化学物質ラパマイシンに注目が集まっている。
ラパマイシンと呼ばれる化学物質は、抗がん剤や免疫抑制剤として知られています。
ところが、近年の研究によると、さまざまな種の動物の寿命を延長させる効果があることがわかってきています。
近年の研究では、ラパマイシンを投与した場合に、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスにおいて、明らかな延命効果が見られています。
たとえば、2009年には、ラパマイシン腸溶性製剤を投与した高齢期のマウスは、最大寿命が有意に延長したとの報告がされています。
また、その後の2011年には、同様の実験を中年期のマウスに対して行っても、最大寿命が有意に延長したと報告されています。
しかし、まだ、ラパマイシンの適切な摂取の量や頻度については明らかになっておらず、研究が進められています。
同時に研究されているのは、ラパマイシンと寿命の延長に関するメカニズムです。
現在のところ、ラパマイシンは、mTOR(mammalian targel of rapamycil1:哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の働きを阻害していると言われています。
mTORは、細胞内でさまざまなシグナルが交差する位置にあるリン酸化酵素で、細胞膜受容体からの増殖因子 の刺激や栄養状態、ストレスを感知し、細胞の生存にかかわる種々のタンパク合成を調節しています。
このmTORは、mTORC 1およびmTORC2という機能が異なる2つのタンパク質複合体の触媒サブユニットです。
このうち、mTORC1は、栄養や成長シグナルに関わっているが、ラパマイシンは、mTORC1の働きを阻害していると言われています。
なぜmTOR1を阻害すると寿命が延びるのか、現在研究が進められています。
なお、寿命を延ばす薬としてヒトに投与できるかどうかは、未だ明らかとなってはいません。
ラパマイシンは、口内炎などの副作用を生じさせるとの報告があり、今後の研究が待たれるところです。