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免疫細胞の種類

免疫に関わる細胞を紹介します。

病原体を食べる細胞

好中球

好中球は、体内に入ってきた病原体を食べて消化する細胞です。

好中球は、成人の白血球のうち、最も多く存在する細胞です。

感染が起こると、反応して一気に数が増えます。

通常は、末梢白血球のうち、約50~70%を占めます。

分葉型の核が特徴で、2~3カ所のくびれの入った核となっています。

強い貧食能を有し,細胞質内にはミエロペルオキシダーゼなどの活性酸素を産生する酵素や、蛋白分解酵素を含んだ順粒が多く存在しています。

感染および炎症部位にすみやかに集積することから、感染の初期防御に重要な細胞です。

単球、マクロファージ

好中球と同じく、体内に入ってきた病原体を食べる役割のある細胞です。

単球は、リンパ球より大型の単核細胞です。

血液中を循環しており、脾臓や肺胞などの組織に移行・定着することで、最終的にマクロファージと呼ばれる食細胞に分化します。

マクロファージには強い貧食能、殺菌能および抗原提示能があり、病原体(外来抗原)の直接的排除ならびにリンパ球への抗原の受け渡しを主な役割としています。

病原体に侵入された細胞を破壊する細胞

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)

NK細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を破壊する細胞です。

NK細胞は、穎粒を有したリンパ球様細胞で、末梢血には15%前後存在します。

自然免疫に関与し、大きさはリンパ球よりも大きいです。

強いインターフェロン‐γ産生能を有しています。

NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)

NKT細胞は、NK細胞と同様に、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を破壊する細胞です。

NKT細胞は胸腺外で分化し、NK細胞とT細胞の両方の性質をもっています。

腫瘍免疫に重要な役割をしており、NK細胞抗原レセプターとT細胞抗原レセプターの両方を発現しています。

そのほかの細胞

リンパ球

リンパ球は、小型の単核細胞です。

核の占有率は高く、細胞質はわずかです。

また、穎粒を有しません。

さらに、リンパ球の細胞表面には、病原体の一部(抗原)を特異的に認識する抗原受容体が発現しています。

リンパ球の分類

リンパ球は、胸腺(thymus)で分化・成熟する「Tリンパ球」、および、骨髄(bonemarrow)で分化・成熟する「Bリンパ球」の2種類に大別されます。

Tリンパ球は、常者末梢血中リンパ球の70~80%を占め、Bリンパ球は、健常成人末梢血リンパ球の5~15%を占めます。

・Tリンパ球

Tリンパ球は、さらに、いくつかのグループに分類されます。

例えば、抗体の産生や他の免疫担当細胞の活性化を補助する「ヘルパーTリンパ球(Th)」や、感染細胞や腫瘍細胞を攻撃する「細胞傷害性Tリンパ球(Tc)」や、過剰な免疫応答を抑制する「調節性Tリンパ球(Tr)」などです。

Tリンパ球は、細胞表面にT細胞受容体(TCR)を発現し、さらに、CD4またはCD8分子を発現しています。

Tリンパ球は、それ自体では抗原を直接認識することはできず、マクロファージ・樹状細胞などによる抗原提示が必要です。

・Bリンパ球

Bリンパ球は、細胞表面に、Tリンパ球とは異なった抗原受容体(BCR)が存在します。

Bリンパ球は、BCRを介して抗原を直接認識して活性化し、最終的に形質細胞に分化して免疫グロブリン(抗体)を分泌します。

リンパ球の循環

リンパ球は骨髄で生まれ、リンパ節、胸腺、扁桃、脾臓、腸管のバイエル板(これらの器官は「リンパ組織」と呼ばれています)に多く存在します。

リンパ球はひとつの場所にとどまっておらず、リンパ球は各リンパ組織から血管(またはリンパ管)というふうに絶えず体内を循環しています。

このリンパ球の循環(特にあるリンパ組織から循環し、再びもとのリンパ組織に戻ってくること)をリンパ球の「ホーミング:homing」といいます。

参考:リンパ管について

ヒトの体には血管のほかにもう一つ、リンパ管という管が、組織のすみずみまで分布しています。

リンパ管には、小さい穴が多数あり、まわりの組織から出た水分、分泌物(組織液)、組織中のリンパ球・マクロファージ・樹状細胞などがその穴からリンパ管に入ります。

末梢のリンパ管は体の中心部に向かっていくうちに合流し、リンパ本幹に集められ、リンパ液は、最後に太い静脈に注ぎ込まれます。

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病気

感染症の定義

定義

感染(infection)とは、微生物が、付着した場所で定着し、分裂・増殖することです。

微生物が、ヒトの排除能力(免疫など)を超えて侵襲するとき、「感染」が成立します。

生体にさまざまな障害が現れた場合、発病(発症)となり、この状態を「感染症」といいます。

参考

潜伏期

感染してから発病(発症)に至るまでの時期を、潜伏期(incubation period)」といいます。

ただし、感染した場合でも、すべて発病(発症)するわけではありません。感染しているが発病していない状態を特に「不顕性感染」といいます。

日和見感染

正常のヒトに感染しないが、排除能力の低下に伴い侵襲能力の弱い微生物が感染することは「日和見感染」と呼ばれ、また、日和見感染を受けやすい宿主は、「易感染宿主」と呼ばれます。

病原体

ヒトに侵襲能力をもつ微生物は、病原体(病原菌)と呼ばれます。

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医療従事者向け

カルバペネマーゼとは?

βラクタマーゼ

βラクタマーゼは、βラクタム環をもつ薬を分解する酵素で、様々な種類があります。

Amberの分類によれば、遺伝学的に、クラスAからDまで4分類されています。

カルバペネマーゼ

βラクタマーゼのうち、カルバペネムを分解できるβラクタマーゼを、カルバペネマーゼと呼びます。

なお、カルバペネマーゼは、基本的に、カルバペネム以外のβラクタム薬も分解できます。

カルバペネマーゼの種類

カルバペネマーゼは、活性中心の構造により、メタロβラクタマーゼに分類されるものと、セリンβラクタマーゼに分解されるものとに分けられます。

メタロβラクタマーゼに分類されるものには、IMP型、NDM型、VIM型などがあります。

一方、セリンβラクタマーゼに分類されるものには、KPC型、OXA-48型、GES型、IMI/NMC-A型などがあります。

なお、カルバペネマーゼの日本での検出数は、IMP型が多いようです。具体的には、IMP-1や、IMP-6です。

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医療

自然免疫と獲得免疫

免疫とは

免疫とは、「一度、ある病原微生物が原因で感染症になったら、同じ病原微生物に対する抵抗力が飛躍的に上がる(二度とその感染症にはかからない)」という現象のことをいいます。

免疫という言葉の由来

たとえば、麻疹(はしか)や水疱瘡(みずぼうそう)に一度かかったら、二度目はかからないことが多いです。

このような現象を確認し、一般化したのは、「免疫学の父」といわれるルイ・パスツールです。

彼はそれを「二度なし現象」と表現し、それが「免疫」という言葉の元来の意味です。

自然免疫と獲得免疫

私たちが接触する病原微生物は、おおまかに、「細菌」、「ウイルス」、「真菌(カビ)」、「寄生虫」に分類できます。

そして、それらの感染(体内への侵入・増殖)によって何らかの症状が出るのが、「感染症」と呼ばれる病気です。

感染の原因である病原体を排除するため、ヒトは、自然免疫(先天免疫)と、獲得免疫(後天免疫)の防御機構をもっています。

自然免疫

自然免疫は、ヒトがもともと備えている防御機構で、主につぎの因子が関与します。

・補体
・インターフェロン
・好中球
・マクロファージ

たとえば、皮膚に傷つき、そこから細菌が侵入してきた場合、皮下組織まで侵入してきた細菌は、マクロファージに食べられます。

細菌などの異物の侵入を察知したマクロファージは、他のマクロファージや、好中球を近くに呼び寄せる物質(ケモカイン=遊走因子)を放出します。

この非特異的な防御が自然免疫(自然抵抗性)と呼ばれます。

なお、マクロファージは体内の各組織に点在しているのに対し、好中球のほとんどは、血管中に存在するため、好中球が組織中に移動するためには、ケモカインの働きが重要になります。

獲得免疫

獲得免疫は、病原体に感染することにより、初めて獲得される免疫応答です。

獲得免疫は、さらに体液性免疫と細胞性免疫とに分類されます。

前者は「Bリンパ球」と「抗体」が、後者は「Tリンパ球」が中心的に関与します。

自然免疫と獲得免疫の違い

自然免疫(自然抵抗性)は、その感染をくり返しても、抵抗力が強くなるわけではありません。

これに対して、獲得免疫の特徴は、異物に対する反応が特異的・長期間に記憶され、同一の病原体に再度感染した場合に、素早く対応できる点です。

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医療従事者向け

McFarland法の解説

McFarland法は、微生物検査で、菌数を調整するときに便利な方法です。

McFarland法の標準溶液は、1パーセントの塩化バリウムと、1パーセントの硫酸でつくられています。

MacFarland No.は、含まれている1パーセント塩化バリウムの百分率を意味します。

たとえば、1%硫酸と1%塩化バリウムを、容積比で99対1で混ぜたものは、MacFarland No.1となります。

また、1%硫酸と1%塩化バリウムを、容積比で95対5で混ぜたものは、MacFarland No.5となります。

通常よく使用されるのは、MacFarland No.0.5です。

この濃度のとき、大腸菌の菌液なら、約1〜2×10^8CFU/mlとなります。

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医療従事者向け

臨床的ブレイクポイントとは

定義

臨床的ブレイクポイントとは、希釈法により測定したMIC値において、臨床的に治療効果が期待できるMIC値と、期待できないMIC値との分岐点を意味します。

また、ディスク拡散法により阻止円直径を測定した場合では、臨床的に治療効果が期待できる阻止円直径と、期待できない阻止円直径との分岐点を意味します。

補足

検査室では、マイクロプレートなどを用いた希釈法により、抗菌薬のMIC(最小発育阻止濃度)を測定したり、あるいは、ディスクを用いたディスク拡散法により、発育阻止円直径を測定しますが、これは、in vitro (試験管内)条件での測定結果にすぎず、簡単には、in vivo(臨床)に適用できません。

なぜなら、ヒトの組織中での細菌および薬剤の挙動は、in vitroと同一では無いため、感染部位において抗菌薬の濃度をMIC値と同じ濃度にしたからといって、組織内での発育が阻止できるとは限らないからです。

そこで、臨床試験などの結果を基に、臨床的な観点からブレイクポイントを決定します。

臨床的ブレイクポイントは、希釈法で設定する場合は、MIC値(μg/ml)で表されます。また、ディスク拡散法で設定された場合は、阻止円直径(mm)で表されます。

なお、臨床的ブレイクポイントの数値を提唱する団体として有名なものに、EUCASTがあります。

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医療従事者向け

微生物学的ブレイクポイントとは

定義

微生物学的ブレイクポイント(細菌学的ブレイクポイント)とは、希釈法により測定したMIC値において、抗菌薬の効果が期待できるMIC値と、期待できないMIC値との分岐点を意味します。

微生物学的ブレイクポイントは、臨床微生物の分野では、CLSIがブレイクポイントの設定に参考にしていることで知られています。

補足

微生物学的ブレイクポイントの設定するときは、まず、特定の菌種の菌株を多数用意し、抗菌薬のMIC値を、各株について詳細に測定します。

そして、MIC値を横軸にし、菌株の数を縦軸にして棒グラフを作成すると、原則として、MICの分布は、二峰性を示します。

原則的には、この分岐点を、感性側と耐性側を分けるブレイクポイントとして設定します。

なお、MIC値の分布が連続的になる場合(二峰性を示さない場合)は、薬剤耐性の原因を調べ、その結果を考慮してブレイクポイントを設定します。

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医療従事者向け

CLSIとEUCASTの違いとは?

EUCAST(European committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)と、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)は、ともに、薬剤感受性試験成績を解釈するための基準(= ブレイクポイント:BP)を提唱する団体です。

ここで、ブレイクポイント(BP)とは、抗菌薬の薬剤感受性試験によって得られる最小発育阻止濃度(MIC)などから、抗菌薬の治療効果を予測するために使用する基準値です。

ブレイクポイントには、「微生物学的ブレイクポイント」と「臨床的ブレイクポイント」とがあります。

EUCASTとCLSIの違いは?

さまざまな違いがありますが、たとえば以下のものがあります。

BPの設定方法

EUCASTの内容は、臨床的ブレイクポイントが主体であるのに対し、CLSIの内容は、微生物学的ブレイクポイントが主体です。

すなわち、両者はブレイクポイントの設定方法が異なります。

判定結果

EUCASTは、薬剤感受性試験結果を、ブレイクポイントによって、有効(S)、中間(I)あるいは無効(R)に分類します。

一方、CLSIは、薬剤感受性試験結果を、ブレイクポイントによって、感性(S)、中間(I)、用量依存(S-DD)、あるいは、耐性(R)に分類します。

費用

EUCASTは情報を全て無料で公開していますが、CLSIは有料です。

耐性菌か否かの判定

菌種によりスクリーニング方法が異なる場合があります。

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病気

ウロセプシスとは?(urosepsis)

ウロセプシスとは、尿路感染症を原因とする敗血症の意味です。

尿路感染自体は、さまざまな原因で発症します。

細菌が自然に侵入するほか、尿路についての手術や、膀胱鏡、尿道カテーテルの留置・抜去、あるいは、尿管ステントの留置などの際に感染する場合があります。

このとき、たとえば、尿が出にくい感染患者は、腎盂内圧が上がることで、尿中細菌が血中に移行し、その結果として、ウロセプシスとなります。
ウロセプシスは、エンドトキシンショック、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)などにつながる場合があるため、注意が必要です。

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医療従事者向け

エンピリック治療とは?(enperic therapy)

定義

エンピリック治療(enperic therapy)とは、「経験的治療」とも呼ばれ、医師が経験に基づいて行う治療のことを意味し、特に感染症に対して、原因菌が判明する前に実施されるものです。

すなわち、微生物検査の結果が出る前に、想定する起因微生物をカバーする抗菌薬で治療することを意味します。

解説

一般に、医師は、患者の症状、病歴、年齢、性別などから、患者が細菌性の感染症に罹っていると疑ったとき、生化学検査や画像検査などの必要な検査を実施し、さらに、感染を疑う部位から検体を採取して細菌検査(塗抹•培養•同定•感受性)を実施します。

ここで、理想的には、全ての検査結果が出揃ってから、検出菌の中から起炎菌を推定し、その菌に対して効果がある抗菌薬を選択して投与できれば、最も確実な治療が行えることでしょう。

しかし、大半のケースでは、患者の回復を優先する必要があるため、検査結果が出揃う前に、経験則をもとに、早急に抗菌薬を選択・投与して、治療が開始されます。

たとえば、細菌による感染性胃腸炎を疑う場合は、検出頻度の高い菌(下痢原生大腸菌、キャンピロバクター、サルモネラなど)に対応可能なホスホマイシンやニューキノロンを処方します。

また、フォーカス(感染源)が不明な敗血症のように、起因菌の推測が困難な重症例のときは、第三世代セフェム系やカルバペネム系などの様々な微生物に効く抗菌薬(広域スペクトルの抗菌薬)を投与して治療が開始されます。

これがエンピリック治療です。

なお、広域スペクトルの抗菌薬でエンピリック治療を行う際に選択する抗菌薬は、通常、病院の抗菌薬の使用方針や、各種学会の抗菌薬の使用ガイドラインなどの選択基準を参考にします。

原因菌が同定された場合には、アンチバイオグラムを参考に、あるいは、感受性試験の結果が出た場合には、その結果を基に、狭域スペクトルの抗菌薬に変更されることが望ましいです。

これは、抗菌薬のデエスカレーションと呼ばれます。

これにより、広域スペクトル薬に対する耐性菌が出現する確率を減らすことができ、また、より安価な薬に変更できれば、医療費が抑えられます。