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ストレスでテロメアが短くなる

ストレスはテロメアを短くし、細胞の老化を促す。


ストレスは、ヒトにさまざまな影響を与えます。

精神面の健康はもちろん、自律神経系、神経内分泌系、代謝系、免疫系を変化させてしまいます。

つまり、精神的ストレスは、体を弱らせ、病気へかかりやすします。

実際に、複数の国で行った研究からは、仕事のストレスや孤独感などを慢性的に抱える人は、早期疾病や早期死亡が促進されていることがわかっています。

また、脳についても、認知機能に関連する大脳辺縁系や前頭前皮質領域が、精神的ストレスで変化すると言われています。

このような背景を踏まえ、近年では、ストレスがヒトの寿命に直接に影響しているのではないかという仮説を検証する研究が盛んに行われています。

現時点では、ストレスがヒトの寿命そのものに影響しているか否かはいまだ明らかとはなっていませんが、少なくとも、細胞レベルでは老化を促していることが判明しています。

その指標として使われているのが、「テロメア」です。

テロメアとは

テロメアとは、染色体の末端にある配列です。

年齢を重ねると、死んでいく細胞を補うために細胞は分裂しますが、細胞が分裂を繰り返すと、染色体の末端にあるテロメアが短縮するようになっています。

テロメアがある一定の長さまで 短くなるとそれ以上細胞が分裂しなくなり、これを細胞の老化といいます。

ストレスとテロメアの短縮

このテロメアは、ストレスにより短くなる傾向があることが徐々に明らかになってきています。

たとえば、ヒトについて、喫煙する習慣がない集団や、うつ傾向がない集団は、白血球のテロメアが短い傾向があることや、運動習慣がある集団はその他の集団よりもテロメアが短い傾向があったことが報告されています。

日々の生活でストレスを感じていると思う場合は、生活を改善し、気持ちの持ち方を変えることが望ましいと思われます。

そうすることで、不必要なテロメアの短縮化を防ぐことができます。

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カロリー制限で寿命を延ばす

カロリーが抑え気味のほうが健康を維持できることがヒトでの研究で証明されつつある。


古くから、カロリー制限をすることで、見た日を若く保ったり、運動機能を改善したり、老化関連疾患 (がん,心疾患,神経疾患,免疫疾患など)を抑制できると言われてきています。

とくに近年は、老化防止について、カ ロリーリストリクション(calorie restriction:CR)という概念が注目を集めています。

これは、栄養のバ ランスをとりながら、カロリーを制限することで、寿命が延びるというものです。

この研究は、1935年に、McCayらがマウスの摂取カロリーを抑えると寿命が長くなることを報告したことが始まりと言われています。

その後、ラットなどのいくつかの動物で、カロリー制限による延命効果が証明されています。

さらに、ウィスコンシン大学による、20年に及ぶサルの研究結果もそれを証明したと解釈されています。

この報告では、通常量のエサを与えられたサルが50パーセント生き残っていた時点で、カロリー制限していたサルは、80パーセント生き残っていました。

特に、糖尿病、がん、循環器疾患、脳の萎縮などの老化に伴う疾患の発生率が減少していたと報告されています。

現在では、ヒトについても、カロリーを抑え気味のほうが健康を維持できることが期待されており、そのことを示唆する研究はいくつか報告されています。

カロリー制限によるアンチエイジング研究は、世界的にも認められています。

アメリカの国立老化研究所(NIA)のデカボ博士らは、科学誌Cellの レビューに“The Search for Antiaging lnterventions: From Elixirs to Fasting Regimens ”というタイトルのもとにカロリーリストリクションを紹介しています。

カロリー制限による寿命の延びの詳しいメカニズムは解明中であり、どのようにメカニズムを利用して延命に繋げていくか、さまざまなアプローチが研究中です。

ヒトでの実験で証明される日が来るのか分かりませんが,それまでは,都市伝説のレベルとして捉えておけば良いと思います.

いずれにせよ,今後の研究の発展が楽しみな分野ですね.

ちなみに,仮に,この理論が正しく,カロリーを適切にコントロールするという考えが先進国に広まり実践者が増えていけば,先進国における食品の消費量が減り,結果として,食品の大量生産➡︎大量廃棄という現状に,少しはプラスの効果が期待できるかもしれないなぁ…なんて想像したりしますね.

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りんごポリフェノールでアンチエイジングできる可能性

りんごの幼果に含まれる「りんごポリフェノール(AP)」は、抗老化作用を持っていることが示唆されている。

ヨーロッパでは,古くから,”一日一個のりんごは医者を遠ざける” と言われてきました.

その秘密は,りんごポリフェノール(AP)と呼ばれる成分です.

リンゴの幼果(通常の収穫時期よりもはやく収穫されたもの)は、成熟果に比べて、りんごポリフェノールが高濃度に含まれています。

りんごポリフェノールの主成分はプロシアニジンと言われるもので、カテキンがいくつかつながった構造をしています。

この幼果汁から抽出された「りんごポリフェノール(AP)」は、安全性が確認された食品素材です。

APは、内臓脂肪の蓄積を抑制したり、動脈硬化を抑制したりと、さまざまな生理作用を持っていることが明らかとなっています。

現在では,体脂肪の低減効果をアピールしたりんごポリフェノール配合のトクホ(特定保健用食品)が発売されています.

たとえば,こんなのがあります.

アサヒ凹茶 機能性関与成分の機能 | アサヒの機能性表示食品 | アサヒ飲料

また,サプリメントも展開されています.

アサヒ若摘みりんごポリフェノール|「アサヒの健康通販」

では、APは老化防止(アンチエイジング)に役に立つのでしょうか。

この点について、マウスで検証した研究があります。

心筋に過剰な酸化ストレスを受けるように遺伝子操作したマウスに対して、AP を0.1%(w/v)配合した飲料水を摂取させ続けたところ、平均生存率はオスで約30%,メスで約70%卜昇し、心臓組織の傷害度には、明らかな違いがあったと報告されています。

この知見から、APを配合した健康食品を継続的に摂取することで、老化進行の抑制が期待されています。

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ビタミンC不足が寿命を短くする

ビタミンCの不足状態が長期間つづくと寿命が短くなる可能性が指摘されている。


老化の原因のひとつに「活性酸素」が知られています。

ビタミンCは、この活性酸素を消去することができると言われています。

われわれヒトは、ビタミンCを体内でつくれないため、毎日の食事からビタミンCを摂取しています。

しかし、ビタミンCは水溶性のため尿から排泄されるため、体内から消失しやすいのです。

ビタミンCが欠乏すると、皮膚の乾燥、脱力感、うつ状態がみられるようになります。

ここで、ある動物実験の報告によると、通常のマウスは50%生存率が約24ヵ月であったのに対して、ビタミンCの少ないエサで飼育された特殊なマウスは50% 生存率がその4分の1の約6ヵ月であったと報告されています(なお、マウスの寿命が縮まった詳しいメカニズムは分かっていません)。

この実験からは、ビタミンCの長期的な不足がマウスの寿命を短くしたと言うことができます。

では、ビタミンCの欠乏状態がヒトで続いた場合、寿命が縮まるのでしょうか。

この点については、ヒトについての大規模な実験ができないため、現段階では明らかではありません。

ただし、ある研究によると、血中ビタミンC濃度が高い高齢者ほど、握力が強く、歩行速度が速いなど、筋力との関係があるとの報告がなされており、ビタミンCが健康に与える影響が指摘されています。

厚生労働省は、1日のビタミンCの摂取の推奨量を100mgと策定しています。

しかし、食事量が不足しがちな高齢者には、必要量を摂れていない者も多いようです。

ビタミンCの欠乏によって寿命を縮めないために、ヒト(特に高齢者)は、新鮮な野菜や果物を食べ、ビタミンCを十分に摂取するよう心がける必要があります。

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老化細胞を除去して寿命延伸!?

「老化細胞」という概念が注目されている。

1961年に、Hayflick と Moorheadは、ヒトのある細胞を繰り返し培養したところ、細胞分裂が停止することを最初に発表しました。

その細胞の分裂回数は、寿命までの年数分とほぼ同じだそうです。

そのあと、細胞の加齢に伴って染色体の断端の DNAテロメア構造が短縮していく現象が見つかっています。

これらのような研究をもとに、これまで、細胞の老化とは、単に細胞が増殖を停止すること考えられてきました。

ところが、ここにきて、「老化細胞」という概念が新たに提唱されています。

老化細胞の概念とは

この概念は、組織の中に、普通の細胞ではない老化細胞が発生し、その老化細胞が増加して蓄積し、それが組織の老化につながるというものです。

なお、老化細胞は、免疫細胞に貪食されることもありますが、必ずしも免疫細胞の攻撃を受けるわけでないため、加齢とともに、組織に蓄積されていきます。

老化細胞は、ある種の化学物質SASP(老化関連分泌要素)を細胞外に分泌します。

SASPは、周りの細胞の細胞増殖や血管新生、炎症、組織修復など、悪い影響を与えてしまうと言われており、特に、SASPが、周りの細胞のがん化を促進する可能性も指摘されています。

この老化細胞に関して行われた実験があり、この実験では、マウスの老化細胞を、薬剤で消去しました。

その結果、加齢に関係のある病気の発症が減り、 さらに、寿命の延長までも認めたと報告されています。

このことは、ヒトにおいても、老化細胞を標的とする治療の可能性を予感させるものです。

たとえば、老化細胞を標的とする特異抗体や、老化細胞を殺す小分子によって、ヒトの寿命が延びる日がやってくるかもしれません。

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男性ホルモンで老化防止する時代

男性ホルモンは老化現象に深く関係することが明らかになってきている。


その昔、フランスの神経生理学者であるBrown Sequardが、イヌの睾丸エキスを自ら注射して、気力や体力、精力が若返ったという報告がされ、有名になりました。

このように、性ホルモンと老化の関係については、古くから注目されてきています。

現代では、男性ホルモン「アンドロゲン」に注目が集まっています。

雄は成長とともに体内のアンドロゲンの分泌量が上昇しますが、これにより、男性は身長が伸びたり、声が低くなったり、喉仏が発達したりします。

また、生殖活動のとき、分泌が急激に上昇することも知られています。

さらに、アンドロゲンには血管保護作用があることも知られています。

しかし、加齢とともに血中アンドロゲン 濃度は徐々に低下します。

アンドロゲンの分泌が低下すると、血管拡張反応が減少し、血管老化の原因となり、動脈硬化などの要因となることがわかってきています。

また、アンドロゲンの減少は、さまざまな老化に関連する疾患、たとえば、「動脈硬化」、「骨粗髪症」、「サルコペニア」、「認知症」、「加齢男性性腺機能低下(late onset hypogon adism;LOH)症候群」 などに関係しているという報告も、いくつもなされています。

アンドロゲンには適度な濃度というものが存在し、それを維持できる男性が長寿を達成できるようです。

現 在は、アンドロゲンの作用を有する、選択的アンドロゲン受容体修飾薬 (selective androgen receptor modし11ators: SARM)の開発が進んでいます。

近い将来、加齢によるアンドロゲンの減少を、SARMのような薬剤によって補うことのできる日が開発が来ると予想されています。

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ウコンからつくるターメリックが長寿遺伝子を活性化!?

ウコンからつくられるターメリックが、寿命延長効果をもたらしてくれるかもしれない。

ウコンは古くから健胃薬などとして広く用いられてきた歴史があります。

そのウコンの根茎の乾燥品の粉末が「ターメリック」です。

ターメリックはカレーなど、インド料理に広く使われています。

そのターメリックの主成分は、黄色色素「クルクミン」です。

ヒトが「クルクミン」を摂取すると、体内で「テトラヒドロクルクミン」に変わると言われています。

テトラヒドロクルクミンの効果

ヒトは酸素を消費するときに、副産物として活性酸素をつくりだしてしまいます。

この活性酸素は、周囲のタンパク質や、脂質、DNAなどにダメージを与え、老化を早めてしまいます。

ところが、テトラヒドロクルクミンは、過剰な活性酸素を捕捉することで酸化ストレス傷害を防いでくれると言われています。

また、テトラヒドロクルクミンは、抗がん作用、抗炎症作用、動脈硬化予防作用などを有しているとの報告や、糖尿病、高血圧や、心筋梗塞、アルツハイマー病などに対しても改善・ 予防効果をもっている可能性が示唆されています。

このテトラヒドロクルクミンの作用に着目し、マウスに対してテトラヒドロクルクミンを投与した研究が知られています。

実験の結果、テトラヒドロクルクミンを投与したマウスの平均寿命が有意に延びたことが報告されています。

テトラヒドロクルクミンによる作用の分子メ力ニズムは完全には解明されていませんが、テトラヒドロクルクミンが長寿遺伝子を活性化させることが示唆されています。

将来的に、ヒトについてもテトラヒドロクルクミンによる延命効果が証明される日が来る可能性があります。

そのときは、クルクミンを大量に含んむ黄色い錠剤を、人々が老化防止のために飲む日がやってくるのかもしれません。

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職場でのパニック障害の職員への対応方法

パニック障害とは

パニック障害(panic disorder;PD)は、1980年に提唱された疾患概念です。

パニック障害は、精神疾患であり、仕事中に、突然、呼吸困難、めまい、震え、手足のうずきなどのパニック発作が出現し、強い恐怖感を伴います。

また、発作が起きることを心配して、いわゆる「広場恐怖」と呼ばれる様々な恐怖を感じます(外出恐怖、乗り物恐怖、拘束恐怖など)。

パニック障害には治療法があり、主なパニック症の治療には, 薬物療法と認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)があります。

ただし、パニック障害は、再発性があることが特徴で、再発までの期間は、4ヶ月から5ヶ月といわれます。

なお、パニック障害が完全に治る(寛解)患者は、全体の3分の1程度といわれています。

職場とパニック障害

パニック障害を持つサラリーマンは意外に多いことがわかっています。

このような障害をもつ方は、就職や転職のとき、あるいは休職からの復職のときに、 会社側の病気に対する理解が不足していることが理由で、病状が悪化してしまうことが多くあります。

特に、パニック障害の大部分はうつ病を併発するので、その場合、仕事への障害度は非常に高くなります。

職場の全員で理解しておくべきこと

職場で最低限、共有すべきことは、つぎのとおりです。

・パニック障害は、本人が悪いのではなく、「脳の病気」であること

・パニック発作は、気が狂うわけでは無く、周りに危害を加えるわけではないこと、さらに、死ぬこともないこと

・治療法があること

・過労や寝不足、過度なストレスが症状を悪化させてしまうこと

職場のスタッフに発作が出たら

職場でパニック発作が出たときは、見守ることが重要です。

そもそもパニック発作は、たとえ医師であっても、緊急対応できることは何もありません。

通常、20分か30分で発作は治ります。

パニック障害の職員への対応方法

うつ病を併発していない場合、なるべく「会社を休ませない」、「無駄な休職をさせない」ことが重要です。

パニック症の治療のためには、職場でパニック障害についての知識を共有することが大切です。

さらに、精神科医, 産業医, そして職場のスタッフの適切かつ十分な連携が必要です。

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海外渡航前に打つべきワクチンの種類

海外では、日本では考えられない病気に感染することがあります。

とくに開発途上国での感染が重症になることがあります。

そこで、海外に旅行するときには、ワクチンを打っておくべきです。

しかし、ワクチンにも色々な種類がありますので、ここでは、どんなワクチンを打てばいいの紹介します。

また、あわせて渡航前にチェックしたほうが良いことも紹介します。

打つべきワクチン

開発途上国へ行く場合、成人は、海外渡航時に予防接種すべきワクチンは、黄熱病、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎、腸チフス、ポリオに対するワクチンが主な推奨ワクチンです。

その他、麻疹、風疹、インフルエンザのワクチンも、検討するとよいでしょう。

コレラワクチンなど、日本で未承認のワクチンの接種が必要な場合は、海外渡航専門のトラベルクリニックを受診しましょう。

なお、黄熱病ワクチン、ポリオワクチン以外は、一定期間をあけて2回の接種が必要です。

また、よく海外に出掛ける人なら3回目の接種も受けておくと、基礎免疫ができてオススメです。

参考に:渡航前にチェックすべきこと

つぎのことを確認しておくことは、ワクチンを打つのと同じくらい大切です。

1.衛生事情

渡航前にすべき重要なことのひとつは、インターネットなどで現地の衛生事情を調べることです。

どのような病気に感染するリスクがあるのか、知っておきましょう。

ワクチンのあるものは、予防接種を前もって受けておくことが大切です。

ワクチンの無いものは、感染経路を知り、感染の防ぎ方を学んでおきましょう。

2.医療体制

現地の医療のレベルを知っておくことも大切です。

事前に、低い医療水準の国だとわかっていれば、様々なことに注意することができるからです。

たとえば、渡航先で、注射針や輸血がどれくらい安全かを考えたことがあるでしょうか?

注射を受けるとき、使いまわされた注射針は、C型肝炎やHIV感染症になるリスクとなります。

また、現地で交通事故にあって出血し、輸血を受けることになったとき、輸血用の血液に、B型肝炎ウイルスなどが混入しているかもしれません。

さらに、現地の医師のレベルが、日本と比べてどうかなども、インターネットや旅行会社を通じて調べておくと良いでしょう。

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壊死と壊疽

壊死と壊疽について解説します。

壊死

壊死とは、ネクローシスともいい、局所の細胞や組織の死滅のことをいいます。

壊死の原因には、凝固壊死と誘拐壊死があります。

凝固壊死

凝固壊死は、細胞のタンパク質の凝固によって起きる壊死です。

このタイプの壊死は、たとえば、血行障害による梗塞の場合(心筋梗塞など)に見られます。

融解壊死

融解壊死は、細胞の死亡と同時にタンパク質分解酵素の作用によって起きる壊死です。

このタイプの壊死は、タンパク質の少ない臓器や脳で起こります。

壊疽

壊疽には、「湿性壊疽」と「乾燥壊疽」があります。

湿性壊疽

湿性壊疽は、壊死組織が、二次的に腐敗菌に感染した場合に起きます。

肺壊疽や、壊疽性の虫垂炎などが代表的です。

なお、湿性壊疽にガス産生菌が感染すると、「ガス壊疽」となります。

乾燥壊疽

乾燥壊疽は、壊死組織が、外気によって乾燥すると起きます。

動脈の閉塞による四肢のミイラ化などがあります。