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院内肺炎の起因菌•原因菌と頻度について

院内肺炎の原因菌(起因菌)としては、緑膿菌、ブドウ球菌(MRSAなど)、インフルエンザ菌、肺炎球菌などが主なものです。

また、頻度は少ないですが、サイトメガロウイルスや、カリニ原虫なども原因となる場合があります。

なお、院内肺炎の主な起因菌の分離頻度は、下記の通りとする報告があります。

もちろん、一つの検体から、複数菌が検出される場合もあります。

黄色ブドウ球菌 13%
表皮ブドウ球菌 10%
肺炎球菌 10%
エンテロコッカス•フェカーリス 10%
インフルエンザ菌 20%
緑膿菌 17%
モラクセラ・カタラーリス 7%
E.coli:エシェリキア・コリ 7%
S.maltophilia:ステノトロフォモナス•マルトフィリア 7%

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看護師が守秘義務を破ったらどうなるか?

看護師と守秘義務について解説します。

患者のプライバシーと法律

患者のプライバシーは、強く保護されるべき情報です。

病院などでは、個人情報の取り扱いに注意するよう教育がなされますが、完璧にするのは難しく、たびたび、看護師が患者の情報を外部に漏らしてしまう事件が発生してしまいます。

看護師のような医療従事者による守秘義務違反は、医療機関への信用を失わせてしまいますから、病院経営に重大な影響を及ぼします。

秘密を漏洩したときの責任
看護師は、職務をする中で知りえた患者の情報を、秘密として守る義務が課されています。

この守秘義務は、法的な義務でもあります。

看護師本人の責任

刑法 134 条には、「医師, 薬剤師,医薬品販売業者,助産師,……又はこれら の職にあった者が,正当な理由がないのに,その業 務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは,6 月以下の懲役又は 10 万円以下の罰 金に処する」と定められています。

また,保健師助産師看護師法には,「保健師,看護師又は准看護師は, 正当な理由がなく,その業務上知り得た人の秘密を 漏らしてはならない。保健師,看護師又は准看護師 でなくなった後においても,同様とする」と定められています。そして、この違反に対しても刑法 134 条と同じ重さの 刑罰が規定されています(42 条の 2,44 条の 3)。

病院の責任

看護師が職務上知り得た秘密を漏洩してしまったときの病院の責任については、民法 715 条第 1 項で、「ある事業のために他人を 使用する者は,被用者がその事業の執行について 第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。

すなわち、医療機関は、看護師に守秘義務を遵守させるよう監督する責任がありますから、看護師が職務上知り得た秘密を漏洩する行為は、医療機関の不法行為となり、医療機関の使用者責任が問われることになります。

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インスリンの副作用

インスリンは、体内で分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。

糖尿病では、インスリンが不足しているため、インスリンを投与して補充することがあります。

しかし、インスリンを投与するときに、副作用が現れるとこがあるので解説します。

なお、インスリン投与する方法には、「インスリン注射療法」、「インスリン吸入療法」、「持続皮下インスリン注入療法」などがあります。

インスリンの影響で起きる副作用

低血糖

インスリンの作用が強く出すぎると、患者は低血糖になります。

一般には、低血糖とは血糖値が 70mg/dL以下になった状態、または急激に血糖値が下がった状態を意味します。

低血糖になると、段階的に生理的な変化が起きます。

血糖値が80mg/dL付近まで低下すると、まず、インスリン分泌が抑制されます。

血糖値が70mg/dL付近まで低下すると、グルカゴン・アドレナリンが分泌され、さらに60mg/dL以下まで低下すると成長ホルモンやコルチゾールが分泌されます(いわゆる拮抗調節反応:counter-regulation)。

通常は、この拮抗調節反応により、自律神経系の変化が誘発され、異常な空腹感、発汗、振戦、動悸、不安感などの自律神経刺激症状(いわゆる警告症状)が患者に自覚されます。

さらに血糖値が50mg/dLを 下回ると、中枢神経機能低下による症状が現れます。

たとえば、判断力低下、眠気、行動異常、意識障害です。

なお、高齢者や罹病期間の長い患者、自律神経障害のある患者では、インスリンやグルカゴンの反応低下や分泌不全を認めるため、警告症状が出ないまま、突然、中枢神経症状が出現することがあります。

いわゆる無自覚性低血糖です。

無自覚性低血糖は昏睡に陥ることもある危険な状態で、もし周りに誰もいなかったり、運転や危険な作業中だったりすると、生命にかかわります。

無自覚性低血糖では、血糖値の自己測定を習慣化し、低血糖症状と血糖値との関係を確認しておくことが大切です。

対策としては、あえて血糖値を高めにコントロールする方法があります。

また、たとえば、自分が糖尿病であることを他人に知らせるためのカードを携帯する、独居の高齢者などは近所の人に知ってもらう、家族にグルカゴン注射を覚えてもらう、運転前に血糖測定をする、といった対策があり得ます。

体重増加(太る)

インスリンは中性脂肪の合成を促進するため、高インスリン血症になると体重増加の原因になりえます。

また、治療中に反復性の低血糖症状を起こした場合、過剰のカロリー摂取につながることもあります。

なお、インスリンで血糖値が下がると安心し、食事療法や運動療法をおろそかにしてしまうことも、体重増加につながります。

体重増加は、インスリン抵抗性を助長し、 結果としてインスリンの増量につながります。

さらに、インスリン増量がさらなる体重増加をきたすという悪循環に陥ることがあります。

このため、肥満者のインスリン治療に際しては、食 事療法と減量プログラムの徹底が必要となります。

リポハイパートロフィー (Lipohypertrophy)

インスリンを皮下に注射すると、その部位で高インスリン状態となり、脂肪合成が促進され、皮下の脂肪が隆起することがあります。

これは、インスリンリポハイパートロフィー(皮下脂肪肥大症)と呼ばれます。

原因は、同一部位への注射が原因であることが多いです。

皮下脂肪肥大症を来した部位では、穿刺時痛が減弱するため、患者は同部位を好んで皮下注射を行う傾向がありますが、隆起したところに注射をするとインスリンの吸収が悪くなり、血糖コントロールを乱す原因となります。

医療従事者が「注射部位は、打つたびに2〜3cmずらしましょう」などと呼びかけ、同一部位への注射を避け、少しずつ注射部位をずらすようにすると、改善していきます。

インスリン浮腫(むくみ)

長期に高血糖状態にあった患者にインスリンを投与して血糖値を急激に改善すると、浮腫を生じることがあります。

インスリンによる腎ヘンレループでのNa吸収の充進や、毛細血管の透過性の亢進が原因と言われますが、腎障害・心臓病がなければ,数日で消失するといわれています。

肝機能低下

長期間にわたる血糖コントロール不良の患者に対してイ ンスリン治療を行うと、一過性の肝機能障害をきたすことがあります。

主な原因としては、肝臓 への急速なグリコーゲン蓄積と言われています。

通常、経過は良好で、肝機能は1〜2か月で正常化することが多いです。

インスリン製剤に対する免疫反応による副作用

インスリン抗体(insulin antibody;IA)

インスリン治療中の患者の中には、外因性のインスリンに対する抗体が産生される患者がいます。

投与されインスリンはインスリン抗体と結合し、インスリン作用を発揮できなくなります。

インスリンアレルギー

外因性のインスリンがアレルゲンとなるケースです。

アレルギーはIgEを介する二相性過敏反応が最も高頻度です。

局所インスリンアレルギーの症状としては、皮下注射部位の腫脹・発赤・掻痒感・硬結が多いです。

重症化すると、全身に症状が出現し、アナフィラキシーショックに陥ることがあります。

軽症の場合、インスリン投与の中止により自然消退することもあります。

一方、患者がインスリン依存状態にある場合は、インスリン製剤の変更や、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の併用、脱感作療法、CSⅡを用いた持続少量投与などによりインスリン投与を継続する必要があります。

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ホフマン法による基準値の策定(Hoffmann法)

ホフマン法とは、統計解析の一手法であり、患者を含んだ群で対数確率紙を用いて、相対累積度数をプロットし、健常者群と思われる部分を外挿し、2.5~97.5%の範囲の測定値を臨床参考範囲とする方法です。

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輸液製剤の種類・分類

輸液製剤について解説します。

輸液製剤は、成分別にみると、大きく3つに分類されます。

  • 電解質のみからなる輸液製剤
  • ブドウ糖のみからなる輸液製剤
  • 電解質とブドウ糖からなる輸液製剤

それぞれ解説します。

電解質のみからなる輸液製剤

電解質のみからなる輸液製剤(いわゆる電解質輸液製剤)は、生理食塩水とリンゲル液とに大きく分けられます。

いずれも、「等張電解質製剤」と呼ばれる輸液製剤です。

等張電解質製剤を経静脈的に投与すると、細胞外液のみを増加させることができます。

より詳しくは、細胞外液のうち15%は間質、5%は血管内に分布しますので、等張電解質製剤を500mL投与すると、間質に375mLが分布し、血管内に125mLが分布します。

生理食塩水

生理食塩水は、0.9%の食塩水です。

NaとClがともに154mEq/Lの濃度になっています。

血漿に比べて、NaもClも濃度が高くなっているため、大量に投与すると、高Na血症や高Cl血症をきたしたり、他の電解質が希釈されてたりしてしまう危険があります。

よって、生理食塩水は、細胞外液の補充のための応急的な輸液として使い、病態が明らかになったら、適切な輸液に切り替える必要があります。

リンゲル液

生理食塩水にKやCaを加えて、生理食塩水よりも細胞外液液の組成に近づけたものをリンゲル液といいます。

現在用いられているリンゲル液には、アルカリ化剤が配合されています。

アルカリ化剤の種類により、リンゲル液は3種類に分類されます。

乳酸を加えた「乳酸リンゲル液」、酢酸を加えた「酢酸リンゲル液」、重炭酸を加えた「重炭酸リンゲル液」です。

乳酸リンゲル液に含まれる乳酸や、酢酸リンゲル液に含まれる酢酸は、体内代謝により重炭酸イオンになり、アルカリ化作用を発揮します。

このため、乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液により、アシドーシスを緩やかに補正することができます。

なお、重炭酸リンゲル液は、重炭酸イオンの供給に生体内での代謝を必要としません。

ブドウ糖のみからなる輸液製剤

5%ブドウ糖液が一般に用いられます。

主に細胞内脱水がある場合に用いられます。

その理由は、5%ブドウ糖液の浸透圧は、約278mOsm/Lであり血漿浸透圧と等張性となっていますが、含まれるブドウ糖が細胞内に移行すると、低浸透圧になり、水分が細胞内に移動するためです。

計算上は、5%ブドウ糖液を500mLを投与すると、水分のうち約40mLは血管内に分布し、約320mLは細胞内に分布します。

なお、細胞内に移行したブドウ糖は代謝されて水に変化します(1molのブドウ糖から6molの水が産生される)。この水は「代謝水」と呼ばれます。

電解質とブドウ糖からなる輸液製剤

高張電解質輸液製剤

上述のリンゲル液に5 %のブドウ糖を加えた製剤や、1 %のブドウ糖を加えた製剤があります。

いわゆる高張電解質輸液製剤です。

低張電解質輸液製剤

生理食塩水と5%ブドウ糖を配合した輸液製剤で、配合割合によって、1号液、2号液、3号液、4号液の四種類があります。

1号液

生理食塩液と5%ブドウ糖液を1:1で配合した輸液製剤です。

Kを含まないため、脱水が明らかな患者の腎機能や血漿K濃度が不明の場合でも比較的安全に投与することができることから、「開始液」とも呼ばれます。

2号液

NaやClの濃度は1号液とほぼ同じで、Kを20〜30mEq/L含むのが2号液です。

リン(P)やマグネシウム(Mg)を加えた2号液もあります。

一般に、2号液は「脱水補給液」と呼ばれますが、1号液の投与によって利尿があった後の低K状態や細胞内電解質の補正を目的に使用されることから、「細胞内修復液」と呼ばれることもあります。

3号液

生理食塩液と5%ブドウ糖液を1:3程度で配合した輸液製剤です。

Naを30〜60mEq/l、Kを10〜35mEq/l、Clを35〜50mEq/l含んでいます。

3号液を、一日あたりの水分の喪失量である約2000ml補給すると、一日のうちに生理的に失うNa、Cl、Kの量(一日維持量)を補給できることから「維持液」とも呼ばれます。

なお、アルカリ化剤として乳酸が配合されているものがあります。

4号液

生理食塩液と5%ブドウ糖液を1:4程度で配合した輸液製剤です。

Kを含有しないため、腎機能の低下した患者や、術後早期の患者に使用されます(いわゆる術後回復液)。

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微生物の生物型と血清型との違いとは?

同一の菌種または菌型に属する細菌を菌株といいます。

そして、その中で、生物学的性状の異なるものを生物型biotypeといい、また、血清学的性状で抗原性の異なるものを血清型serotypeといいます。

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ホモジネートとは?

ホモジネートとは、細胞や組織をホモジナイザーにより破壊して生成された懸濁液のことを意味します。

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灰化とは?(アッシング:ashing)

灰化とは、無機成分と有機成分とが混在した試料を、加熱あるいは燃焼させることにより、試料から有機成分を除去することをいいます。

灰化は、アッシング(ashing)とも呼ばれます。

灰化は、通常、空気中で、500℃程度で行います。

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感染症サーベイランスシステム(NESID)とは?

感染症サーベイランスシステム(NESID)は、感染症の予防・拡大防止、国民に正確な情報を提供することを目的として、日常的に種々の感染症の発生動向を監視するための電子的システムであり、感染症を診断した医療機関からの発生報告を基本としています。

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呼吸性代償とは?

肺でのCO2の調節による代償について解説します。

呼吸性代償とは

代謝性異常や呼吸性異常が起きて、血液のPHが酸性またはアルカリ性に傾くと、体は、PHを正常範囲内(7.35 ~ 7.45)に保とうとします。

このとき、ヒトの体では、肺や腎臓の調節機構が働きます。

肺で行われるのが、CO2による調節であり、「呼吸性代償」と呼ばれます。

呼吸性代償では、呼吸様式を変化させます。

すなわち、呼吸回数や一回換気量を変化させることにより、CO2 の排出あるいは貯留を促します。

呼吸性代償の具体例

代謝性異常と呼吸性代償の例を紹介します。

代謝性アシドーシスの呼吸性代償

たとえば、敗血症の患者では、乳酸産生が増加し代謝性アシドーシスが発生します。

代謝性アシドーシスによりpH が低下するので、ヒトの体は、pHを正常範囲内に保とうとして、呼吸数の増加(頻呼吸)や一回換気量の増加(深呼吸)させます。

つまり、CO2を体外に排出してpHを増加させます。

呼吸数に関して言えば、一分間あたり20回を超える呼吸数は異常と言われ、呼吸性代償があることを示唆する所見となります。

代償性アルカローシスの呼吸性代償

たとえば、嘔吐を繰り返す患者では、胃液が失われることで強酸のHClが失われるため、代謝性アルカローシスになります。

代謝性アルカローシスが起ると、pHが増加するので、ヒトの体は、一回換気量を減少させたり(浅呼吸)、呼吸数を低下させたりします(徐呼吸)。

つまり、CO2を体内に貯留させ、pH を低下させます。