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呼吸器の感染症について

ヒトが空気を吸い込むと、空気中の細菌などの病原微生物を吸い込みます。

 病原微生物は、好中球や肺胞マクロファージに処理され、線毛運動により大きな気管支まで運ばれ、痰として体外に喀出されます。

防御しきれない場合や、防御機構が破綻した場合に、感染症を発病します。

感染は、上気道炎、下気道炎、肺炎、胸膜炎に分類されます。

上気道感染

急性上気道炎(かぜ、インフルエンザ、急性咽頭炎、急性扁桃炎、急性副鼻腔炎)

慢性上気道炎(慢性副鼻腔炎など)

下気道感染

急性気管炎、急性気管支炎

慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、陳急性肺結核、じん肺、非結核性好酸菌症、ABPA、肺繊維症など

肺炎

市中肺炎(気管支性肺炎、大葉性肺炎)、院内肺炎(人工呼吸器関連肺炎、)

胸膜炎

原疾患として、心不全、肺炎随伴性胸水、悪性胸水、肺塞栓、結核性胸膜炎

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体表部位感染症について

1.感染の種類

ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、結核菌感染に分類されます。

・ウイルス感染

原因ウイルスとしては、風疹ウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルスなど、多種多様です。

・細菌感染

原因菌としては、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、緑膿菌、好酸菌(結核菌など)、梅毒などです。

・真菌感染

原因菌としては、白癬菌、カンジダ菌などが検出されます。

2.手術部位感染

もっとも高頻度に検出されるのは、黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌です。

3.褥瘡感染

大腸菌、緑膿菌、腸球菌、黄色ブドウ球菌などが検出されます。

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胸が痛いときに疑う病気

胸が痛い(胸痛)は危険な病気の症状である可能性があります。

頻度の高い疾患には、以下のものがあります。

・胃食道逆流症(GERD)
・肋軟骨炎
・肺炎
・帯状疱疹
・心外膜炎

これら以外を疑う場合、緊急性の高い疾患から除外していくことが大切になります

大動脈解離、急性冠症候群、肺塞栓などの重大な病気を念頭に置くと良いでしょう。

緊急時(救急)では、心臓血管外科や、循環器内科などのコンサルトなどを行いつつ、呼吸・循環・疼痛管理などで安定させることが望ましいでしょう。

なお強い痛みにはモルヒネを静注投与することもできます。

また、気胸(特に緊張性気胸の初期治療後)、特発性食道破裂、心外膜炎などを疑った場合、専門医へのコンサルタントを行うのも必要です。

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フィダキソマイシンとは

Clostridium difficileというグラム陽性の芽胞形成性嫌気性菌は、抗菌薬関連腸炎の原因菌です。

この菌を選択的に殺菌できる抗菌薬が、フィダキソマイシンです。

これまでは、軽症例では、メトロニダゾール(フラジール)、重症例では、バンコマイシン(塩酸バンコマイシン)散を投与していましたが、これらに劣らない効果が、フィダキソマイシンに認められています。

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スモールステップ法による糖尿病指導

スモールステップ法とは

スモールステップ法とは、達成可能な目標行動から始め、少しずつ最終目標に近づけていく目標設定方法です。

より詳細には、スモールステップ法は、1950年代にアメリカのSkinerによって提唱されたプログラム学習に取り入れられている原理のうちの一つであり、学習の到達目標に至るまでの過程を細かく分け、一つ一つの積み重ねによって達成するという原理のことを言います。

糖尿病指導とスモールステップ法

目標行動は、患者に決めてもらうことが大切です。

患者が「できそう」と思う行動を目標にします。

目標は血糖値や体重などの変化よりも、患者にとって、日々の生活で把握しやすい、具体的なものであることが必要です。

たとえば、ウォーキングの歩数を「1日5000歩」など、客観的に評価ができる行動を目標に設定するのが良いでしょう。

ほかには、「週に3日は通勤時に駅で階段を利用する」、「一つ手前のバス停留所で降りて歩く」、「週に3日は間食を控える」など、様々なものがあるでしょう。

このとき、目標は柔軟に見直すことができることを、あらかじめ患者に説明しておくと良いでしょう。

患者の心理的なプレッシャーが小さくなりますし、また、目標行動を達成できなかったときのストレスも軽減されるからです。

もしも、目標を見直すときは、今までの目標よりもレベルを下げたり、運動の目標から食事の目標に変えるなど目標の種類を変更したりすることができます。

たとえば、通勤中に、「一つ手前のバス停留所で降りて歩く」を往復で実行するのが難しいときは、「帰りにだけ歩く」などとレベルを下げることができます。

また、間食を減らすことが難しいときは、「牛乳を低脂肪のものにする」などと目標の種類を変えることができます。

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表在性真菌症と深在性真菌症の違いとは?

表在性真菌症とは、皮膚、爪、毛などが侵される疾患です。

これに対し、深在性真菌症とは、皮下組織および深部臓器が侵される疾患です。

深在性真菌症の診断には、β-D-グルカンの測定が有用です。

 

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糖尿病の病態

糖尿病は名前の通り「尿に糖が出る病気」 ですが、体にとって問題なのは、血糖値が高いことです。

血糖値が高くなる仕組み

健康な人は、膵臓で「インスリン」というホルモンを分泌します。

インスリンは、血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれるように働きかけます。

具体的には、肝臓や筋肉、脂肪組織などの細胞表面にあるインスリン受容体と結合し、ブドウ糖の細胞内への取り込みを促進します。

これにより、健常者の血糖値は、狭い範囲でコントロールされてい ます。

しかし、糖尿病の人は、このインスリンの作用が不足しているため、血糖値が高くなります。

インスリンの作用不足とは

インスリンの分泌は、夜間から早朝空腹時にかけて分泌されるインスリンの「基礎分泌」と、食事に応じて急速に分泌される「追加分泌」とがあります。

糖尿病の患者は、糖尿病初期には、追加インスリン分泌の作用が低下し、病状が進行すると、基礎インスリン分泌の作用も低下するようになります。

その結果、食後の血糖値が上昇し、また、食前の血糖値へ戻るのに時間がかかるようになります。

さらに、やがては空腹時の血糖値まで上昇するようになります。

このときのインスリン作用不足の原因は、大きく分けて二通りあります。

ひとつは、膵β細胞から十分なインスリンが分泌されなくなることです(インスリン分泌不全)。

もうひとつは、筋肉、肝臓、脂肪組織などの末梢組織にインスリンが効きにくくなることです(インスリン抵抗性の増大)。

糖尿病の分類

糖尿病は、1 型糖尿病と2 型糖尿病に大別されています。

1 型糖尿病

1 型糖尿病は、膵β細胞の破壊・消失によるインスリン分泌の欠乏が原因です。

主に自己免疫学的機序により膵β細胞が破壊されます。

多くは数か月の経過で発症しますが、数日〜1 週間で発症する「劇症1型糖尿病」や、数年かけてゆっくりとインスリン分泌の低下が進行する「緩徐進行1型糖尿病」もあります。

2 型糖尿病

2 型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝素素因に、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子と加齢が加わることで発症します。

日本では、糖尿病の患者の95%以上が2型です。

糖尿病の症状

高血糖が持続すると、症状として、口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感などを呈します。

ただし、自覚症状に乏しい場合があります。

合併症

急性合併症

高度のインスリン作用不足は、急性の代謝失調を引き起こします。

糖尿病性ケトアシドーシス

高度のインスリン欠乏と、コルチゾールやアドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加により、高血糖、高ケトン血症、アシドーシスをきたします(糖尿病性ケトアシドーシス)。

これは、主に 1 型でインスリン依存状態の患者にみられます。

高浸透圧高血糖症候群

著しい高血糖(600mg/dL以上)と高度な脱水によって高浸透圧血症となり、循環不全をきたします(高浸透圧高血糖症候群)。

2 型糖尿病の高齢者によくみられます。

糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群は、いずれも重症例では意識障害を呈するので、両者は合わせて「糖尿病昏睡」と総称されます。

慢性合併症

慢性的な高血糖は、脂質異常症や高血圧とともに全身の血管を傷害します。

細かい血管が傷害され、網膜症、腎症、神経障害が発生します(細小血管障害:ミクロアンギオパシー)。

また、より太い血管が傷害され、虚血性心疾患、脳血管障害、下肢閉塞性動脈硬化症が発生します(大血管障害:マクロアンギオパシー)。

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赤血球の基礎と異常

赤血球の基礎

赤血球の産生

赤血球は、前赤芽球→赤芽球→網赤血球→赤血球という順に産生されます。

前赤芽球

赤血球系細胞の中で、形態学的にとらえられる最も未熟な細胞は、「前赤芽球」です。

前赤芽球は、赤芽球の中で最も大きいです。

細胞に占める核の容積比は大きく、クロマチン網工は点状繊細であり、2~3個の核小体を有します。

なお、穎粒はありません。

赤芽球

赤芽球は、分裂や成熟をするほど小さくなり、細胞質は、赤みを増します(ヘモグロビンの増加)。

赤芽球は、成熟とともに核が小さくなり、クロマチンは粗大となり、さらに、濃縮されていきます。

最後には脱核し、「綱赤血球」になります。

なお、前赤芽球から脱核するまでの期間は、約4~5日です。

網赤血球

綱赤血球は、一般に、成熟赤血球に比べて、大きくて軽いです。

血管内での寿命は約24時間で、貧血があると長くなる傾向にあります。

網赤血球は、赤血球のおよそ0.8%を占めます。

赤血球の形態および機能

血球は、中央がくぼんだ双凹円板形です。

直径は約8μmで、厚さは辺縁部で約2μm、中央で約1μmです。

赤血球は、保有するヘモグロビンにより、酸素を運搬します。

また、含有する炭酸脱水酵素などの働きにより、CO2も運搬します。

さらに、血液のpHを緩衝する機能や、撹枠子として、側き,溶質の血中濃度をいったいにする機能もあります。

赤血球の異常

大小不同

赤血球の大きさには正常でも多少のバラツキがみられるが、ばらつきが著明な場合、大小不同症(anisocytosis)といいます。

巨赤血球

巨赤芽球症にみられる巨大赤血球で,多く楕(卵)円形で、多染性を示すことはありません。

小赤血球

鉄欠乏性貧血、サラセミア、異常ヘモグロビン血症などでみられます。

なお、赤血球が極端に小さい場合、破砕(分裂)赤血球といいます。

破砕赤血球は、赤血球破砕症候群(DIC、TTP、HUS)、遺伝性熱変性性変形赤血球症などで見られます。

形態異常

うに状赤血球、口状赤血球などが、特定の症状で見られます。

封入体

好塩基性斑点、パッペンハイマー小体、ハウエルジョリー小体、カボー環、シュフナー斑点、ハインツ小体などが特定の症状で見られます。

連銭形成

血漿フイブリノゲンまたは免疫グロブリン(IgG、IgMなど)の増加時にみられます。

異常ヘモグロビン

グロビンのアミノ酸配列が変化したものを異常ヘモグロビンといいます。

およそ400種があり、溶解度が低いものや、溶血を起こしくするものなど、様々です。

なお、グロビン部分の異常でも後天的にグルコースが結合し、アマドリ転移を起こしたHbA1cは、異常ヘモグロビンとは言いません。

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自然免疫と獲得免疫

免疫とは

免疫とは、「一度、ある病原微生物が原因で感染症になったら、同じ病原微生物に対する抵抗力が飛躍的に上がる(二度とその感染症にはかからない)」という現象のことをいいます。

免疫という言葉の由来

たとえば、麻疹(はしか)や水疱瘡(みずぼうそう)に一度かかったら、二度目はかからないことが多いです。

このような現象を確認し、一般化したのは、「免疫学の父」といわれるルイ・パスツールです。

彼はそれを「二度なし現象」と表現し、それが「免疫」という言葉の元来の意味です。

自然免疫と獲得免疫

私たちが接触する病原微生物は、おおまかに、「細菌」、「ウイルス」、「真菌(カビ)」、「寄生虫」に分類できます。

そして、それらの感染(体内への侵入・増殖)によって何らかの症状が出るのが、「感染症」と呼ばれる病気です。

感染の原因である病原体を排除するため、ヒトは、自然免疫(先天免疫)と、獲得免疫(後天免疫)の防御機構をもっています。

自然免疫

自然免疫は、ヒトがもともと備えている防御機構で、主につぎの因子が関与します。

・補体
・インターフェロン
・好中球
・マクロファージ

たとえば、皮膚に傷つき、そこから細菌が侵入してきた場合、皮下組織まで侵入してきた細菌は、マクロファージに食べられます。

細菌などの異物の侵入を察知したマクロファージは、他のマクロファージや、好中球を近くに呼び寄せる物質(ケモカイン=遊走因子)を放出します。

この非特異的な防御が自然免疫(自然抵抗性)と呼ばれます。

なお、マクロファージは体内の各組織に点在しているのに対し、好中球のほとんどは、血管中に存在するため、好中球が組織中に移動するためには、ケモカインの働きが重要になります。

獲得免疫

獲得免疫は、病原体に感染することにより、初めて獲得される免疫応答です。

獲得免疫は、さらに体液性免疫と細胞性免疫とに分類されます。

前者は「Bリンパ球」と「抗体」が、後者は「Tリンパ球」が中心的に関与します。

自然免疫と獲得免疫の違い

自然免疫(自然抵抗性)は、その感染をくり返しても、抵抗力が強くなるわけではありません。

これに対して、獲得免疫の特徴は、異物に対する反応が特異的・長期間に記憶され、同一の病原体に再度感染した場合に、素早く対応できる点です。

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コリスチン耐性菌とは?

コリスチンとは

コリスチンは、抗生物質です。

略号は、「CL」と表記されます。

ただし、カプセルや点滴などの薬剤に含まれる物質は「コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム」です。

コリスチンの体内動態

コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、生体内で「コリスチン」に変換され、抗菌活性を発揮します。

コリスチンへの変換割合は、およそ30パーセントと言われています。

コリスチンは、主に腎臓から尿中へ排泄されます。

コリスチンの作用

コリスチンの標的は細胞外膜です。

グラム陰性菌のリポポリサッカライド分子との静電気相互作用により細菌外膜の安定性を低下させます。

その結果、細胞外膜に局所的な障害を起こし、細胞内物質を流失させて殺菌活性を発揮します。

コリスチンの適応

コリスチンの適応症は、感染性胃腸炎であり、適用菌種はコリスチン感性の大腸菌、シトロバクター、クレブシエラ、エンテロバクター、緑膿菌、アシネトバクター、赤痢菌などです。

コリスチンの商品名

製剤としては、商品名「メタコリマイシン(カプセル(顆粒))」、商品名「コリマイシン(散剤)」、商品名「オルドレブ(点滴静注用)」があります。

コリスチン耐性菌とは

近年、最強と言われた抗生物質「カルバペネムに」に耐性である腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)による感染が、世界中で問題になっていたところ、コリスチンは、CREに活性がある薬剤とされ、多剤耐性菌に対する「最後の選択肢」として期待されていました。

しかし、すでに海外ではコリスチン耐性の菌株が出現してしまったと報告されています。

コリスチン耐性菌は、コリスチン以外の多くの薬剤に抵抗性を示すため、治療自体も非常に難しく、致死率が高いと言われています。

この耐性菌群を封じ込めるため、病院レベルではなく、地域レベルあるいは国家レベルでの対策が求められています。