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検査

エンドトキシンについて

エンドトキシンの定義

エンドトキシンとは、グラム陰性菌の菌体にある耐熱性の毒素です。
“endo”は「内」を意味する接頭辞、“toxin”は「毒」「毒素」を 意味する英語です。

エンドトキシンの解説

毒素であるエンドトキシンは、リポ多糖体です。

エンドトキシンには、発熱作用、ショックの惹起、マクロファージの活性化、補体の副経路の活性化、DICの誘導、アジュバント効果、マイトジェン効果、サイトカイン産生誘導など、さまざまな影響をもたらします。

基準値は、およそ5pg/ml~10pg/ml以下です。

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医療従事者向け

薬剤感受性試験のディスク法について

CLSI(臨床検査標準化協会:Clinical and Laboratory Standards Institute)に準拠して行われます。

原理

菌を接種した感受性試験用の培地に感受性ディスク􏰄􏰁を置くと、培地水分がディスクに吸収され抗生剤が拡散します。

ディスク􏰄􏰁を中心に抗生剤の濃度勾配が形成されます。菌の発育は、抗生剤の発育阻止濃度以下の領域に限定されるため、発育阻止円が形成されます。阻止円直径は抗生剤の発育阻止濃度に反比例します。

培地

用いる培地としては Mueller-Hinton がもっとも適切です。

ただし、培地にはロット差がみられるので精度管理用􏰁が必要てす。

時間、温度

菌液調整後からディスクを置くまては、15分以内に終えます。培養温度は35~37°Cの範囲とし、一夜培養します。阻止円直径の読みとりは、定規など􏰄で測定し、S、I、Rの3段階の判定を行います。

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病気

ジフテリア

ジフテリアとは

ジフテリアは、感染したCorynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)の毒素よる上気道疾患です。

感染症法では、第2類疾患に分類されています。

病態の分類

主に3つの病態があります。

扁桃・咽頭ジフテリア、鼻ジフテリア、喉頭ジフテリアです。

なお、重大な合併症は,毒素による、心臓や中枢神経の症状です。

特に、心筋炎を合併すると予後が悪くなります。

扁桃・咽頭ジフテリア

扁桃ジフテリア、咽頭ジフテリアは、2〜5日の潜伏期間を経て、発熱、倦怠感,食欲不振,咽頭痛,微熱、嚥下痛などの症状から始まります。

24時間後には扁桃,咽頭などに特徴的な厚い偽膜(白い膜)が形成されます。

頸部のリンパ節炎は、大きく腫れると、“bull neck”と呼ばれる状態になります。

症状は毒素血症の程度によって異なり、10日ほどで治癒する患者もいれば、死亡に至る患者もおり、様々です。

鼻ジフテリア

病初期は微熱で、次第に鼻汁は血液が混ざります。また、粘液膿性となります。

鼻孔,上唇はびらんします。無治療の場合、この症状は数週間続きます。

喉頭ジフテリア

咽頭ジフテリアから進行し、発熱、咳嗽、嗄声、犬吠様の咳「クループ」などが特徴です。

気道に膜が形成され、呼吸困難が生じます。気道閉塞によって死亡に至る例もあります。

診断

診断は,病変部からの菌の分離によって行います。鼻咽腔粘膜や結膜などから偽膜を採取し、特殊な培地で培養します。

または、PCR法によりジフテリア菌の遺伝子を検出します。

治療方法

ジフテリア菌の産生する毒素を迅速に抗毒素により中和し、さらに、適切な抗菌薬を投与します。

抗毒素は北里研究所が管理しています。

保健所に届け出て、抗血清を入手します。

抗菌薬はエリスロマイシンが第一選択となります。培養が陰性になることを確認するまで投与します。

予防法

本症の予防には、ジフテリア、百日咳、破傷風(DPT)3種混合ワクチンや、ジフテリア、破傷風(DT)2種混合トキソイドの接種が行われています。

ジフテリア発生地に渡航する際にはDTワクチン接種が望ましいです。

疫学

国内においては3種混合ワクチンの普及により1999年の1例を最後に発生はありませんが、2000年以降ジフテリア菌に近縁のCorynebacterium ulceransによる5例のジフテリア類似症例が報告されています。

法律関係

本症は2類感染症に分類され,診断した医師は直ちに保健所へ届出義務があります。

C. ulceransの産生する毒素もまたC. diphtheriaeの産生する毒素と類似しているため、診断したときは速やかに厚生労働省に届け出なければいけません。

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病気

ペスト

ペスト感染症とは

ペストは、ペスト菌(Yersinia pestis)の感染による疾患です。

感染症法では、第1類疾患に分類されています。

原因と感染ルート

ペスト菌は、マウス,ラットなどのげっ歯類が保菌しています。

ペスト菌を保有している動物を吸血したノミ(ケオプスネズミノミなど)を介してヒトに感染します。ノミに咬まれた傷口から感染を起こします。

世界的にはアフリカを中心として,現在でも患者が発生しています。

なお、日本では、「黒死病」として直近では大正15年(1926年)に報告がありました。

病態の分類

ペストの病態は,「腺ペスト」,「敗血症ペスト」、「肺ペスト」の3つに大別されます。

腺ペスト

ペスト菌が、局所リンパ節に移行し、リンパ節は化膿性変化によって腫大します。

ペスト菌が、脾臓,肝臓,骨髄などのほかの臓器に移行して重症化すると、敗血症ペストを起こします。肺ペストを起こすこともあります。

39℃以上の発熱,頭痛,悪寒,筋肉痛,関節痛,倦怠感などが生じ、腫脹リンパ節は自発痛や圧痛を伴います。

敗血症ペスト

意識レベルの低下,四肢末端部の壊死,紫斑、皮膚の出血などが現れ,播種性血管内凝固症候群(DIC)やショックを伴い,数日以内に死亡することが多いです。

肺ペスト

腺ペストや敗血症ペストの経過中に肺炎として発症したり、肺ペスト患者の咳などで排出されるエアロゾルを吸引することで発症したりします。

頭痛,嘔吐,高熱などの症状とともに呼吸困難や血痰を訴え,肺炎は急速に進行し重篤な状態に陥りやすいです。

確定診断

血液などから、培養によって菌が分離されたり、PCRで遺伝子が検出されたりすれば、確定診断となります。

なお、蛍光抗体法でエンベロープ抗原を検出した場合や、エンベロープ抗原に対する血清抗体が急性期に比べて回復期で上昇した場合にもペストと診断できます。

治療方法

アミノグリコシド系、キノロン系、テトラサイクリン系の抗菌薬が用いられます。

特に、肺ペストは進行が急激の場合があるので、初期治療が重要です。

なお、ペスト患者と接触した場合は経口抗菌薬を予防内服します。

ワクチンも存在します。

法律関係

ぺストは1類感染症に指定されているため、法に則り、ペスト患者、無症状ペスト菌保有者、ペスト疑似症患者、ペスト死亡者、ペスト死亡疑い者について、医師は保健所へ届け出る必要があります。

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病気

ウイルス性出血熱

ウイルス性出血熱は、重篤な急性熱性疾患です。世界的に最も警戒すべ感染症です。

感染症法では、「エボラ出血熱」、「クリミア・コンゴ出血熱」、「南米出血熱」、「マールブルグ病」、「ラッサ熱」が第1類疾患に分類されています。

エボラ出血熱

原因と感染ルート

エボラウイルス(Ebola virus)が原因です。フィロウイルス科に属するウイルスです。

コウモリが自然宿主で、ゴリラ・チンパンジーなどの中間宿主を介してヒトに感染することが多いといわれています。

主に患者の血液・体液・汚物などから感染します。

中央アフリカ・西アフリカなどで発生します。

発症

潜伏期は、数日から3週間ほどです。平均は1週間ほどです。

急に発症し、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、下痢、結膜炎などが生じます。

そして、3日ほど経つと急速に悪化し、発疹が出て、出血傾向となります。

さらに、6~9日経つと、激しい出血とショック症状などにより死にいたります。

致死率は50~80%です。

診断

海外渡航者や、海外渡航者と接触した人の発熱には注意が必要です。

確定診断は,国内では国立感染症研究所にて、ウイルス遺伝子、ウイルス抗原、血清抗体の検出などを行います。

治療

ウイルスの感染を疑うときは,保健所へ届出ます。

患者は、指定医療機関に隔離入院となります。

治療内容は,抗ウイルス薬投与、全身管理,補助療法などです。なお、ワクチンはありません。

クリミア・コンゴ出血熱

原因と感染ルート

クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFウイルス:Crimean-Congo haemorrhagic fever virusが原因です。ブニヤウイルス科に属するウイルスです。

野生動物、家畜を含む多くの哺乳動物が自然宿主で、ダニを介してヒトに感染します。

アフリカ・中近東・東欧・西部中央アジア地域などで発生します。

発症

潜伏期間は数日から1週間ほどです。感染しても20%程度しか発症しません。

症状は、エボラ出血熱などの他の出血熱に似ており、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐、咽頭痛、結膜炎、黄疸、羞明、種々の知覚異常などが生じます。

また、点状出血が一般的にみられ,進行すると紫斑も生じます。

重症化すると全身出血をきたすこともあります。致死率は20~40%程度といわれています。

南米出血熱

定義

南米出血熱は、アルゼンチン出血熱、ブラジル出血熱、ベネズエラ出血熱、ボリビア出血熱の総称です。

原因と感染ルート

原因は、アレナウイルス科に属するウイルスで、具体的には、アルゼンチン出血熱が「フニンウイルス」、ブラジル出血熱が「サビアウイルス」、ベネズエラ出血熱「ガナリトウイルス」、ボリビア出血熱が「マチュポウイルス」です。

主な感染経路は,ウイルス保有ネズミの排泄物,唾液,血液などとの接触です。

発症

潜伏期間は7~14日で,初期症状として突然の発熱、筋肉痛、悪寒、背部痛、消化器症状がみられます。

3~4日後には衰弱,嘔吐,めまいなどが出現し、重症例では高熱,出血傾向,ショックが認められます。致死率は30%といわれています。

マールブルグ病

原因と感染ルート

原因は、マールブルグウイルス(Marburg virus)です。フィロウイルス科に属するウイルスです。

宿主やヒトへの伝搬経路は解明されていません。ケニア,コンゴ、アンゴラなどで発生します。

ヒトからヒトへの感染は血液・体液への接触によって起こります。

発症

潜伏期間は3~9日間です。急に発症し、発熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐、下痢など生じます。

3日目ごろには出血傾向があらわれ、その後、発疹があらわれます。

第6~9病日に激しい出血傾向やショック症状を呈して死に至ることがあります。

致死率は20%以上といわれています。

ラッサ熱

原因と感染ルート

病原はラッサウイルスです。アレナウイルスに属するウイルスです。

ノネズミのマストミスの排泄物に接触することで感染します。

ナイジェリアから西アフリカ地方に常在するウイルスです。

発症

潜伏期間は1週間~3週間程度で、急に発症し、初発症状はインフルエンザに似ています。

高熱,全身倦怠感に続き,3~4日目に大関節痛,咽頭痛,咳,筋肉痛,心窩部痛,後胸部痛,嘔吐,悪心,下痢,腹部痛などが生じます。

重症化すると顔面頸部の浮腫,眼球結膜出血,消化管出血,心嚢炎,胸膜炎,ショックが見られる発熱なども生じます。

致死率は1%ほどです。

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医療従事者向け

細菌の抗菌薬への耐性メカニズム

抗菌薬の耐性メカニズムには、つぎのような種類があります。

菌によっては、複数の耐性機構をもつことがあります。

抗菌薬の分解

抗菌薬が、菌の産生する酵素(ベータラクタマーゼ)で分解され、不活化されてしまいます。

たとえば、ペニシリナーゼによるべニシリンの分解が挙げられます。

なお、近年は、ベータラクタマーゼ産生による耐性菌が問題化しています。

特に問題化しているものには、つぎのものがあります。

・基質拡張型ベータラクタマーゼ(ESBL)
・メタロベータラクタマーゼ(MBL)
・AmpC型ベータラクタマーゼ

抗菌薬の修飾

抗菌薬が、菌の産生する修飾酵素で低分子を付加されると、酵素への親和性を失ってしまいます。

たとえば、アセチル化によるカナマイシンの不活化が挙げられます。

作用点の質的変異

標的酵素が変化すると、薬剤への親和性を失ってしまいます。

たとえば、つぎのようなものがあります。

・PBPの変異によるペニシリン系やセフェム系などへの耐性
・DNAジャイレース(トポイソメラーゼI)の変異によるキノロン耐性
・RNAポリメラーゼのβサブユニットの変異によるリファンピシン耐性

標的酵素の量的変異

標的酵素が多量産生されると、標的酵素の全てを薬剤で失活させられなくなってしまいます。

たとえば、腸球菌PBPの過剰産生によるべニシリン耐性が挙げられます。

抗菌薬の流入阻害

薬剤の透過孔(ポーリン孔)または輸送系が変異すると、薬剤が菌体内に入らなくなります。

例えば、緑膿菌のポーリン孔欠損株は、イミペネム耐性となります。

抗菌薬の排出

排出ポンプの存在により、いったん菌体内に入った薬剤が、排出されてしまいます。

たとえば、多剤耐性緑膿菌(MDRP)はこの機構を有していると言われます。

なお、薬剤耐性菌の種類を別に紹介しています。

薬剤耐性菌の種類

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病気

サイトメガロウイルス腸炎

サイトメガロウイルス腸炎について解説します。

定義

腸管CMV感染症とは、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)により腸管に炎症が引き起こされる疾患です。

サイトメガロウイルスは、ヘルペス科のDNAウイルスであり、種特異性が強くヒトのみに感染するウイルスです。

ほとんどの人は、幼少期に、サイトメガロウイルスに感染します。

大半は、発症することなく、生涯にわたって潜伏感染します(いわゆる不顕性感染)。

感染経路は、唾液、尿、母乳のほか、輸血による感染、性行為などです。

サイトメガロウイルスが何らかの理由で再活性化すると、腸管に炎症が引き起こされます。

これをCMV腸炎(腸管CMV感染症)と呼びます。

サイトメガロウイルス腸炎は、後天性免疫不全症候群(AIDS) がハイリスクとされ、ほかにも、ステロイド、免疫抑制剤、抗癌薬の使用などで全身の免疫力が低下した状態にある患者にも発症し易いです。

近年は、ステロイド使用歴のないUC患者や重篤な基礎疾患をもたない健常者におけるCMV感染症の報告が増えており、必ずしも易感染性宿主のみに生じる疾患ではないことを理解しておく必要があります。

症状について

CMV腸炎の臨床症状は、下痢、下血、粘血便、発熱など、非特異的な症状を呈します。

診断について

診断は、内視鏡検査による所見と、生検組織を用いた病理組織学的な所見をもとに確定します。

CMV腸炎の内視鏡像は、一般に、潰瘍形成が最も多く、特に地図状あるいは打ち抜き様潰瘍が特徴的とされています。

発赤、びらん、小潰瘍から不整形潰瘍、類円形、地図状、縦走性、打ち抜き、 巨大潰瘍など種々の潰瘍形態が報告されており、多彩な所見を多発性に認めることが多いと報告されています。

また、病理学的には、生検組織を用いた核内封入体保有細胞の検出などによりCMV感染を証明します。

なお、血液採取によるCMV antigenemia法または、Polymerase Chain Reaction (PCR)法により、CMV血症を評価することもできますが、これらは血中のCMVの存在を確認する検査法であり、CMV腸炎の確定診断とはなりません。

治療について

CMV治療薬には、点滴製剤であるガンシクロビル、ホスカルネット、経口製剤であるバルガンシクロビルの有効性が報告されています。

画一的な標準的治療は確立していませんが、CMV感染症治療の第一選択薬としてはガンシクロビルが適しているとの報告が多くなされています。

ただし、ガンシクロビルは、骨髄抑制などの副作用があることから、 確定診断を得た症例のみが適応となります。

通常、2 ~4週間の初期治療に引き続いて、数週間の維持療法が行われます。

なお、免疫不全のない患者は自然治癒することもあるため、抗ウイルス薬治療は、症状、病変の重症度などに応じて判断する必要があります。

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好気培養と嫌気培養の違いとは?

細菌の培養は、発育に酸素を必要とする好気性菌と、酸素があると発育できない嫌気性菌とでは、異なる方法が採られます。

すなわち、好気培養と、嫌気培養です。

好気培養

好気培養では、シャーレ内の培地、あるいは、緩く蓋を被せた試験管内の培地に、細菌を接種して35〜37度程度の孵卵器に入れます。

なお、培地が液体培地である場合は、浸透させながら培養します。

嫌気培養

一方、嫌気培養では、菌を接種した培地を、ガスパックなどの酸素吸収•炭酸ガス発生剤とともに、密閉容器(嫌気ジャー)に入れて培養します。

嫌気性グローブボックス/嫌気チェンバー/嫌気チャンバーを備えた施設であれば、その中で培養します。

なお、培地として、システインやチオグリコール酸などの、還元剤が添加された培地(培地の酸化還元電位が低下している)が用いられることがあります。

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デ・エスカレーションとは?(de-escalation)

一般に、感染症の治療では、培養の同定・感受性検査の結果が出るまでの間、想定する感染部位・起因微生物をカバーする抗菌薬で治療します(エンピリック治療:empiric therapy)。

そして、培養の同定・ 感受性検査の結果が出たときには、その結果を踏まえて、臨床的にも効果が認められ、かつ、患者にとって最適な抗菌薬で治療していくのが良いとされています(いわゆる原因治療あるいは標的治療:definitive therapy) 。

このように、治療の過程で、広域なスペクトルの抗菌薬から、狭域なスペクトルの抗菌薬に変えることを、デ・エスカレーション(de-escalation)といいます。

デエスカレーションの問題点

しかし、デスカレーションには、運用の点で問題を含んでいます。

なぜなら、「現に効いている薬を別のものに変更する必要性はない」と考えて、デエスカレーションをしない医師もいるためです。

しかし、広域スペクトルの抗菌薬は、むやみに使うと薬剤耐性菌の出現を許すことになります。

また、その耐性菌は、環境や医療従事者を介し、ほかの患者に伝播する恐れもあります。

抗菌薬の種類は有限ですから、将来の患者に使える抗菌薬を、できる限り残しておくことが必要になるのです。

したがって、たとえ、目の前の患者が、広域スペクトルの抗菌薬によって改善したとしても、デエスカレーションし、より狭域な抗菌薬に変更する必要があります。

なお、病院の中には、抗菌薬の適正な使用を支援するチーム:AST(抗菌薬適正使用支援チーム)を設置しているところがあります。

チームの活動内容には、主治医へのデエスカレーションの提案が含まれています。

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病気

食道カンジダ症の診断、治療、予後

食道カンジダ症

食道カンジダ症とは、皮膚や食道の常在菌である真菌のカンジダが食道内で増殖し、胸焼け、胸痛、嚥下時痛などの症状を引き起こす疾患です。

カンジダ食道炎は、免疫不全患者や、白血病患者、悪性腫瘍患者に多く、ほかにも、長期に副腎皮質ホルモン剤を服用している患者や、抗生物質内服患者、コントロール不良の糖尿病患者などにも認められます。

食道カンジダ症は、その特徴的な内視鏡所見から、カンジダ食道炎とも呼ばれています。

診断

確定診断のためには、内視鏡検査を行います。

食道カンジダ症の場合、食道内視鏡検査で、食道内に水洗浄で容易にはがれない、斑状またはびまん性の白苔を認めます。

この白苔はカンジダ症に 特有で、多発している場合が多く、点状や線状に配列したり、癒合して縦列形成あるいは地図状白苔として認められたりします。

背景粘膜は浮腫状で発赤を呈し、易出血性です。

さらに白苔部位の病理検査(粘膜生検)や、微生物検査(塗抹・培養)などで酵母様真菌を確認することで診断されます。

また、抗真菌薬による診断的治療で症状が改善傾向となる場合は、そのことが食道カンジダ症と判断する根拠になりえます。

なお、問診も重要で、HIV感染などの病歴や、嚥下困難、嚥下時痛などの症状が診断のヒントになります。

治療

内視鏡検査で所見が認められ、なんらかの自覚症状や他覚症状を認めるときに治療の対象となります。

診断後、または診断的治療目的でフルコナゾールの内服を開始します。

内服開始から数日~1週間以内に症状の改善が得られていることを確認します。

軽症は内服治療で十分ですが、重症例は点滴治療を行います。

予後

基礎疾患にもよりますが、予後は良好で、治癒後の再発は少ないと報告されています。

ただ、まれに食道潰瘍形成や出血、穿孔、ろう孔形成、狭窄、真菌性敗血症をきたすことがあります。