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介護うつの症状と対策

介護うつの症状と対策を解説します。

介護うつ発症は半数以上

近年の少子高齢化のなかで、要介護状態にあるお年寄りは急激に増加しています。

介助する側の家族の負担は、ますます大きくなってきています。

介護の負担だけでなく、プライベートな時間が無くなることも深刻です。

あまり外出せず、介護で家の中に閉じこもっている状態は、介護者の心身両面に大きな影響を及ぼします。

特に、認知症の介護を自宅で行っている家族の「介護うつ」の発症率は50%以上と報告されています。

認知症が進行しているほど、 介護うつになりやすいことも分かっており、介護される高齢者に幻覚・興奮・妄想・暴力・徘徊があったり、抑うつ状態などがあると、さらに割合は増すようです。

介護殺人、介護心中、自殺などの衝撃的な事件の報道をみると、認知症を介護する家族や介護職には、かなりの負担や苦悩があることが分かります。

このような介護うつが引き起こされる背景には、「疲労」、「ストレス」、「睡眠不足」、「孤独感」などがありますが、具体的な症状を紹介します。

症状

介護うつになると、様々な症状が現れます。

少しでも当てはまると感じたら、以後述する対策を検討しましょう。

心理面

心理面では、ゆううつな気分、不安感、あせり、気分が落ち込む、意欲や集中力がない、考えがまとまらない、何をしても面白くない、などがあります。

身体面

身体面では、倦怠感、めまい、不眠になる、疲れやすくなる、食欲がなくなる、性欲がなくなる、頭痛がする、肩こりがひどい、耳鳴りがする、耳が痛くなる、便秘や下痢になる等の症状が現れます。

対策

外部サービスを利用

介助者の負担を減らすため、通所あるいは入所サービスの利用をすることが大切です。

もしも、高齢者が「家にいたい」と言っていても、デイサービスなどに行ってもらえるよう説得します。

なお「福祉サービス施設の職員の迷惑ではないか」と葛藤するかもしれませんが、決心して任せることが重要です。

病院へ行き治療する

うつは病気として、薬物療法で大きく改善できることが知られています。

抗うつ薬、抗不安薬、あるいは精神安定薬などで治療できます。あるいは、睡眠薬を処方してもらうことも可能です。

また、精神療法により、心の負担を減らしてもらうことが薦められます。

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在宅介護での脱水に注意

在宅介護で脱水にならないよう、注意すべきポイントを解説します。

自宅で高齢者が脱水にならないためには

在宅なのに、脱水してしまうお年寄りが多くいます。

原因は、お年寄りは筋肉が少ないので体に水分を留めておけないことに加えて、トイレに行くのが面倒と考えて水分摂取を控えたり、脱水に自分で気がつかなかったりするからです。

脱水は、最悪の場合、死亡につながってしまうため、介護者が注意することが必要です。

脱水状態のチェックを

自宅で高齢者を介護するときは、こまめに脱水していないか確認することが大切です。

たとえば、脇の下を触って乾いていれば、少し脱水していると判断できます。

さらに、口の中が乾燥しているときは、高度に脱水していると判断できます。

そういったときは、すぐに水分補給をしましょう。

つねに水分補給を

また、日頃から、水分が不足しないように、こまめに水分補給をすることが大切です。

特に夏場は汗をかくので、たとえば、スポーツドリンクなど、ミネラルが豊富なものがオススメです。

感染症の予防も大切

他方、食中毒などの感染症の予防も大切です。

冬場で注意すべき点は、ノロウイルス感染です。

嘔吐や下痢、食欲不振による脱水におちいりやすいので、手洗いを確実にしましょう。

薬の確認も

人によっては、尿で体の水分を出す薬を処方されていることがあります。

これを利尿薬(利尿剤)といいます。

心臓が悪い(心不全など)、高血圧、腹水や胸水がたまる場合などに処方されます。

水分補給をしても脱水気味であったり、改善しないときは、これらが原因となっている場合があります。

薬による脱水について不安があるときは、薬を処方している医師に相談してみましょう。

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薬物の正作用、副作用、有害作用、中毒作用とは?

薬物の作用には、「正作用」と「副作用」とがあります。

正作用

正作用とは、疾患の治療や予防の目的で常用量投与したときに現れる薬理作用であって、薬物の投与目的に合った作用のことをいいます。

副作用

これに対し、副作用とは、正作用以外の不必要な作用のすべてをいいます。

有害作用

薬物の「有害作用」とは、薬物の副作用のうち、有害で意図しない作用をいいます。

中毒作用

中毒作用とは、有害作用のうち、特に、薬物の過剰投与による作用をいいます。

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副甲状腺の役割

副甲状腺

副甲状腺は、甲状腺の背面に埋め込まれた小さな丸い組織塊です。

1個の上副甲状腺と、1個の下副甲状腺とが、甲状腺の右葉と左葉についています。

副甲状腺ホルモン

副甲状腺の分泌細胞は、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。

PTHは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リン酸イオンを調節しています。

PTHの作用

PTHは、破骨細胞の数と活性を高め、カルシウムイオンとリン酸イオンの血中濃度を上げます。

また、PTHは、腎臓に作用し、下記の①~③の作用を及ぼします。

①CaイオンとMgイオンが尿に失われる速さを遅らせ、リン酸イオンが尿中へ排出される速さを上げる

②近位尿細管でのリン酸イオンの排出を促す(血液から尿中へ失われるリン酸イオンを増加させる)

③ビタミンDの活性型(カルシトリオール)の形成を促進させる

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抗がん剤による下痢の原因と対応

抗がん薬を投与すると、投与後24時間以内に下痢が発生したり、 投与後2〜 10日ほどで発生したりします。

1日に4〜6回以上、激しい下痢や血液の混じった便が出ます。

下痢は脱水、電解質異常などをきたす可能性があり、重症化すると腎不全、循環不全、敗血症などに至る可能性もあります。

発症早期より適切に対処,コントロールすることが重要です。

下痢の原因

抗がん薬で下痢になるのは、つぎのようなパターンがあります。

・抗がん剤により消化管の交感神経が刺激を受け、腸の蠕動運動が亢進して起こる下痢

・抗がん剤やその代謝物が腸管の粘膜を障害して起こる下痢

・細菌やウイルス感染による下痢

下痢への対応

下痢に対して、整腸薬や止痢薬などを服用します。

また、抗がん剤を減量したり休止したりします。

発熱を伴うものは感染性腸炎を考慮し、抗生剤の内服もします。

また、腹部を保温し、安静にして休みます。

食事については、腸粘膜への刺激や負担を軽減することが重要です。

消化が良く、栄養価の高い食品を、少量ずつ、回数を多く摂取します。

また、新鮮な食品を使って調理し、低脂肪・高たんぱくな食事とします。

食べるときはしっかりとよく噛んで食べることが大事です。

そして、水分を補うため、常温か人肌程度の温度のお茶やイオン飲料を積極的に飲むようにします。

さらに、体にとって、ナトリウム・カリウムは重要な電解質ですから、ナトリウムやカリウムが不足しないように、塩分と糖分などを含んだ水分(汁物や市販のスポーツ飲料)を摂ると良いでしょう。

なお、味付けの濃い食品や、刺激の強い食品、アルコールは、なるべく避けるようにします。

また、発酵しやすい食品にも注意が必要です。生野菜やごぼう・れんこん・さつまいも・豆類などは、腸内で発酵してガスになるので、食べ過ぎに注意しましょう。

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血球回転とは?

血球回転とは、血球が新生されてから、寿命がきてから崩壊するまでの間の過程が繰り返される現象の定量的処理のことをいいます。

正常血球回転数

赤血球

・産生率 : 2.5×10 (細胞数/kg/日)

・循環血球数 : 3.07×1011 (細胞数/kg)

・血管内寿命 : 120 (日)

血小板

・産生率 : 2.5×10 (細胞数/kg/日)

・循環血球数 : 2.5×1010 (細胞数/kg)

・血管内寿命 : 9.5 (日)

好中球

・産生率 : 0.85×10 (細胞数/kg/日)

・循環血球数 : 0.4×10 (細胞数/kg)

・血管内寿命 : 0.3 (日)

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インスリン療法と自己注射

経口血糖降下薬を使用しても血糖コントロールが不十分になる糖尿病患者さんには、インスリン療法が行われます。

現在、糖尿病患者さんのインスリン分泌パターンや生活スタイルに合わせ、たくさんの種類のインスリン自己注射があります。

ここでは、インスリン製剤と、インスリン療法の実際について紹介します。

自己注射の種類

インスリン自己注射には、さまざまな種類があります。

ペンに組み込まれているタイプ (インスリンプレフィルド/キット製剤)

プレフィルド/キット製剤は、中に詰められているインスリン製剤がなくなったらそのまま廃棄します。

例)ノボラピッド注フレックスペン

通常、成人では、1回に2〜20単位を毎食直前に皮下注射します。

インスリン製剤のカートリッジ交換タイプ(インスリンカートリッジ製剤)

カートリッジ製剤は、 外側のペンは再利用して、自分でカートリッジのみを交換します。

なお、カートリッジ製剤のほうが、プレフィルド/キット製剤より価格が安めに設定されていますが、外側のペンの故障に備えて、予備のプレフィルド/キット製剤を常備しておくと安心です。

例)ヒューマログ注カート

通常、成人では、1回に2〜20単位を毎食直前に皮下注射します。

特徴的なペン型注入器

例)ランタスXR注ソロスター

1 本に 450 単位が入っている持効型溶解インスリン製剤です。

通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を皮下注射します。

例)ライゾデグ配合注フレックスタッチ

持効型溶解インスリン製剤と超速効型インスリン製剤が配合されています。

通常、成人では、初期は1回4~20単位を1日1~2回皮下注射します。

インスリン療法の実際

未開封のインスリン製剤は、冷蔵庫で保存しておきます。

冷蔵庫から取り出したら、はじめに、インスリン製剤を空打ちして、インスリン製剤が確実に針先から出るのを確認します。

そして、腹部や上腕などに針先を刺します。

刺す場所は、前回注射したところから数cm離れたところを選びます。

その後、5〜10秒程度かけて皮下へ注射します。

インスリン製剤の目盛りがゼロになったことを確認して、さらに10 秒ほど待ってから、注入ボタンを押したまま針を抜きます。

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ラパマイシンに老化防止作用あり

化学物質ラパマイシンに注目が集まっている。

ラパマイシンと呼ばれる化学物質は、抗がん剤や免疫抑制剤として知られています。

ところが、近年の研究によると、さまざまな種の動物の寿命を延長させる効果があることがわかってきています。

近年の研究では、ラパマイシンを投与した場合に、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスにおいて、明らかな延命効果が見られています。

たとえば、2009年には、ラパマイシン腸溶性製剤を投与した高齢期のマウスは、最大寿命が有意に延長したとの報告がされています。

また、その後の2011年には、同様の実験を中年期のマウスに対して行っても、最大寿命が有意に延長したと報告されています。

しかし、まだ、ラパマイシンの適切な摂取の量や頻度については明らかになっておらず、研究が進められています。

同時に研究されているのは、ラパマイシンと寿命の延長に関するメカニズムです。

現在のところ、ラパマイシンは、mTOR(mammalian targel of rapamycil1:哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の働きを阻害していると言われています。

mTORは、細胞内でさまざまなシグナルが交差する位置にあるリン酸化酵素で、細胞膜受容体からの増殖因子 の刺激や栄養状態、ストレスを感知し、細胞の生存にかかわる種々のタンパク合成を調節しています。

このmTORは、mTORC 1およびmTORC2という機能が異なる2つのタンパク質複合体の触媒サブユニットです。

このうち、mTORC1は、栄養や成長シグナルに関わっているが、ラパマイシンは、mTORC1の働きを阻害していると言われています。

なぜmTOR1を阻害すると寿命が延びるのか、現在研究が進められています。

なお、寿命を延ばす薬としてヒトに投与できるかどうかは、未だ明らかとなってはいません。

ラパマイシンは、口内炎などの副作用を生じさせるとの報告があり、今後の研究が待たれるところです。

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たんぱく質の制限で寿命が延長する

たんぱく質を制限することで、寿命がのびる可能性が指摘されている。

近年の研究により、たんぱく質を控えることが、寿命の延伸に効果があるとの知見が明らかになりつつあります。

マウスによる実験報告では、8週間の低タンパク質の食事を与えたところ、インスリン値や中性脂肪値を改善したとの報告があります。

また、昆虫による実験報告でも、特定のアミノ酸を制限すると、寿命の延長効果が見られたとの報告があります。

なぜ、たんぱく質の摂取を控えると寿命が延びたのかメカニズムは明らかではありません。

原因については諸説あります。

一説では、たんぱく質の摂取を控えることで、血中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)が低下し、これが寿命の延長に寄与しているのではないかと言われています。

また、別の説では、蛋白合成促進やオートファジーに関連するmTORの活性化が、低タンパク質により抑制されているとも言われています。

現在のところは、たんぱく質の摂取制限は、健康維持の観点から薦められていないが、たんぱく質と寿命の延伸との関係についてさらなる研究が進むことで、寿命を伸ばせる食事が判明する日がくるかもしれません。

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時計遺伝子が寿命を左右する!?

生体の日内リズムと時計遺伝子


ヒトの血圧・心拍・体温・ホルモン分泌・睡眠などには、1日の中にリズムがあります。

この生体の日内リズムは、主に、脳の「視交叉上核」と呼ばれるペースメーカーによって制御されています。

一方で、近年の研究により、日内リズムは、実は、組織レベルや細胞レベルでも制御されていることが指摘されています。

その因子として注目されているのが、時計遺伝子です(ヒトの時計遺伝子としてはPERやCRYなどが知られています)。

ちなみに、マウスを使った動物実験では、血管細胞の時計遺伝子の発現機能を失ったマウスは、血圧や心拍数の日内変動リズムが消失したとの報告があります。

細胞の老化と時計遺伝子

近年の研究は、細胞の老化により、時計遺伝子の発現の日内リズムが障害される可能性を指摘しています。

時計遺伝子の発現リズムの狂いは、生体の日内リズムにも影響を及ぼし、結果として、さまざまな疾患の発症につながります。

老化にともなって循環器系疾患が増えていくのは、日内変動リズムの乱れが影響している可能性があります。

今後の研究により、いったん障害された時計遺伝子の機能を、回復させるような薬剤による治療方法が生まれるかもしれません。