カテゴリー
医療

風疹の感染経路,病態,診断,治療

風疹の感染ルートや、病態・診断・治療について解説します。

定義

風疹は、トガウイルス科(Togaviridae family)の風疹ウイルスによる発疹性ウイルス感染症です。

感染ルート

感染経路は、鼻汁や気道分泌液の接触または飛沫感染です。

病態

潜伏期は2〜3週間で、全身性に斑状丘疹状の淡紅色紅斑が出現します。

ふつう、色素沈着や落屑を残さず(麻疹と異なる点)、数日の経過で消退します。

発疹出現数日前から3~6週間程度持続する耳介後部・後頭部・頸部を中心としたリンパ節腫脹が特徴です。

なお、症状が認められない不顕性感染は約15~30%程度存在するといわれています。

成人の場合、重症になる場合が多く、39℃以上の発熱と発疹が1週間程度持続したり、脳炎や血小板減少性紫斑病をまれに合併します。

診断

症状発現時から症状消失後5~6週間程度であれば,、enzyme immunoassay(EIA)による風疹特異IgM抗体が検出されます。

なお、偽陰性や偽陽性があることに注意する必要があります。

また、HI(hemagglutination inhibition)法により,急性期と回復期のペア血清で4倍以上抗体価の上昇があれば風疹と診断できます。

なお、軽症の麻疹,伝染性紅斑,溶血性連鎖球菌感染症、エンテロウイルスなどの種々のウイルス感染による発疹症などとの鑑別が重要です。

治療

風疹ウイルスに対する特異的治療法はなく,対症療法となります。

法律関係

感染症法では、5類感染症に属し全数報告とされています。

学校伝染病の第2種伝染病で、発疹が消失するまで登校停止となります。

検査に関しては、検体からの風疹ウイルスの分離培養や、RT-PCR法などによる風疹ウイルスの遺伝子検出は、健康保険適用がありません。

カテゴリー
医療

Q熱の感染経路,病態,診断,治療

Q熱について解説します。

定義

Q熱とは、偏性細胞内寄生菌であるCoxiella burnetiiのヒトへの感染に起因する人獣共通感染症です。

感染ルート

ウシやヒツジなど家畜からの感染例が多いと言われています。

また、保菌動物は多彩であり、都市型の発症例ではイヌ・ネコ・ハトなどが感染源となります。

感染経路は保菌動物由来の分泌物や排泄物の経気道吸入が中心となります。

ヒトからヒトへの感染は成立しないので隔離などは不要です。

病態

急性Q熱は、曝露後1〜3週間の潜伏期に続いて発症します。

曝露後の発症率は約50%と言われています。

高熱、頭痛、倦怠感、筋痛などの症状を呈し、インフルエンザ様の上気道炎や気管支炎・肺炎・肝炎・不明熱などの多彩な病像を呈します。

急性Q熱症例のうち、一部は心内膜炎などの病像を呈して治療抵抗性な慢性Q熱に移行する可能性があると言われています。

急性Q熱は予後良好な一過性の熱性疾患ですが、脳炎・心筋炎などの併発による死亡例も報告されています。

診断

血清抗体価の測定により診断します。ただし、IgG抗体価の上昇には1〜2か月かかる場合が多く、確定に時間がかかるようです。

治療

急性Q熱の第1選択薬はテトラサイクリン系薬です。

βラクタム薬やアミノグリコシドは無効です。

法律関係

抗体検査は保険適用外であるが、疑わしい症例に関しては検査会社を介しての外注、あるいは国内の研究施設、地域の衛生研究所などに依頼をすることも可能です。

カテゴリー
医療

液体ミルクのアレルギーを疑うとき

液体ミルクとアレルギーを簡単に解説します.

アレルギーを疑うとき

液体ミルクを飲ませたら、赤ちゃんが泣きやまない、ウンチに血が混じっていた、などの事例が多くあります。

それは、ミルクアレルギーによる腹痛と、腸管からの下血の可能性が大きいです。

もちろん、便に血が混じる場合に考える病気としては、さまざまなものがあります。

たとえば、「食中毒」、「出血性大腸炎」、「潰瘍性大腸炎」、「便秘に伴う孤立性直腸潰瘍」などです。

しかし、乳児ではミルクアレルギーを第一に考えます。

これは、液体ミルクを与えている赤ちゃんによく発生します。

代用ミルクの大豆乳でも起こります。

アレルギーを防ぐには

近年は、アレルギー症状の強い赤ちゃん向けに、すぐれた加水分解乳が開発されています。

これは、アレルギーを引き起こすタンパク質が、細かく分解されたミルクです。

アレルギーがかなり強い場合は、高度加水分解乳もオススメです。

また、アミノ酸調整乳という液体ミルクも存在します。

いずれも、小児科医と相談してから赤ちゃんに与えるようにすると良いでしょう。

心配しすぎる必要はない

なお、アレルギーを心配しすぎて、はじめから加水分解乳を与える必要はありません。

まれに、『両親がアレルギーだから・・・』といって、はじめから加水分解乳を赤ちゃんに与えるママやパパがいますが、心配しすぎは良くありません。

何らかの症状が出てからでも遅くはないのです。

もっと詳しく知りたい方へ

液体ミルクによるアレルギーは、いわゆる 「消化管アレルギー」です。

正確には、「新生児・乳児消化管アレルギー」と呼ばれます。

このアレルギーは、血便、嘔吐、下痢やそれに伴う栄養障害、体重増加不良を主体とします。

適切な治療が行われずに、症状が慢性化すると(長引くと)、乳児の発育不良になる危険があります。

発症する時期は、大部分が新生児期で、とくに生後1 間後での発症が多くなっています。

検査

消化管アレルギーを疑うときは、スクリー ング検査を行います。

血液検査として、「抗原特異的IgE抗体」の測定や、「ALST」の測定をします。

また、顕微鏡検査として、便粘液中の「好酸球」を確認します。

乳児への治療方法

ふつうの食物アレルギーと同様、治療は、原因となるミルクを飲まないことが基本です。

液体ミルクを中止して、アレルギー用ミルクを飲んだあとに症状が無いこと確認します。

また、仮にスクリーング検査の結果がすべてマイナス(陰性)であっても、症状などから消化管アレルギーを否定できないときは、アレルギー用のミルク(加水分解乳)に変更します。

なお、もしも加水分解乳に対してもアレルギー症状が認め られるときは、アミノ酸調製乳を使用します。

なお、これまでは、アレルギー乳児に、大豆ベースの液体ミルクを与えることがありましたが、同じようにアレルギー症状が認められることが分かってきており、使用を控えることが望ましいと言われています。

治療後の経過

液体ミルクによる消化管アレルギーは、発症しても、2、3歳にもなれば、大部分が乳タンパクへの耐性を身につけられます。

ただし、液体ミルクにアレルギーを示す子どもは、米や大豆にもアレルギーをもつケースがあることが分かっています。

離乳食をはじめるときは、米や大豆を食べさせたときには注意して見守る必要があります。

カテゴリー
医療

液体ミルクで食中毒-原因は保管方法

液体ミルクと食中毒について解説します。

液体ミルクの中に菌がいる

一般に、「加熱調理された食品は安心だ。」と思っている人が多いようです。

たしかに、加熱することで、食中毒菌をはじめ、多くの微生物を殺すことができます。

液体ミルクは、法律で加熱殺菌が義務づけられていますから、大腸菌などの一般的な細菌は死滅します。

しかし、液体ミルクの殺菌方法では、数は少ないものの、乳酸菌をはじめとする何種類かの菌が生き残っています。

ですので、液体ミルクは冷蔵での流通が基本であり、もしも室温で放置すると、じつは、数日で腐敗します。

ただし、中には、完全な殺菌をして無菌充填された液体ミルクも存在し、これは室温での流通が可能です。

どんな菌が残っているか

加熱でも生き残る菌のうち、有毒なものは、いわゆる芽胞菌がほうきんと呼ばれる菌です。

熱に対してきわめて強い菌です。

聞きなれない名前かもしれませんが、たとえば、バチルス属(Bacillus)やクロストリジウム属(Clostridium)に属する菌があります。

もっと具体的には、「セレウス菌」、「炭疽菌」、「破傷風菌」、「ガス壊疽菌(ウエルシュ菌)」、「ボッリヌス菌」などです。

中でも、液体ミルクで、赤ちゃんの食中毒の原因にもっともなりやすいのは、セレウス菌です。

セレウス菌中毒は、嘔吐、下痢などを引き起こし、日本では焼飯やスパゲティーなどが主な原因になっていますが、牛乳に潜んでいるケースが報告されています。

セレウス菌は、加熱でほかの菌が死滅した環境では、むしろ増殖しやすくなります。

つまり、液体ミルクを室温で放置すると、セレウス菌が増殖しているという状態になってしまいます。

菌が混入することもある

ふつう、液体ミルクは、開封して、哺乳瓶に移します。

しかし、その間に、空気中の菌や、手についていた菌が混入したりする場合があります。

たとえば、上に述べた芽胞菌もそうですが、特にやっかいなのは、食中毒を起こす「黄色ブドウ球菌」です。

黄色ブドウ球菌は、増殖のスピードが非常に早く、液体ミルクを室温で放置すると、あっという間に増えてしまいます。

食中毒対策は

液体ミルクによる食中毒を防ぐには、液体ミルクの開封後に赤ちゃんに飲みきってもらうのがベストです。

もし全部を飲みきれない場合は、冷蔵庫に保管しますが、やはり、長時間の保存はせず、数時間以内に飲みきってしまうのがよいでしょう。

なお、室温放置してしまったときの取り扱いには注意が必要です。

まちがって室温放置してしまったものを、どうしても飲ませなければいけないときは、再加熱して飲ませるのが良いでしょう。

芽胞菌は熱に強いとすでに述べましたが、じつは、液体ミルクの中で増えている間は、熱に弱い状態になっているからです。

まとめ

液体ミルクは、母親と父親にとって、とても便利なものです。

しかし、液体なので、菌が増えやすくなってしまうデメリットがあります。

できるだけ清潔な状態にして、数時間以内にすばやく赤ちゃんに飲んでもらうのがベストです。

カテゴリー
遠隔医療

遠隔健康医療相談サービス一覧

オンラインで健康相談や医療相談(あわせて健康医療相談という)ができるようになってきました。

遠隔健康医療相談とは

遠隔健康医療相談えんかくけんこういりょうそうだんとは、自宅でインターネットを利用して、医師や看護師などに健康医療相談ができるサービスです。

どこからでもアクセスできますので、「忙しくて病院に行けない」,「病院に行くべきか悩んでいる」,「旅行先で急に体調が悪くなった」などのときに大きく役立ちます。

ただし、あくまでも相談サービスですので、診断や薬の処方はありません。

オンライン診療(遠隔診療)とオンライン健康相談やオンライン医療相談は、明確に異なります
つまり、オンライン診療(遠隔診療えんかくしんりょう)とは異なります。

また、診療ではないので健康保険は使えません(全額自己負担)。

なお、遠隔診療サービスの一覧については、こちらからご覧ください。

遠隔診療のサービス一覧をみる

遠隔健康医療相談サービス

現在ある遠隔健康医療相談サービスの一覧を紹介します。

ポケットドクター

個人向けの健康相談サービスを実施しています。

スマートフォンやタブレットを使ったビデオ通話で、医師が健康相談を受け付けます。

「予約相談」・「今すぐ相談」の二種類があります。

アプリをみる

運営会社は、MRT株式会社です。

なお、MRT株式会社は遠隔診療サービスにも取り組んでおり、別のアプリで利用可能です(遠隔診療ポケットドクター)。

小児科オンライン

子育て中の親に向けた遠隔健康医療相談サービスです。

LINEやSkypeなどのアプリを使用し、テレビ電話やチャットなど保護者の好きな方法で、小児科医が相談を受け付けます。

運営は株式会社キッズパブリックです。

CLINICS

アプリを利用して医療相談を受けることができます。

さまざまな診療科の専門医による相談サービスを予約できます。

アプリをみる

運営は株式会社メドレーです。

なお、株式会社メドレーは遠隔診療サービスにも取り組んでおり、同じアプリで利用可能です。

緊急のときは

なお、「すぐに病院にいったほうがよいか」などを質問できる、救急用の相談窓口が行政に設置されています。
そのような緊急の相談窓口は、別に紹介しています。

救急医療相談の窓口をみる

カテゴリー
医療

電解質の検査(Na,K,Cl)を解説

血清電解質の検査を解説します。

電解質

生体に含まれる無機質として検出されているものは、60種類程度あります。

無機質は、体重の約5%を占め、Ca、Mg、K、Na、P、Clが、その60~80%を占めます。

一方、ヒトの血液検査の対象として重要なのは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cuなどの陽イオンであり、また、Cl、HCO3、HPO4などの陰イオンです。

中でも、ヒトの生体内で重要な働きをする血中の無機質が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)などの電解質です。

ナトリウム、カリウム

代謝について

ナトリウム(Na)は細胞外液、カリウム(K)は細胞内液中の無機質の大部分を占めています。

ナトリウムの生理的役割は、下記の4つがあります。

1)酸塩基平衡の維持
2)細胞外液の浸透圧の維持
3)神経,筋肉の興奮性の維持

また、カリウムの生理的役割は,下記の4つがあります。

1)酸塩基平衡の維持
2)細胞内浸透圧の維持
3)細胞膜電位の維持
4)筋収縮の因子となる

ナトリウムおよびカリウムの代謝は、主に、腎臓で調節されています。

副腎皮質から分泌される鉱質コルチコイドが関係しています。

たとえば、アルドステロンは、近位尿細管および遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収を促進したり、遠位尿細管におけるカリウムおよび水素生オンの排出を促進したりします。

検体について

血清中のナトリウム濃度やカリウム濃度を測定します。

血液検体は、採血後に、直ちに血清分離することが望ましいです。

一定時間、全血のまま放置すると、ナトリウムは血球中に移行し、後に血清分離したときに、Na濃度の低下となるからです。

また、溶血によって血清K 値は高くなり、さらに、凝固阻止剤としてNaを含むもの(ヘパリンNaやクエン酸Naなど)を用いると、血清Na値が高くなります。

基準範囲

血清Naおよび血清Kの基準範囲は下記のとおりです。
・血清Na 135~145mEq/L (135~145mmol/L)
・血清K 3.5~5.0mEq/L (3.5~5.0mmol/L)

臨床的意義

ナトリウム

高ナトリウム血症は、糖尿病、尿崩症、原発性アルドステロン症、クッシング症候群などに見られます。

低ナトリウム血症は、激しい下痢、嘔吐、腎不全、粘液水腫などに見られます。

カリウム

高カリウム血症は、腎不全や、高度の脱水、アジソン病などに見られます。なお、高カリウム血症が生ずると、心臓・中枢袖経系の興奮が異常に高まり、最後に心臓が停止します。

カリウムが高値になる原因は、Kの摂取増加、腎臓のK排出低下、Kの細胞内から細胞外への移動などがあります。

低カリウム血症は、手術後や、栄養不足の場合、あるいは、,副腎皮質ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンが過剰に投与されたときなどに見られます。なお、低カリウム血症になると、筋肉に脱力感や弛緩性麻揮が起こり、ついで神経過敏、昏睡、深部腱反射消失などが認められます。

Kが低値になる原因は、Kの摂取や吸収の不足、腎臓のKの排出増加、Kの細胞外から細胞内への移動などがあります。

薬剤の影響

ACTHや、コルチコステロイドの投与により血潰Na値は高くなり、血清K値は低くなります。

また、アセタゾラミド、クロロサイアザイド、ジギタリスなどの投与により、低カリウム血症となることがあります。

測定法

測定法としては、イオン選択電極法、炎光光度分析法、酵素法などがありますが、検査室で最も使用されているのはイオン選択電極法です。

イオン選択電極法は、Na電極として硝子電極やクラウンエーテル電極を使い、K電極としてニュートラルキャリア膜電極やクラウンエーテル電極を用います。

クロール

代謝について

人の体内のClイオンは、主に体液中に存在します。約70%が細胞外液中に、約30%が細胞内液中に存在します。

Clイオンは、水分代謝や浸透圧の調節、酸塩基平衡の維持を担っています。

生体内のClは、ナトリウムとほぼ並行して増減する場合が多いです。

ただし、酸塩基平衡障害の場合には、Clイオンは、Naと独立して、重炭酸イオンと反対方向に増減します。

なお、血漿中のCO2が放出され、CO2の圧が変化すると、陰イオンの不足を補うために赤血球中のClイオンが、血漿中に移動します(塩素移動と呼ばれます)。

検体について

血清中のクロール濃度を測定します。

なお、全血で室温放置すると、CO2の放出により、塩素移動が起こりますが、反対に血球から血漿中にH2Oの移動が生じて相殺されるため、放置して1時間ぐらいはCl値に変動はないといわれています。

基準範囲

血清Clの基準範囲は、96~107mEq/L (96~107mmol/L)です。

なお、食事後、胃液の分泌が促進されると血清Clは低値となりますが、血清中の重炭酸イオン(HCO3-)が増量することでバランスが保たれます。

臨床的意義

Clが高値を示す疾患には、過呼吸呼吸性アルカローシス、高ナトリウム血症、低蛋白血症、クッシング症候群、腎炎などがあります。

Clが低値を示す疾患には、呼吸性アシドーシス、低ナトリウム血症、代謝性アルカローシス、嘔吐、アジソン病などがあります。

なお、Clは、Naとほぼ同じように変動しますが、 Naの変動や酸塩基平衡の異常に伴う二次的な変化が主体であり、Cl自 体の異常値が臨床上問題になることはあまりありません。

薬剤の影響

炭酸デヒドロケナーゼ抑制剤や塩化アンモニウムの過剰投与によって、高値を示すことがあります。

また、利尿剤の投与により低値を示すことがあります。

測定法

Clの測定法には、比色法(ハミルトン法:チオシアン酸第2水銀法)、モール法、滴定法(シャールズ・シャールズ法)、電量滴定量(クロライドメーター法:銀電極法)、イオン選択電極法、酵素法などがあります。

現在は、イオン選択電極法が一般的です。

カテゴリー
生物

上皮の分類について

上皮の分類は、以下のようになります。

大きくは、単層上皮と重層上皮に分類されます。

単層上皮

単層上皮とは、一層の細胞からなる上皮です。

拡散、浸透、透過、分泌、吸収を行う部位にみられます。

単層上皮は、詳細には、単層扁平上皮、単層立方上皮、単層円柱上皮に分けられます。

単層扁平上皮

単層扁平上皮とは、扁平な上皮細胞が1層に並んだものです。

心臓、血管、リンパ管、肺胞、腎臓のボーマン嚢や鼓膜の内側などの表面を覆います(内皮)。

また、腹膜のような漿膜の上皮層をなします(中皮)。

単層立方上皮

単層立方上皮とは、丈の低い六角柱状の細胞が1層に並んだものです。

縦断像では、四角形の細胞の中央に円形の核が見られます。

卵巣の表面や、眼の水晶体の前面を覆います。

また、眼の網膜色素上皮や、腎尿細管や分泌腺などの小さな導管を形成します。

さらに、甲状腺のような腺の分泌部を形成します。

単層円柱上皮

非線毛単層円柱上皮

分泌と吸収の役割をもち、消化管、腺の導管、胆嚢の内面を覆います。

吸収上皮細胞(微繊毛を持つ)と、杯細胞(頂上部から粘液を分泌)とに分類されます。

線毛単層円柱上皮

上部気道系の一部、卵管、子宮、副鼻腔、脊髄の中心管の内面を覆います。

重層上皮

重層扁平上皮

角化重層扁平上皮

皮膚の表面をなします。

非角化重層扁平上皮

口腔、食道、口頭蓋の一部、膣の内面、舌の表面などを覆います。

重層立方上皮

成人の汗腺、食道腺の導管、男性尿道の一部を覆います。

重層円柱上皮

尿道の一部、食道腺などの太い腺の導管、肛門部の粘膜の一部、眼の結膜の一部を覆います。

移行上皮

移行上皮は腎盂、尿管、膀胱の上皮です。

形態は多列を示しますが内容積に応じて上皮の高さを変化させます。

カテゴリー
生物

ホメオスタシスとフィードバックシステム

ホメオスタシスを分かりやすく解説します。

ホメオスタシスとは

人体は、外部環境が変化しても、内部環境を一定の状態に維持します。

これを「ホメオスタシス」あるいは「恒常性」といいます。

つまり、生体では、外部環境が変化しても、内部環境の浸透圧、PH、温度、糖、タンパク質濃度などが一定に保たれます。

特に、細胞は、体液で囲まれているので、外部環境の直接の影響を受けません。

ホメオスタシスを支える仕組み

ホメオスタシスは、ネガティブフィードバックシステムと、ポジティブフィードバックシステムとにより支えられています。

ネガティブフィードバックシステム

外部の刺激に対して、逆の反応が起きる場合のシステムを、ネガティブフィードバックシステムといいます。

たとえば、血管壁に存在する圧感受性神経細胞は、血圧の上昇を感知し、神経インパルスを脳に送ります。

その後、脳から心臓へ、心拍数を低下させる神経インパルスが送られます。

ネガティブフィードバックシステムが働く対象の主なものには、血圧のほかにも、血糖や、体温などがあります。

ボジティフフィードバックシステム

外部の刺激によって反応が促進されたり、強められたりする場合のシステムを、ボジティブフィードバックシステムといいます。

つまり、効果器は、調節されている状態に生じた最初の変化を、さらに増強する生理学的反応を引き起こします。

ボジティフフィードバックシステムが働く対象の主なものには、排卵、出産、血液凝固などがあります。

カテゴリー
生物

細胞の構成要素の解説

細胞の構造は、「形質膜(細胞膜)」、「細胞質」、「核」に分類できます。

形質膜(細胞膜)

形質膜は、主に、リン脂質と膜タンパク質とからなり、ほかに少量のコレステロ-ルと糖脂質を含みます。

形質膜は、脂質二重層であり、細胞外の環境から細胞内の環境を区別する役割を持っています。

形質膜は、細胞内外への物質の流れを調節したり、細胞と細胞との伝達や、細胞と細胞外環境との連絡をしたりします。

細胞質

形質膜と核との間にある細胞内物質からなる部分です。
ここでいう細胞内物質には、溶液部分(サイトゾルと呼ばれます)と、細胞小器官とがあります。

サイトゾル

サイトゾルは、細胞小器官を取り巻く細胞質の溶液部分で、全細胞容積の55%を占めます。

サイトゾル中には、さまざまなイオン類、グルコース、アミノ酸類、脂肪酸類、タンパク質類、脂質類、ATP、老廃物などが含まれています。

細胞小器官

細胞骨格

マイクロフィラメント、中間径フィラメント、微小管の3種類の異なるタンハク質のフィラメントからなる網状構造です。

中心体

核の近くには、一対の中心子、および、中心子周辺物質から構成される「中心体」が存在します。

中心子は、円筒構造で、各中心子は、3つ組の微小管(トリプレット)9つが円形に配列されています。

中心子周辺領域は、細胞分裂時に、紡錘体の成長を調節します。また、中心子周辺領域は、非分裂細胞において、微小管の形成を調節します。

線毛・鞭毛

線毛や鞭毛は、細胞表面に突き出た運動性の突起です。

リボソーム

リボソームは、タンパク質の合成の場です。

リボソームは、リボソームRNAおよびリボソームタンパク質を含みます。

リボソームは、大小二つのサブユニットからなります。なお、大サブユニットと、小サブユニットは、核小体で作られます。

リボソームには、核膜の外表面や小胞体の膜に付着しているもの、他の細胞質の構造物とは接着せずに遊離しているもの(遊離リボソーム)、ミトコンドリアの中に存在するものがあります。

リソソーム

ゴルジ装髄でつくられた小胞で、消化酵素を含んでいます。

小胞に融合し内容物を消化する役割があり、古い細胞小器官を消化〈自食作用)し、細胞全体を消化し(自己融解)、また、細胞外物質を消化します。

ペルオキシソーム

酸化酵素をもった小胞です。危険物質を無毒化する働きをします。

酸化酵素としては、たとえば、オキシターゼや、カタラーゼがあります。

プロテアソーム

タンパク質を切断する酵素であるブロテアーゼ含む小さな構造物です。不要なタンパクなどを小さなペプチドに分解します。

ミトコンドリア

外膜、内膜、クリスタ、マトリックスからなり、細胞のほとんどのATPを産生する反応が起る場所です。

核は、細胞の構造や、活性を調節する遺伝子を持っています。

核の内部は、主に3つの要素からなります。

・クロマチン(染色質)
・核小体
・核質

さらに、核の外側は、「核膜」に覆われています。

クロマチン

クロマチンはDNAとタンパク質の複合体で、「染色体」がほどけて脱コイル化した状態のものです。

なお、染色体とは、クロマチンが有糸分裂や減数分裂が起こるときに高度に凝縮して密にコイル化したものです。

核質

核質は、クロマチン間果粒、クロマチン周辺果粒、核マトリックスからなります。

核小体

核小体は、核内にある濃染構造物です。

膜に包まれておらず、細胞分裂のときに消失し、間期のときのみ観察可能です。

rRNA合成と、大小リボソームサブユニットの構成に関わります。

核膜

核膜は、内核膜および外核膜の2枚の単位膜からなります。

内核膜は、中間径フィラメントからなる網目構造(核ラミナ)によって裏打ちされています。

外核膜は、中間径フィラメントからなる網状構造に囲まれています。

内核膜と外核膜の間は、核周囲槽というスペースで隔てられています。

核膜には、核膜孔という穴があり、核と細胞質の物質移動に用いられます。

カテゴリー
生物

人体の構成について

人体の構成について、やさしく解説します。

人体の構成

人体の構成は、6つのレベルで語ることができます。

物質レベル、細胞レベル、組織レベル、器官レベル、器官系レベル、個体レベルです。

1.物質レベル

原子としては、たとえば、炭紫、窒素、水素などがあります。
また、分子の例として、DNAや、ヘモグロビン、グルコース、ビタミン類などがあります。

2.細胞レベル

細胞は、分子が結合したものであり、構造的・機能的な基本単位です。
体内には、細胞が約60兆もあります。筋細胞、神経細胞、血液細胞などの、様々なタイプの細胞が存在します。
なお、細胞の中には、核、ミトコンドリア、リソソームなどの、細胞小器官(オルガネラ)という特別な構造があります。

3.組織レベル

組織は、細胞と、その周囲の物質をあわせたものです。
体内の組織は、「上皮組織」、「結合組織」、「筋組織」、「神経組織」の4種類に分けられます。

4.器官レベル

複数の組織により、器官が形成され、特定の機能を果たしています。
たとえば、「心臓」、「肺」、「胃」「肝臓」、「脳」は、器官です。

5.器官系レベル

器官系は、共通の機能をもつ関連する器官で構成されます。
たとえば、消化器系は、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、小腸、大腸などから構成されます。
ほかには、外皮系、骨格系、筋系、神経系、内分泌系、心臓血管系、リンパ・免疫系、呼吸器系、生殖器系、泌尿器系があります。

6.個体レベル

個体レベルは、もっとも大きな構築レベルであり、体内の器官系の全てにより構成されます。