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医療従事者向け

特発性細菌性腹膜炎の検査、診断、治療

特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis、SBP)とは、消化管穿孔などの腹腔内の感染病巣が認められない腹膜炎です。

この腹膜炎は、進行した肝硬変患者で肝機能がひどく低下したときに、一過性の菌血症から腹水に細菌が播種し、腹水中で細菌が増殖し、SBPが起こるとされています。

頻度は明らかでないものの、腹水を有する非代償性肝硬変の10~20%に併発すると推定されています。

検査

診断のために、腹水の生化学検査と腹水培養検査をおこないます。
消化管穿孔や二次性腹膜炎を考慮し、腹部造影CTを施行する場合もあります。

原因菌

単一菌による感染がほとんどで、SBPの起炎菌は腸内細菌であるグラム陰性桿菌が多く、大腸菌が40%以上を占めています。

腸内細菌叢の大部分を占めるのは嫌気性菌ですが、腹水は好気的な環境にあるため、これらが起炎菌になることは稀です。

もしも、バクテロイデス属などの偏性嫌気性菌が腹水中から検出された場合は、消化管穿孔を考える必要があります。

診断

一般には、腹水中の好中球数が250/mm3以上で細菌培養が陽性の場合にSBPと診断します。

ただし、SBPと鑑別を有する疾患として、胃潰瘍の穿孔、急性虫垂炎の破裂、憩室炎、腸管の悪性腫瘍、腸捻転や腸間膜動脈血栓症などによる腸管壊死などがあります。

また、急性膵炎などの腹腔内感染巣(消化管穿孔など)により生じる腹膜炎(二次性細菌性腹膜炎)との鑑別も必要です。

なお、SBPの亜型として、腹水中の多核白血球が250/mm以上で腹水培養陰性の場合や、腹水中の多核白血球が250/mm未満で腹水細菌培養が陽性の場合などが存在します。

治療

腹水中の多核白血球が250/mm以上を認める場合や、250/mm以上を認めなくても感染の兆候がある場合は、経験的治療(エンピリック治療)として、広域スペクトルの抗菌薬の投与を開始します。

二次性腹膜炎の可能性がある場合は、クリンダマイシンやセフメタゾールなど嫌気性菌をカバーする抗菌薬の併用を検討します。

平均的な治療期間は約10~14日とされています。

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病気

肝膿瘍の症状、診断、検査、治療

肝膿瘍とは、肝臓に膿瘍を認める状態です。

膿瘍は、肝臓外から原因となる細菌や原虫などが肝組織内に侵入・増殖して形成されます。

症状

発熱、倦怠感、悪寒、戦懐、右上腹部の圧痛、食欲不振、吐気・嘔吐、体重減少などの非特異的症状が2週~1カ月ほど持続します。

症状としては、発熱が最も多く、上腹部痛の割合も高くなっています。

肝腫大も特徴的な所見です。

原因微生物

病原体により化膿性肝膿瘍(細菌性肝膿瘍)と原虫性肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)とに大別されます。

化膿性肝膿瘍は、単独感染の場合と混合感染の場合があります。

細菌としては、単独感染の場合は、Klebsiella属または、Streptococcus anginosis Groupが多く、混合感染の場合は、E.coliなどの腸内細菌科とBactrioides属が多いです。

なお、真菌ではCandida sppが原因となります。また、免疫抑制状態の症例などでは、真菌や結核感染が原因となる場合もあります。

他方、原虫では、Entamoeba histolytica(赤痢アメーバ)が原因となります。

感染経路

細菌性肝膿瘍における病原体の肝内への侵入経路には、胆道、門脈、動脈、直達、外傷、侵襲的治療などがあげられます。

経胆道性が全体の40~60%を占め最も多いと報告されています。

他方、原虫性肝膿瘍(すなわち赤痢アメーバによる肝膿瘍)は、感染性を有する嚢子型アメーバ(シスト)の状態で経口的に侵入し、腸管内で栄養型アメーバとなり、その後、結腸粘膜を通過し、大腸から経門脈的に肝臓に移行して膿瘍を形成します。

赤痢アメーバの日本での感染は、男性同性愛者の感染が代表的で、20~50歳代の大都市に居住する男性に集中しており、近年は性感染症の1つとされ、B型肝炎やC型肝炎、梅毒やHIVを伴う事例が多く報告されています。

また、知的障害者施設における集団感染や、異性間の感染も見られます。

診断・検査

この疾患に特有の症状が存在しないことから、症状のみで診断することは困難です。

したがって、不明熱の鑑別疾患に、肝膿瘍を含めることが重要となります。

なお、ALP高値をみた場合に想起すべき疾患の1つであるとも言われています。

腹部エコー検査、腹部造影CT検査を行うことで、膿瘍を確認することができます。

また、血液培養を実施します。

アメーバ赤痢の関与を確認するため、血清赤痢アメーバ抗体も検査します。

膿瘍穿刺液の細菌学的検査も有用です。

また、既往歴や海外渡航歴、性的接触歴なを聴取することも大切です。

治療

細菌性肝膿瘍では多くの場合、抗菌薬治療を行い、同時に、ドレナージを行います。

ドレナージは、経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行し、膿瘍腔を生理食塩水にて洗浄後、抗菌薬を直接注入します。

抗菌薬としては、アンピシリン・スルバクタム(商品名ユナシン)、タゾバクタム(商品名ゾシン)など広域スペクトル薬剤を選択します。

アメーバ性肝膿瘍を疑う場合は、抗菌薬治療のみで改善することが多く、ドレナージをせずに、メトロニダゾール(商品名フラジール)にて治療します。

法律

赤痢アメーバによる感染の場合は感染症法5類感染症であり7日以内に届出をする必要があります。

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医療従事者向け

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficile関連下痢症(CDAD)

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficileは、一部の健常者の腸内に定着する常在菌の一種です。

Clostridioides.difficile(Clostridium.difficile)
Clostridioides.difficile(Clostridium.difficile)-米国疾病予防管理センター(CDC)ウェブサイトより

通常は、ほかの腸内細菌により、増殖が抑制されていますが、抗菌薬を投与した場合の副作用として、生命を脅かす下痢を引き起こすことがあります。

抗菌薬の投与により、正常な腸内細菌叢が撹乱されると、異常増殖して毒素を産生し、下痢症を引き起こします。抗生物質の投与を開始してから数日または数週間以内に症状が現れることがあります。

C.difficile が形成する芽胞は、過酷な環境でも安定で、アルコール耐性があり、多くの抗菌薬に対しても抵抗性があります(経口感染するため、院内感染対策上、重要な菌)。

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficile

クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficileは、グラム陽性偏性嫌気性細菌です。

酸素の存在下では発育することが困難です。

1935年に健常新生児の糞便から分離されたのが最初です。

その後1978年に抗菌薬関連の偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis)の原因菌として報告されました。

C. difficileの主たる病原因子は、トキシンA,トキシンB,バイナリ―トキシンという3種類の毒素が確認されている。

感染経路

腸内に定着した常在性のC.difficileによるもののほかに、保菌健常者やCDAD発症者の糞便を介した接触感染が主な感染経路です。

C. difficileは、芽胞形成性のグラム陽性偏性嫌気性細菌であるため、形成された芽胞が長期間にわたって環境中に生残し、それが院内感染や再発の感染源となる場合があります。

C. difficileには、毒素産生株と毒素非産生株とが存在します。毒素産生株が、健常者に定着することもあり、検出時に定着しているだけなのかを判断するのは簡単ではありません。

発症まで

クロストリディウム・ディフィシルは、通常は、他の腸内細菌により増殖が抑制されています。

しかし、広域スペクトルの抗菌薬の投与により、大腸菌をはじめとする腸内細菌が死滅して腸内フローラ環境が破壊されると、クロストリディウム・ディフィシルが異常増殖をきたします。

クロストリディウム・ディフィシルは、毒素(トキシンAおよびトキシンBなど)を産生し、C.difficile関連下痢症(CDAD;CDIとも)を引き起こします。

CDI診療ガイドラインでは、24時間以内に3回以上もしくは平常時よりも多い便回数の下痢を生じ、糞便中のCDI検査で毒素陽性もしくは毒素産生性C. difficileを認めるか、内視鏡検査で偽膜性腸炎像を認めるものをCDIと定義しています。

診断

診断は、消化器症状に加えて酵素抗体法(トキシンAとトキシンBの同時検出キット)で確定診断となります。

CD抗原(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)とCD毒素(トキシン)を同時に検出するキット
CD抗原(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)とCD毒素(トキシン)を同時に検出するキット(日水)。

上記の検査キットの添付文書では、CD抗原の感度は 88~94%、特異度は 89~94%。、CD毒素の感度は 73~87%,特異度は 97~98%と紹介されています。

また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)やLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法を用いた糞便中毒素遺伝子検査法(Nucleic Acid Am- plification Test:NAAT)を利用することができます。

PCRを使う場面は、上記の検査キットにて、抗原のみ(+)の場合です。上記の検査キットだけしか使えない状況では、感度を上げるため、C.difficileを培養してから、検査キットに菌液を滴下し、毒素の産生の有無を再検査をしていました(二段階法)。これは、判定まで、最長で2日を要します。しかし、PCR検査であれば、便検体から、直接にCD毒素遺伝子を検出できるため、即日判定が可能です(そのうえ高感度かつ高特異度)。しかも、機器によっては、バイナリートキシンを検出できるものがあります(ジーンエキスパート:GeneXpert ®など)。

なお、病原性を示すにはtoxin Bの産生が必須であることが動物モデルによって示されています。

毒素陰性でNAAT陽性の場合には,少量の毒素産生株の定着である可能性も考慮に入れて診断する必要があります。

培養については、特殊な培地を用います。便からC.difficileを発育させるには、サイクロセリンとセフォキシチンを含有する培地を使用する必要があります。サイクロセリン・セフォキシチン・マニトール寒天培地(CCMA寒天培地)、あるいは、サイクロセリン・セフォキシチン・フルクトース寒天培地(CCFA寒天培地)を使用します。

治療

治療としては、まず脱水を補正します。

そして、経腸栄養、化学療法、下剤など、他の下痢を来す原因を除外します。

なお、経腸栄養剤投与時の下痢の原因には、つぎのものがあり、CD腸炎(CDI)も含まれます。

  1. 投与速度:投与速度が速すぎる
  2. 栄養剤の浸透圧(高浸透圧性の下痢)
  3. 栄養剤の組成(乳糖不耐症,食物繊維の不足など)
  4. 細菌汚染(長すぎる投与時間:8時間以上)
  5. 温度(冷たい栄養剤は腸管を刺激して下痢を誘発する恐れ)
  6. ソルビトール含有薬剤や消化管運動促進剤などの薬剤投与
  7. 短腸症候群や炎症性腸疾患などの病態の合併
  8. CD腸炎の合併

原因抗菌薬を中止し、バンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与が有効です。

プロバイオティクスの投与も有効との報告もあります。

なお、CDトキシン検査が陰性でも、抗菌薬使用中または使用歴があり、下痢を来す他の原因がはっきりしない場合は、治療を検討すべきです。

PPIとCDI発症リスク

経腸栄養やプロトンポンプ阻害薬(PPI) により、CDIの発症リスクが上昇するという話があります。

  • PPI(ランソプラゾールなど)の添付文書には次の記載があります。「海外における主に入院患者を対象とした複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターを投与した患者においてクロストリジウム・ディフィシルによる胃腸感染のリスク増加が報告されている。」
  • PPIにより胃内のpHが上昇することで、胃酸によるC.difficile の殺菌力が低下し、 C.difficileの腸内細菌叢への定着が容易になるという説があります。

 

また、多くのCDI患者は見過ごされている可能性があることが指摘されています。

参考:日本初のCDIに関する多施設共同前向き疫学研究(Clostridioides (Clostridium) difficile infection burden in Japan: A multicenter prospective study)

 

https://www.facebook.com/NTMC.AST/posts/652355061849637/ では、つぎのように記載されています(引用)。

国立感染症研究所の加藤はる先生と多摩総合医療センターの本田仁先生らを中心に、東京医療センターを含めた全12施設(20病棟)が参加して行われた研究がpublishされました。
(参加施設:八戸市立市民病院、亀田総合病院、東京ベイ浦安市川医療センター、東京医療センター、豊川市民病院、東海中央病院、奈良県立医科大学附属病院、刀根山病院、呉医療センター・中国がんセンター、下関市立大学市民病院、産業医科大学病院、沖縄県立南部医療センター)
Bristol stool scale 6-7の便を3回/24h以上認めた患者さんのC.difficileのトキシン、培養検査、遺伝子検査を施行。
・全体のCDI発生率 7.41/10,000患者・日。ICU(5病棟)では22.2/10,000患者・日
・全体のCDI検査頻度は、30.36/10,000患者・日
・CDI検査頻度とCDI発生率は高い相関関係にある(R2=0.91)
・分離したPCRリボタイプは018(29%)、014(23%)、002(12%)、369(11%)。
過去の日本の報告と比べて発生率は高い結果となっており、これまでのCDI発症率は過小評価されていた可能性があります。

以上、ご参考まで。

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病気

腸結核の症状、診断、治療

腸結核は小腸や大腸に結核菌が感染することで発症する感染症です。

症状

症状は、慢性に継続するはっきりとしない腹痛が最も多くなっています(80~90%)。

ついで下痢、吐下血、腹部膨満、嘔吐、発熱、腹部腫瘤、体重減少などとなっています。

そのほか、発熱、全身倦怠感、寝汗などの症状がみられることもあります。

診断

腸結核は、大腸内視鏡検査にて、多発潰瘍、潰瘍化した集塊、無茎性ポリープ、小憩室を認めます。

病理組織学検査では、大腸内視鏡下の生検にて乾酪性肉芽腫を認めることもあります。

腸結核の確定診断は、便培養検査や病変部の内視鏡下生検検体による生検培養、あるいは生検検体からPCR法によって、結核菌の存在を確認します。

結核感染の補助診断としては、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)が用いられます。

クオンティフェロンゴールドや、TスポットTBの検査を実施します。

クローン病との鑑別

腸結核では輪状潰瘍、帯状潰瘍が特徴的とされますが、多彩な病変を呈することが示されており、とくに腸管長軸方向に伸びる潰瘍ではクローン病との鑑別が重要です。

治療

腸結核の診断が確定した場合には、抗結核薬にて治療を開始します。

また臨床上、強く結核性腸炎が疑われる場合には、診断的治療を行うこともあります。

治療は、肺結核と同様で、4剤(リファンピシン[RFP]、イソニアジド[INH]、エタンブトール[EB]、ピラジナミド[PZA])で治療を開始し、2カ月後に2剤(INH、RFP)に減量して4ヵ月間継続して治療します。

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病気

細菌性赤痢(赤痢菌性胃腸炎)

概要

細菌性赤痢(赤痢菌性胃腸炎)は、赤痢菌の感染により、胃腸炎症状を引き起こす疾患です。

感染力が強く、 10~100個の菌で感染が成立します。

赤痢菌は、経口 されると、12~50時間の潜伏期を経て発熱などを引き起こします。

38度から39度の発熱のほか、水様性下痢、倦怠感、食欲不振、嘔吐などの症状が現れます。

その後にしぶり便(いわゆるテネスムス)や、急激な腹痛をともなう少量の膿粘血便となります。

推定感染地の50~60%は、インド、インドネシア、中国、ベトナム、タイ等のアジア地域です。

衛生環境のよくない国では、便から排泄された赤痢菌が、生水、氷、生野菜、果物、刺身などを汚染していると考えられています。

詳細

原因菌

赤痢の原因菌は赤痢菌(Shigella)です。

志賀毒素と呼ばれる毒素を産生します。

腸内細菌科に属し、形態的には鞭毛を持たない無毛菌です。

遺伝子レベルでは大腸菌と非常に近い関係にある菌です。

本菌は、1898年に志賀潔博士によって発見されました。

学名Shigellaは、志賀博士の名前から命名されたものです。

生物学的な分類ではA群〜D群の4つに分けられます。

診断

海外渡航歴を確認することが重要です。

ただし、まれに国内感染例もあることに留意する必要もあります。

しぶり便(テネスムス)や膿粘血便などが見られたら、赤痢菌性胃腸炎を強く疑うことができます。

下痢を引き起こす菌の種類は多数あるため、便培養で、赤痢菌を同定することにより診断します。

検査法

選択培地として、SS培地やDHL培地を用いて便培養を実施します。

培養後の集落の形態や血清反応により赤痢菌を簡易同定し、生化学的性状などを確認して確定します。

治療

治療は、脱水の補正と抗菌薬の投与がメインです。

脱水の補正は、通常、経口摂取で行い、脱水が高度で経口摂取不可能なときは補液を行います。

抗菌薬に関しては、フルオロキノロンの3~5日間内服治療が推奨されています。

下痢止めの薬は、菌の排泄を阻害することになり回復を遅らせるため、推奨されません。

法律

赤痢菌性胃腸炎は、感染症法第三類の全数把握対象疾患です。

ただちに保健所へ報告する義務があります。

また、学校保健安全法では、医師が、感染のおそれがないと認めるまで出席停止となっています。

また、食品衛生法では、食中毒を診断したときは、ただちに最寄りの保健所に届出を行うこととなっています。

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Column

海外渡航前に打つべきワクチンの種類

海外では、日本では考えられない病気に感染することがあります。

とくに開発途上国での感染が重症になることがあります。

そこで、海外に旅行するときには、ワクチンを打っておくべきです。

しかし、ワクチンにも色々な種類がありますので、ここでは、どんなワクチンを打てばいいの紹介します。

また、あわせて渡航前にチェックしたほうが良いことも紹介します。

打つべきワクチン

開発途上国へ行く場合、成人は、海外渡航時に予防接種すべきワクチンは、黄熱病、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎、腸チフス、ポリオに対するワクチンが主な推奨ワクチンです。

その他、麻疹、風疹、インフルエンザのワクチンも、検討するとよいでしょう。

コレラワクチンなど、日本で未承認のワクチンの接種が必要な場合は、海外渡航専門のトラベルクリニックを受診しましょう。

なお、黄熱病ワクチン、ポリオワクチン以外は、一定期間をあけて2回の接種が必要です。

また、よく海外に出掛ける人なら3回目の接種も受けておくと、基礎免疫ができてオススメです。

参考に:渡航前にチェックすべきこと

つぎのことを確認しておくことは、ワクチンを打つのと同じくらい大切です。

1.衛生事情

渡航前にすべき重要なことのひとつは、インターネットなどで現地の衛生事情を調べることです。

どのような病気に感染するリスクがあるのか、知っておきましょう。

ワクチンのあるものは、予防接種を前もって受けておくことが大切です。

ワクチンの無いものは、感染経路を知り、感染の防ぎ方を学んでおきましょう。

2.医療体制

現地の医療のレベルを知っておくことも大切です。

事前に、低い医療水準の国だとわかっていれば、様々なことに注意することができるからです。

たとえば、渡航先で、注射針や輸血がどれくらい安全かを考えたことがあるでしょうか?

注射を受けるとき、使いまわされた注射針は、C型肝炎やHIV感染症になるリスクとなります。

また、現地で交通事故にあって出血し、輸血を受けることになったとき、輸血用の血液に、B型肝炎ウイルスなどが混入しているかもしれません。

さらに、現地の医師のレベルが、日本と比べてどうかなども、インターネットや旅行会社を通じて調べておくと良いでしょう。

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病気

旅行者下痢症の感染経路、原因微生物、予防法、診断、治療

概要

旅行者下痢症とは、主に国外旅行者が滞在先で遭遇する下痢症状です。

海外渡航者の帰国後の受診理由で発熱とともに頻度の多いのが、この下痢症で、旅行者の30~40%が罹患すると言われています。

旅行者下痢症は、重症例はまれで、適切な治療や対症療法で対処可能です。

詳細

感染経路

リスク因子として、渡航先が最も重要となります。

感染経路は水、食事が主です。

現地の飲用水を飲んだり、非加熱の食材を食べたりすることでリスクが上がります。

特に、氷、ジュース、生野菜、生鮮魚介類のいずれかの飲食がハイリスクです。

原因微生物

細菌、ウイルス、寄生虫など原因となる病原体は多様です。

細菌でもっとも多いものは、毒素原生大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli、ETEC)と言われています。

また、カンピロバクター、サルモネラ、赤痢菌、チフス、パラチフス、エロモナス、プレシオモナス、コレラ、ビブリオなどもあります。

そのほか、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム、赤痢アメーバにも注目する必要があります。

予防法

清潔管理に気を配るのが原則です。

具体的には、加熱していない食べ物を摂取しないこと、現地の水を飲まないこと、手洗いを徹底することなどです。

また、飲用水を確保するには、65 ℃以上で1分間加熱し、水中のほば全ての腸管病原性の細箘を殺します。原虫も、55 ℃以上で 5分間加熱すれば不活化されますので安心できます。

診断

海外渡航中または帰国後短期に、1日3回以上の非有形便を認めるという病歴および症状で診断します。

確定診断には、便培養の結果で確定診断となります。

ほかに、血清抗体価や、血液培養も併用できます。

原虫や寄生虫の診断には、糞便の顕微鏡検査が有効です。

治療

旅行者下痢症は一般的に自然経過で改善するため、輸液や電解質補正による対症療法が重要です。

ただし症状が持続する場合や症状が強い場合には、抗菌薬投与を行います。

基本的には、ニューキノロン薬あるいはホスホマイシンを3日間投与で対処します。

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病気

サルモネラ症の症状、診断、治療

サルモネラ症

サルモネラは、グラム陰性、通性嫌気性の桿菌で、腸内細菌科に属する菌です。

サルモネラを大きく分けると、チフス、パラチフス、その他のサルモネラがあります。

サルモネラ症とは、チフスやパラチフス以外のサルモネラ菌の感染により引き起こされる感染症です。

サルモネラ症を引き起こす病原体として主に問題となるの はSalmonella enterica subsp. entericaです。

参考:サルモネラの種類

サルモネラは、2菌種6亜種が存在します。

さらに、サルモネラは60種類以上の菌体表面抗原(O抗原)と80種類もある鞭毛抗原(H抗原)の組み合わせによって2,500種類以上の血清型が存在しています。

症状

サルモネラ症で多いのは食中毒で、日本の食中毒発生状況で常に上位に位置しており、食品衛生上重要な病原体です。

症状としては、急性発症の発熱、腹痛、下痢が典型例ですが、嘔吐や血便を伴うこともあり、合併症として菌血症や感染性動脈炎があります。

発症は、95%以上が食事由来です。

卵や、卵の加工食品、調理不十分な肉などが原因となっています。

潜伏期間は、摂取から12~72時間です。

診断

症状から、サルモネラ症と他の感染性腸炎と鑑別することは難しいです。

便の培養の結果で、チフスやパラチフス以外のサルモネラ菌を検出して診断します。

鑑別を要するのは、赤痢菌、カンピロバクター、エルシニア、赤痢アメーバなどです。

敗血症も調べるため、不明熱が続く患者や、ハイリスク患者では、血液培養も採取すると良いでしょう。

治療

抗菌薬の投与、脱水の補正、プロバイオティクスの投与が主な治療となります。
サルモネラ菌には、耐性菌は確認されていないため、一般的な内服薬で足ります。

ニューキノロンが適当で、シプロキサンなどを5日間投与するのが基本です。

ただし、血液培養陽性例や免疫不全者では、二週間程度の治療が勧められます。

法律

サルモネラによる胃腸炎は、感染症法の5類疾患である「感染性胃腸炎」に含まれます。

食中毒の場合は、食品衛生法で、ただちに最寄りの保健所に届出を行うこととなっています。

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Column

妊娠中にインフルエンザワクチンを打つべき理由を解説

インフルエンザワクチンは妊娠中の妊婦にも推奨されています。

理由

インフルエンザワクチンは、殺したインフルエンザウイルスや、インフルエンザウイルスの一部を使ったものです(不活化ワクチン)。

つまり、生きていないインフルエンザウイルスを使っています。

したがって、ワクチン接種をしても、胎児に影響を与えることはありません。

また、ワクチン接種により胎児に異常があったとの報告はありません(先天異常なし)。

そして、インフルエンザワクチンは、接種から効果が出るまでは約2週間程度であり、ワクチンの効果は、約5ヶ月間持続します。

したがって、接種の時期としては、国内での流行期間が12月から3月のため、遅くとも12月にはインフルエンザワクチンを接種することが望まれます。

ちなみに、インフルエンザワクチンの効果は、100%ではありません。

ただし、流行ウイルスと同じタイプのワクチンを接種していた場合、インフルエンザHAワクチンでは予防効果は70〜90%と言われています。

以上のように、ワクチン接種は、インフルエンザ予防の効果的な手段であるため、妊娠期間を無事に過ごすために、妊婦へのワクチン接種は勧められています。

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病気

A型肝炎の感染経路、症状、治療、予後

定義

A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)による急性ウイルス肝炎です。

解説

ウイルス

A型肝炎ウイルス(HAV)は、ピコルナウイルス科のヘバトウイルス属に分類される全長7500塩基の一本鎖のプラス鎖RNAウイルスです。

HAV遺伝子型は1 ~ 7型までの7種類に分類されています。

感染ルート

主な感染媒体は汚染された水および食べ物であり、経口感染で拡がります。

肝臓で増殖したウイルスが胆汁から腸管、そして便中に排出され、排泄物がなんらかの経路で口より侵人し感染が成立します。

最近では、HAVに汚染された輸入食品による感染例が散見されます。

また、ドラック使用者間の感染や、同性愛者間での流行なども見られます。

なお、日本では公衆衛生環境の発達や上下水道の整備に伴い、A型肝炎の発生数は減少しています。

しかし、世界的には、A型肝炎流行国は多く、そのような地域への渡航がリスクファクターとなっています。

症状

感染から約1ヶ月の潜伏期間を経て発症します。

前駆症状として突然の高熱 (38℃以上)と、全身の著しい倦怠感が特徴的です。

他の症状として、頭痛、関節痛、筋肉痛、咽頭痛等の前駆症状がみられることもあります。

その後、典型的には、黄疸、肝腫脹、黒色尿、白色便などがみられます。

成人は40~70 %が黄疸になると言われます。

小児では不顕性感染や軽症ですむことが多く、6歳以下の黄疸出現率は10%以下と言われます。

なお、罹患年令が高いほど、重症例・死亡例が増加する傾向があります。

治療

HAVに感染し発症すると、一ヶ月程度の入院加療を必要とします。

基本的には安静で、他の急性肝炎と同様、対症療法が中心となります。

検査

HAVの急性感染の診断は、IgM-HA抗体を検査します。

症状が出現してAST/ALTが上昇しているときには、通常はlgM-HA抗体が上昇しています。

したがって、この検査が陽性であれば、A型急性肝炎として診断可能できます。

陽性は感染後3~6ヵ月間持続すると言われています。

なお、重症A型急性肝炎の急性期には、AST/ALTが上昇しているにもかかわらず、lgM-HA抗体が上昇していない症例も報告されているため、注意が必要です。

予後

一般に、致死率が低く慢性化もしません。

予後良好な疾病です。

法律

感染症予防法では4類感染症に分類されており、ただちに届け出る必要があります。