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遠隔医療

遠隔診療を受診できる病気

遠隔診療を受診できる病気の種類について紹介します。

遠隔診療できる病気

遠隔診療は、現在のところ、症状が比較的安定した病気に限られています。

すなわち、いわゆる慢性疾患が対象になります。

たとえば、以下の病気が対象になります。

生活習慣病

高血圧、糖尿病など

アレルギー疾患

花粉症など

呼吸器疾患

喘息など

皮膚疾患

アトピー、水虫、ニキビ、褥瘡など

精神疾患

うつ病、統合失調症など

そのほか

がん、脳血管障害、難病、禁煙外来、脱毛症など

 

これらは例ですので、ほかの病気であっても、ふだん検査などせず、問診だけで薬を処方してもらっているような患者さんは、遠隔診療を受けられる可能性が高いです。

対象疾患の拡大は

上記のように、現在のところ、オンラインで診療を受けられる病気は、病状が急激に悪くならないものに限られています。

しかし、今後、遠隔診療の実施の動向を踏まえて、対象疾患が拡大していく可能性は大いにあります。

なお、別のページで、遠隔診療のサービス一覧を紹介していますので、参考にご覧ください。

遠隔診療のサービス一覧をみる

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検査

クレアチン、クレアチニンについて

クレアチン、クレアチニンについて解説します。

クレアチン

クレアチンは、アルギニン、グリシンおよびメチオニンの三つのアミノ酸から合成され、肝臓で合成されます。

クレアチンは、血中から筋肉に取り込まれ、筋細胞内に取り込まれたクレアチンは、クレアチンキナーゼ(CKまたはCPK)により触媒され、クレアチンリン酸と平衡を保っています。

つまり、クレアチンは、ATPの供給に関係しています。

クレアチンの98%は筋肉に存在しています。

血中のクレアチンは、腎糸球体基底膜を通過し、尿細管に再吸収されます。その場合の腎閾値は0.6mg/dl程度です。

基準値は、男性で0.2~0.6mg/dl (15~46μmol/l)、女性で0.4~0.9mg/dl (31~69μmol/l)です。

クレアチンの異常

筋肉疾患、甲状腺機能亢進症などで増加し、肝障害などで減少します。

なお、クレアチン尿を呈する疾患として、進行性筋ジストロフィー症、多発性筋炎、皮膚筋炎などがあります。

クレアチニン

クレアチニンは、クレアチンリン酸またはクレアチンが非酵素的に脱水閉環されたものです。

腎糸球体で濾過されたあと、クレアチンとは異なり、尿細管では全く再吸収されませんので、尿中にそのまま排泄されます。

クレアチニンの異常

溶血、腎障害などで増加し、また、肝障害、筋疾患(筋肉萎縮を伴うもの)、尿崩症などでは減少します。

クレアチニン・クリアランス(creatinine clearance)

クレアチニンは糸球体基底膜を自由に通過し,血清クレアチニンが明らかな高値を示さない限り,尿細管からの再吸収も分泌もないと考えてよいので,糸球体濾過量を知ることができます。

血漿と尿のクレアチニンを定量することによって、内因性のクレアチニン・クリアランスを求めることができます。

正常成人では97~140ml/min(平均125ml/min)です。

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Column

癌のIVC療法の歴史、治療法、効果

高濃度ビタミンC点滴療法(IVC療法)について紹介します。

高濃度ビタミンC点滴療法(IVC療法)

高濃度ビタミンC点滴療法(IVC)は、人の医療において悪性腫瘍に対する副作用を伴わない新しい治療として注目されています。

すなわち、高濃度ビタミンCを血管注射により投与することで、癌の発生、進行、転移を抑制するのに高い効果が見られるという研究です。

なお、現時点では、ヒトに対するビタミンCの抗がん効果は、検証されているところであり、有効性が十分実証されているわけではありません。

歴史

ビタミンCを癌の治療に用いる研究は、1976年キャメロンとポーリングによる論文に始まり、米国のリオルダン医師による論文(2004年)や、アメリカ国立衛生研究所・国立がんセンター・食品医薬品局の科学者らによる高濃度ビタミンC点滴療法によって選択的に癌細胞を死滅させるという基礎論文(2005年)などがあります。

治療法

一般的な治療方法としては,アスコルビン酸を点滴して効果を発揮する血中濃度(400mg/dL以上)へと上げていきます。

その後は血中のアスコルビン酸濃度をモニタリングしながら、がん患者ごとに病状によって投与量や頻度を決定していきます。

効果

IVCの有効性については、完全寛解が3%、生存期間の延長が80%との報告があります。

効果がある癌として報告されている癌は、乳がん、肺がん、前立腺がん、悪性リンパ腫、肝臓がん、胃がん、腎臓がんなど多岐にわたっています。

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Column

癌になると低ナトリウム血症になる仕組み

低Na血症とは

低ナトリウム血症(以下、低Na血症)は、血清Na濃度が135 mEq/L未満の場合です。

低Na血症は特異的な症状に乏しいため、検査で偶然に発見されることが多いです。

これは、ナトリウムの摂取不足が原因ではありません。

低Na血症の主な原因としては、つぎの二通りあります。

原因1

水を飲みすぎることで血液が薄まって低Na血症となる場合です。

原因2

腎臓で水の再吸収とNaの排泄とが促進されることで血液が薄まって低Na血となる場合です。

がん患者と低NA血症

がん患者の場合、二番目の原因で低NA血症になります。

具体的には、がん細胞から、不必要に「バソプレシン」というホルモンが分泌されます。

バソプレシンは、抗利尿ホルモン(ADH)とも呼ばれるホルモンで、腎臓に作用します。

腎臓は、バソプレシンの作用を受けて、作成した尿から、水を積極的に再吸収してしまいます。

その結果、体内に水がたまって血液が薄まり、結果として低Na血症となります。

すべてのがん患者に認められる訳ではありませんが、このような原理で発生する低NA血症は、がん患者の何割かに認められる症状です。

治療法

一般的には、点滴でナトリウムを補充しつつ、がんの治療を行います。

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病気

胸腺腫の病態、治療、予後

胸腺腫の病態、治療、予後について解説します。

病態

胸腺腫は縦隔腫瘍の中でも最も高頻度であり, 胸腺上皮細胞由来の代表的腫瘍です。

胸腺腫は、30歳以上の成人に好発し、発生頻度には男女差を認めません。

胸腺腫は、半数以上が無症状で、検診などで偶発的に発見されることが多いとされています。

通常、胸腺腫は結合組織の被膜で覆われており、胸腺内にとどまることが多いとされていますが、進行すると周囲の肺、心臓、上大静脈、胸膜への浸潤や播種を来すことがあります。

周囲の臓器への腫瘍の圧排や浸潤によって、胸痛、咳、呼吸困難、横隔神経麻痺、上大静脈症候群などを認めます。

また、胸腺腫は、さまざまな自己免疫性疾患を合併することも知られており、代表的なものとして、重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、赤芽球癖、シェーグレン症候群などが報告されています。

胸腺腫の血行性転移の頻度は低いとされています。

転移の中では肺転移が多いようです。

なお、病理学的には、胸腺腫は胸腺上皮由来の、正常の胸腺上皮によく似た細胞異型の目立たない細胞からなる腫瘍であり、正常の胸腺組織にみられるような未熟Tリンパ球を種々の程度に随伴します。

治療

治療は早期例には外科的切除が行われます。

現在は、胸腺腫に対する胸腔鏡手術が広く行われるようになっています。

腫瘍の大きさ、部位、進行度、病期から手術適応を判断し、胸腺切除範囲を含めた胸腺腫に対する適切な術式が検討されます。

胸腺腫に対する胸腔鏡手術は良好な治療成績と言われています。

進行例には、外科的切除に化学療法および放射線治療を含めた集学的治療が行われます。

ただし、浸潤型の胸腺腫の場合は、治療の基本方針は腫瘍の完全切除ですが、比較的稀な疾患のため、一期的切除が困難な進行症例に対する治療方針に関してコンセンサスは確立されていません。

予後

胸腺腫の予後はWHO組織分類と正岡病期分類が指標となっています。

報告によると、WHO組織分類のA型は、正岡分類のⅠ期 80%、Ⅱ期 17%、Ⅲ期 3%であり、5年および10年生存率は100%です。

AB型は、正岡分類のⅠ期 71.1%、Ⅱ期 21.6%、Ⅲ期 5.6%であり、5年および10年生存率は80~100%です。

B1型は、正岡分類のⅠ期 53~58%、Ⅱ期 24~27%であり、10年生存率は90%以上です。

B2型は、正岡分類のⅠ期 10~48%、Ⅱ期 13~53%、Ⅲ期 19~49%、Ⅳ期 8.9%であり、10年生存率は50%以上です。

B3型は、正岡分類のⅠ期 4.2%、Ⅱ期 15~38%、Ⅲ期 38~66%、Ⅳ期 6~26%であり、10年生存率は50~70%です。

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遠隔医療

遠隔診療の受け方

遠隔診療(オンライン診療)を受けるための方法と流れを説明します。

遠隔診療には、健康保険を使う「保険診療ほけんしんりょう」と、健康保険を使わない「自由診療じゆうしんりょう」がありますので、それぞれ紹介します。

受診の流れ

保険診療の場合

健康保険を使って3割負担で診察を受けるときは、つぎのような流れになります。

1.遠隔診療を実施している医療機関を探す

遠隔診療で健康保険を使うには、初診は必ず対面で行うのがルールです。

したがって、まずは通院できる範囲で、遠隔診療できる医療機関を探します。

2.対面診察を受ける

対面診察をして、医師の診断を受けます。

診断のために、血液検査、画像検査、触診などが必要になることもあります。

3.再診を遠隔診療にするか医師が決める

医師の判断で、2回目以降の診察を遠隔診療にすることができます。

4.遠隔診療を受ける

スマートフォンやタブレットを通じて、診察を受けます。

カメラを通じて、患者の顔色などの外観を把握したり、体温計・血圧計・脈拍計などの機能を持ったウェアラブル機器からのデータを確認したりすることがあります。

5.薬や処方箋が家に届く

薬が必要なとき、院内で調剤できるものは自宅に届けてもらえます。

また、院内で調剤ができないときは、処方箋が送られてきますので、薬局で薬を受け取ります。

健康保険が使える病気

なお、オンライン診療の場合、健康保険を使える病気には一定の制限がありますので、こちらのページで紹介しています。

健康保険を使って遠隔診療を受けられる病気をみる

自由診療の場合

美容整形,歯列矯正,薄毛治療など、健康保険を使えない自由診療の分野では、つぎのような流れになります。

1.遠隔診療を実施している医療機関を探す

居住地に関係なく、全国の医療機関の中から、自分の目的に合った医療機関を探します。

※保険診療の初診では「対面診察」が必要ですが、自由診療の初診では「オンライン診察」が可能です。

2.オンライン診察を受ける

オンラインで、医師の診察を受けます。

内容によっては、次回に来院して対面診察をすることが必要になる場合があります。

3.薬や処方箋が家に届く

薬を希望したときは、院内で調剤できるものは自宅に届けてもらえます。

また、院内で調剤ができないときは、処方箋が送られてきますので、薬局で薬を受け取ります。

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医療

副腎皮質ホルモンと副腎髄質ホルモンとの違いとは?

副腎ホルモンの種類について解説します。

副腎の構成

ヒトの体に副腎は2つあり、それぞれ、片方の腎臓の上に位置しています。

副腎の85%は、「副腎皮質」+「副腎髄質」から構成されます。

副腎皮質と副腎髄質のそれぞれから、ホルモンが分泌されます。

副腎皮質ホルモン

副腎皮質は、外側(球状帯)、中間層(束状帯)、内側(網状帯)から構成されています。

外側(球状帯)は、ミネラルコルチコイドを分泌し、中間層(束状帯)はグルココルチコイドを分泌し、内側(網状帯)は、アンドロゲンを分泌します。

ミネラルコルチコイド

主なミネラルコルチコイドは、アルドステロンです。

アルドステロンは、Naイオンや、Kイオンの調節、血圧、血液層の調節、Hイオンの尿中への排泄を促進します。

なお、アルドステロンの分泌は、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン経路の一部として起こります。

グルココルチコイド

グルココルチコイドで、一番多いのは、コルチゾールです。

コルチゾールには、タンパク分解、グルコース産生、トリグリセリド分解、抗炎症作用、免疫反応抑制などの作用があります。

なお、血中のコルチゾールの低下は、視床下部の神経分泌細胞を刺激し、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)を分泌させます。

さらに、下垂体の門脈がCRHを下垂体の前葉に運び、ACTHの分泌が促進されます。

アンドロゲン

副腎皮質は、少量のアンドロゲンを分泌しています。

男性では、精巣から多量の分泌がありますので、副腎皮質からの分泌は無視できる程度です。

一方、女性では、アンドロゲンが性欲を起こさせます。

また、他の体組織により、エストロゲンに変換されます

したがって、更年期以降は、卵巣のエストロゲン分泌が止むと、女性のエストロゲンは、副腎のアンドロゲン由来のものとなります。

副腎髄質ホルモン

副腎髄質は、ホルモン分泌のために特異的に分化した自立神経系の交感神経節後細胞からなります。

主なホルモンは、アドレナリン(エピネフリン)およびノルアドレナリン(ノルエピネフリン)です。

これらのホルモンが分泌されるのは、身体にストレスがかかったときです。

視床下部からの神経インパルスが交感神経節前ニューロンに伝えられ、副腎皮質の細胞を刺激することで分泌されます。

心拍数の上昇、心収縮力の上昇、気道の拡張、血中グルコースの上昇、血中脂肪酸の上昇などの作用があります。

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医療

軟部肉腫の病態,診断,治療

軟部肉腫の病態、診断、治療について解説します。

病態

軟部肉腫は、筋肉内や皮下組織などの軟部に発生する間葉系悪性腫瘍肉腫です。

まれなガンで、発生年間は約10万人に1人程度と推測されています。

なお、小児に発生する軟部肉腫はさらに少なく、全小児がんの5~6%にあたると言われています。

軟部肉腫の多くは、 痛みなどの症状がない(しゅ)(りゅう)や腫れ((しゅ)(ちょう))として自覚されます。

痛みがないと医療機潤の受診が遅れがちになり、10cmを超える巨大な腫瘍を形成してから受診されるケースも多いと言われています。

ただし、一部には腫瘤自体に痛みがあったり、腫瘤が大きくなって神経を圧迫し、痛みを伴うことがあります。

また、皮膚の色が変わったり(かい)(よう)ができることもあります。

手足にできた腫瘍が大きくなり、関節が曲がらなくなったり、座ることができなくなったりする事例もあります。

乳児の場合は、訴えがないので注意が必要です。

なお、軟部肉腫の組織型は、主な分類だけで30あるとされています。

分類によって、その内容は大きく異なり、たとてば、軟部肉腫である粘液線維肉腫と滑膜肉腫では、好発年齢や病気の振る舞いが大きく異なります。

診断

軟部腫瘍の性状を評価するのに 最も適した画像検査は、造影MRIです。

軟部肉腫の多くは肺に転移するため、軟部肉腫を疑った場合は局所の評価に加えて、胸部CTを撮像することも必要です。

また、軟部肉腫を疑い、腫瘍の一部をとり(切開生検)、病理組織学的に診断する場合もあります。

組織採取の方法として、コアニードル針を用いた針生検、 切開生検などが行われます。

なお、日常臨床では、特に四肢や体幹表面に触れる良性軟部腫瘍との鑑別が重要です。

ちなみに良性の軟部腫瘍のうち、頻度が高いものは脂肪腫、神経鞘腫、血管腫(血管奇形)などであり、これらの良性軟部腫瘍は軟部肉腫の約10~100倍の発生率と言われています。

治療

軟部肉腫における治療の中心は外科療法です。

悪性の場合には、腫瘍を周囲の健常組織で包むようにして切除する広範囲切除(wide excision, wide resection)が重要で、広範囲の切除であればあるほど術後再発を防ぐ可能性が高まります。

ただし、術前の画像から予想される以上に腫瘍が周囲組織に連続性に広がっていた場合や、 術前の画像では描出されない微小な血行性あるいはリンパ行性の転移病巣が原発巣と非連続性に存在していた場合などには、再発の可能性が高まると言われています。

悪性軟部腫瘍は, 低悪性度または中悪性度の場合、通常は、化学療法は施行されませんが、悪性度の高い肉腫は手術だけではなく、化学療法(抗がん剤)を行い、さらに放射線療法や温熱療法などいろいろな治療を組み合わせる治療(集学的治療)が行われます。

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医療

肝芽腫の病態,診断,治療,予後

小児期のすべての悪性腫瘍のうち、肝原発性腫瘍は小児腫瘍の1%前後です。

頻度は高くありませんが、悪性の腫瘍が2~3割程度あり、その代表的な疾患として3歳以下に好発する『肝芽腫』があります。

文献によると、肝芽腫の45%は1歳前に発症するようです。

病態

お腹が張る(腹部膨隆)あるいは腹部のしこり(上腹部腫瘤)を主症状として来院する事例が多いようです。

食思不振、体重減少、発育不良が認められ、まれに発熱や黄疸を伴うことがあります。

血液検査では、80~90%の症例で、AFPの著しい上昇が認められます。

肝芽腫は、通常は、片葉に単発性の腫瘍として認められます。

右葉に存在する例は、左葉に存在する例の二倍と言われています。

特定の疾患をもつ小児では発生リスクが高くなる傾向があります。

たとえば、Beckwith-Wiedemann症候群、片側肥大、家族性大腸ポリポーシス、18トリソミーなどです。

また、低体重児に高率に発生するとの報告もあります(発生リスクが成熟児の約40倍)。

さらに、両親が職業で、金属・石油製品・塗料・色素などに曝露されると、子どもの肝芽腫発生のリスクが高くなるとの疫学データもあります。

組織学的には高分化型(胎児型:fetal type)、低分化型(胎芽型:embryonal type)、未熟型などに分類されます。

なお、転移は肺に多いと言われています。

診断

腫瘍の様子を把握する目的で超音波診断、X線、CT、MRIなどが実施されます。

さらに、肺、腹部リンパ節、骨などへの転移を検査するためのCTや骨シンチが行われます。

治療

治療には化学療法や放射線治療がありますが、これらのみでは、根治は難しいと言われており、多くは外科的切除が用いられます。

つまり、原発巣を一期的または二期的に切除し、同時に全身化学療法を用います。

腫瘍を完全切除することができない肝芽腫や、診断時に遠隔転移している場合には全身化学療法が優先され、腫瘍を縮小させた後に切除を行うのが一般的です。

なお、腫瘍が肝臓のみにある場合は、肝移植による全肝切除で救命することも一般的になってきています。

ただし、全肝切除の場合、腫瘍の占拠部位によっては、肝部下大静脈合併切除再建を余儀なくされることがあります。

このとき、再建にはドナー内頸静脈や人工血管が用いられます。

なお、人工血管と直接の肝静脈吻合は小児では好ましくないとされていますが、やむなく人工血管を用いる場合、自家下大静脈全周性分節の移行による肝静脈吻合部の作成をする方法が存在し、肝摘出時には、遠心ポンプを用いた下大静脈一内頚静脈バイパスが使用されることがあります。

予後

日本小児肝がんスタディグループ(JPLT)の研究によると、一期的切除が可能な症例では95%以上の生存率であり、化学療法が優先された進行例では病期により39%から74%の治療成績と報告されています。

生体肝移植前の遠隔転移や脈管浸潤などのハイリスク症例では、移植後の再発リスクは高く、術後も継続的な治療が必要になるケースが多いようです。

なお、組織型が胎児型の亜型である純高分化型(pure fetal type)の予後は良好であるとされます。

そのほか

・肝移植の適応や時期、移植後の化学療法の必要性や安全性についての明確な基準はありません。

・肝芽腫の症例は日本においては年間登録例が少なく、臨床研究に十分な症例が集まっていないのが現状のようです。

・現在は、国際的な小児肝癌の研究組織である「Children’s Hepatic Tumor International Collaboration(CHIC)」 が組織され、国際的な肝芽腫のデータベースの構築や、そのデータを元にした国際的なリスク分類の作製が行われています。

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医療

ACTHが増加,減少するとき

ACTHについて解説します。

ACTHとは

ACTHとは、副腎皮質刺激ホルモンです。

物質的には、分子量4556のポリペプチドです。

ACTHは、副腎皮質を刺激して、コルチゾールおよびコルチステロンの分泌を増加させます。

フィードバック機構

フィードバック機構は、つぎのようになっています。

視床下部(CRH)⇄下垂体(ACTH)⇄副腎(副腎性アンドロゲン、アルドステロン、コルチゾール)

ACTHの分泌異常

増加する場合

アジソン病

副腎の萎縮や、結核性破壊によりコルチゾール減少が生じ、結果、フィードバック機構によりACTHが増加します。

先天性副腎酵素欠乏症

コルチゾール産生に必要な酵素が欠乏すると、コルチゾールの産生が低下し、結果、フィードバック機構によりACTHが増加します。

クッシング病

ACTHの分泌亢進によって、両側副腎の過形成をきたします。

異所性ACTH症候群

肺がん、胸腺がん、すい臓がん、ランゲルハンス島がんなど、下垂体以外の組織にある癌が、ACTHに似た物質を産生します。

低下する場合

下垂体機能低下症

原因はさまざまですが、下垂体の機能が低下することに伴い、ACTHが低下します。

ACTH単独欠乏症

ACTHが急に欠乏する状態です。

クッシング症候群

副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが産生され、結果、フィードバック機構によりACTHが低下します。

ステロイド投与

ステロイドの長期投与により、ACTHの分泌が抑制されます。