疫学で用いる指標について解説します。
ここでは、代表的な指標である罹患率、有病率、致命率、粗死亡率、死因別死亡割合、PMIを取りあげます。
罹患率
罹患率は,その時点におけるその疾病への罹りやすさ(リスク)を表します。
罹患率は疾病と要因との因果関係を探る場合に有用な指標です。
また、「病気に罹らないこと」を目指す第一次予防の効果の指標にも、罹患率が用いられます。
罹患率(狭義)
罹患率とは、一定期間にどれだけの疾病者が発生したかを示す指標であり、発生率の一種です。
分母は、人-年法により求めます。
なお、罹患率と、後述する累積罹患率とでは分母のとり方が異なり、次の計算方法で求めます。
罹患率 = (一定の観察期間内に新発生した患者数)/(危険曝露人口の一人一人の観察期間の総和)
この式で、危険曝露人口とは、疾病に催りうる危険性(リスク)を持った集団のことをいいます。たとえば、子宮がんの場合には「女性」であり、また、はしかの場合には「はしかの既往歴がない者」となります。
また、分母では、観察された対象者数と各対象者についての観察期間を同時に考慮します(いわゆる「人-年法」)。
累積罹患率
累積罹患率は、下記の式に基づき、ある対象集団を一定期間追跡することにより計算されます。
途中で追跡不能となった例は脱落例として解析からは除外します。
累積罹患率 = (一定の観察期間内に新発生した患者数)/(危険曝露人口の観察開始時点での人数)
有病率
有病率は,ある一時点において、疾病を有している人の割合です。
有病率によりある時点での患者数を評価できます。
有病率 = (集団のある一時点における疾病を有する者の数)/(集団の調査対象全員の数)
なお、有病率は、有病期間の長い病気のほうが高くなる傾向があります。
致命率
致命率とは、ある疾病に罹った人が、その疾病で死亡する割合です。
致命率 = (ある疾病による死亡率)/(ある疾病の罹患数)
なお、致命率は、十分に長い観察期間をとった場合、下記の関係が成り立ちます。
致命率 = (死亡率)/(罹患率)
粗死亡率
粗死亡率は、ある集団の1年間の死亡数を、その年の人口で割ったものです。
ちなみに、死亡率は年齢によって異なるので、複数の集団を比較したり、同じ集団でも異なる年次で比較したりする場合、年齢調整死亡率、あるいは、標準化死亡比を利用します。
死因別死亡割合
死因別死亡割合は、ある特定の死因が、全死亡数に占める割合です。
死因別死亡割合は、疾病の死亡数の増加、および、他の疾病の死亡数の減少の両方の影響を受けますので、死因別死亡割合の増減が必ずしもその疾病の死亡数や死亡率の増減を意味すると断定はできません。
PMI
PMIは、50歳以上の死亡数が、全死亡数に占める割合です。
PMI (%) = (50歳以上の死亡数)/(全死亡数)
PMIは、年衛生状態の国際比較の指標のひとつとして用いられています。
すなわち、PMIが高い地域は、若年者の死亡が少なく、健康水準が高いと傾向にあります。
なお、PMIは人口構成の影響を受けるので.人口榊成が異なる集団間で比較する場合は注意が必要です。