります。

なお、病院の中には、抗菌薬の適正な使用を支援するチーム:AST(抗菌薬適正使用支援チーム)を設置しているところがあります。

チームの活動内容には、主治医へのデエスカレーションの提案が含まれています。

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特発性細菌性腹膜炎の検査、診断、治療

特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis、SBP)とは、消化管穿孔などの腹腔内の感染病巣が認められない腹膜炎です。

この腹膜炎は、進行した肝硬変患者で肝機能がひどく低下したときに、一過性の菌血症から腹水に細菌が播種し、腹水中で細菌が増殖し、SBPが起こるとされています。

頻度は明らかでないものの、腹水を有する非代償性肝硬変の10~20%に併発すると推定されています。

検査

診断のために、腹水の生化学検査と腹水培養検査をおこないます。
消化管穿孔や二次性腹膜炎を考慮し、腹部造影CTを施行する場合もあります。

原因菌

単一菌による感染がほとんどで、SBPの起炎菌は腸内細菌であるグラム陰性桿菌が多く、大腸菌が40%以上を占めています。

腸内細菌叢の大部分を占めるのは嫌気性菌ですが、腹水は好気的な環境にあるため、これらが起炎菌になることは稀です。

もしも、バクテロイデス属などの偏性嫌気性菌が腹水中から検出された場合は、消化管穿孔を考える必要があります。

診断

一般には、腹水中の好中球数が250/mm3以上で細菌培養が陽性の場合にSBPと診断します。

ただし、SBPと鑑別を有する疾患として、胃潰瘍の穿孔、急性虫垂炎の破裂、憩室炎、腸管の悪性腫瘍、腸捻転や腸間膜動脈血栓症などによる腸管壊死などがあります。

また、急性膵炎などの腹腔内感染巣(消化管穿孔など)により生じる腹膜炎(二次性細菌性腹膜炎)との鑑別も必要です。

なお、SBPの亜型として、腹水中の多核白血球が250/mm以上で腹水培養陰性の場合や、腹水中の多核白血球が250/mm未満で腹水細菌培養が陽性の場合などが存在します。

治療

腹水中の多核白血球が250/mm以上を認める場合や、250/mm以上を認めなくても感染の兆候がある場合は、経験的治療(エンピリック治療)として、広域スペクトルの抗菌薬の投与を開始します。

二次性腹膜炎の可能性がある場合は、クリンダマイシンやセフメタゾールなど嫌気性菌をカバーする抗菌薬の併用を検討します。

平均的な治療期間は約10~14日とされています。

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クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficile関連下痢症(CDAD)

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficileは、一部の健常者の腸内に定着する常在菌の一種です。

Clostridioides.difficile(Clostridium.difficile)
Clostridioides.difficile(Clostridium.difficile)-米国疾病予防管理センター(CDC)ウェブサイトより

通常は、ほかの腸内細菌により、増殖が抑制されていますが、抗菌薬を投与した場合の副作用として、生命を脅かす下痢を引き起こすことがあります。

抗菌薬の投与により、正常な腸内細菌叢が撹乱されると、異常増殖して毒素を産生し、下痢症を引き起こします。抗生物質の投与を開始してから数日または数週間以内に症状が現れることがあります。

C.difficile が形成する芽胞は、過酷な環境でも安定で、アルコール耐性があり、多くの抗菌薬に対しても抵抗性があります(経口感染するため、院内感染対策上、重要な菌)。

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficile

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficileは、グラム陽性偏性嫌気性細菌です。

酸素の存在下では発育することが困難です。

1935年に健常新生児の糞便から分離されたのが最初です。

その後1978年に抗菌薬関連の偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis)の原因菌として報告されました。

C. difficileの主たる病原因子は、トキシンA,トキシンB,バイナリ―トキシンという3種類の毒素が確認されている。

感染経路

腸内に定着した常在性のC.difficileによるもののほかに、保菌健常者やCDAD発症者の糞便を介した接触感染が主な感染経路です。

C. difficileは、芽胞形成性のグラム陽性偏性嫌気性細菌であるため、形成された芽胞が長期間にわたって環境中に生残し、それが院内感染や再発の感染源となる場合があります。

C. difficileには、毒素産生株と毒素非産生株とが存在します。毒素産生株が、健常者に定着することもあり、検出時に定着しているだけなのかを判断するのは簡単ではありません。

発症まで

クロストリディウム・ディフィシルは、通常は、他の腸内細菌により増殖が抑制されています。

しかし、広域スペクトルの抗菌薬の投与により、大腸菌をはじめとする腸内細菌が死滅して腸内フローラ環境が破壊されると、クロストリディウム・ディフィシルが異常増殖をきたします。

クロストリディウム・ディフィシルは、毒素(トキシンAおよびトキシンBなど)を産生し、C.difficile関連下痢症(CDAD;CDIとも)を引き起こします。

CDI診療ガイドラインでは、24時間以内に3回以上もしくは平常時よりも多い便回数の下痢を生じ、糞便中のCDI検査で毒素陽性もしくは毒素産生性C. difficileを認めるか、内視鏡検査で偽膜性腸炎像を認めるものをCDIと定義しています。

診断

診断は、消化器症状に加えて酵素抗体法(トキシンAとトキシンBの同時検出キット)で確定診断となります。

CD抗原(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)とCD毒素(トキシン)を同時に検出するキット
CD抗原(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)とCD毒素(トキシン)を同時に検出するキット(日水)。

上記の検査キットの添付文書では、CD抗原の感度は 88~94%、特異度は 89~94%。、CD毒素の感度は 73~87%,特異度は 97~98%と紹介されています。

また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)やLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法を用いた糞便中毒素遺伝子検査法(Nucleic Acid Am- plification Test:NAAT)を利用することができます。

PCRを使う場面は、上記の検査キットにて、抗原のみ(+)の場合です。上記の検査キットだけしか使えない状況では、感度を上げるため、C.difficileを培養してから、検査キットに菌液を滴下し、毒素の産生の有無を再検査をしていました(二段階法)。これは、判定まで、最長で2日を要します。しかし、PCR検査であれば、便検体から、直接にCD毒素遺伝子を検出できるため、即日判定が可能です(そのうえ高感度かつ高特異度)。しかも、機器によっては、バイナリートキシンを検出できるものがあります(ジーンエキスパート:GeneXpert ®など)。

なお、病原性を示すにはtoxin Bの産生が必須であることが動物モデルによって示されています。

毒素陰性でNAAT陽性の場合には,少量の毒素産生株の定着である可能性も考慮に入れて診断する必要があります。

培養については、特殊な培地を用います。便からC.difficileを発育させるには、サイクロセリンとセフォキシチンを含有する培地を使用する必要があります。サイクロセリン・セフォキシチン・マニトール寒天培地(CCMA寒天培地)、あるいは、サイクロセリン・セフォキシチン・フルクトース寒天培地(CCFA寒天培地)を使用します。

治療

治療としては、まず脱水を補正します。

そして、経腸栄養、化学療法、下剤など、他の下痢を来す原因を除外します。

なお、経腸栄養剤投与時の下痢の原因には、つぎのものがあり、CD腸炎(CDI)も含まれます。

  1. 投与速度:投与速度が速すぎる
  2. 栄養剤の浸透圧(高浸透圧性の下痢)
  3. 栄養剤の組成(乳糖不耐症,食物繊維の不足など)
  4. 細菌汚染(長すぎる投与時間:8時間以上)
  5. 温度(冷たい栄養剤は腸管を刺激して下痢を誘発する恐れ)
  6. ソルビトール含有薬剤や消化管運動促進剤などの薬剤投与
  7. 短腸症候群や炎症性腸疾患などの病態の合併
  8. CD腸炎の合併

原因抗菌薬を中止し、バンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与が有効です。

プロバイオティクスの投与も有効との報告もあります。

なお、CDトキシン検査が陰性でも、抗菌薬使用中または使用歴があり、下痢を来す他の原因がはっきりしない場合は、治療を検討すべきです。

PPIとCDI発症リスク

経腸栄養やプロトンポンプ阻害薬(PPI) により、CDIの発症リスクが上昇するという話があります。

  • PPI(ランソプラゾールなど)の添付文書には次の記載があります。「海外における主に入院患者を対象とした複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターを投与した患者においてクロストリジウム・ディフィシルによる胃腸感染のリスク増加が報告されている。」
  • PPIにより胃内のpHが上昇することで、胃酸によるC.difficile の殺菌力が低下し、 C.difficileの腸内細菌叢への定着が容易になるという説があります。

 

また、多くのCDI患者は見過ごされている可能性があることが指摘されています。

参考:日本初のCDIに関する多施設共同前向き疫学研究(Clostridioides (Clostridium) difficile infection burden in Japan: A multicenter prospective study)

 

https://www.facebook.com/NTMC.AST/posts/652355061849637/ では、つぎのように記載されています(引用)。

国立感染症研究所の加藤はる先生と多摩総合医療センターの本田仁先生らを中心に、東京医療センターを含めた全12施設(20病棟)が参加して行われた研究がpublishされました。
(参加施設:八戸市立市民病院、亀田総合病院、東京ベイ浦安市川医療センター、東京医療センター、豊川市民病院、東海中央病院、奈良県立医科大学附属病院、刀根山病院、呉医療センター・中国がんセンター、下関市立大学市民病院、産業医科大学病院、沖縄県立南部医療センター)
Bristol stool scale 6-7の便を3回/24h以上認めた患者さんのC.difficileのトキシン、培養検査、遺伝子検査を施行。
・全体のCDI発生率 7.41/10,000患者・日。ICU(5病棟)では22.2/10,000患者・日
・全体のCDI検査頻度は、30.36/10,000患者・日
・CDI検査頻度とCDI発生率は高い相関関係にある(R2=0.91)
・分離したPCRリボタイプは018(29%)、014(23%)、002(12%)、369(11%)。
過去の日本の報告と比べて発生率は高い結果となっており、これまでのCDI発症率は過小評価されていた可能性があります。

以上、ご参考まで。