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血液の機能・血球成分と検査ついて

検体検査のうち、最も利用される検体は血液です。

中でも、血球についての検査は、造血組織の病変や、血液に影響を及ぼす全身の病変を知るのに役立ちます。

血液は、体重の約8%を占めます。

血液は、液体成分の血漿と細胞成分とからなります。

細胞成分は大部分が赤血球で、そのほかには白血球、血小板があります。

血液は、血球と血漿とに分けられ、血球には、赤血球、白血球、血小板の三種類があります。

血球は主に、骨髄組織で産生され、血中に放出されます。

なお、骨髄以外の臓器(脾、肝、リンパ節など)で血球が産生される髄外造血は,胎児期に生理的に認められますが、出生後では病的な場合にのみ認められます。

血球は、すべて多能性幹細胞(pluripotentstem cell)に由来します。多能性幹細胞は、すべての血球系に分化する能力(多分化能)を有し、自己と同じ細胞を産生する能力(自己複製能)も有します。

なお、血液は、採血後、抗凝固剤を加えずに放置すると、凝固し、「血餅」と「血清」に分かれます。

血餅には、以下に述べる各種の血球と、フイブリンとが含まれます。

血清は、血餅と、凝固・線溶関連因子の一部とを除いたものであり、清澄です。

血液の機能について

血液の機能は、運搬、調節、防御、止血に分けられます

運搬

運搬を担うのは、赤血球、血漿蛋白、および、水分です。

血漿タンパクと運搬物質には、トランスフェリン→鉄、ハプトグロビン→ヘモグロビン、ヘモペキシン→ヘム、卜ランスコバラミン→ビタミンB12、リポタンパク→脂質、トランスコルチン→コルチゾールなどの関係があります

調節

血液は、pH、浸透圧、熱などの恒常性を維持します。

防御

各種の白血球、免疫グロブリン、補体、サイトカインなどによって、防御されます。

止血

血小板、各種の凝固・線溶因子により、止血機能が発揮されます。

血球について

<赤血球

酸素,二酸化炭素の運搬を行います。

赤血球は直径8μm、厚さは2μmで、中央がくぼんだ円盤状の細胞です。

赤血球は血液の細胞成分の99%以上を占めます。

①へマトクリット

血液の細胞成分の相対容積を「ヘマトクリット値(Ht)」といいます。

正常では、男性では43~52%、女性では35~48%です。

②ヘモグロビン

血色素(ヘモグロビン:Hb)は、酸素を結合するための分子であり、また、体液のpH調節にも重要です。

Hbは、αサブユニット2つとβサブユニット2つから構成されたグロビン分子と、それぞれのサブユニットに1つずつ結合した4つのヘム分子からなります。各ヘムには酸素が1分子結合します。

つまり、Hbの1分子は、最大4分子の酸素を運搬します。

血液が肺を通るとHbは酸素で飽和(オキシヘモグロビシとなる)し、鮮紅色を呈します。一方、組織では、一部の酸素はHbを離れ(デオキシヘモグロビンとなる)、赤色になります。

白血球

白血球は、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)と、顆粒をもたないリンパ球、単球に分けられます。

なお、好中球は、多形核白血球とも呼ばれます。また、リンパ球は、単求とあわせて単核球と呼ばれます。

白血球は、体外から侵入した物質や細菌を排除することです。また、サイトカインを放出して他の白血球をよび寄せたり、血管内の物質や細胞を組織へ透過させやすくします。

白血球は、血管,リンパ管内に留まらずに、アメーバ運動をし、他の組織へ移動します。

血小板

血小板は、無核の小体で、骨髄中の巨核球中の穎粒から産生されます。

直径は、2~4μmです。

血小板の機能は止血です。

血漿について

血漿の90%は水です。

そのうち、1%は無機物で、Na+、K+、Cl-、HCO3-、Ca2+などです。

また、7%は血漿蛋白質(約80/dl)です。

血漿蛋白には、アルブミン、α-グロブリン、β-グロブリン、γ-グロブリン、フィブリノケン、ハプトグロビン、凝固・線溶抑制因子、、補体、トランスフェリン、ヘモペキシンなどがあります。

残りの1%は蛋白質以外の有機物や微量成分で、たとえば、糖質、脂質、電解質、非蛋白窒素、ホルモンなどが含まれます。

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臨床検査の考え方

目的

臨床検査は、保健医療を目的とします。

分類

生体の変化をME機器を使って計測する場合を生理機能検査といいます。

また、生体から採取した体液や組織の一部について計測する場合を検体検査といいます。

検査結果について

検査結果は、正確さと、精密さ(再現性)とから評価されます。

情報の価値

検査結果は、多くの場合、ひとつの情報にすぎないことをふまえて、主治医は問診結果や診察結果などと総合的に判断して、診断、予後判定、治療方針の決定をすべきです。

検査値の判読

健常者の基準範囲から、±2SDを外れて、±3SDの範朋に含まれている値は、境界値あるいはグレイゾーンと呼ばれています。
グレイゾーンの検査値は、以下のような要因を勘案する必要があります。

1)生理的変動要因
2)薬物
3)検体の取り扱い上の誤り
4)測定のばらつき

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クリオグロブリンとは?

クリオグロブリンとは、下記の患者の血清中に検出される異常蛋白です。

・原発性クリオグロブリン血症
・骨髄腫
・マクログロブリン血症
・リンパ肉腫
・慢性関節リウマチ
・肝硬変

クリオグロブリンには、単一クローン型(M蛋白)と、混合型(免疫複合体)があることが知られています。

クリオグロブリンは、0~4度に放置すると、白濁沈殿や、ゲル状の沈降物をつくり、また、37度に暖めると、再溶解します(可逆的性質を示します)。

そのため、クリオグロブリンは、検査血清を冷蔵庫に保存中に発見されることが多いです。

なお、クリオグロブリン血症は、クリオグロブリンの粘稠性のため、血液障害を起こしやすく、レイノー現象を起こします。

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δビリルビン,βビリルビン,γビリルビンについて

δビリルビン,βビリルビン,γビリルビンについて解説します。

ビリルビンの分類とδビリルビン

ビリルビンは、HPLCにて、α、β、γ、δに4分類されます。

αは、非抱合型のビリルビンです。

β、γは、抱合型ビリルビンです。

なお、β、γは、肝・胆道系疾患で上昇します。

そして、δビリルビンは、抱合型ビリルビンとアルブミンとが共有結合したものです。

δビリルビンは、肝細胞性黄疸や、肝内胆汁うっ滞、閉塞性黄疸などで血中に出現します。

δビリルビンの代謝は、アルブミンの寿命に依存するため、血中に長く滞留します。

臨床的な意義は不明です。

検査との関係

ビリルビンの検査項目としては、間接ビリルビンと直接ビリルビンの2分類があります

直截ビリルビンの測定試薬には、β、γ、δを、直接ビリルビンとして測定するものと、β、γだけを、直接ビリルビンとして測定するものの二種類があります。

つまり、δビリルビンを測り込む試薬と、そうでない試薬とがあります。

δビリルビンを測り込まずに、β、γだけを測定するものの試薬の方が、抱合型ビリルビンだけを捉えられるので、肝疾患の病態の回復状態を敏感に反映し、また、抱合型ビリルビンの上昇が優位な疾患の経過観察に有用となります。

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炎症と血清銅(Cu)

炎症と血清銅(Cu)の関係について解説します。

血清銅と炎症

銅の代謝

銅は、胃および十二指腸(小腸上部)で吸収され、肝細胞に取り込まれます。

そして、銅は、その大部分が、肝細胞内でアポセルロプラスミンに結合する結果、ホロセルロプラスミンが形成されて血中へと分泌されます。

セルロプラスミンと炎症反応

セルロプラスミンは、急性相蛋白質です。

すなわち、炎症反応が起きると、肝臓でのセルロプラスミンの合成が亢進します。

したがって、セルロプラスミンの増加を反映して、血清銅の測定値は上昇します。

解釈上の注意

炎症が起きたとき、上述のように、血清銅の測定値は上昇します。

しかし、炎症が収まるにつれて、セルロプラスミンの合成量も低下しますので、血清銅の測定値も低下していきます。

よって、炎症の収束後に、血清銅の測定値の低下を認めたからといって、そのことのみをもって、「銅が不足している」と解釈してはいけない点に注意が必要です。

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炎症と血清鉄(Fe)

血清鉄と炎症の関係について解説します。

炎症と血清鉄

血清中の鉄の濃度は、炎症によって測定値が変動します。

理由として、まず、血清中の鉄は、トランスフェリン(Tf)と結合しています。

トランスフェリン(Tf)は、肝臓で産生される蛋白質です。

このトランスフェリン(Tf)は、炎症があるとき、肝臓での合成量が低下します。

これは、炎症があるとき、肝臓は、トランスフェリン(Tf)よりも炎症反応に必要なタンパク質を優先して作ろうとするためです。

したがって、血中のトランスフェリン(Tf)の減少によって、血清中に存在する鉄の量が減少します。

解釈上の注意

炎症が起きたとき、上述のように、血清鉄の測定値は大きく低下します。

よって、血清鉄の測定値が低値であったとしても、そのことのみをもって、「鉄が欠乏している」と解釈してはいけない点に注意が必要です。

炎症の回復を待って、血清鉄の値が上昇するのを確認すれば良いでしょう。

ただし、炎症が起きる前から血清鉄が低値を示していた患者については、体内にある鉄が、もともと不足していた可能性があり、炎症が回復しても、血清鉄の値がそれほど上昇しない場合があります。

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ベース・エクセスとは?(BE)

血液ガスのパラメータに、ベース・エクセス(base excess:BE)があります。

定義

BEベースエクセスは、「体温37℃ , pCO2が40Torrにある血液をpH7.40に戻すために必要な塩基の量」を表します。

計算方法

BEは、つぎのSiggaard -Andersenの式を使って算出されます。

BE =(1−0.014×Hb)×{[HCO3]−24+(9.5+1.63×Hb)×(pH-7.4)}

基準範囲

基準範囲は、0±2mEq/Lです。

意義

生体内で緩衝に関与しているのは、代謝性因子と呼吸性因子とがあります。

BEは、「PaCO2 が 40Torr のとき」という条件をつけることで、呼吸性因子の影響を除外しています。

つまり、BEは、呼吸性因子を一定と仮定することでその影響を除外し、血液のpHにかかわる代謝性因子のみを量的に表現します。

BEがマイナスの場合は塩基不足(代謝性アシドーシス)、プラスの場合は塩基過剰(代謝性アルカローシス)を意味します。

BEが実測値ではない理由

代謝性因子の指標は、HCO3のほかにも、血色素(ヘモグロビン)、血漿蛋白質(アルブミンなど)、リン酸塩などがあります。

しかし、血液ガスの測定装置では、全ての代謝性因子を直接測定できません。

そこで、赤血球による緩衝系(ヘモグロビン値:Hb)を加味して、代謝性因子の全体の変化量を計算で間接的に求め、BEとしています。

BEの解釈の注意点

上に述べたように、BEは呼吸性因子の影響を除外しています。

したがって、BEのみで酸塩基平衡の全体を評価することはできません。

参考:重炭酸イオンによるアシドーシスの補正

酸血症すなわちアシデミア (pH<7.35)で、かつBEがマイナスのときは、塩基が不足している代謝性アシドーシスといえます。

このとき、その分のアルカリを加えてpHを7.40に近付けて補正することができます。

通常は重炭酸ナトリウムを投与します。

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脂肪滴とは?(病理検査)

脂肪滴とは、トリグリセリドの貯蔵型であり、脂肪細胞や、肝細胞などのそのほかの細胞にも貯蔵されています。

脂肪滴は、標本を作製するときに、アルコールによって細胞から抽出されてしまうので、標本では、抜けてしまった構造に見えます。

なお、四酸化オスミウムを固定剤として用いると、灰色~黒色の小滴として観察されます。

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アニオンギャップとは?

定義

アニオンギャップとは、血清中のナトリウム(Na)とカリウム(K)濃度の和から塩素(Cl)と重炭酸(HCO3)濃度とを引いた値のことです。

すなわち、アニオンギャップ(anion gap:AG) = [Na+] 一 {[HCO3] 十 [Cl] }と計算されます。

アニオンギャップは、unmeasured anionとも呼ばれます。

アニオンギャップは、血液ガス測定により、算出することができます。

意義

血漿中の陽イオンはNa,Kなど測定可能なものがほとんどです。

しかし、陰イオンは、通常、塩素(Cl)、HCO3は測定しますが、リン酸、硫酸、有機酸や蛋白などの陰イオン(アニオン)は、測定しません。

このような通常は測定しないアニオンを、臨床的にひとまとめにして、その増加をみるものがアニオンギャップです。

基準値

基準値は12前後です(12±2)。

なお、アニオンギャップの算出のとき、陽イオンとして、NaにKを加えて算出することも可能であり、そのときは基準値が上がります。

アルブミン値による補正

AGを計算するときは、アルブミン(Alb)補正が必要です。

なぜなら、血清アルブミン値が正常値(4g/dL)から1g/dL低下すると、AGは、2.5mEq/L低下するからです。

したがって、正常値からのアルブミンの低下分に2.5を掛けたものを、AGに足して補正します。

すなわち、Alb補正後AG=補正前AG+(4−Alb値)×2.5で表されます。

たとえば、血清Alb値が1.0g/dL、Naが135mEq/L、Clが100rnEq/L、HCO3-が24mEq/Lのとき、補正前の計算では、AGは11mEq/Lですが、補正後のAGは18.5mEq/Lとなります。

解釈

アニオンギャップが増加している場合は、有機酸、乳酸、その他の酸が蓄積していると考えます。

いわゆる代謝性アシドーシスを呈している病態が疑われます。

代表的なものは、有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症)、高乳酸血症、腎不全、高ケトン血症(ケトーシス)、サリチル酸中毒、エタノール中毒などです。

アニオンギャップが増加しない代謝性アシドーシス

なお、たとえば、下痢によるHCO3の漏出や、尿細管の問題によるHCO3の再吸収障害などが原因で起きるHCO3低下による代謝性アシドーシスでは、HCO3が減った分、Clが増加するため、アニオンギャップは増加しません。

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ドライケミストリとは?

ドライケミストリとは、乾燥状態または外観上乾燥した状態で保存された試薬と、液体試料とが、マトリックス中で化学反応を起こすことを利用して、成分分析を行う方法です。

たとえば、ドライケミストリには、カラリメトリックスライドという方式(例:コダックのエクタケムシステム)があります。

このシステムでは、血清を添加すると、血清が拡散層で拡散し、試薬層で反応します

そして、支持層の発色色素に白色光を照射して、その反射光をフィルタで漏光してフォトマルチプライヤーで検知します。

そのほかに、イオン選択膜を利用したポテンシオメトリック電極スライドという方式もあります。