食事の介助について解説します。
横に座って介助する
高齢者の食事の介助をするときは、なるべく二人ともイスに座ってテーブルにつき、横に並んで一緒に食べるのがベストです。
ご飯を同じ目線で見ることができますし、介助者が、お年寄りの利き手側に座れば、自分で食べるときの状態に近づけて食べられます。
また、口に運ぶ食べ物が何か言葉で伝えやすいため、コミュニケーションが取りやすい利点があります。
ゆっくりと時間をかける
老人は食べるのが遅いため、つい、「遅い」「こぼすから」と、スプーンなどを奪い、食事介助してしまうこともあるかと思います。
しかし、これは、本人に惨めな思いをさせるだけで、何のメリットもありません。
自宅で介助するのですから、多少時間がかかっても、可能な限り、見守りましょう。
食事をこぼしてしまう場合は、エプロンを使うのもアリです。
向き合ったり、立ったまま介助するのは良くない
向き合って食べると、どうしても監視されている印象を与えてしまいますので、よくありません。
また、介護者が横に立って食事介助をするのも良くありません。
いつもよりも高い位置から食事が口に運ばれることになりますので、高齢者が顔を上に向けがちです。
そうすると、誤嚥のリスクが高くなってしまいます。
できるだけ、横に座ってあげましょう。
安全な食事介助の方法
食べる能力が足りない高齢者が増えています。
その背景には、加齢に伴う嚥下機能(えんげきのう)の低下だけでなく、持病の悪化や、認知機能の低下、低栄養などがあります。
高齢者が、口から食べられる(経口摂取)状態を、できるだけ長く維持するためには、嚥下機能の低下を最小限にすることが大切です。
ここでは、食べられる状態を長く保つ秘訣を紹介します。
食べることを意識させる
食べるためには、まず「食べる」という意識が必要です。
食物を目で見ることができるよう、覚醒していることが前提になります。
覚醒していないと、舌で食べ物を送り込めず、また、嚥下反射がスムーズに起こりません。
誤嚥や窒息のリスクとなってしまいます。
食事開始時は、まず食事を見せてにおいを嗅いでもらい、食事が始まることを認識してもらうと良いでしょう。
なるべく自力摂取を促し、「手を動かす」という随意運動を続けることによって、覚醒の継続につなげます。
口腔ケア
食前には、感覚を刺激するために、口腔ケアを行うことが効果的です。
食前に口腔ケアすることで、口腔内の細菌を減少させることもできますので、誤嚥した場合にも、大量の細菌が気道に入るのを防ぐことができます。
歯磨きの後には、口をゆすぐか、ガーゼなどを用いて口腔内を拭き取り、清潔な状態にします。
食事環境の整備
認知機能が正常な人には必要ありませんが、認知機能の低下した高齢者は、脳機能障害がありすので、食事環境を調整することが重要です。
たとえば、テーブル周りに気になるような物を置かない、食器や食事用エプロンなどの柄を無地にするなどで集中してもらいます。
また、複数の食器で注意が散るような場合は、 トレー皿に盛りつけるなどの工夫も有効です。
また、ごはんを認識しやすいように、白い食器に白いご飯を盛りつけるようなことはしないようにします。
スプーンの使い方
飲み込む前にどんどんご飯を詰め込んでしまうような場合は、誤嚥や窒息のリスクがあります。
窒息小さいティースプーンなどを使用し、食物が少しずつ口に入るよう にしましょう。
食欲がない高齢者に食欲を取り戻してもらう方法
お年寄りが食欲をなくし、ご飯を食べないと、栄養不足になってしまいます。
すると、体力や気力が落ち、介護者の負担は増えてしまいます。
食欲を取り戻してもらうには、原因を探すことが大切です。
活動量が少ない
日中ベッドで過ごしており活動量が低いと、お腹がすかない原因となります。
この場合、散歩をしたり、デイサービスでレクリエーションに参加したりして、活動量を増やすことが重要です。
食事の間隔が短い
介助の都合で食事の時間の間隔が短いと、食欲がわかない原因となります。
食事の間隔を長めにとり、お腹が空くのを待ってあげるとよいでしょう。
マンネリ化している
家での食事に飽きてしまっていると、食欲がわきません。
この場合、外食に連れだしたり、出前をとったりして気分転換をすることが良いでしょう。
また、仲の良い友人と食卓を囲んで会食するのもおすすめです。
精神が弱っている
お年寄りを観察していて「表情がなくなった」、「目のハリがなくなった」、「ネガティブな発言が増えた」と感じたら、加齢によって、生きる意欲が失われている可能性があります。
このようなケースでは、行きたいところに連れて行ったり、会いたい人に合わせてあげたりするのが良いでしょう。
食事の介助中にむせる時の対応方法
むせる原因によって対応はさまざま
高齢者が食事でむせるとき、刻み食が良い、とろみ食が良いなどと言われます。
しかし、むせる原因によって、食事の工夫の仕方は変わってきますので、その内容を紹介します。
むせる原因は
食事の高齢者が食事でむせる原因は、大きく分けて3つ考えられます。
咀嚼(そしゃく)に問題がある
お年寄りは、歯がなかったり、入れ歯をしていても合っていなかったりします。
また、虫歯や歯周病で、痛くてうまく噛めないこともあります。
これらの理由で、食べ物を噛んで小さくできないと、むせる原因になります。
したがって、咀嚼に問題があると感じたときは、歯科医院に連れて行くことが大切です。
虫歯や歯周病を治してもらったり、入れ歯を調整して噛み合わせをチェックしてもらうまくなどして、なるべくうまく噛めるようにしましょう。
ただし、歯医者へ行っても、十分に噛む力が戻らない場合もあります。
そのときは、なるべく食事を柔らかくすることが大切です。
刻み食にすると、見た目と味が悪くなり、食欲がなくなってしまうからです。
喉の奥に送り込めない
舌の動きが悪い人は、噛み砕いたものを、口の中でまとめることが苦手です。
こういったときは、刻み食にする介護者がいますが、よくありません。
刻むことで口の中でバラバラになりやすくなり、かえって、まとめにくくなってしまいます。
一方、ミキサー食にしてしまう介護者もいますが、味が落ち、その上、サラサラのため気管に入りやすくなり誤嚥しするリスクがあります。
解決策として、一口大にまとめた食べ物や、とろみのある食事が良いでしょう。
ゼラチンや寒天、片栗粉、市販のとろみ剤(増粘剤)などでとろみをつけます。
なお、ドロドロにしすぎないことがポイントです。
喉の奥にきた食べ物を飲み込めない
飲み込んでいるつもりでも、のどが完全に閉じていないと、食べ物が気管に入ってしまい、むせる原因となります。
このようなときも、上記のような、とろみ食にすると良いでしょう。
食事の介助を嫌がるときの食べさせ方
介護の中で食事は毎日あるイベントです。
頑張ってなんとか食べさせようとする介護者は多いと思います。
しかし、介護者の思いとは反対に、お年寄りは食事の介護を嫌がるケースが目立ちます。
原因は
お年寄りが食事の介助を嫌がる理由は、『自分で食べたい』と思っているからです。
不自由なく食べられていた経験があるからこそ、自分に食べられないことに強いストレスを感じるのです。
どうすればよいか
解決策は、介護者はなるべく手を貸さずに、できるだけ自分で食べてもらうようにすることです。
これは、介護のしすぎによる生活機能の衰えを防ぐことにつながります。
自分で食べてもらうためにの食事用の介護グッズが沢山あります。
持ちやすい箸やスプーン、フォークがあり、また、ケンジー(スプーン箸)という食事用品もあります。
また、手が不自由な場合は、手で食べてもらうのも一つの方法です。
ここで、ご飯を綺麗に食べてもらう方が良いのではないかと思うかもしれません。
しかし、実は手づかみで食べるのは、高齢者が自分のタイミングで好きな量を食べられるというメリットがあります。
介護者は、『食べさせる』という考え方から、『自分で食べてもらう』という考え方を意識する必要があります。
高齢者が満足して食べることを重要視すると良いでしょう。
片麻痺や半身麻痺の人の食事の介助
片麻痺や半身麻痺の人の食事の介助をするとき、どうしても食べにくいので、食事をこぼしてしまうことが問題になります。
また、飲み物も飲みにくく、溢れてしまいます。
そのようなときのコツを紹介します。
麻痺していない健側から差し入れる
基本的なコツは、口の麻痺していない健側から食事を差し入れることです。
普通に入れるよりも食べやすさはアップします。
そのためには、食事の介助を、テーブルに横並びに座って介助する必要があります。
麻痺していない半身の側(健側)に座り、ご飯を食べるのを介助しましょう。
もしお年寄りなどで体のバランスが取りにくい場合は、体を支えながら食べさせてあげましょう。
注意点は、飲み物の場合に、アゴを下げてもらうことです。
顔を下向きにすることで、唇で受けやすくなり、飲み物が下にこぼれにくくなります。
なお、どうしても溢れてしまう場合は、ストローを使っても良いでしょう。