ウイルス性出血熱は、重篤な急性熱性疾患です。世界的に最も警戒すべ感染症です。
感染症法では、「エボラ出血熱」、「クリミア・コンゴ出血熱」、「南米出血熱」、「マールブルグ病」、「ラッサ熱」が第1類疾患に分類されています。
エボラ出血熱
原因と感染ルート
エボラウイルス(Ebola virus)が原因です。フィロウイルス科に属するウイルスです。
コウモリが自然宿主で、ゴリラ・チンパンジーなどの中間宿主を介してヒトに感染することが多いといわれています。
主に患者の血液・体液・汚物などから感染します。
中央アフリカ・西アフリカなどで発生します。
発症
潜伏期は、数日から3週間ほどです。平均は1週間ほどです。
急に発症し、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、下痢、結膜炎などが生じます。
そして、3日ほど経つと急速に悪化し、発疹が出て、出血傾向となります。
さらに、6~9日経つと、激しい出血とショック症状などにより死にいたります。
致死率は50~80%です。
診断
海外渡航者や、海外渡航者と接触した人の発熱には注意が必要です。
確定診断は,国内では国立感染症研究所にて、ウイルス遺伝子、ウイルス抗原、血清抗体の検出などを行います。
治療
ウイルスの感染を疑うときは,保健所へ届出ます。
患者は、指定医療機関に隔離入院となります。
治療内容は,抗ウイルス薬投与、全身管理,補助療法などです。なお、ワクチンはありません。
クリミア・コンゴ出血熱
原因と感染ルート
クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFウイルス:Crimean-Congo haemorrhagic fever virusが原因です。ブニヤウイルス科に属するウイルスです。
野生動物、家畜を含む多くの哺乳動物が自然宿主で、ダニを介してヒトに感染します。
アフリカ・中近東・東欧・西部中央アジア地域などで発生します。
発症
潜伏期間は数日から1週間ほどです。感染しても20%程度しか発症しません。
症状は、エボラ出血熱などの他の出血熱に似ており、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐、咽頭痛、結膜炎、黄疸、羞明、種々の知覚異常などが生じます。
また、点状出血が一般的にみられ,進行すると紫斑も生じます。
重症化すると全身出血をきたすこともあります。致死率は20~40%程度といわれています。
南米出血熱
定義
南米出血熱は、アルゼンチン出血熱、ブラジル出血熱、ベネズエラ出血熱、ボリビア出血熱の総称です。
原因と感染ルート
原因は、アレナウイルス科に属するウイルスで、具体的には、アルゼンチン出血熱が「フニンウイルス」、ブラジル出血熱が「サビアウイルス」、ベネズエラ出血熱「ガナリトウイルス」、ボリビア出血熱が「マチュポウイルス」です。
主な感染経路は,ウイルス保有ネズミの排泄物,唾液,血液などとの接触です。
発症
潜伏期間は7~14日で,初期症状として突然の発熱、筋肉痛、悪寒、背部痛、消化器症状がみられます。
3~4日後には衰弱,嘔吐,めまいなどが出現し、重症例では高熱,出血傾向,ショックが認められます。致死率は30%といわれています。
マールブルグ病
原因と感染ルート
原因は、マールブルグウイルス(Marburg virus)です。フィロウイルス科に属するウイルスです。
宿主やヒトへの伝搬経路は解明されていません。ケニア,コンゴ、アンゴラなどで発生します。
ヒトからヒトへの感染は血液・体液への接触によって起こります。
発症
潜伏期間は3~9日間です。急に発症し、発熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐、下痢など生じます。
3日目ごろには出血傾向があらわれ、その後、発疹があらわれます。
第6~9病日に激しい出血傾向やショック症状を呈して死に至ることがあります。
致死率は20%以上といわれています。
ラッサ熱
原因と感染ルート
病原はラッサウイルスです。アレナウイルスに属するウイルスです。
ノネズミのマストミスの排泄物に接触することで感染します。
ナイジェリアから西アフリカ地方に常在するウイルスです。
発症
潜伏期間は1週間~3週間程度で、急に発症し、初発症状はインフルエンザに似ています。
高熱,全身倦怠感に続き,3~4日目に大関節痛,咽頭痛,咳,筋肉痛,心窩部痛,後胸部痛,嘔吐,悪心,下痢,腹部痛などが生じます。
重症化すると顔面頸部の浮腫,眼球結膜出血,消化管出血,心嚢炎,胸膜炎,ショックが見られる発熱なども生じます。
致死率は1%ほどです。