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妊娠中にインフルエンザワクチンを打つべき理由を解説

インフルエンザワクチンは妊娠中の妊婦にも推奨されています。

理由

インフルエンザワクチンは、殺したインフルエンザウイルスや、インフルエンザウイルスの一部を使ったものです(不活化ワクチン)。

つまり、生きていないインフルエンザウイルスを使っています。

したがって、ワクチン接種をしても、胎児に影響を与えることはありません。

また、ワクチン接種により胎児に異常があったとの報告はありません(先天異常なし)。

そして、インフルエンザワクチンは、接種から効果が出るまでは約2週間程度であり、ワクチンの効果は、約5ヶ月間持続します。

したがって、接種の時期としては、国内での流行期間が12月から3月のため、遅くとも12月にはインフルエンザワクチンを接種することが望まれます。

ちなみに、インフルエンザワクチンの効果は、100%ではありません。

ただし、流行ウイルスと同じタイプのワクチンを接種していた場合、インフルエンザHAワクチンでは予防効果は70〜90%と言われています。

以上のように、ワクチン接種は、インフルエンザ予防の効果的な手段であるため、妊娠期間を無事に過ごすために、妊婦へのワクチン接種は勧められています。

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表皮ブドウ球菌について

表皮ブドウ球菌とは

表皮ブドウ球菌とは、ブドウ球菌の一種であり、学名をStaphylococcus epidermidisといいます。

一般に、ブドウ球菌は、コアグラーゼ陽性である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative Staphylococcus species:CNS) とに大別されます。

十数種あるCNSのうち代表的なものが表皮ブドウ球菌です。

【グラム染色標本のイメージ】

本菌は、皮膚に常在しており、病原性に関しては、黄色ブドウ球菌より弱いものです。

毒素も産生しません。

ただし、従来はその病原性があまり問題とならなかったものの、最近になって、医学の急速な進歩に伴い、易感染患者 compromised host(patient)が急増しています。

このような易感染患者にとっては、表皮ブドウ球菌は大きな問題となります。

培養

・至適発育温度は、37度です。

・好気性で培養し、18~24時間で集落を形成します。

・血液寒天培地で、直径1mm前後の白色の集落を形成します。

・基本的には非溶血の集落ですが、一部の菌株は、血液寒天培地でβ溶血を示します。

感染と治療

日和見感染の原因菌として、尿路感染症、感染性心内膜炎、カテーテル菌血症などを起こします。

皮膚などの常在菌であるため、治療にあたり最も大切なことは、起炎菌であるか汚染菌であるかを、感染部位や症状などから判断することです。

薬としては、β-ラクタム薬などが用いられます。

ただし、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis:MRSE)と呼ばれる耐性菌や、バンコマイシン耐性表皮ブドウ球菌の報告もあるので、抗菌薬の選択は注意すべきです。

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黄色ブドウ球菌について

黄色ブドウ球菌とは

概要

黄色ブドウ球菌は、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)のうち、コアグラーゼ陽性のブドウ球菌です。

通性嫌気性のグラム陽性球菌です。

乾燥や塩分に強い菌で、ヒトの皮膚、鼻腔の粘膜、腸管内に常在しています。

もっとも分離頻度の高い部位は鼻前庭や鼻咽腔で、およそ20~30%のヒトに定着しています。
その他の定着部位としては皮膚、口腔、咽頭、消化管、膣なとがあります。

さまざまな薬に耐性をもつ黄色ブドウ球菌は、特にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれます。

【グラム染色標本のイメージ】
 

詳細

性状

直径0.5~1.0μmの球菌です。

学名の由来となったギリシャ語のブドウの房(Staphyle)が意味するように、ブドウの房状に配列します

鞭毛や芽胞はなく、一部に、莢膜をもつものがあります。

カタラーゼ試験は陽性、コアグラーゼ試験も陽性です。

また、マンニット分解です。

さらに、5~7.5%の食塩存在下でも発育可能(食塩抵抗性あり)です。

ほかに、ペニシリン分解酵素を産生します。

培養

・通性嫌気性菌
・普通寒天培地によく発育
・淡黄色~黄色の集落を形成
・至適発育温度は、35~37度
・至適発育pHは、7.2~7.4
・血液寒天培地上では、β溶血環を形成

病原因子

代表的なものを紹介します。

・コアグラーゼ
ヒトの血漿を凝固させます。

・溶血毒
赤血球を溶血させる毒素です。
α,β,γ,δの4種類があります。重要なのは、α毒素です。

・エンテロロキシン
耐熱性の毒素です。潜伏期は2~6時間と短く,嘔気,嘔吐,下痢を起こします。

鑑別

グラム染色が黄色ブドウ球菌の像であり、さらに、カタラーゼ試験が陽性、かつ、コアグラーゼ試験が陽性の場合、S.aureusと考えてほぼ間違いありません。

なお、ほかの鑑別ポイントには、クランピング因子(フィブリノゲンに作用してフィブリンを析出させる因子)が陽性、DNase産生性、マンニットおよびキシロースを分解し酸を産生する点などがあります。エンテロトキシンについては、逆受身ラテックス凝集反応を利用した検出キットが利用できます。

感染と症状

黄色ブドウ球菌により様々な疾患が引き起こされます。

伝染性膿痂疹(とびひ)、フルンケル、癖(よう)などの皮膚感染症、軟組織感染症、肺炎などの呼吸器感染症、食中毒などの腸炎、骨髄炎、敗血症、心内膜炎などです。

また、毒素によって引き起こされる疾患として、1)Staphylococcal scalded skin syndorome(SSSS)、2)Toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)、3)Toxic shock syndrome(TSS)などがあります。

治療は基本的にセフェム系の抗菌薬(セファゾリンなど)で行います。

なお、疾患によっては長期の治療が必要になります。

たとえば、心内膜炎なら4週間、骨髄炎なら6~8週間程度の治療が必要です。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は、mec遺伝子をもつことにより、ペニシリン結合タンパク「PBP2’(PBP2プライム)」を産生するため、メチシリンに代表されるβ-ラクタム薬に耐性を示します。

院内感染を起こす菌として問題になります。

院内で問題となるのは、手術部位関連感染症、カテーテル関連血流感染症、人工呼吸器関連肺炎などです。

治療薬はバンコマイシンVCM,テイコプラニンTEIC,アルベカシンABK、リネゾリドLZDなどに限られます。

ただし、近年,バンコマイシン耐性MRSA(VRSA)が出現していることが問題になっています。

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院内残薬問題とは?

院内残薬問題とは、抗ガン剤などを調整するときに、余った薬剤を捨ててしまう問題をいいます。

たとえば、110mgの薬剤を患者に与えるとき、100mgの製品と、20mgの製品を組み合わせて調剤し、残った10mgを廃棄します。

これは、残った薬剤を保存することで、品質が劣化したり、汚染菌が混入したりするリスクを排除するために行われています。

なお、病院は、使用した薬剤については、製品ごとに保険請求できるため、余った分を捨てても、収入に影響がありません。

つまり、経営に影響がないため、薬剤を廃棄しないように努力する動機がありません。

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免疫細胞の種類

免疫に関わる細胞を紹介します。

病原体を食べる細胞

好中球

好中球は、体内に入ってきた病原体を食べて消化する細胞です。

好中球は、成人の白血球のうち、最も多く存在する細胞です。

感染が起こると、反応して一気に数が増えます。

通常は、末梢白血球のうち、約50~70%を占めます。

分葉型の核が特徴で、2~3カ所のくびれの入った核となっています。

強い貧食能を有し,細胞質内にはミエロペルオキシダーゼなどの活性酸素を産生する酵素や、蛋白分解酵素を含んだ順粒が多く存在しています。

感染および炎症部位にすみやかに集積することから、感染の初期防御に重要な細胞です。

単球、マクロファージ

好中球と同じく、体内に入ってきた病原体を食べる役割のある細胞です。

単球は、リンパ球より大型の単核細胞です。

血液中を循環しており、脾臓や肺胞などの組織に移行・定着することで、最終的にマクロファージと呼ばれる食細胞に分化します。

マクロファージには強い貧食能、殺菌能および抗原提示能があり、病原体(外来抗原)の直接的排除ならびにリンパ球への抗原の受け渡しを主な役割としています。

病原体に侵入された細胞を破壊する細胞

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)

NK細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を破壊する細胞です。

NK細胞は、穎粒を有したリンパ球様細胞で、末梢血には15%前後存在します。

自然免疫に関与し、大きさはリンパ球よりも大きいです。

強いインターフェロン‐γ産生能を有しています。

NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)

NKT細胞は、NK細胞と同様に、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を破壊する細胞です。

NKT細胞は胸腺外で分化し、NK細胞とT細胞の両方の性質をもっています。

腫瘍免疫に重要な役割をしており、NK細胞抗原レセプターとT細胞抗原レセプターの両方を発現しています。

そのほかの細胞

リンパ球

リンパ球は、小型の単核細胞です。

核の占有率は高く、細胞質はわずかです。

また、穎粒を有しません。

さらに、リンパ球の細胞表面には、病原体の一部(抗原)を特異的に認識する抗原受容体が発現しています。

リンパ球の分類

リンパ球は、胸腺(thymus)で分化・成熟する「Tリンパ球」、および、骨髄(bonemarrow)で分化・成熟する「Bリンパ球」の2種類に大別されます。

Tリンパ球は、常者末梢血中リンパ球の70~80%を占め、Bリンパ球は、健常成人末梢血リンパ球の5~15%を占めます。

・Tリンパ球

Tリンパ球は、さらに、いくつかのグループに分類されます。

例えば、抗体の産生や他の免疫担当細胞の活性化を補助する「ヘルパーTリンパ球(Th)」や、感染細胞や腫瘍細胞を攻撃する「細胞傷害性Tリンパ球(Tc)」や、過剰な免疫応答を抑制する「調節性Tリンパ球(Tr)」などです。

Tリンパ球は、細胞表面にT細胞受容体(TCR)を発現し、さらに、CD4またはCD8分子を発現しています。

Tリンパ球は、それ自体では抗原を直接認識することはできず、マクロファージ・樹状細胞などによる抗原提示が必要です。

・Bリンパ球

Bリンパ球は、細胞表面に、Tリンパ球とは異なった抗原受容体(BCR)が存在します。

Bリンパ球は、BCRを介して抗原を直接認識して活性化し、最終的に形質細胞に分化して免疫グロブリン(抗体)を分泌します。

リンパ球の循環

リンパ球は骨髄で生まれ、リンパ節、胸腺、扁桃、脾臓、腸管のバイエル板(これらの器官は「リンパ組織」と呼ばれています)に多く存在します。

リンパ球はひとつの場所にとどまっておらず、リンパ球は各リンパ組織から血管(またはリンパ管)というふうに絶えず体内を循環しています。

このリンパ球の循環(特にあるリンパ組織から循環し、再びもとのリンパ組織に戻ってくること)をリンパ球の「ホーミング:homing」といいます。

参考:リンパ管について

ヒトの体には血管のほかにもう一つ、リンパ管という管が、組織のすみずみまで分布しています。

リンパ管には、小さい穴が多数あり、まわりの組織から出た水分、分泌物(組織液)、組織中のリンパ球・マクロファージ・樹状細胞などがその穴からリンパ管に入ります。

末梢のリンパ管は体の中心部に向かっていくうちに合流し、リンパ本幹に集められ、リンパ液は、最後に太い静脈に注ぎ込まれます。

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ファージ療法とは

ファージとは

ファージとは、バクテリオファージとも呼ばれる、細菌にのみ感染するウイルスの総称です。

環境中だけでなく、人体にもファージは存在しています。

ファージ感染により菌は溶菌されて死滅する場合があり、これは、環境やヒトの細菌のバランスに影響を与えていると言われています。

ファージ療法とは

ファージ療法(ファージセラピー)とは、ヒトにファージを投与することであり、細菌感染の治療を目的としています。

ファージ療法は、感染症治療法として研究されてきた歴史的な経緯はありますが、1940年代の抗生物質の登場により、研究されなくなってしまいました。

しかし、近年、さまざまな抗生物質に対する耐性菌(多剤耐性菌)の出現が問題になり、ファージ療法が再び注目されています。

理由は、ファージ療法の殺菌メカニズムが、抗生物質のそれとは異なるため、薬剤耐性菌についてもファージが有効だからです。

また、抗生物質は、ヒトに副作用を与える場合がありますが、ファージは副作用がほとんどないことも、注目の理由となっています。

なお、ファージ療法は、一部の国(ポーランド、グルジア、ロシア)では現に実施されているようです。

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疫学で用いる指標

疫学で用いる指標について解説します。

ここでは、代表的な指標である罹患率、有病率、致命率、粗死亡率、死因別死亡割合、PMIを取りあげます。

罹患率

罹患率は,その時点におけるその疾病への罹りやすさ(リスク)を表します。

罹患率は疾病と要因との因果関係を探る場合に有用な指標です。

また、「病気に罹らないこと」を目指す第一次予防の効果の指標にも、罹患率が用いられます。

罹患率(狭義)

罹患率とは、一定期間にどれだけの疾病者が発生したかを示す指標であり、発生率の一種です。

分母は、人-年法により求めます。

なお、罹患率と、後述する累積罹患率とでは分母のとり方が異なり、次の計算方法で求めます。

罹患率 = (一定の観察期間内に新発生した患者数)/(危険曝露人口の一人一人の観察期間の総和)

この式で、危険曝露人口とは、疾病に催りうる危険性(リスク)を持った集団のことをいいます。たとえば、子宮がんの場合には「女性」であり、また、はしかの場合には「はしかの既往歴がない者」となります。

また、分母では、観察された対象者数と各対象者についての観察期間を同時に考慮します(いわゆる「人-年法」)。

累積罹患率

累積罹患率は、下記の式に基づき、ある対象集団を一定期間追跡することにより計算されます。

途中で追跡不能となった例は脱落例として解析からは除外します。

累積罹患率 = (一定の観察期間内に新発生した患者数)/(危険曝露人口の観察開始時点での人数)

有病率

有病率は,ある一時点において、疾病を有している人の割合です。

有病率によりある時点での患者数を評価できます。

有病率 = (集団のある一時点における疾病を有する者の数)/(集団の調査対象全員の数)

なお、有病率は、有病期間の長い病気のほうが高くなる傾向があります。

致命率

致命率とは、ある疾病に罹った人が、その疾病で死亡する割合です。

致命率 = (ある疾病による死亡率)/(ある疾病の罹患数)

なお、致命率は、十分に長い観察期間をとった場合、下記の関係が成り立ちます。

致命率 = (死亡率)/(罹患率)

粗死亡率

粗死亡率は、ある集団の1年間の死亡数を、その年の人口で割ったものです。

ちなみに、死亡率は年齢によって異なるので、複数の集団を比較したり、同じ集団でも異なる年次で比較したりする場合、年齢調整死亡率、あるいは、標準化死亡比を利用します。

死因別死亡割合

死因別死亡割合は、ある特定の死因が、全死亡数に占める割合です。

死因別死亡割合は、疾病の死亡数の増加、および、他の疾病の死亡数の減少の両方の影響を受けますので、死因別死亡割合の増減が必ずしもその疾病の死亡数や死亡率の増減を意味すると断定はできません。

PMI

PMIは、50歳以上の死亡数が、全死亡数に占める割合です。

PMI (%) = (50歳以上の死亡数)/(全死亡数)

PMIは、年衛生状態の国際比較の指標のひとつとして用いられています。

すなわち、PMIが高い地域は、若年者の死亡が少なく、健康水準が高いと傾向にあります。

なお、PMIは人口構成の影響を受けるので.人口榊成が異なる集団間で比較する場合は注意が必要です。

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腫瘍マーカーの種類

腫瘍マーカーとは、癌の診断、癌の病状の経過や、癌の予後の指標となるものです。

腫瘍マーカーは、下記の5種類に分類されます。

①癌胎児性蛋白質
②癌関連抗原
③アイソザイム(正常と異なるアイソザイムパターン)
④ホルモン(ホルモンの異常)
⑤癌関連遺伝子または産物

測定法としては、腫瘍が小さいときには極めて微量しか存在しないので、RIA法、EIA法、ラテックス凝集法、IRMA法、化学発光免疫測定(CIA)法などが用いられます。

腫瘍マーカーの具体例

AFP(α胎児タンパク)

AFPは、590個のアミノ酸からなり、1本の糖鎖をもつ蛋白質です(分子量約7万)。

AFPは、肝細胞の描化に伴い、産生されるようになります。

成人では、肝細胞癌で要請率が高く、乳幼児では卵黄嚢腫で陽性率が高いです。

成人の上限基準値は4ng/mlです。

一般には、10または20ngを低濃度カットオフ値とし、400ngを高濃度カットオフ値とします。

境界域では、良性の肝疾患、早期汗癌、転移性の肝癌などが認められます。

高濃度カットオフ値(400ng)を超えた場合、肝癌が疑われます。

なお、実際の診断では、PIVKA-Ⅱなど他の腫瘍マーカーとともに病態が判断されます。

CEA(癌胎児性抗原)

大腸癌から抽出される抗原ですが、正常の胎児の大腸にも存在するため、このように呼ばれています。

CEAは分子逓約18万の酸可溶性糖蛋白であり、ペプチド部分は668個のアミノ酸よりなります。

特定方法としては、モノクロナール抗体を使った高感度の免疫測定法です。

カットオフ値は、測定環境ごとに異なります。

たとえば、2.5ng/ml、3.5ng/ml、4.0ng/ml、5.0ng/ml、10ng/mlといった具合です。

すい癌、胆道がん、大腸がんで陽性となる確率が高いです。

なお、陽性率の高い順に転移性肝癌、大腸癌、膵癌、胆道癌、胃癌となります。

CA19-9

CA19-9は、CEA、AFPに次いで広く利用されています。

CA19-9は、大腸がん培養細胞SW1116を免疫原として、マウスを免疫して作成したモノクロナール抗体NS19-9が認識する抗原として定義されていました。

ただし、エピトープがシアリルLe^aであることが判明した後、シアリルLe^aに対するモノクロナール抗体を使用した測定キットが開発されて以降、その定義は曖昧になっています。

カットオフ値は、測定環境ごとに異なります。

膵臓がん、胆道がん、大腸がんで陽性となることが多いです。

ほかには、陽性率の高い順に、胆嚢癌、胆管癌、胃癌、肝癌、腸癌などがあります。

PSA

PSAは、分子量が約33000の、前立腺に存在するセリンプロテアーゼです。

血清中では大部分はα1アンチキモトリプシン(ACT)などと結合しています。

PSAの機能としては、キモトリプシン様活性をもつため、精漿の凝固阻止などに働きます。

臨床的意義ですが、前立腺癌のスクリーニングや早期診断に広く用いられています。

鑑別には、PSA密度(PSA値/前立腺体積)が0.58以上、PSA速度(PSA増加速度/年)が0.75μg/年以上、PSA-ACT値/総PSA値の比が0.66以上となれば、前立腺癌の可能性が高いといわれています。

また、陽性を示す場合には、前立腺がんのほかにも、前立腺肥大症や、前立腺への機械的な刺激があった場合が知られています。

PIVKA-II

血液凝固因子の第2因子は肝臓で合成されますが、この第2因子は、ビタミンKが合成に必要です。
しかし、ビタミンKが欠乏すると、活性をもたない「PIVKA-II」、すなわち、protein induced by vitamin K absence or antagonist-II)が合成されます。
PIVKA-IIは、肝細胞癌は50~60%の場性率を示します。
ほかにも、新生児出血症、長期経静脈栄養、閉塞性黄疸、ワーファリン投与など、ビタミンK欠乏により増加します。
なお、肝癌は、AFPとの組み合わせで診断率が上昇します。

CA125

CA125は、ヒト卵巣の漿液性癌由来の培養系(OVCA433)を用いて作製したモノクローナル抗体「OC12」により認識される抗原です。

基準値は、35以下(U/ml)です。

CA125は、卵巣癌では陽性率が極めて高く、漿液性で約90%、粘液性で約60%です。

そのほか、肝癌、胆謹癌、膵癌、子宮内膜癌などでも、では30~50%程度の陽性率を示します。

また、腹膜炎や胸膜炎でも陽性を呈するとも言われています。

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急性腎障害AKIと慢性腎臓病CKD

急性腎障害AKI

急激に腎機能が低下します(48時間以内)。

血清クレアチニン値が、0.3mg/dl以上上昇したり、1.5倍以上に上昇したりします。

または、尿量が0.5ml/kg/時 以下が6時間以上続きます。

慢性腎臓病CKD

各種検査で腎障害が明らかであること、特に、0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在と、GFRが60ml/min/1.73m2未満であることが重要です。

AKIとCKDの違い

進行速度

急性腎障害AKIは、時間・日単位で早く悪化します。

慢性腎臓病CKDは、年単位でゆっくり悪化します。

原因

急性腎障害AKIは、脱水、ショック、薬物、手術、急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎などが原因です。

一番多い原因は、敗血症といわれます。

慢性腎臓病CKDは、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などが原因です。

治療方針

急性腎障害AKIは、腎機能の回復を目的に治療します。

慢性腎臓病CKDは、腎機能の悪化を防ぐ目的で治療します。

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視床下部と甲状腺の機能と役割

以下では、互いに強く関連する視床下部と甲状腺の機能と役割について解説します。

視床下部と甲状腺

甲状腺は、右葉と左葉とからなり、気管の左右に位置します。

甲状腺を形作るのは、甲状腺濾胞です。濾胞の壁は、「濾胞細胞」という細胞からなります。

濾胞細胞は、サイロキシンおよびトリヨードサイロニンという2種類のホルモンを産生し、これらのホルモンは、濾胞細胞の中心に蓄えられます。

ちなみに、サイロキシンは、ヨウ素を4つもつため、T4とも呼ばれ、また、トリヨードサイロニンは、ヨウ素を3つもつため、T3とも呼ばれます。T4は、細胞により取り込まれると、多くの場合、ヨウ素を1つ失い、T3に変換されます。

さらに、濾胞と濾胞との間には、「傍濾胞細胞」という少数の細胞があり、カルシトニンを産生します。

T4とT3の作用

体内のほとんどの細胞は、甲状腺ホルモン受容体を持っています。

タンパク合成、ATP産生、トリグリセリドの分解、神経系の成長促進などの作用を及ぼします。

T4とT3の分泌量の調節

基本的に、視床下部の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)と、下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン(TSH)により、血中の甲状腺ホルモンの分泌量は調節されます。

なお、血中のヨウ素濃度が上昇すると、甲状腺ホルモンの分泌は抑制されます。

カルシトニンの作用

カルシトニンは、骨基質を破壊する破骨細胞の活動を抑制します。

これにより、血中Caの濃度を低下させます。