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液体ミルクのアレルギーを疑うとき

液体ミルクとアレルギーを簡単に解説します.

アレルギーを疑うとき

液体ミルクを飲ませたら、赤ちゃんが泣きやまない、ウンチに血が混じっていた、などの事例が多くあります。

それは、ミルクアレルギーによる腹痛と、腸管からの下血の可能性が大きいです。

もちろん、便に血が混じる場合に考える病気としては、さまざまなものがあります。

たとえば、「食中毒」、「出血性大腸炎」、「潰瘍性大腸炎」、「便秘に伴う孤立性直腸潰瘍」などです。

しかし、乳児ではミルクアレルギーを第一に考えます。

これは、液体ミルクを与えている赤ちゃんによく発生します。

代用ミルクの大豆乳でも起こります。

アレルギーを防ぐには

近年は、アレルギー症状の強い赤ちゃん向けに、すぐれた加水分解乳が開発されています。

これは、アレルギーを引き起こすタンパク質が、細かく分解されたミルクです。

アレルギーがかなり強い場合は、高度加水分解乳もオススメです。

また、アミノ酸調整乳という液体ミルクも存在します。

いずれも、小児科医と相談してから赤ちゃんに与えるようにすると良いでしょう。

心配しすぎる必要はない

なお、アレルギーを心配しすぎて、はじめから加水分解乳を与える必要はありません。

まれに、『両親がアレルギーだから・・・』といって、はじめから加水分解乳を赤ちゃんに与えるママやパパがいますが、心配しすぎは良くありません。

何らかの症状が出てからでも遅くはないのです。

もっと詳しく知りたい方へ

液体ミルクによるアレルギーは、いわゆる 「消化管アレルギー」です。

正確には、「新生児・乳児消化管アレルギー」と呼ばれます。

このアレルギーは、血便、嘔吐、下痢やそれに伴う栄養障害、体重増加不良を主体とします。

適切な治療が行われずに、症状が慢性化すると(長引くと)、乳児の発育不良になる危険があります。

発症する時期は、大部分が新生児期で、とくに生後1 間後での発症が多くなっています。

検査

消化管アレルギーを疑うときは、スクリー ング検査を行います。

血液検査として、「抗原特異的IgE抗体」の測定や、「ALST」の測定をします。

また、顕微鏡検査として、便粘液中の「好酸球」を確認します。

乳児への治療方法

ふつうの食物アレルギーと同様、治療は、原因となるミルクを飲まないことが基本です。

液体ミルクを中止して、アレルギー用ミルクを飲んだあとに症状が無いこと確認します。

また、仮にスクリーング検査の結果がすべてマイナス(陰性)であっても、症状などから消化管アレルギーを否定できないときは、アレルギー用のミルク(加水分解乳)に変更します。

なお、もしも加水分解乳に対してもアレルギー症状が認め られるときは、アミノ酸調製乳を使用します。

なお、これまでは、アレルギー乳児に、大豆ベースの液体ミルクを与えることがありましたが、同じようにアレルギー症状が認められることが分かってきており、使用を控えることが望ましいと言われています。

治療後の経過

液体ミルクによる消化管アレルギーは、発症しても、2、3歳にもなれば、大部分が乳タンパクへの耐性を身につけられます。

ただし、液体ミルクにアレルギーを示す子どもは、米や大豆にもアレルギーをもつケースがあることが分かっています。

離乳食をはじめるときは、米や大豆を食べさせたときには注意して見守る必要があります。

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液体ミルクで食中毒-原因は保管方法

液体ミルクと食中毒について解説します。

液体ミルクの中に菌がいる

一般に、「加熱調理された食品は安心だ。」と思っている人が多いようです。

たしかに、加熱することで、食中毒菌をはじめ、多くの微生物を殺すことができます。

液体ミルクは、法律で加熱殺菌が義務づけられていますから、大腸菌などの一般的な細菌は死滅します。

しかし、液体ミルクの殺菌方法では、数は少ないものの、乳酸菌をはじめとする何種類かの菌が生き残っています。

ですので、液体ミルクは冷蔵での流通が基本であり、もしも室温で放置すると、じつは、数日で腐敗します。

ただし、中には、完全な殺菌をして無菌充填された液体ミルクも存在し、これは室温での流通が可能です。

どんな菌が残っているか

加熱でも生き残る菌のうち、有毒なものは、いわゆる芽胞菌がほうきんと呼ばれる菌です。

熱に対してきわめて強い菌です。

聞きなれない名前かもしれませんが、たとえば、バチルス属(Bacillus)やクロストリジウム属(Clostridium)に属する菌があります。

もっと具体的には、「セレウス菌」、「炭疽菌」、「破傷風菌」、「ガス壊疽菌(ウエルシュ菌)」、「ボッリヌス菌」などです。

中でも、液体ミルクで、赤ちゃんの食中毒の原因にもっともなりやすいのは、セレウス菌です。

セレウス菌中毒は、嘔吐、下痢などを引き起こし、日本では焼飯やスパゲティーなどが主な原因になっていますが、牛乳に潜んでいるケースが報告されています。

セレウス菌は、加熱でほかの菌が死滅した環境では、むしろ増殖しやすくなります。

つまり、液体ミルクを室温で放置すると、セレウス菌が増殖しているという状態になってしまいます。

菌が混入することもある

ふつう、液体ミルクは、開封して、哺乳瓶に移します。

しかし、その間に、空気中の菌や、手についていた菌が混入したりする場合があります。

たとえば、上に述べた芽胞菌もそうですが、特にやっかいなのは、食中毒を起こす「黄色ブドウ球菌」です。

黄色ブドウ球菌は、増殖のスピードが非常に早く、液体ミルクを室温で放置すると、あっという間に増えてしまいます。

食中毒対策は

液体ミルクによる食中毒を防ぐには、液体ミルクの開封後に赤ちゃんに飲みきってもらうのがベストです。

もし全部を飲みきれない場合は、冷蔵庫に保管しますが、やはり、長時間の保存はせず、数時間以内に飲みきってしまうのがよいでしょう。

なお、室温放置してしまったときの取り扱いには注意が必要です。

まちがって室温放置してしまったものを、どうしても飲ませなければいけないときは、再加熱して飲ませるのが良いでしょう。

芽胞菌は熱に強いとすでに述べましたが、じつは、液体ミルクの中で増えている間は、熱に弱い状態になっているからです。

まとめ

液体ミルクは、母親と父親にとって、とても便利なものです。

しかし、液体なので、菌が増えやすくなってしまうデメリットがあります。

できるだけ清潔な状態にして、数時間以内にすばやく赤ちゃんに飲んでもらうのがベストです。

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電解質の検査(Na,K,Cl)を解説

血清電解質の検査を解説します。

電解質

生体に含まれる無機質として検出されているものは、60種類程度あります。

無機質は、体重の約5%を占め、Ca、Mg、K、Na、P、Clが、その60~80%を占めます。

一方、ヒトの血液検査の対象として重要なのは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cuなどの陽イオンであり、また、Cl、HCO3、HPO4などの陰イオンです。

中でも、ヒトの生体内で重要な働きをする血中の無機質が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)などの電解質です。

ナトリウム、カリウム

代謝について

ナトリウム(Na)は細胞外液、カリウム(K)は細胞内液中の無機質の大部分を占めています。

ナトリウムの生理的役割は、下記の4つがあります。

1)酸塩基平衡の維持
2)細胞外液の浸透圧の維持
3)神経,筋肉の興奮性の維持

また、カリウムの生理的役割は,下記の4つがあります。

1)酸塩基平衡の維持
2)細胞内浸透圧の維持
3)細胞膜電位の維持
4)筋収縮の因子となる

ナトリウムおよびカリウムの代謝は、主に、腎臓で調節されています。

副腎皮質から分泌される鉱質コルチコイドが関係しています。

たとえば、アルドステロンは、近位尿細管および遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収を促進したり、遠位尿細管におけるカリウムおよび水素生オンの排出を促進したりします。

検体について

血清中のナトリウム濃度やカリウム濃度を測定します。

血液検体は、採血後に、直ちに血清分離することが望ましいです。

一定時間、全血のまま放置すると、ナトリウムは血球中に移行し、後に血清分離したときに、Na濃度の低下となるからです。

また、溶血によって血清K 値は高くなり、さらに、凝固阻止剤としてNaを含むもの(ヘパリンNaやクエン酸Naなど)を用いると、血清Na値が高くなります。

基準範囲

血清Naおよび血清Kの基準範囲は下記のとおりです。
・血清Na 135~145mEq/L (135~145mmol/L)
・血清K 3.5~5.0mEq/L (3.5~5.0mmol/L)

臨床的意義

ナトリウム

高ナトリウム血症は、糖尿病、尿崩症、原発性アルドステロン症、クッシング症候群などに見られます。

低ナトリウム血症は、激しい下痢、嘔吐、腎不全、粘液水腫などに見られます。

カリウム

高カリウム血症は、腎不全や、高度の脱水、アジソン病などに見られます。なお、高カリウム血症が生ずると、心臓・中枢袖経系の興奮が異常に高まり、最後に心臓が停止します。

カリウムが高値になる原因は、Kの摂取増加、腎臓のK排出低下、Kの細胞内から細胞外への移動などがあります。

低カリウム血症は、手術後や、栄養不足の場合、あるいは、,副腎皮質ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンが過剰に投与されたときなどに見られます。なお、低カリウム血症になると、筋肉に脱力感や弛緩性麻揮が起こり、ついで神経過敏、昏睡、深部腱反射消失などが認められます。

Kが低値になる原因は、Kの摂取や吸収の不足、腎臓のKの排出増加、Kの細胞外から細胞内への移動などがあります。

薬剤の影響

ACTHや、コルチコステロイドの投与により血潰Na値は高くなり、血清K値は低くなります。

また、アセタゾラミド、クロロサイアザイド、ジギタリスなどの投与により、低カリウム血症となることがあります。

測定法

測定法としては、イオン選択電極法、炎光光度分析法、酵素法などがありますが、検査室で最も使用されているのはイオン選択電極法です。

イオン選択電極法は、Na電極として硝子電極やクラウンエーテル電極を使い、K電極としてニュートラルキャリア膜電極やクラウンエーテル電極を用います。

クロール

代謝について

人の体内のClイオンは、主に体液中に存在します。約70%が細胞外液中に、約30%が細胞内液中に存在します。

Clイオンは、水分代謝や浸透圧の調節、酸塩基平衡の維持を担っています。

生体内のClは、ナトリウムとほぼ並行して増減する場合が多いです。

ただし、酸塩基平衡障害の場合には、Clイオンは、Naと独立して、重炭酸イオンと反対方向に増減します。

なお、血漿中のCO2が放出され、CO2の圧が変化すると、陰イオンの不足を補うために赤血球中のClイオンが、血漿中に移動します(塩素移動と呼ばれます)。

検体について

血清中のクロール濃度を測定します。

なお、全血で室温放置すると、CO2の放出により、塩素移動が起こりますが、反対に血球から血漿中にH2Oの移動が生じて相殺されるため、放置して1時間ぐらいはCl値に変動はないといわれています。

基準範囲

血清Clの基準範囲は、96~107mEq/L (96~107mmol/L)です。

なお、食事後、胃液の分泌が促進されると血清Clは低値となりますが、血清中の重炭酸イオン(HCO3-)が増量することでバランスが保たれます。

臨床的意義

Clが高値を示す疾患には、過呼吸呼吸性アルカローシス、高ナトリウム血症、低蛋白血症、クッシング症候群、腎炎などがあります。

Clが低値を示す疾患には、呼吸性アシドーシス、低ナトリウム血症、代謝性アルカローシス、嘔吐、アジソン病などがあります。

なお、Clは、Naとほぼ同じように変動しますが、 Naの変動や酸塩基平衡の異常に伴う二次的な変化が主体であり、Cl自 体の異常値が臨床上問題になることはあまりありません。

薬剤の影響

炭酸デヒドロケナーゼ抑制剤や塩化アンモニウムの過剰投与によって、高値を示すことがあります。

また、利尿剤の投与により低値を示すことがあります。

測定法

Clの測定法には、比色法(ハミルトン法:チオシアン酸第2水銀法)、モール法、滴定法(シャールズ・シャールズ法)、電量滴定量(クロライドメーター法:銀電極法)、イオン選択電極法、酵素法などがあります。

現在は、イオン選択電極法が一般的です。

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麻しん(はしか)のやさしい解説

麻疹(ましん)、別名「はしか」について、やさしく解説します。

定義

麻しんは急性の熱性発疹性ウイルス感染症です。

疫学

ワクチンを接種する前の乳幼児と、麻疹との接触機会が少ない成人は、麻しんにかかる可能性が高くなります。

なお、麻疹/風疹の混合生ワクチンを2回接種した効果が出るまでには、数年を要します。

病態

麻疹の病期は,カタル期、発疹期、回復期に分類されます。

(1)カタル期

感染してから10~12日後に発症します。

発熱や、咳、咽頭痛、鼻汁などの上気道炎症状、結膜炎症状、消化器症状、全身倦怠感などがあります。

発疹出現1~2日前より、Koplik斑(周囲が赤く中心が白色の点状斑)と呼ばれる細かな斑点が認められます。

カタル期の終わりに、一時、熱が下降します。

(2)発疹期

熱がいったん下降した後,再び高熱が3-4日間、持続します。

これは、始めの発熱とあわせて「二峰性発熱」と呼ばれます。

発疹期には、頭部、頸部より発疹が出現し、体幹や四肢へと拡大します。

発疹は紅斑性丘疹で始まり、しだいに融合して大小不同の斑状となり、特有の麻疹様顔貌を呈します。

3~4日間持続した後に褐色の色素沈着を残します。

(3)回復期

微熱となってやがて解熱します。

全身倦怠感や咳が持続する場合には,肺炎の合併を疑います。

診断

診断は、主に麻疹IgM抗体により診断されます。IgG抗体の有意な上昇により診断も可能です。

また、高熱,皮疹,眼球結膜の充血、Koplik斑の出現は麻疹の特徴的所見であるため、診断に有用です。

PCR法によるRNAの検出なども有用です。

なお、風疹、パルボウイルスB19感染症、薬疹、染性単核球症〔EBウイルス,サイトメガロウイルス)、急性HIV感染症、リケッチア症などとの鑑別が重要です。

合併症

肺炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(SSPE:subacute sclerosing panencephalitis)、内耳炎,中耳炎,副鼻腔炎などがあります。

治療

対症療法

特異的治療はないため,安静,補液,解熱鎮痛薬などの対症療法が主体となります。

接触後発症予防

麻疹抗体価の陰性者が麻疹ウイルスに感染したと考えられる場合、72時間以内に麻疹生ワクチンを緊急で接種します。

法律関係

感染症法により麻疹は全数報告となっています(五類感染症)。

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採血管の抗凝固剤の種類

抗凝固剤には、後述するように、様々なものがあります。

これらは、血漿を得るために、採血管に入れられています。

抗凝固剤は、作用により、2種類に大別されます。

脱Ca作用の抗凝固剤

EDTA塩

エチレンジアミンテトラアセテートを略してEDTAと呼びます。

EDTA塩は、キレート剤として、血液1mlに対し約1mgが添加されています。

特にカルシウム、銅、鉄(3価)に強く結合します。

血漿中の遊離Ca++イオンが EDTAによりキレート化することでトロンビンの形成が阻止されて血液凝固を阻害します。

2Na塩、2K塩、3K塩などがあります(血球検査には、2K塩が広く用いられます)。

EDTA塩の用途は、血球計算(血算)やアンモニア測定です。

白血球の形態がよく保たれる点にメリットがあります。

しかし、脱Ca作用が強く、凝固検査には不適です。

なお、EDTAは、in vitroで血小板の凝集を引き起こし、偽血小板減少となる場合がある点がデメリットです。

クエン酸ナトリウム

3.2%の等張液として用います。

血液9に対して、1の割合で添加します。

用途は凝固検査です。

検査時に、Ca添加で凝固させることが可能です。

希釈されるので、血球計算(血算)や生化学検査に不適です。

フッ化ナトリウム

用途は、血糖検査です。

解糖の阻止ができます。

二重シュウ酸塩

二重シュウ酸塩は、シュウ酸カリウムとシユウ酸アンモニウムを混合したものです。

血液1ml当り2mgを用います。

なお、二重シュウ酸塩は血小板凝集、白血球減少作用が強く、血球形態変化も高度で、近年は用いられません。

抗トロンビン作用の抗凝固剤

ヘパリン

ヘパリンは、アンチトロンビン皿(AT-III)を活性化することで凝固系を抑制します。

AT-Ⅲは、トロンビン、第Xa因子のセリンプロテアーゼを阻害します。

通常は、ナトリウム(Na)塩や、リチウム(Li)塩として採決管に添加されています。

ヘパリンの添加量は、血液1mlに対し0.1~0.2mgです。

なお、ヘパリンは白血球・血小板の凝集を起こしやすいです。

代表的な用途は、血液ガス測定です。

留意点

血漿中には、抗凝固剤の成分が残存したままとなり、検査データに影響を与えます。

成分は採血管の種類によりますが、カリウム、ナトリウム、リチウム等が影響を受けます。

また、EDTA等のキレート作用がある抗凝固剤を使用した採血管では、カルシウム、マグネシウム、鉄等の金属成分が低値となります。

それらの金属を補酵素とする酵素活性についても、著しい低下をきたします。

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副腎皮質ホルモンと副腎髄質ホルモンとの違いとは?

副腎ホルモンの種類について解説します。

副腎の構成

ヒトの体に副腎は2つあり、それぞれ、片方の腎臓の上に位置しています。

副腎の85%は、「副腎皮質」+「副腎髄質」から構成されます。

副腎皮質と副腎髄質のそれぞれから、ホルモンが分泌されます。

副腎皮質ホルモン

副腎皮質は、外側(球状帯)、中間層(束状帯)、内側(網状帯)から構成されています。

外側(球状帯)は、ミネラルコルチコイドを分泌し、中間層(束状帯)はグルココルチコイドを分泌し、内側(網状帯)は、アンドロゲンを分泌します。

ミネラルコルチコイド

主なミネラルコルチコイドは、アルドステロンです。

アルドステロンは、Naイオンや、Kイオンの調節、血圧、血液層の調節、Hイオンの尿中への排泄を促進します。

なお、アルドステロンの分泌は、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン経路の一部として起こります。

グルココルチコイド

グルココルチコイドで、一番多いのは、コルチゾールです。

コルチゾールには、タンパク分解、グルコース産生、トリグリセリド分解、抗炎症作用、免疫反応抑制などの作用があります。

なお、血中のコルチゾールの低下は、視床下部の神経分泌細胞を刺激し、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)を分泌させます。

さらに、下垂体の門脈がCRHを下垂体の前葉に運び、ACTHの分泌が促進されます。

アンドロゲン

副腎皮質は、少量のアンドロゲンを分泌しています。

男性では、精巣から多量の分泌がありますので、副腎皮質からの分泌は無視できる程度です。

一方、女性では、アンドロゲンが性欲を起こさせます。

また、他の体組織により、エストロゲンに変換されます

したがって、更年期以降は、卵巣のエストロゲン分泌が止むと、女性のエストロゲンは、副腎のアンドロゲン由来のものとなります。

副腎髄質ホルモン

副腎髄質は、ホルモン分泌のために特異的に分化した自立神経系の交感神経節後細胞からなります。

主なホルモンは、アドレナリン(エピネフリン)およびノルアドレナリン(ノルエピネフリン)です。

これらのホルモンが分泌されるのは、身体にストレスがかかったときです。

視床下部からの神経インパルスが交感神経節前ニューロンに伝えられ、副腎皮質の細胞を刺激することで分泌されます。

心拍数の上昇、心収縮力の上昇、気道の拡張、血中グルコースの上昇、血中脂肪酸の上昇などの作用があります。

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軟部肉腫の病態,診断,治療

軟部肉腫の病態、診断、治療について解説します。

病態

軟部肉腫は、筋肉内や皮下組織などの軟部に発生する間葉系悪性腫瘍肉腫です。

まれなガンで、発生年間は約10万人に1人程度と推測されています。

なお、小児に発生する軟部肉腫はさらに少なく、全小児がんの5~6%にあたると言われています。

軟部肉腫の多くは、 痛みなどの症状がない(しゅ)(りゅう)や腫れ((しゅ)(ちょう))として自覚されます。

痛みがないと医療機潤の受診が遅れがちになり、10cmを超える巨大な腫瘍を形成してから受診されるケースも多いと言われています。

ただし、一部には腫瘤自体に痛みがあったり、腫瘤が大きくなって神経を圧迫し、痛みを伴うことがあります。

また、皮膚の色が変わったり(かい)(よう)ができることもあります。

手足にできた腫瘍が大きくなり、関節が曲がらなくなったり、座ることができなくなったりする事例もあります。

乳児の場合は、訴えがないので注意が必要です。

なお、軟部肉腫の組織型は、主な分類だけで30あるとされています。

分類によって、その内容は大きく異なり、たとてば、軟部肉腫である粘液線維肉腫と滑膜肉腫では、好発年齢や病気の振る舞いが大きく異なります。

診断

軟部腫瘍の性状を評価するのに 最も適した画像検査は、造影MRIです。

軟部肉腫の多くは肺に転移するため、軟部肉腫を疑った場合は局所の評価に加えて、胸部CTを撮像することも必要です。

また、軟部肉腫を疑い、腫瘍の一部をとり(切開生検)、病理組織学的に診断する場合もあります。

組織採取の方法として、コアニードル針を用いた針生検、 切開生検などが行われます。

なお、日常臨床では、特に四肢や体幹表面に触れる良性軟部腫瘍との鑑別が重要です。

ちなみに良性の軟部腫瘍のうち、頻度が高いものは脂肪腫、神経鞘腫、血管腫(血管奇形)などであり、これらの良性軟部腫瘍は軟部肉腫の約10~100倍の発生率と言われています。

治療

軟部肉腫における治療の中心は外科療法です。

悪性の場合には、腫瘍を周囲の健常組織で包むようにして切除する広範囲切除(wide excision, wide resection)が重要で、広範囲の切除であればあるほど術後再発を防ぐ可能性が高まります。

ただし、術前の画像から予想される以上に腫瘍が周囲組織に連続性に広がっていた場合や、 術前の画像では描出されない微小な血行性あるいはリンパ行性の転移病巣が原発巣と非連続性に存在していた場合などには、再発の可能性が高まると言われています。

悪性軟部腫瘍は, 低悪性度または中悪性度の場合、通常は、化学療法は施行されませんが、悪性度の高い肉腫は手術だけではなく、化学療法(抗がん剤)を行い、さらに放射線療法や温熱療法などいろいろな治療を組み合わせる治療(集学的治療)が行われます。

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肝芽腫の病態,診断,治療,予後

小児期のすべての悪性腫瘍のうち、肝原発性腫瘍は小児腫瘍の1%前後です。

頻度は高くありませんが、悪性の腫瘍が2~3割程度あり、その代表的な疾患として3歳以下に好発する『肝芽腫』があります。

文献によると、肝芽腫の45%は1歳前に発症するようです。

病態

お腹が張る(腹部膨隆)あるいは腹部のしこり(上腹部腫瘤)を主症状として来院する事例が多いようです。

食思不振、体重減少、発育不良が認められ、まれに発熱や黄疸を伴うことがあります。

血液検査では、80~90%の症例で、AFPの著しい上昇が認められます。

肝芽腫は、通常は、片葉に単発性の腫瘍として認められます。

右葉に存在する例は、左葉に存在する例の二倍と言われています。

特定の疾患をもつ小児では発生リスクが高くなる傾向があります。

たとえば、Beckwith-Wiedemann症候群、片側肥大、家族性大腸ポリポーシス、18トリソミーなどです。

また、低体重児に高率に発生するとの報告もあります(発生リスクが成熟児の約40倍)。

さらに、両親が職業で、金属・石油製品・塗料・色素などに曝露されると、子どもの肝芽腫発生のリスクが高くなるとの疫学データもあります。

組織学的には高分化型(胎児型:fetal type)、低分化型(胎芽型:embryonal type)、未熟型などに分類されます。

なお、転移は肺に多いと言われています。

診断

腫瘍の様子を把握する目的で超音波診断、X線、CT、MRIなどが実施されます。

さらに、肺、腹部リンパ節、骨などへの転移を検査するためのCTや骨シンチが行われます。

治療

治療には化学療法や放射線治療がありますが、これらのみでは、根治は難しいと言われており、多くは外科的切除が用いられます。

つまり、原発巣を一期的または二期的に切除し、同時に全身化学療法を用います。

腫瘍を完全切除することができない肝芽腫や、診断時に遠隔転移している場合には全身化学療法が優先され、腫瘍を縮小させた後に切除を行うのが一般的です。

なお、腫瘍が肝臓のみにある場合は、肝移植による全肝切除で救命することも一般的になってきています。

ただし、全肝切除の場合、腫瘍の占拠部位によっては、肝部下大静脈合併切除再建を余儀なくされることがあります。

このとき、再建にはドナー内頸静脈や人工血管が用いられます。

なお、人工血管と直接の肝静脈吻合は小児では好ましくないとされていますが、やむなく人工血管を用いる場合、自家下大静脈全周性分節の移行による肝静脈吻合部の作成をする方法が存在し、肝摘出時には、遠心ポンプを用いた下大静脈一内頚静脈バイパスが使用されることがあります。

予後

日本小児肝がんスタディグループ(JPLT)の研究によると、一期的切除が可能な症例では95%以上の生存率であり、化学療法が優先された進行例では病期により39%から74%の治療成績と報告されています。

生体肝移植前の遠隔転移や脈管浸潤などのハイリスク症例では、移植後の再発リスクは高く、術後も継続的な治療が必要になるケースが多いようです。

なお、組織型が胎児型の亜型である純高分化型(pure fetal type)の予後は良好であるとされます。

そのほか

・肝移植の適応や時期、移植後の化学療法の必要性や安全性についての明確な基準はありません。

・肝芽腫の症例は日本においては年間登録例が少なく、臨床研究に十分な症例が集まっていないのが現状のようです。

・現在は、国際的な小児肝癌の研究組織である「Children’s Hepatic Tumor International Collaboration(CHIC)」 が組織され、国際的な肝芽腫のデータベースの構築や、そのデータを元にした国際的なリスク分類の作製が行われています。

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ACTHが増加,減少するとき

ACTHについて解説します。

ACTHとは

ACTHとは、副腎皮質刺激ホルモンです。

物質的には、分子量4556のポリペプチドです。

ACTHは、副腎皮質を刺激して、コルチゾールおよびコルチステロンの分泌を増加させます。

フィードバック機構

フィードバック機構は、つぎのようになっています。

視床下部(CRH)⇄下垂体(ACTH)⇄副腎(副腎性アンドロゲン、アルドステロン、コルチゾール)

ACTHの分泌異常

増加する場合

アジソン病

副腎の萎縮や、結核性破壊によりコルチゾール減少が生じ、結果、フィードバック機構によりACTHが増加します。

先天性副腎酵素欠乏症

コルチゾール産生に必要な酵素が欠乏すると、コルチゾールの産生が低下し、結果、フィードバック機構によりACTHが増加します。

クッシング病

ACTHの分泌亢進によって、両側副腎の過形成をきたします。

異所性ACTH症候群

肺がん、胸腺がん、すい臓がん、ランゲルハンス島がんなど、下垂体以外の組織にある癌が、ACTHに似た物質を産生します。

低下する場合

下垂体機能低下症

原因はさまざまですが、下垂体の機能が低下することに伴い、ACTHが低下します。

ACTH単独欠乏症

ACTHが急に欠乏する状態です。

クッシング症候群

副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが産生され、結果、フィードバック機構によりACTHが低下します。

ステロイド投与

ステロイドの長期投与により、ACTHの分泌が抑制されます。

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赤沈が亢進,遅延するとき

赤沈検査について解説します。

赤血球沈降速度とは

血液に抗凝固剤を加えて放置すると、赤血球が試験管の底に沈みます。

そして、血漿の一部が上方に分離されます。

この現象は、「赤血球沈降現象」または「赤沈」(erythrocytesedimentation)と呼ばれます。

そして、一定の条件下で赤沈の様子をみる検査が「赤血球沈降速度」です。

これは「赤沈値」とも呼ばれます。

日本では、Westergren法という方法で行われています。

正常なとき

正常な血液では、赤血球同士が陰イオンを帯びているため、反発しあいます。

よって、赤血球は凝集塊を作りにくいため、沈降速度が遅くなります。

すなわち、赤沈値は小さくなります。

ちなみに成人男性の基準値は一時間で10mm以下、成人女性は一時間で20mm以下です。

赤沈が亢進する場合

赤沈が亢進する場合(沈む速度が速くなるとき)には、たとえば、つぎの場合があります。

赤血球数の減少

・循環血漿通の増加(妊娠など)
・貧血

フィプリノゲンや、α-グロブリンの増加

・妊娠
・炎症性疾患

免疫グロブリンの増加

・多クローン性増加
・単一クローン性増加(BenceJones蛋白を除く)

赤沈が遅延する場合

赤沈が遅延する場合(沈む速度が遅くなるとき)には、たとえば、つぎの場合があります。

多血症

多血症の場合、へマトクリット値が1.5%増加するごとに、1mmずつ赤沈値は減少します

フィブリノゲンの減少

・先天性無フィブリノゲン血症
・線溶冗進
・DIC

免疫グロブリンの欠損

・無γ-グロブリン血症